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遺贈寄付とは?公益法人・大学・認定NPOへの遺言寄付、相続税・遺留分・不動産の注意点

約11分で読めます

遺贈寄付は、遺言により公益法人、学校法人、認定NPO法人、国・地方公共団体、一定の公益目的団体等へ財産を遺贈し、社会貢献を実現する方法です。寄付先がどの法人・団体であるかにより、相続税・所得税・法人税上の取扱いは大きく異なります。公益法人・認定NPO法人等の法人への遺贈には相続税は課されません(相続税は個人課税の税であるため)。一方、土地・建物・株式等を法人に遺贈する場合は被相続人にみなし譲渡所得課税が生じうるため、租税特別措置法第40条による国税庁長官の承認が実務上の最重要論点となります。本記事では遺贈寄付の方式(特定遺贈・包括遺贈・清算型遺贈)、寄付先選定、税務、遺留分、遺言執行者、業務範囲を実務目線で整理します。税務の詳細は必ず税理士にご確認ください。

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目次

  1. 遺贈寄付とは
  2. 遺贈寄付の方式:特定遺贈・包括遺贈・清算型遺贈
  3. 寄付先の選定と受入可否の事前確認
  4. 相続税の取扱い(法人への遺贈は相続税対象外)
  5. 不動産・株式を遺贈寄付する場合の譲渡所得税と租税特別措置法第40条
  6. 法人税の課税関係
  7. 遺留分権利者と遺留分侵害額請求のリスク
  8. 遺言執行者の選任と役割
  9. 公正証書遺言で定めるべき条項
  10. 業務範囲の整理
  11. FAQ・まとめ

1. 遺贈寄付とは

遺贈寄付は、遺言により自己の財産の一部または全部を公益法人・学校法人・認定NPO法人・国・地方公共団体等へ遺贈する寄付形態です。生前の自由な意思に基づいて社会貢献を実現できる一方、寄付先の法人格・認定状況、遺贈する財産の種類、遺留分権利者の有無により、相続税・所得税・法人税の取扱いが大きく異なります。

遺贈寄付には相続税・所得税(譲渡所得)・法人税にわたる税務上の論点があり、本記事の税務に関する記載は概要であるため、具体的な課税関係は必ず税理士にご確認ください。

2. 遺贈寄付の方式:特定遺贈・包括遺贈・清算型遺贈

  • 特定遺贈:特定の金銭・預貯金・不動産・株式等を指定して遺贈する方式
  • 包括遺贈:遺産の全部または一定割合を遺贈する方式。受遺者が相続人に近い立場となり、債務や清算負担が問題となるため、受入を制限する団体が多い
  • 清算型遺贈:遺言執行者が不動産等を売却・換価して現金を寄付する方式。多くの寄付先団体が好む方法
  • 負担付遺贈:受遺者に一定の義務(例:墓守・遺族の生活支援等)を負担させる遺贈

寄付先団体の受入方針に合わせた遺言文言が重要です。

3. 寄付先の選定と受入可否の事前確認

寄付先の例

  • 国、地方公共団体
  • 公益社団法人、公益財団法人
  • 認定NPO法人
  • 学校法人、国立大学法人、公立大学法人等
  • 独立行政法人、社会福祉法人等
  • 宗教法人、一般社団法人、一般財団法人、通常のNPO法人、任意団体等

税制優遇の対象となるかは寄付先の法人格・認定状況・公益目的事業への使用・申告手続により異なります。特に、通常のNPO法人、一般社団法人、宗教法人、任意団体等については、相続税の非課税特例や寄附金控除の対象になるかを個別に税理士へ確認します。

寄付先の受入可否の事前確認

寄付先団体は、財産の種類、管理負担、換価困難性、債務・紛争リスク、団体の受入方針により、遺贈を受け入れない場合があります。現金は受け入れやすい一方、不動産、未上場株式、動産、負債・管理リスクのある財産は受入を断られることがあります。遺言作成前に受入可否を確認し、受入不可の場合に備えて予備的寄付先や相続人への帰属先を定めることが重要です。

4. 相続税の取扱い(法人への遺贈は相続税対象外)

相続税の取扱いは、寄付先・財産の種類により以下の整理が必要です。税務の詳細は税理士にご確認ください。

法人への遺贈寄付(公益法人・認定NPO法人・学校法人等)

公益法人・認定NPO法人・学校法人等の法人への遺贈には、そもそも相続税は課されません。相続税は個人に課される税であり、法人は相続税の納税義務者ではないためです。「相続税法12条1項3号」を法人への遺贈の非課税根拠とするのは不正確で、同号は公益事業を行う個人や人格のない社団等が受遺者となる場合の非課税規定です。

相続人による相続財産の寄附(別制度)

相続人が相続または遺贈により取得した財産を、相続税申告期限までに国・地方公共団体・公益法人・認定NPO法人等へ寄附した場合は、寄附した財産につき相続税の課税価格に算入しないとされる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.4141)。これは遺贈寄付(被相続人の遺言による寄付)とは別の制度です。

5. 不動産・株式を遺贈寄付する場合の譲渡所得税と租税特別措置法第40条

土地・建物・株式等の譲渡所得の基因となる財産を法人に遺贈すると、被相続人について時価で譲渡があったものとみなされ、みなし譲渡所得課税(所得税法第59条第1項)が生じ、相続人が被相続人の準確定申告(相続開始を知った日の翌日から4か月以内)を行う必要があります。

租税特別措置法第40条による非課税

  • 国・地方公共団体への遺贈:租税特別措置法第40条前段により当然に非課税
  • 公益法人等への遺贈:同条後段による国税庁長官の承認(一般特例または承認特例)を受けることで非課税

承認には、寄附先、公益目的、財産の使用方法、申請期限・添付資料等の要件があるため、遺言作成前から税理士と確認します。承認を受けられないと、被相続人にみなし譲渡所得税が課される結果となるため、不動産・株式等の遺贈寄付では最重要論点です。

代替方法

不動産を遺贈寄付する場合は以下の方法を比較検討します。

  • (1) 不動産のまま遺贈する方法(受入可否・措置法40条承認の検討)
  • (2) 清算型遺贈(遺言執行者が売却・換価して現金を寄付)
  • (3) 生前に売却して現金で遺贈寄付する方法

6. 法人税の課税関係

遺贈を受けた法人側に、遺贈された財産について受贈益として法人税の課税関係が生じる場合があります。公益法人等の場合、収益事業に属しない限り非課税となる等の整理がありますが、宗教法人・一般法人・通常のNPO法人等への遺贈は、寄付先法人側の法人税・収益事業該当性、相続税の不当減少とみなされるリスクを税理士に確認します。

7. 遺留分権利者と遺留分侵害額請求のリスク

遺留分権利者は、配偶者・子・直系尊属などであり、兄弟姉妹・甥姪には遺留分がありません。遺贈寄付を行う場合は、誰が相続人となるか、誰に遺留分があるか、寄付額が遺留分を侵害しないかを確認します。

遺留分を侵害する設計にすると、寄付先団体が遺留分侵害額請求(金銭請求)の相手方となるリスクがあります。不動産など金銭以外の財産を遺贈寄付する場合、遺留分侵害額請求は金銭での支払いを求めるものであるため、寄付先が金銭の準備を求められる事態にも留意が必要です。

紛争リスクを下げるためには、遺留分相当額を相続人に残す設計、寄付額を割合ではなく上限付きにする設計、相続人への事前説明、寄付先団体との協議等が有効です。

8. 遺言執行者の選任と役割

遺贈寄付を確実に実行するには、遺言執行者の選任が重要です。遺言執行者には、財産目録の作成、相続人への通知、預貯金解約、不動産換価、寄付先への引渡し等を行う権限・義務があります。

寄付先団体、専門職、信託銀行等が候補となりますが、就任承諾、報酬、換価処分の可否、相続人との紛争対応、寄付先との利害関係を確認して選定します。寄付先団体自身が遺言執行者となる場合は利益相反・実務負担も検討が必要です。

相続人間に対立がある場合、遺留分侵害額請求が見込まれる場合、不動産売却・登記・税務判断・訴訟対応が必要な場合は、弁護士、司法書士、税理士、不動産会社等との連携が不可欠です。紛争性が高い事案では弁護士を遺言執行者に選任することも検討します。

9. 公正証書遺言で定めるべき条項

公正証書遺言の原案作成では、以下の事項を明確に定めます。

  • 寄付先の正式名称・所在地
  • 寄付する財産の特定(特定遺贈か包括遺贈か)
  • 清算型遺贈の有無と遺言執行者の換価権限
  • 遺留分に配慮した金額上限
  • 寄付先が受け入れられない場合の予備的寄付先
  • 残余財産の帰属先
  • 遺言執行者の指定・予備執行者・報酬

10. 業務範囲の整理

行政書士業務範囲

  • 公正証書遺言の原案作成(遺贈寄付の遺言設計)
  • 寄付先団体への受入可否確認・必要書類・希望する遺言文言の整理サポート(本人主体の事前確認支援)
  • 公証役場との調整(公証人手数料は別途)

業務範囲外(連携先専門家)

  • 相続税申告、租税特別措置法第40条の非課税承認申請、譲渡所得税、寄附金控除、法人税、不動産取得税、固定資産税等の税務判断(税理士業務)
  • 不動産遺贈・清算型遺贈に伴う所有権移転登記、売買登記、相続登記、遺贈登記(司法書士業務)
  • 遺留分侵害額請求の交渉・訴訟、相続人との紛争対応、遺贈寄付に関する訴訟代理(弁護士業務)
  • 寄付先団体の選定、寄付条件の最終決定、相手方との交渉は本人または弁護士対応として整理

11. FAQ|よくあるご質問

Q. 遺贈寄付に相続税はかかりますか?
A. 公益法人・認定NPO法人・学校法人等の法人への遺贈には、相続税は課されません(相続税は個人に課される税で、法人は納税義務者ではないため)。ただし、不動産・株式等を遺贈する場合は被相続人にみなし譲渡所得課税が生じ得ます(租税特別措置法第40条の承認で非課税となる場合があります)。また法人側に受贈益として法人税の課税関係が生じることがあります。詳細は税理士にご確認ください。

Q. すべての公益団体が相続税非課税ですか?
A. 寄付先が国・地方公共団体・公益法人・認定NPO法人等の要件を満たす場合、相続税の非課税特例または相続財産を寄附した場合の特例が使える可能性があります。ただし、すべてのNPO法人、一般社団法人、宗教法人、任意団体への遺贈・寄附が当然に非課税になるわけではありません。寄付先の法人格・認定状況、財産の種類、寄附時期、相続税申告書への添付資料を税理士に確認する必要があります。

Q. 不動産を遺贈寄付できますか?
A. 不動産そのものの遺贈、遺言執行者による売却後の現金寄付(清算型遺贈)、生前売却後の遺贈寄付の3つの方法があります。多くの寄付先団体は不動産そのものの受入を制限し、清算型遺贈を希望することがあります。租税特別措置法第40条の承認を受けられないと被相続人にみなし譲渡所得税が課されるため、遺言作成前に税理士・司法書士・寄付先団体と確認します。

Q. 遺贈寄付が遺留分を侵害するとどうなりますか?
A. 遺留分権利者(配偶者・子・直系尊属)から、寄付先団体に対して遺留分侵害額請求(金銭請求)がされる可能性があります。寄付先が金銭の準備を求められる事態を避けるため、遺留分相当額を相続人に残す設計、寄付額の上限設定、相続人との事前説明等の調整が重要です。なお、兄弟姉妹・甥姪には遺留分はありません。

Q. 遺言執行者は誰を選任すべきですか?
A. 寄付先団体、専門職、信託銀行等が候補となります。就任承諾、報酬、換価処分の可否、相続人との紛争対応、寄付先との利害関係を確認して選定します。相続人間に対立がある場合、遺留分侵害額請求が見込まれる場合、不動産売却・登記・税務判断・訴訟対応が必要な場合は、弁護士を遺言執行者に選任することも検討します。

Q. 寄付先が遺贈を受け入れないことはありますか?
A. あります。財産の種類、管理負担、換価困難性、債務・紛争リスク、団体の受入方針により、遺贈を受け入れない場合があります。遺言作成前に受入可否を確認し、受入不可の場合に備えて予備的寄付先や相続人への帰属先を定めることが重要です。

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まとめ

遺贈寄付は、遺言により公益法人・学校法人・認定NPO法人・国・地方公共団体等へ財産を遺贈し社会貢献を実現する方法です。寄付先がどの法人・団体であるか、遺贈する財産の種類により、相続税・所得税・法人税上の取扱いが大きく異なるため、税務の詳細は必ず税理士にご確認ください。

相続税の取扱いについては、公益法人・認定NPO法人・学校法人等の法人への遺贈にはそもそも相続税は課されません(相続税は個人課税の税で、法人は納税義務者ではないため)。「相続税法12条1項3号」を法人への遺贈の非課税根拠とするのは不正確で、同号は公益事業を行う個人や人格のない社団等が受遺者となる場合の非課税規定です。

土地・建物・株式等を法人に遺贈する場合は、被相続人にみなし譲渡所得課税(所得税法第59条第1項)が生じ得ます。国・地方公共団体への遺贈は租税特別措置法第40条により当然に非課税、公益法人等への遺贈は国税庁長官の承認(一般特例・承認特例)を受けることで非課税となります。承認を受けられないと被相続人にみなし譲渡所得税が課されるため、不動産遺贈寄付では最重要論点です。

遺贈の方式は特定遺贈・包括遺贈・清算型遺贈・負担付遺贈があり、寄付先団体の受入方針に合わせた遺言文言を設計します。遺留分権利者(配偶者・子・直系尊属)の遺留分を侵害すると、寄付先が遺留分侵害額請求(金銭請求)を受けるため、上限付きの金額設計や相続人への事前説明が重要です。寄付先団体は財産の種類・管理負担・換価困難性により遺贈を受け入れない場合があり、予備的寄付先の指定も検討します。

当事務所では公正証書遺言の原案作成、寄付先団体への受入可否の事前確認サポート、遺言執行者の選任設計を行政書士業務範囲で対応します。相続税申告・租税特別措置法第40条の承認申請・譲渡所得税・法人税・寄附金控除等の税務判断は税理士、不動産遺贈・清算型遺贈に伴う所有権移転登記・売買登記は司法書士、遺留分侵害額請求の交渉・訴訟・相続人との紛争対応は弁護士の業務範囲となります。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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