建設業の許可は、建設業法第3条に基づき業種別に与えられます。対象は29業種(一式工事2業種+専門工事27業種)に細分され、業種ごとに営業所に置く専任技術者(営業所技術者)の要件(国家資格・実務経験・指定学科卒業+一定年数)、施工対象工事、技術者の対応資格、経審(経営事項審査)のY点・P点の計算根拠が異なります。複数の業種で工事を請け負う場合は、業種ごとに許可を取得する必要があります(500万円未満の軽微な工事を除く)。
本記事では、(1)29業種の制度概要(建設業法第3条・施行令)、(2)一式工事2業種と専門工事27業種の機能別グループ、(3)一式工事と専門工事の違い、(4)業種別の専任技術者要件と国家資格の対応、(5)業種追加申請の手続、(6)一般建設業と特定建設業の区別、(7)経審(経営事項審査)との関係、(8)業種選択の実務戦略、を整理して解説します。
建設業の新規許可申請・業種追加・更新・専任技術者要件のセカンドオピニオンをご検討中の事業者さまへ。行政書士法人Treeでは、業種選定の戦略相談から専任技術者の資格・実務経験の充足確認、複数業種の同時申請、変更届・5年更新・経審申請までを一括サポートします(資格試験は本人、税務は税理士、労務管理は社会保険労務士をご紹介します)。
目次
目次
- 建設業29業種の制度概要(建設業法第3条)
- 一式工事と専門工事の違い
- 29業種の機能別グループ一覧
- 業種別の専任技術者要件(営業所技術者)
- 国家資格と対応業種の対照表
- 実務経験ルートと指定学科卒業+一定年数
- 業種追加申請の手続
- 一般建設業と特定建設業の区別
- 経審(経営事項審査)と業種別Y点・P点
- 業種選択の実務戦略
- 業務範囲|行政書士・社労士・税理士の役割
- よくある質問
建設業29業種の制度概要(建設業法第3条)
建設業を営むには、軽微な工事(請負代金が建築一式1,500万円未満かつ延べ床面積150平方メートル未満の木造住宅、その他500万円未満の工事)を除き、建設業法第3条に基づく建設業許可が必要です。許可は業種別に与えられ、業種は建設業法施行令で29業種に細分されています。
- 一式工事(2業種):土木一式工事・建築一式工事
- 専門工事(27業種):大工、左官、とび・土工・コンクリート、石、屋根、電気、管、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、造園、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体
「解体工事業」は2016年6月1日施行の建設業法改正により、従来とび・土工に含まれていたものが独立した29番目の業種として追加されました。
一式工事と専門工事の違い
一式工事と専門工事は、施工対象の性質が根本的に異なります。混同して許可申請をするケースが少なくないため、正確に理解しておく必要があります。
一式工事(土木一式・建築一式)
- 総合的な企画・指導・調整のもとに、土木工作物または建築物を建設する大規模・複雑な工事
- 原則として元請として請け負う工事
- 一式工事の許可があっても、専門工事を単独で請け負うには別途その専門工事の許可が必要(500万円未満の軽微な工事を除く)
- 典型例:橋梁の建設(土木一式)、住宅・ビル等の新築(建築一式)
専門工事(27業種)
- 特定の専門技術を要する個別の工事
- 専門工事として独立して請け負う場合は、その業種の許可が必要
- 一式工事の一部として下請に出される場合もある
- 典型例:電気設備工事(電気工事業)、内装仕上げ(内装仕上工事業)等
「建築一式があれば住宅リフォームも全部OK」は誤り
建築一式の許可があっても、リフォーム(内装仕上・塗装・防水等の専門工事)の500万円以上の工事を請け負うには、別途その専門工事の許可が必要です。「建築一式があれば何でもできる」と誤解しないよう、業種選定の段階で確認してください。
29業種の機能別グループ一覧
29業種を理解しやすくするため、機能別にグループ化します。
一式工事(2業種)
- 土木一式工事業
- 建築一式工事業
建築・仕上系(10業種)
- 大工工事業
- 左官工事業
- 屋根工事業
- タイル・れんが・ブロック工事業
- ガラス工事業
- 塗装工事業
- 防水工事業
- 内装仕上工事業
- 建具工事業
- 板金工事業
土木・構造系(7業種)
- とび・土工・コンクリート工事業
- 石工事業
- 鋼構造物工事業
- 鉄筋工事業
- 舗装工事業
- しゅんせつ工事業
- 解体工事業
設備系(5業種)
- 電気工事業
- 管工事業
- 機械器具設置工事業
- 熱絶縁工事業
- 電気通信工事業
特殊・その他(5業種)
- 造園工事業
- さく井工事業
- 水道施設工事業
- 消防施設工事業
- 清掃施設工事業
業種別の専任技術者要件(営業所技術者)
建設業許可を受けるには、許可を受けようとする各営業所に専任技術者を置く必要があります(建設業法第7条第2号)。専任技術者は次の3ルートのいずれかで要件を満たします。
① 国家資格による要件充足
業種に対応する国家資格(1級・2級施工管理技士、建築士、技術士、職業能力開発促進法の技能検定等)を有する者。業種ごとに認められる資格が異なるため、必ず一次資料(国土交通省ガイドライン等)で対応関係を確認します。
② 実務経験10年
許可を受けようとする建設業種について、10年以上の実務経験を有する者。複数業種にわたる場合は業種ごとに10年が原則必要で、合算は限定的にしか認められません。
③ 指定学科卒業+実務経験
- 大学・高等専門学校の指定学科卒業+3年以上の実務経験
- 高等学校・専門学校(専門課程)の指定学科卒業+5年以上の実務経験
「指定学科」は業種ごとに異なります(例:建築一式は建築学・都市工学等、電気工事は電気工学・電気通信工学等)。指定学科該当性は卒業証明書・成績証明書等で確認します。
国家資格と対応業種の対照表
| 国家資格 | 対応業種(一般建設業の専任技術者) |
|---|---|
| 1級建築施工管理技士 | 建築一式・大工・左官・とび土工・石・屋根・タイル・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装仕上・熱絶縁・建具・解体 等 |
| 2級建築施工管理技士(建築・躯体・仕上げ) | 受験区分に応じた各業種 |
| 1級土木施工管理技士 | 土木一式・とび土工・石・鋼構造物・鉄筋・舗装・しゅんせつ・塗装・水道施設・解体 等 |
| 2級土木施工管理技士(土木・鋼構造物塗装・薬液注入) | 受験区分に応じた各業種 |
| 1級電気工事施工管理技士 | 電気工事業 |
| 1級管工事施工管理技士 | 管工事業 |
| 1級造園施工管理技士 | 造園工事業 |
| 電気工事士(第1種・第2種) | 電気工事業(実務経験要件あり) |
| 1級建築士 | 建築一式・大工・屋根・タイル・鋼構造物・内装仕上 等 |
| 2級建築士 | 建築一式・大工・屋根・タイル・内装仕上 等 |
| 技術士(建設部門等) | 部門に応じた各業種 |
| 消防設備士 | 消防施設工事業(実務経験要件あり) |
上記は代表例です。業種ごとに認められる資格・受験区分・実務経験要件が異なるため、申請にあたっては必ず国土交通省ガイドラインおよび申請先都道府県の手引きでご確認ください。
実務経験ルートと指定学科卒業+一定年数
実務経験の証明
実務経験10年(指定学科卒業者は3年または5年)を証明するには、次の資料が必要です。
- 過去の勤務先からの実務経験証明書(在籍した期間・従事した業務内容・施工した工事名)
- 過去の請負契約書・注文書・請書・工事台帳等の裏付け資料
- 常勤性を示す健康保険被保険者証・年金記録・住民税特別徴収税額決定通知書等
過去の勤務先が廃業しているなどで実務経験証明書が取得できない場合、申請が困難になるため、転職時の証明書取得は早めに進めておくことが重要です。
指定学科
業種ごとの指定学科は、建設業法施行規則および国土交通省告示で定められています。
- 建築一式・大工・内装仕上等:建築学、都市工学
- 土木一式・とび土工・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ等:土木工学、都市工学、衛生工学、交通工学
- 電気工事:電気工学、電気通信工学
- 管工事:機械工学、建築学、都市工学、衛生工学
- 造園工事:林学、造園学、土木工学
該当の判断は卒業証明書・成績証明書で行います。専攻が境界的な場合は、申請先都道府県に事前確認するのが安全です。
業種追加申請の手続
既に建設業許可を有する事業者が新たな業種を追加する場合の手続です。
申請の種類
- 業種追加申請:既存の許可業種に新業種を追加する場合
- 般・特新規申請:一般建設業の業種を持つ事業者が特定建設業の業種を新たに取得する場合(またはその逆)
業種追加の主な要件
- 追加業種の専任技術者を別途配置(同一営業所内で複数業種の専任技術者を兼任することは可能。ただし要件を満たす者であること)
- 許可申請手数料:1業種につき5万円(業種追加の場合)
- 欠格事由・財産的基礎・誠実性等の他の要件は既存許可の維持と同様
業種追加の戦略
業種追加申請は新規申請より手数料が低く、既存の許可期間と一致させることで更新時の手続を一本化できます(許可の一本化)。複数業種の追加を検討する場合は、更新時期に合わせた段階的追加を計画するのが実務的です。
一般建設業と特定建設業の区別
区分の基準
- 一般建設業:下請契約の総額が4,500万円未満(建築一式は7,000万円未満)の元請工事を含むすべての工事を施工可能(2025年2月以降は5,000万円・建築一式8,000万円基準。前後ご確認ください)
- 特定建設業:上記金額以上の下請契約を締結する元請の工事を施工する場合に必要
※施工体制台帳・主任技術者/監理技術者の専任配置義務の金額基準も、2025年2月1日施行の建設業法施行令改正により引き上げられています(建築一式8,000万円・その他5,000万円)。
特定建設業の追加要件
- 専任技術者は、1級国家資格者または指導監督的実務経験(4,500万円以上の工事で2年以上)が必要
- 財産的基礎の要件が一般より厳しい(資本金2,000万円以上等、複数要件)
経審(経営事項審査)と業種別Y点・P点
公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)を受審する必要があります。経審の総合評定値P点は、業種ごとに算定されます。
- X点(経営規模):完成工事高・自己資本額・平均利益額(EBITDA)等で算定
- Y点(経営状況):純支払利息比率・負債回転期間・売上高経常利益率等で算定(標準偏差でなく所定係数)
- Z点(技術力):業種別技術職員数・元請完成工事高
- W点(社会性等):労働福祉・防災・建設機械の保有等
- 総合評定値P点:X1×0.25 + X2×0.15 + Y×0.20 + Z×0.25 + W×0.15
業種を増やすほど経審の対象業種も増えるため、入札参加を視野に入れる場合は、業種選定の段階で経審戦略も並行して検討します。
業種選択の実務戦略
業種選定の判断軸
- 主要施工対象:個人住宅・商業施設・インフラ・公共工事のいずれが中心か
- 技術者の有資格者確保状況:社内で配置可能な専任技術者の資格・実務経験
- 将来計画:今後5年間で取得を予定する業種・特定建設業への昇格計画
- 取引先要件:取引先元請が下請に求める許可業種
- 経審・入札戦略:公共工事入札を視野に入れる場合の業種選定
避けたい失敗例
- 建築一式だけで内装リフォーム500万円以上を請け負ってしまう(無許可営業)
- とび・土工で解体工事500万円以上を請け負ってしまう(解体は2016年から独立業種)
- 複数業種を取得したが、専任技術者の常勤性が崩れて要件失効
- 業種追加のタイミングを誤り、更新を2回に分けて手数料・事務負担増
業務範囲|行政書士・社労士・税理士の役割
- 行政書士(行政書士法人Tree):建設業許可の新規申請、業種追加、般・特新規申請、5年更新、変更届、経審申請、入札参加資格申請の代行・サポート
- 社会保険労務士:労務管理、社会保険手続、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入確認
- 税理士:建設業特有の工事進行基準・原価計算、決算変更届に係る財務諸表の作成
- 本人:国家資格試験の受験・取得
- 専門業者:技術者の継続教育、CCUS(建設キャリアアップシステム)の登録
建設業29業種の選定相談から、新規許可・業種追加・更新・経審・入札参加資格まで、行政書士法人Treeが一括でサポートします。専任技術者の資格・実務経験の充足確認や、複数業種の同時申請、許可の一本化もお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 29業種すべて一度に取得できますか.
A. 理論上は可能ですが、業種ごとに専任技術者要件を満たす必要があり、現実的ではありません. 一般的には主要数業種のみを取得し、必要に応じて業種追加申請で広げていくのが実務です.
Q. 建築一式の許可があれば、リフォーム工事も全部請け負えますか.
A. いいえ. 内装仕上・塗装・防水・電気等のリフォーム工事を500万円以上で請け負うには、別途その専門工事の許可が必要です. 「一式があれば何でもできる」は誤解です.
Q. 解体工事はとび・土工に含まれますか.
A. 2016年6月1日施行の改正により、解体工事業は独立した29番目の業種となりました. 解体工事を500万円以上で請け負うには解体工事業の許可が必要です(経過措置は終了済み).
Q. 一式工事の許可だけで専門工事は下請に出せますか.
A. 一式工事として総合的な企画・指導・調整を行う中で専門工事を下請に出すことは可能です. ただし、専門工事のみを単独で請け負う場合(500万円以上)は、その専門工事の許可が必要です.
Q. 専任技術者は他の業種と兼任できますか.
A. 同一営業所内で複数業種の専任技術者を兼任することは可能です. ただし、各業種の要件をすべて満たす資格・実務経験を有する必要があります. 営業所間の兼任は原則できません.
Q. 業種追加の許可手数料はいくらですか.
A. 業種追加は1業種につき5万円(都道府県知事許可・国土交通大臣許可とも)です. 新規申請(9万円または15万円)より低額です. 既存許可の一本化を視野に入れて、更新時期に合わせた段階的追加が実務的です.
Q. 実務経験10年は他社での経験も合算できますか.
A. はい. 他社での実務経験も、実務経験証明書(過去の勤務先からの証明)と裏付け資料(請負契約書等)があれば合算可能です. 退職時に早めに証明書を取得しておくことが重要です.
Q. 一般建設業から特定建設業への切替はどうしますか.
A. 般・特新規申請として、特定建設業の追加要件(1級国家資格者または指導監督的実務経験、財産的基礎の強化)を満たしたうえで申請します. 元請として4,500万円以上(建築一式7,000万円以上)の下請契約を締結する場合に必要です(金額基準は2025年2月以降5,000万円・建築一式8,000万円。前後ご確認ください).
まとめ
建設業許可は建設業法第3条に基づき29業種(一式工事2業種+専門工事27業種)に細分され、業種ごとに営業所に置く専任技術者の要件(国家資格・実務経験・指定学科卒業+一定年数)、施工対象、認められる国家資格、経審のY点・P点の計算根拠が異なります。複数業種で工事を請け負う場合は、業種ごとの許可取得が必要です(500万円未満の軽微な工事を除く)。
一式工事は総合的な企画・指導・調整を伴う大規模工事、専門工事は個別の専門技術を要する工事という性質の違いがあります。「建築一式があればリフォームも全部OK」「とび・土工で解体工事も請け負える」といった誤解は無許可営業のリスクとなるため、業種選定の段階で正確に確認することが重要です。
業種選定にあたっては、主要施工対象・技術者の有資格者確保状況・将来計画・取引先要件・経審入札戦略の5軸で判断します。業種追加申請は新規より手数料が低く(1業種5万円)、更新時期に合わせた一本化により事務負担を抑えられます。一般建設業と特定建設業の区分、専任技術者の常勤性、変更届の期限管理など、許可維持のための継続的対応も重要です。
建設業許可の新規申請、業種追加、般・特新規、5年更新、経審、入札参加資格まで、行政書士法人Treeにご相談ください。専任技術者要件のセカンドオピニオン、複数業種の同時申請、CCUS登録支援、変更届の期限管理代行も承ります。資格試験は本人、税務は税理士、労務管理は社会保険労務士をご紹介します。
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※ 本記事は執筆時点の法令(建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則等)・国土交通省ガイドライン・各都道府県の運用実務に基づき作成しています。業種別の専任技術者要件・国家資格対応・指定学科は改正・運用変更により細部が異なる場合があります。最新情報のご確認と専門家へのご相談をお願いいたします。


