経理担当者が会社のお金を使い込んでいた、帳簿や領収書が改ざんされていた——こうした事案で刑事責任を求める場合、警察署長宛ての告訴状を作成して提出することが、処罰意思を明確に示す有力な選択肢になります。経理担当者の使い込みは業務上横領罪(刑法253条/10年以下の拘禁刑)に当たり得る重い犯罪ですが、警察に「単なる社内トラブル」「民事の問題」と受け取られると受理されないことが少なくありません。受理の鍵を握るのが、構成要件に沿った事実の整理と、帳簿・通帳などによる立証です。本記事では、行政書士の立場から、経理担当横領事案の告訴状作成と立証の実務ポイントを解説します。当事務所は事実証明書類としての告訴状(警察署長宛て)の作成をサポートします。
目次
経理担当者の使い込みは「業務上横領罪」に当たる
会社の現金・預金の管理を任されていた経理担当者が、その立場を利用してお金を私的に流用した場合、業務上横領罪(刑法253条)が成立し得ます。法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めはありません(2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」へ統一されました)。単純横領罪(刑法252条・5年以下の拘禁刑)より重く扱われるのは、業務として反復継続的に他人の財物を預かる地位を悪用した点が悪質と評価されるためです。
業務上横領罪の主な構成要件は、次のとおりです。これらを告訴事実の中で具体的に示せるかが、受理の分かれ目になります。
- 業務上の占有:職務として会社の金銭・通帳・印鑑などを管理・保管していたこと
- 他人(会社)の物:流用された金銭が会社に帰属するものであること
- 横領行為:自己のために費消・着服・私的口座への送金などをしたこと
- 不法領得の意思:返す意思なく自分のものとして処分する意思があったこと
なお、横領罪は原則として親告罪ではありません。ただし犯人と被害者との間に親族関係がある場合は、刑法255条が準用する刑法244条により取扱いが変わります。配偶者・直系血族・同居親族との間では刑が免除され、その他の親族との間では告訴がなければ公訴を提起できません。後者の場合、告訴は犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条1項)。会社が被害者となる通常の横領事案では問題になりにくいものの、個人事業や親族経営では初動で確認が必要です。
帳簿改ざんが伴う事案の特徴と関連する罪
経理担当者の横領は、発覚を遅らせるために帳簿の改ざんや領収書の偽造・水増しを伴うことが多いのが特徴です。たとえば、架空の支払先を計上する、領収書の金額を書き換える、入出金記録の辻褄を会計帳簿側で合わせる、といった手口です。
受け取った領収書の数字を書き換えるなど、他人名義の文書を改変する行為は有印私文書変造罪(刑法159条2項/3月以上5年以下の拘禁刑)などにも該当し得ます。横領と文書の罪が併存する事案では、告訴事実をどの罪で構成するかの整理が必要になります。罪名の選択や複数罪の評価といった法的判断が問題となる場面では、当事務所は提携する弁護士と連携してサポートします。
立証の観点からは、帳簿が改ざんされているからこそ「帳簿と客観的記録のズレ」自体が有力な証拠になります。会社が保有する通帳の入出金履歴と、経理担当者が作成した帳簿の記載を突き合わせ、説明のつかない出金や不自然な送金先を特定していく作業が、立証の中心になります。
業務上横領の告訴状で受理されやすくする証拠と立証方法
告訴状は、警察が「捜査に値する具体的な犯罪事実がある」と判断できる内容でなければ受理されにくいものです。経理担当横領事案で集めておきたい主な証拠は次のとおりです。
- 会社の預金通帳・取引明細(不正な出金・送金の記録)
- 会計帳簿・仕訳データ(改ざん前後の比較ができると有力)
- 領収書・請求書・経費精算書(水増しや架空計上の裏付け)
- 振込先口座の名義(担当者本人や近親者名義への送金など)
- 担当者の職務内容がわかる資料(業務分掌・権限を示すもの)
- 本人の自認・弁明の記録(メール、面談メモ等)
特に注意したいのは、領収書や引落明細だけでは横領の証明として不十分とされやすい点です。私的流用を立証するには、購入された物品やサービスが業務と無関係であることまで具体的に示す必要があります。「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という5W1Hで事実を特定し、各事実にどの証拠が対応するかを立証方法として箇条書きで整理することが、受理への近道です。
告訴状の構成と提出先
告訴状には、決まった様式はありませんが、実務上は次の項目を備えるのが一般的です。
- 表題・作成年月日
- 宛先:管轄の警察署長宛てとするのが通常です
- 告訴人:会社(代表者)や被害者の住所・氏名等
- 被告訴人:経理担当者の氏名・住所等(特定できない場合はその旨)
- 告訴の趣旨:成立する罪名と、処罰を求める意思の表明
- 告訴事実:5W1Hに沿った具体的な犯罪事実(推測や評価を交えず事実のみ)
- 立証方法:提出する証拠と、それが何を裏付けるかの説明
提出先は、被害が生じた場所や会社所在地を管轄する警察署です。告訴が受理されると、警察は捜査を開始することになります。事実関係が複雑な横領事案では、警察が証拠を精査しやすいよう、時系列表や金額の集計を添えると効果的です。当事務所は、これらの事実証明書類の整備を含めて告訴状の作成をお手伝いします。なお、検察庁宛ての告訴状の作成は当事務所では取り扱っておらず、必要な場合は提携の弁護士・司法書士と連携してご案内します。警察で告訴状が受理されない場合の対応や、検察官の不起訴処分に対する検察審査会への申立てが問題となる場合は、手続の性質に応じて提携の弁護士・司法書士と連携してご案内します。
横領の公訴時効に注意
業務上横領罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。長期間にわたる使い込みでは、古い分から時効にかかっていく点に注意が必要です。発覚した時点でできるだけ早く事実を保全し、行動することが、刑事責任の追及と被害回復の両面で重要になります。なお、横領した金銭の返還請求(民事)については、必要に応じて提携弁護士をご案内します。
経理担当者の横領・帳簿改ざんは、構成要件と証拠の整理が受理の成否を大きく左右します。「どこから手をつければよいかわからない」「証拠は集めたが告訴状の形にできない」という段階でも、行政書士法人Treeが警察署長宛て告訴状の作成と事実証明書類の整備をサポートします。弁護士・司法書士との連携が必要な場面もあわせてご案内します。詳しくは告訴状作成サポートのページをご覧ください。料金は、告訴状作成のスタンダードプランが38,280円(税込)、原案を1営業日以内で仕上げるお急ぎ特急プランが49,280円(税込)です。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
経理担当者の使い込みは業務上横領罪(刑法253条・10年以下の拘禁刑)に当たり得る重大な犯罪で、公訴時効は7年です。帳簿や領収書の改ざんを伴う場合は有印私文書変造罪等が併存することもあります。警察に受理される告訴状にするには、構成要件に沿って告訴事実を5W1Hで特定し、通帳・帳簿・領収書などの証拠を立証方法として整理することが不可欠です。当事務所は、警察署長宛て告訴状の作成と事実証明書類の整備をサポートし、必要に応じて弁護士・司法書士と連携します。
経理担当横領の告訴状に関するよくある質問
Q:被害届と告訴状はどちらを出すべきですか。
A:被害届は被害事実を申告するもので、告訴状は加害者の処罰を求める意思表示まで含む点が異なります。横領のように加害者がほぼ特定でき、処罰を求める意思を明確に示したい事案では、告訴状の作成が検討されます。当事務所では、警察署長宛て告訴状を作成する場合の事実関係と証拠の整理をサポートします。
Q:本人が一部を認めて返済している場合でも告訴できますか。
A:返済が始まっていても、過去に成立した横領罪が消えるわけではなく、告訴自体は可能です。ただし示談・返還の交渉や金額の算定は弁護士の業務となるため、当事務所では提携弁護士と連携してご案内します。
Q:証拠が通帳と領収書しかありませんが受理されますか。
A:それらだけでは私的流用の立証として不十分とされることがあります。購入物が業務と無関係であることや、帳簿との不整合を具体的に示す資料を補強し、立証方法として整理することで受理の可能性が高まります。当事務所が証拠の整理段階からサポートします。
Q:告訴状を作成すれば必ず受理されますか。
A:受理するかは警察の判断であり、確約はできません。だからこそ、構成要件を満たす事実の特定と立証方法の整理が重要です。万一、正当な理由なく受理されない場合の公安委員会への苦情申立書については、当事務所でご相談に対応します。なお、検察審査会への審査申立ては検察官の不起訴処分に対する不服申立ての制度であり、告訴が受理されなかった場合の手続ではないため、必要な場合は提携の弁護士と連携してご案内します。
Q:横領が数年前から続いていた場合、すべて告訴できますか。
A:業務上横領罪の公訴時効は7年です。古い行為から順に時効にかかるため、判明している被害を時系列で整理し、早期に行動することが大切です。発覚した段階でできるだけ早くご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。