終活関連

介護保険の自己負担割合はいくら?1〜3割の判定基準・高額介護サービス費・補足給付を解説

更新: 約14分で読めます

親が要介護認定を受け、いよいよデイサービスや特別養護老人ホームの利用が始まると、必ず突きつけられるのが「自己負担はいくらですか」という問いです。介護保険サービスは1〜3割の自己負担で利用できる仕組みですが、本人や世帯の所得によって負担割合が変わり、施設入所では食費・居住費の補足給付(特定入所者介護サービス費)が世帯分離・年金収入・預貯金残高で決まる――この複雑さに戸惑うご家族は少なくありません。さらに、医療費控除との通算、高額介護サービス費の払戻し、限度額認定証の申請時期など、知らないと年間で数十万円損をする論点も多数あります。終活として親の介護費用を試算しておきたい方、施設入所を控えて補足給付の対象になるか確認したい方、後期高齢者医療と介護保険の高額医療・高額介護合算療養費を申請したい方に向けて、判定の基本構造を整理します。

本記事の結論:

  • 介護保険の自己負担割合は第1号被保険者について本人の合計所得金額と世帯の年金収入等で1〜3割に判定され、毎年7月に「介護保険負担割合証」が発行されます。
  • 利用料が高額の場合は高額介護サービス費で月額上限超を還付、施設入所中の食費・居住費は補足給付(特定入所者介護サービス費)で軽減されます。
  • 世帯の課税状況・預貯金が判定に直結するため、世帯分離・事前申請の組合せが重要ですが、判定や申請は本人申請が原則です。
  • 当事務所は制度の情報整理・関係書面の事実関係整理まで対応し、申請代理や保険給付の交渉は地域包括支援センター・ケアマネジャー・社労士の業務範囲です。

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根拠法令(2026年5月時点)

  • 介護保険法22条第1項(不正受給に対する支給額の返還+最大2倍の加算金)
  • 介護保険法41条(居宅介護サービス費)
  • 介護保険法44条(特定福祉用具購入費)・45条(住宅改修費)
  • 介護保険法49条の2・59条の2(一定以上所得者の負担割合特例)
  • 介護保険法51条(高額介護サービス費)
  • 介護保険法51条の3(特定入所者介護サービス費=補足給付)
  • 介護保険法施行令22条の2(負担割合の所得基準)
  • 介護保険法施行令29条の2(補足給付の利用者負担段階)
  • 令和6年厚生労働省告示第86号(令和6年8月1日施行・補足給付の居住費負担限度額および基準費用額の引上げ:60円/日)
  • 令和7年介護保険法施行令改正(令和7年8月1日施行・第2段階の所得基準を「80万円以下」→「80.9万円以下」に変更)
  • 高齢者の医療の確保に関する法律85条(高額医療・高額介護合算療養費)
  • 行政書士業務(権利義務又は事実証明に関する書類の作成)

介護費用で確認すべき3つの軽減制度

介護保険サービスの費用を確認する際は、まず①介護保険負担割合証で自己負担割合が1割・2割・3割のどれか、②高額介護サービス費で月額上限を超えた分が還付されるか、③施設入所時の食費・居住費について補足給付(負担限度額認定)の対象になるかを確認します。特に施設入所では、本人・配偶者の課税状況、年金収入、預貯金等の資産要件により負担額が大きく変わるため、入所前の事前シミュレーションが重要です。最新情報は厚生労働省「介護保険最新情報」および各市区町村介護保険担当課でご確認ください。

1. 介護保険の自己負担割合(1割・2割・3割)

介護保険サービスは、第1号被保険者(65歳以上)が利用する場合、本人の所得に応じて自己負担割合が1割・2割・3割のいずれかに区分されます。第2号被保険者(40〜64歳)は一律1割です。

判定式(第1号被保険者)

  • 3割負担:本人の合計所得金額220万円以上 かつ 同一世帯65歳以上の年金収入+その他合計所得金額の合計が単身340万円以上/2人以上463万円以上
  • 2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満で、同一世帯65歳以上の年金収入+その他合計所得金額の合計が単身280万円以上/2人以上346万円以上の場合。または、本人の合計所得金額が220万円以上でも3割負担の収入基準に該当しない場合
  • 1割負担:上記いずれにも該当しない場合

「合計所得金額」は地方税法上の合計所得金額(収入金額から必要経費に相当する金額を控除した金額)で、給与所得・事業所得・不動産所得等の合算です。扶養控除・医療費控除等の所得控除をする前の金額で算定されます。合計所得金額に給与所得又は公的年金等に係る雑所得が含まれる場合は、給与所得又は公的年金等所得の合計額から10万円が控除されます(控除後の額が0円を下回る場合は0円とします)。

判定式の「年金収入」は課税年金の額面額(公的年金等控除前)で判定され、非課税年金(遺族年金・障害年金)は自己負担割合判定には含まれません。一方、後述の補足給付の判定では、平成28年8月以降、非課税年金(遺族年金・障害年金)も収入として勘案されます(自己負担割合の判定とは扱いが異なる点に注意)。

2. 介護保険負担割合証の発行と有効期間

市区町村は毎年7月に「介護保険負担割合証」を発行し、要支援・要介護認定を受けた被保険者に郵送します。有効期間は当年8月1日から翌年7月31日までで、サービス利用時に介護保険被保険者証と一緒に事業者へ提示します。

年度途中の世帯変動

世帯員の死亡・転出、収入の修正申告等で判定基準が変動した場合は、翌月から負担割合が変わります。負担割合証も差し替えになるため、変更があれば速やかに市区町村介護保険担当課へ連絡しましょう。なお、新規認定者には申請から数週間で発行されます。

3. 高額介護サービス費(月額上限の還付)

1か月の利用者負担合計が一定額を超えた場合、超過分が「高額介護サービス費」として後日還付されます。福祉用具購入費・住宅改修費・施設の食費居住費・差額ベッド代等は対象外で、保険適用サービスの自己負担分のみが対象です。

世帯区分別の月額上限

  • 課税所得690万円以上:140,100円/月(世帯)
  • 課税所得380万円以上690万円未満:93,000円/月(世帯)
  • 市町村民税課税世帯(上記未満):44,400円/月(世帯)
  • 世帯全員市町村民税非課税:24,600円/月(世帯)
  • 同上で年金収入等が一定額以下の方:24,600円/月(世帯)かつ 15,000円/月(個人)
    ※基準額は制度・年度により「80万円以下」または「80.9万円以下」等の表記が用いられるため、最新の市区町村案内で確認してください。
  • 生活保護受給者等:15,000円/月(個人)

初回申請後は、口座登録により次回以降の超過月は自動振込される自治体が大半です。2年で時効消滅するため、過去の請求漏れがある場合は早めに市区町村へ申請しましょう。

4. 補足給付(特定入所者介護サービス費)の判定基準

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイ等の施設サービスでは、食費・居住費は介護保険給付の対象外で全額自己負担が原則です。ただし、低所得者については「補足給付(特定入所者介護サービス費)」で食費・居住費が軽減されます。

利用者負担段階(4段階+第3段階の細分化、令和7年8月1日改正後)

  • 第1段階:生活保護受給者、または世帯(世帯を分離している配偶者を含む。以下同じ)全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者
  • 第2段階:世帯全員が市町村民税非課税かつ課税年金収入額+合計所得金額(+非課税年金収入額)が80.9万円以下(令和7年8月1日改正により「80万円以下」から変更)
  • 第3段階(1):世帯全員が市町村民税非課税かつ課税年金収入額+合計所得金額(+非課税年金収入額)が80.9万円超120万円以下
  • 第3段階(2):世帯全員が市町村民税非課税かつ課税年金収入額+合計所得金額(+非課税年金収入額)が120万円超
  • 第4段階:上記以外(補足給付対象外)

※補足給付の判定では平成28年8月以降、非課税年金(遺族年金・障害年金)も収入として勘案されます(自己負担割合の判定とは異なる扱い)。

2021年8月改正により、第3段階(2)の食費は1日1,360円(短期入所では同水準)まで引き上げられた一方、第1〜2段階は据え置かれており段階差が大きくなっています。さらに、令和6年(2024年)8月1日施行の補足給付改正(令和6年厚生労働省告示第86号)により、居住費の負担限度額・基準費用額が60円(日額)引き上げられました(従来から負担限度額を0円としている第1段階の多床室利用者は据え置き)。食費・居住費の負担限度額は年度ごとに見直されるため、施設入所時には最新の市区町村案内・施設の重要事項説明書を確認してください。

5. 預貯金残高要件と配偶者の課税状況

補足給付には、利用者の所得・世帯課税状況に加えて、預貯金等の資産要件があります。世帯分離していても、配偶者については別世帯であっても合算判定される点が重要です。

預貯金等の上限額

  • 第1段階:単身1,000万円以下/夫婦2,000万円以下
  • 第2段階:単身650万円以下/夫婦1,650万円以下
  • 第3段階(1):単身550万円以下/夫婦1,550万円以下
  • 第3段階(2):単身500万円以下/夫婦1,500万円以下

預貯金等には普通預金・定期預金・有価証券(株式・国債・地方債・社債等)・投資信託・金銀(積立購入費を含む)・容易に時価評価額が把握できる貴金属・現金等が含まれます。タンス預金も自己申告対象です。虚偽の申告により不正に特定入所者介護サービス費等の支給を受けた場合は、介護保険法22条第1項に基づき、支給された額の返還に加えて最大2倍の加算金(合計で最大3倍相当)が課されます。負債(借入金・住宅ローン)は預貯金等から控除されます。

これらの預貯金等の上限額を超える場合は、所得・世帯課税状況の要件を満たしていても補足給付の対象外となります。

配偶者の所得・資産も合算

世帯分離していても、配偶者が市町村民税課税の場合は補足給付の対象外となります。住民票上の世帯分離だけでは補足給付の判定を回避できません。

6. 介護保険負担限度額認定の申請

補足給付を受けるには、市区町村に「介護保険負担限度額認定申請書」を提出し、「負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。施設入所前に申請しておくと、入所初月から減額を受けられます。

申請に必要な書類

  • 負担限度額認定申請書(市区町村様式)
  • 本人・配偶者の同意書(預貯金照会用)
  • 本人・配偶者の通帳・有価証券口座等の写し(直近2か月分)
  • マイナンバー確認書類

申請月の初日から有効ですが、月途中で入所した場合の取扱いは自治体ルールによります。認定証は8月1日〜翌年7月31日が有効期間で、毎年更新が必要です。

7. 高額医療・高額介護合算療養費

同一世帯で1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)に支払った医療保険+介護保険の自己負担合算が一定額を超えた場合、超過分が後期高齢者医療・国民健康保険・健康保険から払い戻されます。これが「高額医療・高額介護合算療養費」です。

世帯所得区分別の自己負担限度額(後期高齢者医療+介護保険)

  • 現役並み所得Ⅲ(課税所得690万円以上):212万円
  • 現役並み所得Ⅱ(380万円以上):141万円
  • 現役並み所得Ⅰ(145万円以上):67万円
  • 一般:56万円
  • 低所得Ⅱ(住民税非課税):31万円
  • 低所得Ⅰ(年金収入80万円以下等):19万円

申請窓口は加入する医療保険者です。介護保険分は市区町村介護保険課で「自己負担額証明書」を取得し、医療保険者へ提出する場合があります。申請期限は一般に対象期間(毎年7月31日)の翌日から2年とされますが、支給申請の案内・期限の取扱いは医療保険者・自治体により異なるため、対象期間終了後に届く通知や加入医療保険者の案内を必ず確認してください。時効により請求できなくなる場合があるため、通知を受けたら早めに手続きすることが重要です。

8. 終活と介護費用の見積り(任意後見・遺言との関係)

介護費用は、おひとり様や配偶者と高齢の方ほど早期の準備が重要です。判断能力が低下する前に、任意後見契約・財産管理委任契約・遺言を組み合わせて備えておくと、介護施設入所時の費用支払いから死亡後の精算までスムーズに進みます。

備えの3点セット

  • 任意後見契約:判断能力低下時の財産管理を信頼できる受任者に依頼(公正証書必須)
  • 財産管理委任契約:判断能力低下前の見守り・通帳管理
  • 遺言書:施設入所中の死亡時に備えた相続設計(自宅・預貯金の承継先、配偶者居住権の設定、自宅処分方針等)
  • 死後事務委任契約:葬儀・納骨・施設退去時の精算・家財処分・行政手続等

これらは紛争性のない契約書・遺言書として行政書士の業務範囲で文書化できます。具体的な税額計算・節税アドバイスは税理士に、相続税申告は提携税理士をご紹介します。

9. 補足給付の申請タイミングと事前シミュレーション

補足給付(特定入所者介護サービス費)は、申請月の初日から有効になるのが原則のため、施設入所が決まった段階で速やかに申請することが重要です。月途中で入所した場合の取扱いは自治体ごとに異なります。

申請タイミングの実務

  • 入所予定月の前月末までに申請するのが安全
  • 入所と同時月の申請でも初日から減額対象になる自治体が多い
  • 更新は毎年7月(負担割合証と同時期)
  • 世帯員の死亡・転出・課税状況変動時は再申請

事前シミュレーションのポイント

  • 本人・配偶者の住民税課税状況の確認(市区町村税務課発行の課税証明書)
  • 本人・配偶者の預貯金・有価証券・現金・金銀残高の集計
  • 年金収入額(額面)と合計所得金額の整理
  • 世帯分離した場合の試算と配偶者合算の維持

事前シミュレーションは地域包括支援センター・市区町村介護保険担当課で相談できます。タイミングを逃すと月単位で数万円の負担増になるため、入所決定段階での着手が推奨されます。

業務範囲の整理

行政書士の業務範囲

  • 任意後見契約書・財産管理委任契約書の作成(公正証書化サポート)
  • 遺言書(自筆証書・公正証書)の文案作成
  • 死後事務委任契約書の作成
  • 家族信託契約書の原案作成・公正証書化サポート(ただし、不動産信託登記は司法書士、税務判断は税理士、紛争性・高度な法的判断は弁護士と連携)
  • 事実証明書類としての財産目録作成

業務範囲外(連携先専門家)

  • 介護保険申請そのものの代理・給付判断への関与(当所では対応していません。要介護認定申請は本人・家族による申請が原則。市区町村介護保険担当課、地域包括支援センター、ケアマネジャー(居宅介護支援事業者)へご相談ください)
  • 成年後見申立書の作成(法定後見の場合):司法書士法3条1項4号または弁護士法3条による業務範囲(司法書士または弁護士)
  • 相続税申告・税額計算・節税相談(税理士/相続税法基本通達の調整計算は行政書士業務外)
  • 不動産登記・相続登記・不動産信託登記(司法書士)
  • 遺留分や相続紛争の交渉代理・調停代理(弁護士)

FAQ|よくあるご質問

Q1. 親が施設入所した後、世帯分離すれば補足給付を受けられますか。

本人世帯の住民税課税状況だけでなく、別世帯の配偶者の課税状況・預貯金も合算判定されるため、世帯分離単独で補足給付対象になるとは限りません。事前にシミュレーションが必要です。

Q2. 預貯金の上限額にタンス預金も含まれますか。

含まれます。負担限度額認定申請では自己申告ですが、虚偽申告が判明した場合は介護保険法22条第1項に基づき、支給された額の返還に加えて最大2倍の加算金(合計で最大3倍相当)が課されます。

Q3. 高額介護サービス費は自動還付されますか。

初回は申請が必要ですが、口座登録すれば次回以降の超過月は多くの自治体で自動振込されます。市区町村介護保険担当課でご確認ください。

Q4. 自己負担割合証はいつ届きますか。

毎年7月中旬から下旬にかけて市区町村から郵送されます。8月1日からの利用に間に合うよう、紛失した場合は早めに再交付申請してください。

Q5. 福祉用具購入費・住宅改修費は高額介護サービス費の対象ですか。

対象外です。これらは別建ての給付制度で、それぞれ以下のとおりです。
・特定福祉用具購入費(介護保険法44条):毎年4月1日〜翌年3月31日までの1年間で支給限度基準額10万円
・住宅改修費(介護保険法45条):1住宅あたり支給限度基準額20万円(複数回に分けて利用可能。転居時・要介護度3段階以上上昇時は新たに20万円)
いずれも自己負担割合(1〜3割)が適用され、事前申請・対象品目・対象工事の確認が必要です。

Q6. 医療費控除との関係は。

施設サービス利用料の自己負担額(食費・居住費含む)の一部は医療費控除対象です。控除可否・計算は税理士にご相談ください。

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まとめ

介護保険の自己負担割合は、本人の合計所得金額と世帯の年金収入+その他合計所得金額で1〜3割に区分され、毎年7月の「介護保険負担割合証」で確定します。利用料が月額上限を超えれば高額介護サービス費で還付され、施設入所中の食費・居住費は補足給付(特定入所者介護サービス費)で利用者負担段階に応じた軽減を受けられます。補足給付には預貯金等の資産要件があり、世帯分離していても配偶者の所得・課税状況は合算判定される点に注意が必要です。終活として親の介護費用を見積もる場面では、任意後見契約・財産管理委任契約・遺言を組み合わせ、判断能力低下前後の財産管理ルートを設計しておくと安心です。これらの契約書・遺言書の文案作成は紛争性のない範囲で行政書士業務として対応できます。介護保険申請そのものや成年後見申立、相続税申告は市区町村・司法書士・税理士など各専門家にご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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