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ねずみ講の告発状|無限連鎖講の防止に関する法律・刑事罰と出資法・特商法との区別

更新: 約27分で読めます

「知人から誘われて登録料を払ったが、商品らしい商品は何もなく、後から入った人を紹介すれば配当が入ると説明された」「上位の会員だけが利益を得ていて、自分より後に入った人が明らかに損をしている」——こうした相談は、いわゆるねずみ講の疑いがある事案です。ねずみ講は法律上「無限連鎖講」と呼ばれ、無限連鎖講の防止に関する法律(昭和53年法律第101号)によって開設・運営から勧誘に至るまで全面的に禁止され、刑事罰の対象とされています。

もっとも、実務でこの種の事案に接すると、最初につまずくのが「これは本当にねずみ講なのか、それとも合法な範囲のマルチ商法(連鎖販売取引)なのか」という入口の判断です。両者は外形が似ているため混同されがちですが、適用される法律も、禁止のされ方も、使える救済手段もまったく異なります。さらに、集めた金銭の受入れ方によっては出資法違反が、勧誘の際の説明内容によっては詐欺罪が問題になることもあり、どの法律の違反として構成するかによって告発状の書き方は大きく変わります。

この記事では、無限連鎖講の防止に関する法律の条文を出発点に、禁止行為と刑事罰の内容、特定商取引法が規制する連鎖販売取引との区別、出資法・詐欺罪との関係、そして警察署長宛ての告発状を作成するにあたって整理すべき事実と証拠を、実務目線で解説します。

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ねずみ講(無限連鎖講)とは何か──法律上の定義

日常語の「ねずみ講」に対応する法律用語が「無限連鎖講」です。根拠となる法律は、無限連鎖講の防止に関する法律(昭和53年法律第101号)で、「ネズミ講防止法」という略称でも呼ばれます。わずか7か条の短い法律ですが、規制の射程は明確です。

立法の目的──「終局において破たんすべき性質のもの」

同法第1条は、この法律の目的を次のように定めています。無限連鎖講が「終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものである」ことにかんがみ、これに関与する行為を禁止するとともに、防止に関する調査および啓もう活動について規定を設けることにより、「無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止すること」を目的とする、というものです。

ここで押さえておきたいのは、立法者が無限連鎖講を「うまく運営すれば成り立つが、運営が悪いと破たんするもの」とは捉えていない点です。数学的に必ず破たんする構造そのものを害悪とみて、結果として被害が出たかどうかにかかわらず、関与行為を禁止するという建て付けになっています。この視点は、告発状で「なぜこの組織が違法なのか」を説明するときの骨格になります。

第2条の定義を要素に分解する

同法第2条は「無限連鎖講」を定義しています。条文は一文が非常に長いため、要素に分けて読むと構造がつかめます。定義の中心は、次の各要素を満たす「金品の配当組織」です。

  • 金品を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして組織されていること(なお、ここでいう「金品」には、財産権を表彰する証券または証書が含まれると条文上明記されています)
  • 先に加入した者が先順位者となり、これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもって増加する後続の加入者が、それぞれの段階に応じた後順位者となること
  • 順次、先順位者が後順位者の出えんする金品から、自己の出えんした金品の価額または数量を上回る価額または数量の金品を受領することを内容とすること

実務上とくに重要なのは3番目の要素です。先順位者が受け取る原資が「後順位者の出えんする金品」であり、しかもその額が「自己の出えん額を上回る」という点が明示されています。新規加入者が払った金銭がそのまま既存加入者への配当原資になっているという資金の流れこそが、無限連鎖講の核心です。外部から利益を生む事業活動があり、その収益が配当の原資になっているのであれば、この要素は満たされません。逆に、事業らしい実体がなく、新規加入者の入金だけが原資になっているのであれば、名目が何であれこの要素に該当し得ます。

また「二以上の倍率をもって増加する」という要素は、いわゆるピラミッド構造を指しています。1人が1人しか勧誘しない一対一の連鎖ではなく、各段階で人数が倍々に増えていく構造であることが前提とされています。

施行と改正の経緯

同法は昭和53年11月11日に公布され、附則により「公布の日から起算して六月を経過した日」から施行されました。その後、昭和63年5月2日法律第24号による改正が行われ、こちらは附則により「公布の日から起算して三月を経過した日」から施行されています。さらに、後述するとおり令和4年6月17日法律第68号により罰則の刑名が整理され、この部分は令和7年(2025年)6月1日から施行されています。

無限連鎖講防止法が禁止する行為と刑事罰

禁止規定と罰則規定は分かれて置かれており、この「ずれ」が実務上のポイントになります。

第3条──開設・運営・加入・勧誘・助長のすべてが禁止

第3条は「何人も、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為をしてはならない」と定めます。主語が「何人も」であること、そして禁止の対象が開設・運営・加入・勧誘・助長の5類型に及ぶことが特徴です。単に加入するだけでも、また他人の行為を助長するだけでも、この条文上は禁止行為に当たります。

第5条〜第7条──三段階の法定刑

罰則は第5条から第7条までの3か条で、行為の悪質性に応じて段階的に定められています。現行法の法定刑は次のとおりです。

条文 行為 法定刑
第5条 無限連鎖講を開設し、または運営した者 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科
第6条 業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
第7条 無限連鎖講に加入することを勧誘した者 20万円以下の罰金

第5条だけが併科(拘禁刑と罰金の両方を科すこと)を認めており、組織の中枢にいる者を重く処罰する構造です。第6条と第7条はいずれも勧誘行為ですが、「業として」行ったかどうかで法定刑が大きく変わります。反復継続の意思をもって勧誘していた場合は第6条、一回限りの誘いにとどまる場合は第7条という整理になり、告発状では勧誘の回数・期間・態様を具体的に示すことが、この区別に直結します。

「禁止されているが処罰規定がない行為」がある

ここが見落とされやすい点です。第3条は加入行為そのものと助長行為も禁止していますが、第5条から第7条までの罰則には、単なる「加入」と「助長」に対応する処罰規定が置かれていません。つまり、これらは法律上禁止されてはいるものの、無限連鎖講防止法違反として直接処罰の対象にはならないという建て付けです。

この点は、被害を受けた側が「自分も勧誘してしまった」「自分も加入していた」と負い目を感じて相談をためらう場面で、事実関係を整理するうえでの前提になります。もっとも、勧誘をしていれば第6条または第7条の問題は残りますし、態様によっては詐欺罪など他の犯罪の共犯として評価される可能性もあるため、自己の関与の内容を正確に整理しておくことが欠かせません。

両罰規定が置かれていない

無限連鎖講防止法には、両罰規定(法人の従業者等が違反した場合に法人自体にも罰金刑を科す規定)が置かれていません。同法は全7か条で構成されており、法人処罰の条文は存在しません。したがって、同法違反として立件される対象は、開設・運営・勧誘に関与した自然人ということになります。

これは、後述する特定商取引法や出資法とは大きく異なる点です。特定商取引法は第74条に、出資法は第9条に、それぞれ両罰規定を置いています。運営主体が法人形態をとっている事案では、どの法律の違反として構成するかによって、法人に対する責任追及の可否が変わってくることになります。

拘禁刑への移行と公訴時効──告発を検討するときの時間軸

懲役・禁錮から拘禁刑へ

刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)により、無限連鎖講防止法の罰則も「懲役」から「拘禁刑」に改められました。この改正は令和7年(2025年)6月1日に施行されています。現在の第5条は「三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」、第6条は「一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する」という文言です。

インターネット上には「三年以下の懲役」と記載したままの解説が数多く残っています。告発状で条文を引用する際は、現行の条文どおり「拘禁刑」と記載するのが正確です。

公訴時効は3年──時間との勝負になりやすい

刑事訴訟法第250条第2項第6号は、長期5年未満の拘禁刑または罰金に当たる罪の公訴時効を3年と定めています。無限連鎖講防止法の第5条(長期3年の拘禁刑)、第6条(長期1年の拘禁刑)、第7条(罰金のみ)はいずれもこれに該当するため、公訴時効はいずれも3年ということになります。

そして刑事訴訟法第253条第1項は「時効は、犯罪行為が終つた時から進行する」と定めています。組織の運営が継続している間は運営行為も継続していると評価される余地がありますが、勧誘行為については個々の勧誘が終わった時点から時効が進行することになります。被害に気づいてから相談までに時間が経っている事案では、時効の見通しを早い段階で意識しておく必要があります。

なお、同じ事実について詐欺罪(刑法第246条)が成立する場合、詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、刑事訴訟法第250条第2項第4号(長期15年未満の拘禁刑に当たる罪)に該当するため、公訴時効は7年となります。無限連鎖講防止法違反としては時効が問題になる事案でも、詐欺罪としては時効内ということがあり得ます。公訴時効の考え方については、保険金詐欺の告訴状・告発状|虚偽事故・自損自演・診断書偽造への対応と公訴時効でも整理しています。

ねずみ講と連鎖販売取引(マルチ商法)はどこが違うか

実務上もっとも判断に迷うのがこの区別です。ねずみ講は全面的に禁止された犯罪ですが、いわゆるマルチ商法──法律上の「連鎖販売取引」──は、規制に従う限り事業として行うこと自体は禁止されていません。

連鎖販売取引の定義(特定商取引法第33条)

特定商取引に関する法律第33条第1項は「連鎖販売業」を定義しています。要素を整理すると、商品の販売または有償の役務提供の事業であって、再販売・受託販売・販売のあっせん等を行う者を特定利益を収受し得ることをもって誘引し、その者と特定負担を伴う取引をするもの、ということになります。

「特定利益」とは、他の加盟者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益をいい、「特定負担」とは、商品の購入・役務の対価の支払い・取引料の提供をいいます。取引料には、同条第3項により「取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず」提供される金品が含まれます。消費者庁は連鎖販売取引を「個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行く商品(権利)・役務の取引のこと」と説明しています。

決定的な違いは「配当組織か、販売事業か」

両者を分ける最大のポイントは、組織の実体が金品の配当組織なのか、商品・役務の販売事業なのかという点にあります。

無限連鎖講防止法第2条の定義は「金品の配当組織」を対象とし、先順位者が後順位者の出えんした金品から自己の出えん額を上回る金品を受領する仕組みを要件としています。これに対し連鎖販売取引は、商品の販売または役務の提供という事業が存在し、その販売組織を連鎖的に拡大する取引形態を対象としています。

したがって、商品や役務が名目上存在するというだけでは区別はつきません。判断は、その組織が無限連鎖講防止法第2条の各要素を満たす金品の配当組織といえるかどうかによって、個別具体的に行われることになります。実務では、次のような事情が事実認定の手がかりになります。

  • 商品や役務に、対価に見合う実体があるか(受け取っていない、開封もされない、転売先がないなど)
  • 収入の大半が商品の販売差益ではなく、新規加入者の登録料・入会金から支払われていないか
  • 組織外の一般消費者への販売が実際に行われているか、それとも会員相互の購入だけで完結しているか
  • 報酬の計算が、販売実績ではなく下位に付けた人数や階層のみによって決まっていないか

「商品があるから合法」という説明を鵜呑みにしない

勧誘の場面では、「うちは商品を扱っているからねずみ講ではない」「専門家のチェックを受けている」「行政に届出をしているので問題ない」といった説明がなされることがあります。しかし、これらはいずれも適法性を担保するものではありません。

まず、無限連鎖講防止法には、許可・登録・届出といった制度がそもそも置かれていません。同法は全7か条で構成され、目的・定義・禁止・国および地方公共団体の任務・罰則を定めるのみで、事業者を登録して適法に営ませるという発想の法律ではありません。無限連鎖講は例外なく禁止されているのですから、「届出をすれば適法になる無限連鎖講」というものは存在しません。したがって「届出済みだから安心」という説明は、それ自体が説明として成り立っていないことになります。

次に、特定商取引法についても、同法は連鎖販売取引を行う事業者に対して氏名等の明示義務や書面交付義務といった行為規制と民事ルールを課す法律であって、事業者に適法性のお墨付きを与える仕組みではありません。仮に事業者が特定商取引法上の規制を形式的に守っていたとしても、組織の実体が金品の配当組織であれば、無限連鎖講防止法の適用が排除されるわけではありません。

また、「商品を扱っている」という点についても、前述のとおり判断は実体によります。対価に見合う実体のない商品を形式的に介在させただけでは、金品の配当組織であるという評価を免れる根拠にはなりません。勧誘の場で示された説明は、そのまま信じるのではなく、資料として保存しておくことが重要です。後に事実関係を整理する段階で、どのような説明がなされたかを示す証拠になります。

連鎖販売取引に対する特定商取引法の規制

連鎖販売取引に該当する場合、特定商取引法は事業者に対して次のような規制を課しています。告発状の作成にあたっても、どの義務に違反しているかを整理しておくと、事実の構成が明確になります。

  • 氏名等の明示義務(第33条の2)──勧誘に先立ち、統括者・勧誘者・一般連鎖販売業者の氏名または名称、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨、商品または役務の種類を明らかにしなければなりません。
  • 禁止行為(第34条)──商品の種類・性能・品質、特定負担に関する事項、契約の解除に関する事項、特定利益に関する事項などについて、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為が禁止されています。また、契約を締結させ、または解除を妨げるために人を威迫して困惑させる行為(同条第3項)、勧誘目的を告げずに営業所等以外の場所で呼び止めて同行させるなどの方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において勧誘する行為(同条第4項)も禁止されています。
  • 広告表示義務・誇大広告の禁止(第35条・第36条)──広告には商品または役務の種類、特定負担に関する事項、特定利益について広告するときはその計算の方法などを表示しなければならず、著しく事実に相違する表示等は禁止されます。
  • 書面交付義務(第37条)──契約締結前に連鎖販売業の概要を記載した書面(概要書面)を、契約締結後は遅滞なく契約内容を明らかにする書面(契約書面)を交付しなければなりません。

民事ルールとしては、クーリング・オフ(第40条第1項)があります。連鎖販売加入者は、第37条第2項の書面(契約書面)を受領した日から起算して20日を経過するまで、書面または電磁的記録により契約を解除することができます。特定負担が再販売する商品の購入についてのものである場合において、その商品の最初の引渡しを受けた日が書面受領日より後であるときは、引渡しを受けた日が起算日となります。また、事業者が解除に関する事項について不実を告げたり威迫して困惑させたりしたために期間内に解除できなかった場合には、あらためて解除できる旨を記載した書面を受領した日から20日を経過するまで解除できるとされています。

さらに中途解約・返品ルール(第40条の2)があり、20日の経過後も将来に向かって契約を解除でき、契約締結から1年を経過していない加入者については、引渡しを受けた日から90日を経過しておらず、再販売も使用・消費もしていない商品などについて、商品販売契約の解除が可能です。このほか、不実告知・故意の事実不告知によって誤認して契約した場合の意思表示の取消し(第40条の3)も定められています。

刑事罰の面では、第34条の禁止行為に違反した場合、第70条第1号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)が定められています。加えて第74条第1項第2号の両罰規定により、法人に対して1億円以下の罰金刑が科され得ます。特定商取引法違反を含む事案の告発については、モニター商法の告訴状|謝礼金詐欺・特商法クーリングオフ・刑法246条を解説リフォーム詐欺の告訴状|訪問販売・無料点検商法・特定商取引法違反・刑法246条詐欺罪・クーリングオフ妨害解消後の被害回復もあわせて参考にしてください。

出資法違反・詐欺罪との関係

ねずみ講が疑われる事案では、無限連鎖講防止法だけでなく、出資法や刑法の詐欺罪が同時に問題になることが少なくありません。むしろ、資金の集め方や説明内容によっては、そちらのほうが構成しやすい場合もあります。

出資法第1条・第2条

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号)は、次の2つの規定が問題になりやすい条文です。

第1条(出資金の受入の制限)は「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない」と定めています。いわゆる元本保証をうたった出資金集めを禁止する規定です。

第2条(預り金の禁止)は、業として預り金をすることにつき他の法律に特別の規定のある者を除き、何人も業として預り金をしてはならないと定めます。同条第2項は「預り金」を、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであって、預金・貯金・定期積金の受入れ、または社債・借入金その他名義を問わずこれらと同様の経済的性質を有するものと定義しています。

これらに違反した場合、第8条第3項第1号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科と定められています。また第9条第1項第3号の両罰規定により、法人にも罰金刑が科され得ます。ただし第8条第4項は、同条第3項のうち第1条および第3条に係る部分について「刑法に正条がある場合には、適用しない」と定めており、詐欺罪など刑法上の犯罪が成立する場合との調整が図られています。

出資法違反を含む告発の実務については、ヤミ金(闇金)の告訴・告発|貸金業法・出資法違反を行政書士が解説でも扱っています。

詐欺罪(刑法第246条)

刑法第246条第1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定め、第2項は同じ方法により財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も同様とすると定めています。

無限連鎖講の事案で詐欺罪が問題になるのは、たとえば「必ず配当が出る」「元本は保証される」といった、そもそも実現不可能な内容を告げて金銭を交付させたと評価できる場合です。第1条が述べるとおり無限連鎖講は構造上必ず破たんするものですから、運営者がその構造を認識しながら「破たんしない」旨を告げていたのであれば、欺罔行為として構成する余地があります。

もっとも、詐欺罪の成立には欺罔行為・錯誤・交付行為・財産上の損害という各要素と、行為時の故意(だます意思)の立証が必要であり、ハードルは低くありません。どの法律の違反として構成するかは、手元にある証拠から何を無理なく立証できるかによって決まります。投資名目の事案における告訴・告発の組み立てについては、投資セミナー詐欺の告訴状|詐欺罪・金商法違反(無登録金融商品取引業)・出資法違反の証拠と書き方および投資詐欺の告訴状の書き方|刑事告訴の手続きと必要な記載事項を解説もあわせてご覧ください。

警察はどの枠組みで取り締まっているか

警察庁生活安全局が毎年公表している「生活経済事犯の検挙状況等について」では、無限連鎖講防止法違反は、出資法違反(預り金の禁止等)、金融商品取引法違反、預託法違反などとともに「利殖勧誘事犯」という類型に整理されています。最新の令和8年3月公表資料によれば、令和7年中の利殖勧誘事犯の検挙事件数は40事件で前年より9事件(18.4%)減少し、検挙人員は97人で前年より65人(40.1%)減少しました。なお、令和5年中は43事件・127人でした。

このうち令和6年4月公表の資料(令和5年分)には、無限連鎖講防止法違反の検挙事例が掲載されています。新電力電池の無償貸与および配当金受取名目で会員登録させ、新たに後順位者を勧誘させるなどして金銭配当組織を構築し、全国各地でセミナーを開催するなどして39都道府県の約1,000人を会員登録させ、約1,100万円を集めて無限連鎖講を運営したとして、令和5年2月に2人が無限連鎖講防止法違反(無限連鎖講の禁止)で検挙されたという事例です。「無償貸与」「配当金」といった名目が付されていても、実体が金品の配当組織であれば同法違反として立件され得ることを示す事例といえます。

告訴と告発の違い──ねずみ講事案で「告発」となる理由

刑事訴訟法上の位置づけ

刑事訴訟法第230条は「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる」と定めています。告訴ができるのは、原則として犯罪の被害者本人です(このほか第231条・第232条に法定代理人等による告訴の規定があります)。

これに対し第239条第1項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と定めています。告発は被害者であることを要件とせず、犯罪があると考える人であれば誰でも行うことができます。なお同条第2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」として、公務員に告発義務を課しています。

なぜねずみ講では「告発」が基本になるのか

無限連鎖講防止法は、第1条で「無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止すること」を目的として掲げており、加入者個人の被害回復を直接の目的とする規定は置かれていません。保護しようとしているのが主として社会的な法益であるという構造から、同法違反については個人が「犯罪により害を被つた者」として告訴する形をとりにくく、実務上は告発の形式をとることが一般的です。

一方で、同じ事実関係について詐欺罪が問題になる場合には、金銭をだまし取られた個人は詐欺罪の被害者ですから、詐欺罪については告訴が可能です。実務では、無限連鎖講防止法違反については告発、詐欺罪については告訴という形で整理することもあれば、事実関係を一体として告発状にまとめることもあります。どちらの形式を選ぶかは、立証できる事実と、誰が申告の主体となるかによって決まります。

なお、無限連鎖講防止法には親告罪とする規定は置かれていないため、同法違反は非親告罪です。したがって、告訴期間を定めた刑事訴訟法第235条(親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月)の制約は及びません。告訴と告発の基本的な違いについては、告訴と告発の違いとは?誰が・どんな場合に提出できるかを解説で詳しく解説しています。

告発状の提出先と受理までの手続

提出先は検察官または司法警察員

刑事訴訟法第241条第1項は「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない」と定めています。同条第2項は、口頭による告訴・告発を受けたときは調書を作らなければならないとしています。

当事務所が作成する告発状は、警察署長(司法警察員)宛てのものに限らせていただいています。事件の端緒を最初に把握し、初動の捜査を行うのは警察署であることに加え、検察庁に提出する書類の作成は司法書士の業務とされており(司法書士法第3条第1項第4号)、行政書士が取り扱うことはできないためです。管轄については、犯罪捜査規範第63条第1項が「司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない」と定めています。また同条第2項は、司法巡査たる警察官が告訴・告発を受けたときは直ちに司法警察員たる警察官に移さなければならないとしています。

受理後の流れ

書面による告発が受理された後の流れは、次のとおりです。

  • 補充の求め──犯罪捜査規範第65条は、書面による告訴・告発を受けた場合でも、その趣旨が不明であるとき、または本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならないと定めています。趣旨が不明確な書面は、そのままでは手続が前に進まないということです。
  • 捜査──犯罪捜査規範第67条は、告訴・告発があった事件については特にすみやかに捜査を行うよう努めるとともに、ぶ告・中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか、当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうかに注意しなければならないと定めています。
  • 検察官への送付──刑事訴訟法第242条は「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」と定めています。
  • 処分の通知──刑事訴訟法第260条は、検察官は告訴・告発のあった事件について公訴を提起し、または提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人・告発人に通知しなければならないと定めています。

ここから分かるのは、告発状は「出せば終わり」の書面ではないということです。犯罪事実が特定され、それを裏づける資料が添えられていて初めて、捜査機関が動きやすい書面になります。

書面の具体性が手続の進み方を左右する

犯罪捜査規範第65条が「趣旨が不明であるとき」に補充を求めることとしている以上、書面の具体性は手続の進み方に直結します。また同規範第67条が、ぶ告・中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかに注意すべきとしていることからも、告発状に求められているのが「被害感情の表明」ではなく「事実の特定」であることが読み取れます。

実務上、書面を組み立てるときに意識すべきなのは次の3点です。

  • 犯罪事実が特定されていること──いつ・どこで・誰が・何をしたのかが、日時、場所、行為者、行為態様のレベルで記載されているか。「長期間にわたり多数の者を勧誘した」といった記述だけでは、犯罪事実の特定として十分とはいえません。少なくとも、自分が直接体験した勧誘については、日時と場所と説明内容を具体的に書けるはずです。
  • 該当する条文が示されていること──無限連鎖講防止法のどの条文に該当するのか(開設・運営であれば第5条、業としての勧誘であれば第6条、勧誘であれば第7条)を明示し、その要件に事実がどう対応するのかを述べているか。詐欺罪や出資法違反を併せて構成する場合も同様です。
  • 事実と評価が書き分けられていること──「悪質である」「許せない」といった評価と、確認できた事実とが混在していると、どこまでが事実の申告なのかが読み取りにくくなります。伝聞にとどまる事項については、誰から聞いた話なのかを明示し、確定的な事実として記載しないことが重要です。

なお、添付する疎明資料は、本文の記載と対応づけておくと参照しやすくなります。入金の事実を述べる箇所には振込明細を、勧誘の説明内容を述べる箇所にはメッセージの履歴やパンフレットを、それぞれ対応させて整理しておく、という考え方です。

告発状に整理すべき事実と証拠

無限連鎖講防止法違反として告発する場合、書面の骨格は第2条の定義の各要素に事実を対応させることにあります。抽象的に「ねずみ講だった」と書くのではなく、なぜ条文の要件を満たすのかを事実で示す必要があります。

定義の要素に対応させて事実を組み立てる

整理の柱となるのは、次の各点です。

  • 組織の構造──加入の順序によって先順位者・後順位者が定まる仕組みになっていること、各段階で二以上の倍率をもって加入者が増加する設計になっていることが、規約・報酬プラン・組織図などから読み取れるか。
  • 金品の出えん──加入に際して、登録料・入会金・購入代金などの名目でいくら支払ったか。支払日・金額・支払方法・相手方口座を、振込明細や領収書で特定できるか。
  • 配当の原資──先順位者が受け取る金品が、後順位者の出えんした金品から支払われる仕組みになっているか。外部の事業収益ではなく新規加入者の入金が原資になっていることを示す資料があるか。
  • 出えん額を上回る受領──先順位者が自己の出えん額を上回る金品を受領する設計になっていることが、報酬プランや説明資料から読み取れるか。
  • 勧誘行為の主体と態様──誰が、いつ、どこで、どのような説明をして勧誘したか。反復継続の有無(第6条と第7条の区別に直結します)。

集めておきたい客観的資料

捜査機関が動きやすいのは、当事者の記憶ではなく客観的な資料が揃っている事案です。ねずみ講事案では、次のような資料が中心になります。

  • 勧誘時に配布・提示された資料(パンフレット、報酬プラン表、組織図、スライド資料など)
  • 会員規約、契約書面、概要書面、申込書の控え
  • 入金を裏づける資料(振込明細、通帳の記帳、送金アプリの履歴、領収書)
  • 勧誘者とのやり取りが残る記録(SNSやメッセージアプリの履歴、電子メール、通話録音)
  • セミナーや説明会の開催案内、会場・日時が分かる資料
  • 配当の受領・停止に関する記録(入金履歴、運営側からの通知)
  • 運営主体を特定する資料(法人の商業登記事項証明書、ウェブサイトの表示、代表者名や所在地の記載)

とくにメッセージアプリの履歴は、アカウント削除やトーク削除によって失われやすい証拠です。早い段階でスクリーンショットを取得し、日時が分かる形で保存しておくことが重要です。

自らも勧誘してしまった場合の整理

ねずみ講事案の相談では、被害者であると同時に自分も知人を誘ってしまったというケースが少なくありません。前述のとおり、加入行為自体には無限連鎖講防止法上の罰則は置かれていませんが、勧誘行為は第6条または第7条の対象となり得ます。告発状を作成する際には、自己の関与の範囲についても事実を正確に把握しておく必要があります。事実を伏せたまま作成した書面は、捜査の過程で前提が崩れ、かえって信用性を損なうことになりかねません。

虚偽の申告は処罰される

刑法第172条は「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する」と定めています(虚偽告訴等)。推測や伝聞を確定的な事実として書くこと、証拠のない事実を断定的に記載することは避けなければなりません。確認できた事実と、伝聞にとどまる事項とを書き分けることが、書面の信用性を確保するうえでも欠かせません。

刑事手続と被害回復の関係、そして相談先

告発は「処罰を求める手続」であり、返金手続ではない

ここは誤解が生じやすい点です。刑事告発は、捜査機関に犯罪事実を申告し、捜査と処罰を求める手続です。支払った金銭の返還を直接実現する手続ではありません。捜査の結果として被疑者が検挙されても、それによって自動的に返金が行われるわけではありません。

もっとも、刑事手続の中で事実関係が解明され、資料が保全されること自体は、その後の対応を検討するうえで意味を持ちます。金銭の返還を求める交渉や訴訟といった手続は弁護士の業務範囲であり、行政書士が代理して行うことはできません。返還請求そのものを検討される場合は、弁護士にご相談ください。

連鎖販売取引に該当する場合の民事的な選択肢

対象の取引が無限連鎖講ではなく特定商取引法上の連鎖販売取引に該当する場合には、前述したクーリング・オフ(第40条)、中途解約・返品(第40条の2)、意思表示の取消し(第40条の3)といった民事ルールが用意されています。これらは期間や要件が細かく定められており、契約書面をいつ受領したか、商品の引渡しがいつだったかによって結論が変わります。該当し得ると思われる場合は、期間を徒過する前に消費生活センターへ相談することをおすすめします。

公的な相談窓口

刑事告発を検討する前後を問わず、公的な相談窓口を活用することが有効です。

  • 消費者ホットライン「188」──消費者庁が案内する全国共通の電話番号で、郵便番号を入力すると近くの市区町村・都道府県の消費生活相談窓口につながります。相談自体は無料です(通話料はかかります)。
  • 警察相談専用電話「#9110」──事件や事故に至っていない段階でも、悪質商法や不審な出来事について相談できる全国共通の窓口です。電話をかけた地域を管轄する警察本部等の相談窓口につながります。

とくに、同種の被害が複数発生している事案では、消費生活センターへの相談が集積することで実態の把握が進むことがあります。「自分ひとりの被害だから」と抱え込まず、記録を残したうえで相談することが、結果として全体の解決につながります。

告訴状・告発状の作成でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、警察署(司法警察員)に提出する告訴状・告発状について、事実関係と証拠を整理した書面の作成を承ります。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。

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まとめ

ねずみ講は法律上「無限連鎖講」と呼ばれ、無限連鎖講の防止に関する法律(昭和53年法律第101号)第2条が、金品を出えんする加入者が無限に増加するものとして、先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えん額を上回る金品を受領する金品の配当組織と定義しています。第1条は、この仕組みが終局において必ず破たんする性質のものであることを立法の前提としています。

禁止と処罰の範囲にはずれがあります。第3条は開設・運営・加入・勧誘・助長のすべてを禁止する一方、罰則は第5条(開設・運営/3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、併科あり)、第6条(業としての勧誘/1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)、第7条(勧誘/20万円以下の罰金)の3か条にとどまり、単なる加入と助長には処罰規定がありません。また同法には両罰規定が置かれていない点も、特定商取引法や出資法との大きな違いです。

ねずみ講と連鎖販売取引(マルチ商法)の区別は、名目上の商品の有無ではなく、実体が金品の配当組織かどうかで決まります。連鎖販売取引に該当する場合は、特定商取引法により氏名等の明示(第33条の2)、禁止行為(第34条)、書面交付(第37条)などが義務づけられ、契約書面の受領日から起算して20日間のクーリング・オフ(第40条)や中途解約・返品ルール(第40条の2)といった民事ルールも用意されています。

手続面では、無限連鎖講防止法違反は主として社会的法益を保護する犯罪であることから、実務上は刑事訴訟法第239条第1項に基づく告発の形をとるのが基本です。同法違反の公訴時効はいずれも3年(刑事訴訟法第250条第2項第6号)と短く、犯罪行為が終わった時から進行します。詐欺罪が併せて問題になる場合の公訴時効は7年です。時間の経過とともに選択肢が狭まるため、早い段階で事実と証拠を整理しておくことが重要です。

行政書士法人Treeでは、警察署長(司法警察員)宛ての告訴状・告発状について、無限連鎖講防止法第2条の定義の各要素に事実を対応させ、入金記録・勧誘資料・やり取りの履歴といった証拠を整理したうえで書面を作成いたします。書類作成に関するご相談は何度でも無料ですので、事実関係の整理にお悩みの段階でもお気軽にお問い合わせください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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