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営業秘密侵害の刑事告訴|不正競争防止法の罰則と構成要件を解説

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退職した従業員が顧客リストや技術情報を持ち出し、競合他社で利用していた――このような営業秘密の漏洩は、企業の競争力を根幹から揺るがす深刻な問題です。不正競争防止法では、営業秘密の侵害に対して10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金(個人の場合)という重い刑事罰が定められており、法人に対しては国内使用目的で最大5億円、海外使用目的で最大10億円の罰金が科される場合もあります。被害企業としては、警察や検察に事案を伝え、処罰意思を明確にするために告訴状を提出することが実務上有効です。この記事では、営業秘密侵害罪の構成要件から告訴状の具体的な作成手順までを解説します。

「退職者に顧客リストや技術資料を持ち出された」「元従業員が競合先で自社のノウハウを使っている」「そもそも自社情報が営業秘密に当たるのか分からない」という方は行政書士法人Treeにご相談ください。刑事告訴に必要な告訴状の作成を代行いたします。相談は何度でも無料です。

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営業秘密侵害罪とは

まず確認したい:その情報は「営業秘密」に当たるか

顧客リストや技術資料であっても、直ちに営業秘密として保護されるわけではありません。秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たしているかを、まず確認することが重要です。

営業秘密侵害罪は、不正競争防止法第21条第1項に規定される犯罪です。企業が保有する営業秘密を不正に取得・使用・開示する行為に対し、刑事罰を科すことで営業秘密の保護を図るものです。

そもそも不正競争防止法における「営業秘密」とは、同法第2条第6項において次の3つの要件をすべて満たす情報と定義されています。

要件 内容 具体例
秘密管理性 秘密として管理されていること アクセス制限の設定、「社外秘」表示の付与、施錠管理
有用性 事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること 製造ノウハウ、顧客リスト、仕入先情報、価格戦略
非公知性 公然と知られていないこと 特許公報やウェブサイトで公開されていない情報

この3要件のうち、実務上とくに争点になりやすいのが秘密管理性です。経済産業省が公表する「営業秘密管理指針」では、秘密管理性が認められるためには、情報にアクセスできる者が秘密であると認識できる程度の管理措置がとられていることが必要とされています。たとえば、パスワードによるアクセス制限や、書類への「マル秘」表示が代表的な管理措置です。逆に、誰でも自由に閲覧できる状態で放置されていた情報は、たとえ内容が有用であっても「営業秘密」に該当しない可能性があります。

なお、営業秘密侵害罪が成立するには「不正の利益を得る目的」または「保有者に損害を加える目的」(図利加害目的)が必要です。単なる過失による漏洩では刑事罰の対象にはなりません。

不正競争防止法の罰則規定

営業秘密侵害罪の法定刑は、不正競争防止法第21条および第22条に定められています。2025年6月1日の刑法改正施行により「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に統一されたため、現行法では以下のとおりです。

区分 国内使用目的 海外使用目的(重罰規定)
個人 10年以下の拘禁刑 or 2,000万円以下の罰金(併科あり) 10年以下の拘禁刑 or 3,000万円以下の罰金(併科あり)
法人 5億円以下の罰金 10億円以下の罰金

海外での使用を目的とした営業秘密侵害には、個人・法人ともに国内使用目的よりも重い罰則が設けられています。グローバル化に伴う技術情報の海外流出を抑止する趣旨です。

また、不正競争防止法第21条第1項には、営業秘密侵害の具体的な行為類型として以下のパターンが規定されています。

  • 不正取得: 詐欺・脅迫・窃取・不正アクセスなどの手段で営業秘密を取得する行為(第1号)
  • 不正取得後の使用・開示: 不正に取得した営業秘密を使用・開示する行為(第2号)
  • 在職者・元従業員による領得(在職中): 営業秘密の管理にかかる任務に背いて営業秘密を領得する行為(第3号)。退職「前」に機密データをコピー・持ち出す行為が典型例
  • 退職者による不正使用・開示(退職後): 在職中に知り得た営業秘密を退職後に使用・開示する行為(第4号〜第7号)。転職先での利用や競合他社への提供が典型例
  • 転得者による使用・開示: 不正に開示された営業秘密であることを知って取得・使用する行為(第8号・第9号)

告訴状を作成する際には、被告訴人の行為がこれらの類型のどれに該当するかを明確にすることが求められます。

告訴状の記載ポイントと作成方法

営業秘密侵害で刑事告訴を行うには、告訴状を作成して捜査機関(警察署または検察庁)に提出します。告訴状に法定の書式はありませんが、以下の手順で作成すると捜査機関に受理されやすくなります。

Step 1: 当事者情報と宛先の記載

告訴状の冒頭に「告訴状」と表題を記載し、宛先は管轄の「○○警察署長 殿」または「○○地方検察庁御中」とします。続けて、告訴人(被害企業)の法人名・代表者名・所在地・連絡先、被告訴人(加害者)の氏名・住所・所属先(判明している範囲)を記載します。被告訴人が特定できない場合は「氏名不詳」として告訴することも可能です。

Step 2: 告訴の趣旨を明記する

被告訴人の行為が不正競争防止法第21条第1項の何号に該当するかを示したうえで、「厳重に処罰されたく告訴いたします」と処罰意思を明記します。告訴の趣旨は、たとえば次のように記載します。

被告訴人の下記所為は、不正競争防止法第21条第1項第○号に該当すると思料されるので、捜査の上、厳重に処罰されたく告訴いたします。

Step 3: 告訴の事実を具体的に記述する

告訴状の核心部分です。以下の要素を時系列で具体的に記載します。

  • 営業秘密の特定: どのような情報が営業秘密に該当するか(「○○に関する顧客リスト」「○○製品の製造工程に関する技術資料」等)
  • 3要件の充足: 秘密管理性・有用性・非公知性がそれぞれ満たされている事実
  • 侵害行為の態様: いつ・どこで・誰が・どのように営業秘密を取得・使用・開示したか(5W1H)
  • 図利加害目的: 被告訴人が不正の利益を得る目的または保有者に損害を加える目的を有していた事実

とくに秘密管理性については、告訴時点でどのような管理体制を敷いていたかを客観的に示すことが重要です。告訴状の書き方ガイドでも解説していますが、5W1Hを押さえた具体的な記述が受理の鍵となります。

Step 4: 証拠資料を一覧にまとめて添付する

告訴状の末尾に証拠資料の一覧を記載し、コピーを添付します。添付する証拠の例については後述の「証拠の集め方と注意点」を参照してください。証拠は原本ではなくコピーを添付し、原本は手元に保管してください。

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実際に問題になりやすい営業秘密侵害の例

営業秘密侵害は、退職者による顧客リストの持ち出し、競合他社への技術資料の提供、クラウドからの大量ダウンロードなどの形で問題になることが多いです。自社のケースがどの類型に近いかを整理したうえで、証拠収集に進むことが重要です。

証拠の集め方と注意点

営業秘密侵害罪は立証のハードルが高い犯罪類型です。告訴状の受理と捜査の進展のためには、事前に証拠を十分に整理しておくことが不可欠です。

秘密管理性を示す証拠

営業秘密として保護されるためには、企業が当該情報を秘密として管理していた事実を証明する必要があります。

  • アクセスログ(ファイルサーバー・クラウドストレージの閲覧・ダウンロード記録)
  • 就業規則・情報管理規程の写し(秘密情報の取扱いに関する規定)
  • 秘密保持契約書(NDA)・誓約書の写し
  • 「社外秘」「Confidential」等のマーキングが施された資料のサンプル
  • 入退室管理記録(物理的なアクセス制限の証拠)

侵害行為を示す証拠

被告訴人がどのように営業秘密を取得・使用・開示したかを示す証拠です。

  • USBメモリ・外付けHDDへのコピー履歴(PC操作ログ)
  • 業務用メールの送受信履歴(外部への転送記録)
  • 退職前後のデータアクセスログの異常(大量ダウンロード等)
  • 競合他社の製品・サービスと自社営業秘密の比較分析資料
  • 被告訴人のSNS投稿やウェブサイトに自社情報が掲載されている証拠(スクリーンショット等)

証拠収集時の注意点

営業秘密漏洩が発覚した場合の緊急対応フロー

  1. 直ちに証拠を保全する(ログのバックアップ、関連ファイルのスナップショット保存)
  2. 社内調査チームを立ち上げ、関係者へのヒアリングを行う(ただし被疑者へのアクセスは慎重に)
  3. 弁護士または行政書士に相談し、刑事・民事双方の対応方針を決定する
  4. 告訴状の作成・提出と並行して、差止請求(不正競争防止法第3条)の検討を行う

証拠収集にあたっては、以下の点に注意が必要です。

  • 証拠の改ざんが疑われないよう、取得日時が記録された状態で保全する(スクリーンショットには日時を含める、メタデータを保存する等)
  • 社内調査であっても、被告訴人の私物やプライベートなアカウントに無断でアクセスすると不正アクセス禁止法に抵触する可能性がある
  • デジタルフォレンジック(電子的証拠の復元・分析)が必要な場合は、専門業者への依頼を検討する
  • 告訴状に必要な証拠の集め方も参考にしてください

よくある質問

Q. 営業秘密侵害罪の公訴時効は何年ですか?

営業秘密侵害罪の法定刑の上限は10年以下の拘禁刑であるため、刑事訴訟法第250条第2項第3号により公訴時効は7年です。公訴時効が完成すると検察官が起訴できなくなるため、被害を把握したら速やかに告訴の準備を進めることが重要です。

Q. 退職した元従業員が営業秘密を持ち出した場合も告訴できますか?

はい。不正競争防止法第21条第1項第3号・第4号・第7号は、営業秘密を保有者から示された者(在職中に情報にアクセスできた従業員を含む)が図利加害目的で領得・開示する行為を処罰対象としています。退職後であっても、在職中に知り得た営業秘密を不正に使用・開示した場合は刑事告訴の対象となります。

Q. 営業秘密侵害の刑事告訴と民事訴訟は同時に進められますか?

はい。刑事告訴と、不正競争防止法に基づく差止請求(第3条)や損害賠償請求(第4条)は別個の手続きであり、並行して進めることが可能です。刑事手続きで収集された証拠が民事訴訟の証拠としても活用できる場合があります。刑事告訴と民事救済の違いについては「刑事告訴と民事訴訟の違い」をご覧ください。

Q. 秘密保持契約(NDA)を結んでいなくても告訴できますか?

はい。不正競争防止法上の営業秘密保護は、NDAの有無にかかわらず適用されます。ただし、秘密管理性の要件を満たすためには、NDA以外にもアクセス制限や秘密表示などの管理措置がとられていた事実を示す必要があります。NDAが存在する場合は秘密管理性を立証する有力な証拠の一つになります。

Q. 営業秘密侵害で警察に告訴状を受理してもらえない場合はどうすればよいですか?

営業秘密侵害罪は構成要件が複雑なため、告訴状の記載が不十分だと受理を渋られる場合があります。対応策としては、(1)営業秘密の3要件の充足を客観的証拠で補強する、(2)告訴状の記載内容を充実させて再度持参する、(3)検察庁に直接提出する、といった方法があります。告訴状が受理されない5つの理由で詳しく解説しています。

なお、営業秘密侵害罪は非親告罪であるため、告訴がなくても捜査機関が独自に捜査・起訴を行うことがあります。ただし告訴状を提出することで、捜査機関に具体的な被害情報を伝え、捜査の端緒を確実に提供することができます。被害企業の意思と証拠を整理したうえで告訴状を提出することが、刑事手続きを動かすうえで最も実効的な手段です。

まとめ

  • 営業秘密侵害罪は不正競争防止法第21条に規定され、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす情報が保護対象
  • 個人には10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金、法人には国内使用目的で最大5億円・海外使用目的で最大10億円の罰金
  • 告訴状では、営業秘密の特定・3要件の充足・侵害行為の態様・図利加害目的を具体的に記述する
  • 秘密管理性を示す証拠(アクセスログ・NDA・管理規程等)の事前整理が受理と捜査進展の鍵
  • 公訴時効は7年。被害を把握したら早めの対応が重要

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではございません。具体的なケースについては専門家へのご相談をおすすめいたします。
※ 2026年4月時点の刑事訴訟法・不正競争防止法に基づく解説です。告訴・告発の受理判断は捜査機関の裁量による部分があります。具体的な事案は弁護士にもご相談ください。

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