経営事項審査(経審)の総合評定値(P点)を構成する5つの区分のうち、財務そのものが点数になるのがX2です。X2は「自己資本額」と「平均利益額」という2つの数値だけで決まり、技術者の採用や加点項目の整備と違って、決算書の数字が確定した時点でほぼ機械的に点数が定まります。裏を返せば、決算期を迎える前に手を打てば計画的に動かせる区分でもあります。
ところが実務では、X2の中身が正しく理解されていない場面が少なくありません。とくに多いのが、平均利益額を「利払前経常利益」や「経常利益+支払利息」と説明してしまう誤りです。国土交通省の通知が定める平均利益額は「営業利益の額に減価償却実施額を加えた額」、すなわちEBITDA(利払前税引前償却前利益)の2期平均であり、経常利益は一切登場しません。この違いは、営業外損益の大きい会社では数百万円単位の差になることもあります。
本記事では、建設業法および同法施行規則、平成20年国土交通省告示第85号、ならびに「経営事項審査の事務取扱いについて」(平成20年1月31日国総建第269号。令和8年7月1日施行の改正後のもの)といった一次資料に沿って、X2評点の算定構造を実務目線で解説します。令和7年7月1日から始まった資本性借入金の自己資本算入、令和8年7月1日施行の改正による評点幅の変動もあわせて整理します。
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目次
経審の評点構造におけるX2の位置づけ
経営事項審査は、建設業法第27条の23第1項に基づき、公共性のある施設または工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査です。同条第2項は審査の対象を「経営状況」と「経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項」の2つに分け、同条第3項が、審査の項目および基準を中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定めるとしています。この規定を受けたのが、平成20年国土交通省告示第85号「建設業法第27条の23第3項の経営事項審査の項目及び基準を定める件」です。
総合評定値P点は5区分の加重合計
総合評定値の算出式は、建設業法施行規則第21条の3に明記されています。
P=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W
同条は各記号の意味も定義しており、X2は「経営規模等評価の結果に係る数値のうち、自己資本額及び利益額に係るもの」とされています。経審の評価はX1・X2・Y・Z・Wの5区分で構成されており、「4要素」ではありません。X1(完成工事高)とX2(自己資本額および平均利益額)を合わせて「経営規模」、Zが「技術力」、Wが「その他の審査項目(社会性等)」、Yが登録経営状況分析機関の算出する「経営状況」です。
このうちY点は登録経営状況分析機関が算出し、X1・X2・Z・Wは許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)が経営規模等評価として算出します。経審全体の流れは経営事項審査(経審)とは?公共工事の入札に必要な手続きで整理していますので、制度の全体像から確認したい場合はあわせてご覧ください。
X2の点数幅とP点への実際の影響
国土交通省が令和8年2月6日公布の改正にあわせて公表した資料によれば、令和8年7月1日以降の申請に適用される各区分の点数幅は次のとおりです。
| 区分 | 審査項目 | 最高点/最低点 | ウェイト |
|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高(許可業種別) | 2,309点/397点 | 0.25 |
| X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益 | 2,280点/454点 | 0.15 |
| Y | 経営状況(負債抵抗力・収益性等) | 1,595点/0点 | 0.20 |
| Z | 技術職員数/元請完成工事高 | 2,441点/456点 | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 2,073点/▲788点 | 0.15 |
| P | 総合評定値 | 2,159点/163点 | ― |
X2の点数幅は454点から2,280点までの1,826点で、ウェイト0.15を掛けるとP点にして約274点分の幅があります。ただし、この幅は自己資本額3,000億円・平均利益額300億円といった超大手までを含めたレンジであり、中小建設業者が現実に動かせる範囲はもっと狭いのが実情です。それでも後述するとおり、自己資本額が1,000万円未満の区分では自己資本を100万円積み増すだけでX21が20点以上動き、規模の小さい会社ほどX2の改善効率が高いという特徴があります。
同じ「経営規模」でもX1とは性格が違う
経営規模はX1とX2の2つに分かれていますが、両者の性格は大きく異なります。X1の対象である種類別年間平均完成工事高は、国総建第269号Ⅰの1(1)イにより、審査対象建設業に係る建設工事について、経営事項審査の申請をする日の属する事業年度の開始の日(当期事業年度開始日)の直前2年または直前3年の年間平均完成工事高とされています。しかも、審査対象建設業ごとに2年と3年を選び分けることはできず、すべての審査対象建設業で同一の方法によることとされています。
これに対してX2は、許可業種の区別がなく、企業全体で1つの数値しか出ません。売上の規模ではなく、その売上をどれだけ資本と利益に変えられているかを見る区分だといえます。したがって、完成工事高が横ばいでも、原価管理を改善して営業利益を伸ばし、その利益を内部留保に回していけばX2は着実に伸びていきます。売上を追わずに評点を上げられる区分である点が、X2の実務上の価値です。
X2の計算式|自己資本額点数と平均利益額点数を足して2で割る
X2は、自己資本額点数(X21)と平均利益額点数(X22)を単純平均して求めます。「経営事項審査の事務取扱いについて」(国総建第269号)の別紙「経営規模等評価の結果を評点で表す方法」の2は、告示第一の一の2に掲げる自己資本の額および同号の3に掲げる平均利益額について、告示の別表第二または別表第三の区分に応じてそれぞれ点数を与え、「これらの点数の合計点数を2で除した数値(小数点以下切り捨て)の点数を与える」と定めています。
X2=(自己資本額点数X21+平均利益額点数X22)÷2 ※小数点以下切り捨て
ここで重要なのは、X21とX22の重みが完全に同じ1対1であることです。自己資本をいくら厚くしても、利益が出ていなければX2は伸び切りません。逆に、単年度の利益が大きくても債務超過寸前であればX21が足を引っ張ります。ストック(自己資本)とフロー(利益)の両方を見るのがX2という区分の設計思想です。
金額の単位は「千円」で計算する
実務で最も間違いやすいのが金額の単位です。国総建第269号のⅠは、特に定めのある場合を除き、審査に用いる額は建設業法施行規則別記様式第15号から第19号までに記載された千円単位をもって表示した額とすると定めています(会社法第2条第6号に規定する大会社が百万円単位で表示した場合は、百万円未満の単位を0として計算します)。後述する点数算式に代入する「自己資本額」「平均利益額」も、すべて千円単位の数値です。1億円であれば「100,000」を代入することになります。
端数処理は各段階で切り捨て
X21・X22の各算式には「評点に小数点以下の端数がある場合は、これを切り捨てる」という注記が付されています。そのうえでX2を求める際にも小数点以下を切り捨てます。つまり、切り捨てはX21の段階・X22の段階・X2の段階の3回行われます。自社でシミュレーションする際にこの端数処理を省くと、実際の通知書と1〜2点ずれることがあります。
自己資本額の算定方法|純資産合計と2期平均の選択
自己資本額について、国総建第269号Ⅰの1(2)は次のように定めています。自己資本の額は、審査基準日(申請をする日の直前の事業年度の終了の日)の決算(以下「基準決算」)における純資産合計の額、または基準決算および基準決算の直前の審査基準日における自己資本の額の平均の額とし、その額をもって審査する。ただし、自己資本の額が0円に満たない場合は0円とみなして審査する、というものです。
基準決算と2期平均は申請者が選べる
自己資本額は、X2を構成する2つの要素のうち唯一、申請者が算定方法を選択できる項目です。経営規模等評価申請書(建設業法施行規則別記様式第25号の14)の項番17「自己資本額」欄には「審査対象」というカラムがあり、「1.基準決算」または「2.2期平均」を記入します。基準決算を選んだ場合は審査基準日の貸借対照表の純資産合計を記入し、2期平均を選んだ場合は審査基準日の純資産合計と直前の審査基準日の純資産合計の平均額(千円未満切り捨て)を記入したうえで、「直前の審査基準日」のカラムにも当該決算の自己資本の額を記入します。
選択の考え方はシンプルです。直近期に増資や利益計上で純資産が増えた会社は基準決算単独が有利になりやすく、逆に直近期に大きな損失を計上して純資産が目減りした会社は2期平均のほうが高く出ることがあります。X21の算式は自己資本額が大きいほど点数が高くなる設計のため、基本的には金額の大きいほうが有利になりますが、申請前に双方の金額と点数を確認しておくことをおすすめします。ここで注意したいのは、選択を誤っても後から取り戻す手段は基本的にないという点です。再審査の申立て(建設業法第27条の28、同法施行規則第20条第1項)は結果通知を受けた日から30日以内にできますが、許可行政庁の手引きでは、行政(審査)庁側の誤り等によって結果通知書の内容が申請内容と異なる場合を対象とするものとされており、申請者側の記入漏れ・記入誤りや、算定方法の選択を後から有利なほうへ変更したいといった申請者側の事情は対象になりません。選択は申請前に確定させておく必要があります。
債務超過でも点数は0点にはならない
自己資本の額が0円に満たない場合は0円とみなして審査されるため、債務超過の会社であってもX21は最低点である361点が与えられます。X22の最低点547点と合わせると、X2の最低点は(361+547)÷2=454点です。国土交通省資料に示されたX2の最低点454点は、この計算と一致します。
もっとも、債務超過はY点(経営状況分析)の自己資本比率・自己資本対固定資産比率に直撃するほか、建設業許可の財産的基礎要件にも関わります。許可要件としての自己資本については建設業許可の財産的基礎要件|自己資本500万円・残高証明書・特定建設業5,000万円を解説で整理しています。
自己資本額点数(X21)の目安
X21は告示の別表第二により47区分に分けられ、区分ごとに一次式で点数が定まります。国総建第269号に掲げられた算式のうち、中小建設業者に関係する範囲を抜き出すと次のとおりです(算式中の「自己資本額」には千円単位の数値を代入します)。
| 自己資本額 | 点数の算式 | 区分下限での点数 |
|---|---|---|
| 1,000万円未満 | 223×(自己資本額)÷10,000+361 | 0円で361点 |
| 1,000万円以上1,200万円未満 | 8×(自己資本額)÷2,000+544 | 584点 |
| 1,200万円以上1,500万円未満 | 11×(自己資本額)÷3,000+548 | 592点 |
| 1,500万円以上2,000万円未満 | 14×(自己資本額)÷5,000+561 | 603点 |
| 2,000万円以上2,500万円未満 | 12×(自己資本額)÷5,000+569 | 617点 |
| 2,500万円以上3,000万円未満 | 10×(自己資本額)÷5,000+579 | 629点 |
| 3,000万円以上4,000万円未満 | 16×(自己資本額)÷10,000+591 | 639点 |
| 4,000万円以上5,000万円未満 | 14×(自己資本額)÷10,000+599 | 655点 |
| 5,000万円以上6,000万円未満 | 11×(自己資本額)÷10,000+614 | 669点 |
注目すべきは1,000万円未満の区分の傾きが突出して急であることです。この区分の係数は223÷10,000ですから、自己資本が100万円増えるごとに22.3点上がります。一方、1,000万円を超えると係数は8÷2,000となり、100万円あたり4点にとどまります。自己資本が数百万円規模の会社にとって、自己資本1,000万円は最も費用対効果の高い到達点だといえます。
平均利益額(EBITDA)の算定方法|営業利益+減価償却実施額
平均利益額について、国総建第269号Ⅰの1(3)は次のように定めています。
- イ 営業利益の額は、当期事業年度開始日の直前1年(審査対象年)の各事業年度(審査対象事業年度)における営業利益の額とする。
- ロ 減価償却実施額は、審査対象事業年度における未成工事支出金に係る減価償却費、販売費及び一般管理費に係る減価償却費、完成工事原価に係る減価償却費、兼業事業売上原価に係る減価償却費その他減価償却費として費用を計上した額とする。
- ハ 利払前税引前償却前利益は、営業利益の額に減価償却実施額を加えた額とする。
- ニ 平均利益額の審査は、審査対象事業年度における利払前税引前償却前利益および前審査対象事業年度における利払前税引前償却前利益の平均の額をもって行う。ただし、その平均の額が0円に満たない場合は0円とみなして審査する。
「利払前経常利益」「経常利益+支払利息」は誤り
経審の解説記事のなかには、平均利益額を「利払前経常利益」「経常利益に支払利息を足したもの」と説明しているものが見受けられますが、これは誤りです。通知の文言は「営業利益の額に減価償却実施額を加えた額」であり、出発点はあくまで営業利益です。したがって、受取利息・受取配当金・雑収入といった営業外収益も、支払利息・雑損失といった営業外費用も、固定資産売却損益や災害損失などの特別損益も、いずれも平均利益額には一切影響しません。
この違いは実務上けっして小さくありません。たとえば借入金の多い会社が支払利息を年間800万円計上していても、平均利益額はその影響を受けません。逆に、遊休不動産の賃料収入を営業外収益に計上している会社は、その分だけ平均利益額に反映されないことになります。
減価償却実施額に含まれるもの
減価償却実施額は、勘定科目を問わず「減価償却費として費用を計上した額」の総額です。損益計算書の販売費及び一般管理費に計上された減価償却費だけでなく、次のものがすべて含まれます。
- 未成工事支出金に係る減価償却費
- 販売費及び一般管理費に係る減価償却費
- 完成工事原価に係る減価償却費
- 兼業事業売上原価に係る減価償却費
- その他、減価償却費として費用を計上した額
建設業では重機・車両・仮設材の償却費が完成工事原価に含まれていることが多く、販管費だけを拾うと大幅な過少計上になります。兼業事業を営む会社は、経営状況分析申請の添付書類である兼業事業売上原価報告書(建設業法施行規則別記様式第25号の12、同規則第19条の4第1項第4号)に計上した減価償却費も忘れずに合算してください。
平均利益額点数(X22)の目安
X22は告示の別表第三により37区分に分けられます。中小建設業者に関係する範囲の算式は次のとおりです(算式中の「平均利益額」には千円単位の数値を代入します)。
| 平均利益額(2期平均) | 点数の算式 | 区分下限での点数 |
|---|---|---|
| 1,000万円未満 | 78×(平均利益額)÷10,000+547 | 0円で547点 |
| 1,000万円以上1,200万円未満 | 6×(平均利益額)÷2,000+595 | 625点 |
| 1,200万円以上1,500万円未満 | 7×(平均利益額)÷3,000+603 | 631点 |
| 1,500万円以上2,000万円未満 | 11×(平均利益額)÷5,000+605 | 638点 |
| 2,000万円以上2,500万円未満 | 10×(平均利益額)÷5,000+609 | 649点 |
| 2,500万円以上3,000万円未満 | 8×(平均利益額)÷5,000+619 | 659点 |
| 3,000万円以上4,000万円未満 | 15×(平均利益額)÷10,000+622 | 667点 |
こちらも1,000万円未満の区分(係数78÷10,000)の傾きが急で、平均利益額が100万円増えるごとに7.8点上がります。1,000万円を超えると100万円あたり3点程度に鈍化します。
もうひとつ見落とせないのが、平均利益額の最低点が547点と、X21の最低点361点よりかなり高い点です。利益がまったく出ていない会社でもX22は547点を確保できるため、赤字企業ほど相対的にX21側(自己資本)の改善余地が大きくなります。
数値例で確認するX2の計算
実際に数字を当てはめてみます。いずれも千円単位に直して算式に代入し、各段階で小数点以下を切り捨てています。
ケース1:自己資本800万円・平均利益額600万円
- X21=223×8,000÷10,000+361=539.4 → 539点
- X22=78×6,000÷10,000+547=593.8 → 593点
- X2=(539+593)÷2=566 → 566点
ケース2:自己資本3,000万円・平均利益額1,000万円
- X21=16×30,000÷10,000+591=639 → 639点
- X22=6×10,000÷2,000+595=625 → 625点
- X2=(639+625)÷2=632 → 632点
ケース3:自己資本5,000万円・平均利益額2,000万円
- X21=11×50,000÷10,000+614=669 → 669点
- X22=10×20,000÷5,000+609=649 → 649点
- X2=(669+649)÷2=659 → 659点
ケース1からケース2でX2は66点、ケース2からケース3では27点の上昇です。P点に換算するとそれぞれ約9.9点、約4.1点にあたります。等級(ランク)の境界に数点差で届かないという場面は珍しくありませんので、X2で数点を積み上げる意味は十分にあります。
なお、ケース1の会社が自己資本を800万円から1,000万円に増やすと、X21は539点から584点へ45点上昇します。同じ200万円を1,000万円から1,200万円に積み増した場合の上昇は8点にとどまります。自己資本1,000万円のラインを越えるまでが最も効率がよいという点は、増資や利益留保の計画を立てるうえで押さえておきたいところです。
令和7年7月1日から始まった資本性借入金の取扱い
X2の自己資本額に関する近年最大の変更が、資本性借入金の取扱いです。国土交通省不動産・建設経済局建設業課長通知「資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて」(令和7年6月25日国不建第41号)により、令和7年7月1日以降、一定の要件を満たす資本性借入金を自己資本とみなして申請できるようになりました。
資本性借入金の5要件
通知は、経審の事務取扱いにおける「資本性借入金」を次の要件をすべて満たすものに限るとしています。
- 償還期間が5年超であること
- 期限一括償還であること
- 配当可能利益に応じた金利設定であること(業績連動型が原則で、債務者が厳しい状況にある期間は金利負担が抑えられる仕組みが講じられていること)
- 法的破綻時の劣後性が確保されていること(または、少なくとも法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収されない仕組みが備わっていること)
- 貸出主が金融機関(政府系を含む)であること、または通知別紙記載の制度による借入であること
別紙に掲げられている制度としては、日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度・新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付制度・災害対応型劣後ローン、中小企業活性化協議会版「資本的借入金」、産業復興機構による既往債権の買取制度、日本政策投資銀行・商工中金の危機対応業務による劣後ローン、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構による既往債権の買取制度、農林漁業経営資本強化資金があります。いわゆる役員借入金は、貸出主が金融機関等ではないためこの取扱いの対象になりません。
自己資本への加算と負債からの控除
通知は、資本性借入金の額について、経営状況分析の申請にあたって告示第一の二の2に規定する「基準決算における流動負債と固定負債の合計の額」に含まれる負債合計額から控除するとともに、告示第一の二の5および6に規定する「基準決算における自己資本の額」に加算することができるとしています。その経営状況分析の結果を受けた経営規模等評価の申請にあたっては、告示第一の一の2における「基準決算における自己資本の額」または「基準決算及び基準決算の前期決算における自己資本の額」に加算することとされています。
つまり、資本性借入金はY点(負債回転期間・自己資本対固定資産比率・自己資本比率)とX2(X21自己資本額)の双方に効きます。Y点側の8指標については経審のY点(経営状況分析)を上げる方法|8指標と点数アップの財務改善策で解説しています。
証明できるのは公認会計士・税理士・建設業経理士1級等
控除・加算できる金額は、通知の別添様式によって、建設業法施行規則第18条の3第3項第2号イ(公認会計士等)、同号ロ(登録経理試験の一級試験に合格した者に限る)、同号ハ(登録経理講習の一級講習を受講した者に限る)、または同号ニ(令和2年国土交通省告示第1060号第5号に該当する者に限る)に掲げる者が証明したものに限られます。行政書士はこの証明を行うことができません。まず、国土交通大臣が指定する研修を受けた公認会計士・税理士や、登録経理試験の一級試験に合格した(または登録経理講習の一級講習を受講した)経理責任者(合格または受講した年度の翌年度の開始日から5年以内の者)などに、該当性の判断と証明書の作成を依頼する必要があります。
申請手続と逓減ルール
経営状況分析の申請にあたっては、経営状況分析申請書(建設業法施行規則別記様式第25号の11)の余白に「資本性借入金 ○○○円」と記載したうえで、別添様式の写しと当該借入に係る契約書の写しを提出します。経営規模等評価申請書(同規則別記様式第25号の14)の項番17「自己資本額」には資本性借入金の金額を含めた額を記載し、経営状況分析の申請時に提出した別添様式の写しを添付して許可行政庁に申請します。
注意点が2つあります。第1に、残存期間が5年未満となった資本性借入金は、1年ごとに20%ずつ自己資本とみなす部分が逓減します。第2に、本取扱いの対象は、審査基準日が令和7年3月31日以降かつ令和7年7月1日以降に経営状況分析の申請を行う者で、同規則第19条の4第1項第2号または第3号に規定する書類を提出する者(連結ではなく単独決算で申請する法人および個人)に限られます。
X2を引き上げるための実務上の着眼点
減価償却を止めても平均利益額は増えない
最初に押さえておきたいのが、減価償却の実施・未実施はX22に対して中立であるという点です。平均利益額は「営業利益+減価償却実施額」ですから、減価償却を実施すれば営業利益が減る一方で減価償却実施額が同額増え、実施しなければ営業利益が増える一方で減価償却実施額が減ります。合計額は変わりません。「経審の点数のために減価償却を見送る」という判断には、X2の観点からは意味がないということです。
ただし、Y点の営業キャッシュフローの算定では減価償却実施額が経常利益に加算される扱いになっているほか、減価償却の可否は税務上の論点にも直結します。減価償却の税務上の取扱いについては税理士にご確認ください。
自己資本を厚くする方向性
X21を上げる道筋は、前述の資本性借入金の算入を除くと、突き詰めれば「利益を積み上げて利益剰余金を増やす」か「増資する」かの2つです。増資については、募集株式の発行等の手続と資本金の額の変更登記が必要になりますが、商業登記の申請書類の作成・代理申請は司法書士の業務です。また、現物出資や役員借入金の資本振替(デット・エクイティ・スワップ)を検討する場合は、債務消滅益の課税関係など税務上の判断が不可欠ですので、必ず税理士にご相談ください。行政書士が対応できるのは、経審の評点シミュレーションと、経営規模等評価申請書をはじめとする官公署提出書類の作成・提出代理です。
基準決算と2期平均の使い分けを毎年検討する
自己資本額の算定方法の選択は、毎年の申請ごとに行えます。前年に2期平均を選んだからといって今年もそうしなければならないわけではありません。決算が固まった段階で、基準決算単独と2期平均の双方でX21を計算し、有利なほうを選ぶという作業を毎年ルーティンに組み込むことをおすすめします。
決算期変更・組織変更・合併がある場合
国総建第269号Ⅰの1(3)ホは、事業年度を変更したため審査対象年および前審査対象年に含まれる月数が24か月に満たない場合、商業登記法の規定に基づく組織変更の登記を行った場合、一定の事業承継に該当する場合、または他の建設業者を吸収合併した場合における平均利益額は、年間平均完成工事高の算定要領(同通知Ⅰの1(1)のト・チ・リ)に準じて算定するとしています。決算期変更を予定している場合は、X1(完成工事高)だけでなくX2にも影響が及ぶことを前提に、変更時期を検討する必要があります。
兼業部門の数字も企業全体で反映される
X1(完成工事高)やZ(技術職員数・元請完成工事高)が許可業種別に算定されるのに対し、X2は業種を問わず企業全体の数値で算定されます。営業利益も減価償却実施額も、建設業以外の兼業部門を含む会社全体の数字です。不動産賃貸や資材販売などの兼業部門を持つ会社は、そこで生じる営業利益と減価償却費もX2に反映されるという点を意識してください。
申請実務と令和8年7月1日施行の改正
申請書のどこにX2の数字を書くのか
経営規模等評価申請書(建設業法施行規則別記様式第25号の14)でX2に関係するのは、項番17「自己資本額」と項番18「利益額(2期平均)」の2か所です。様式には「利益額(利払前税引前償却前利益)=営業利益+減価償却実施額」と明記されており、審査対象事業年度と前審査対象事業年度それぞれについて営業利益の額と減価償却実施額を記入する欄が設けられています。記入すべき金額は千円単位(千円未満の端数は切り捨て)で右詰めに記入し、空位のカラムは空白とします。会社法第2条第6号に規定する大会社は百万円単位(百万円未満の端数は切り捨て)で記入することもできますが、各項番の金額単位はあくまで千円であるため、その場合も百万円未満の位のカラムには「0」を記入します。
X2まわりで起きやすい記載の不備
X2は計算式そのものが単純なだけに、不備の多くは金額の集計と記入方法に集中します。申請前に次の点を確認しておくと、審査での補正のやり取りを減らせます。
- 減価償却実施額を販売費及び一般管理費の分だけで集計している。完成工事原価・未成工事支出金・兼業事業売上原価に含まれる減価償却費を合算し忘れると、平均利益額が過少になります。
- 金額の単位を取り違えている。申請書に記入する金額も、点数算式に代入する数値も千円単位です。
- 自己資本額欄の「審査対象」カラム(1.基準決算/2.2期平均)の記入漏れ。2期平均を選択した場合は、自己資本額欄に2期の平均額を記入したうえで、「直前の審査基準日」のカラムの記入も必要です。
- 営業利益と減価償却実施額を審査対象事業年度分しか記入していない。様式には前審査対象事業年度の欄も設けられています。
- 資本性借入金を自己資本額に含めたのに、証明書(別添様式)の写しを添付していない。経営状況分析の申請時と経営規模等評価の申請時の双方で提出が必要です。
そのほか、決算変更届の財務諸表そのものに建設業会計への組替え漏れがあると、営業利益や純資産合計の数字が変わり、X2の点数も動きます。決算変更届の段階から一貫して確認しておくことが結果的に近道です。建設業許可申請全般で起きやすい不備は建設業許可申請でよくある不備事例|決算書不整合・経営業務管理責任者要件を解説でも整理しています。
受審の流れと1年7か月ルール
経審は、決算変更届(事業年度終了届)の提出 → 登録経営状況分析機関への経営状況分析申請 → 許可行政庁への経営規模等評価申請・総合評定値請求、という順で進みます。前提となる決算変更届については建設業の決算変更届|JCIP電子申請・財務諸表組替え・罰則まで実務完全ガイド、添付する工事経歴書の作り方は工事経歴書の書き方|記載ルールと経審との関係を解説をご覧ください。
建設業法施行規則第18条の2は、公共工事の請負契約を締結する日の1年7か月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経審を受けていなければならないと定めています。毎期継続して受審しないと結果通知の有効期間に空白が生じ、その間は公共工事を直接請け負えません。詳細は経営事項審査(経審)の有効期間と公共工事入札|1年7か月ルールと空白期間対策・受審頻度の最適設計で解説しています。入札参加資格審査との接続は建設業の入札参加資格審査の手続き|申請方法と等級格付けの仕組みを解説をご参照ください。
手数料
国土交通大臣許可業者の手数料は建設業法施行令第46条に定めがあり、経営規模等評価の申請は8,100円に審査対象建設業1種類につき2,300円を加算した額、総合評定値の請求は400円に1種類につき200円を加算した額です。都道府県知事許可業者の手数料は各都道府県の条例によりますが、地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)別表においても同額が標準として示されています。なお、経営状況分析の手数料は登録経営状況分析機関ごとに設定されており、別途必要です。
令和8年7月1日施行の改正でX2はどう変わったか
令和8年2月6日公布の国土交通省告示第262号および同日付けの「経営事項審査の事務取扱いについて」の改正通知(令和8年国不建第177号)により、令和8年7月1日以降の申請から新しい審査基準が適用されています。改正の中身はWの「その他の審査項目(社会性等)」に集中しており、具体的には次の3点です。
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無を新設(5点)。あわせて「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」の配点を見直し(民間工事を含む全ての建設工事15点→10点、全ての公共工事10点→5点)
- 建設機械の保有状況(W7)の加点対象に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャを追加
- 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する評価項目(各▲40点)を削除
X2の審査項目・算式・評点テーブルは変更されていません。自己資本額点数の別表第二、平均利益額点数の別表第三ともに従前どおりで、X2の点数幅も2,280点/454点のまま据え置かれています。改正の影響はW点側に及んでおり、社会保険の加入状況に係る減点項目(各▲40点)が削除されたことで、その他の審査項目(社会性等)の項目別点数の合計の最低値は▲210点から▲90点へ引き上げられました。その結果、W点の最低点は▲788点、総合評定値P点の最低点は163点となっています。なお、W点の最高点2,073点および総合評定値P点の最高点2,159点は変更されていません。W点の改正内容の詳細は経審W点(社会性等)の加点項目一覧|令和8年改正・建退共・防災協定・CCUSを解説で扱っています。
なお、建設業法施行規則第20条第2項は、経審の基準その他の評価方法(経営規模等評価に係るものに限る)が改正された場合、改正前の評価方法に基づく結果通知を受けた者は、改正の日から120日以内に限り当該改正に係る事項について再審査を申し立てることができると定めています。今回の改正に伴う再審査の受付期間は許可行政庁ごとに案内されており(たとえば岡山県は令和8年7月1日から10月28日まで、宮崎県は同日から11月30日まで)、期間を過ぎると申し立てられません。今回の改正はX2に関する事項ではありません。W点は、自主宣言制度の宣言の有無が新たに加点対象となった一方で、就業履歴を蓄積するために必要な措置の配点は引き下げられているため、再審査で点数が上がるかどうかは会社ごとに異なります。申し立てる前に新旧両方の基準で試算し、受付期間と必要書類を許可行政庁に確認してください。
X2に関するよくある質問
Q. 平均利益額は経常利益をベースに計算するのですか。
いいえ。国総建第269号は「利払前税引前償却前利益は、営業利益の額に減価償却実施額を加えた額とする」と明記しており、出発点は営業利益です。経常利益や支払利息は算定に一切登場しません。
Q. 平均利益額は許可業種ごとに計算するのですか。
いいえ。X1(完成工事高)やZ(技術職員数・元請完成工事高)が許可業種別であるのに対し、X2は企業全体の1つの数値です。何業種を審査対象にしても、X2の点数は同じです。
Q. 2期とも営業赤字で減価償却費も少ない場合、X22は0点になりますか。
なりません。利払前税引前償却前利益の平均の額が0円に満たない場合は0円とみなして審査され、そのときのX22は547点です。同様に、自己資本の額が0円に満たない場合も0円とみなされ、X21は361点となります。
Q. 平均利益額も基準決算単独を選べますか。
選べません。算定方法を選択できるのは自己資本額だけで、平均利益額は必ず審査対象事業年度と前審査対象事業年度の2期平均です。
Q. 役員からの借入金を自己資本として申請できますか。
できません。令和7年7月1日から始まった資本性借入金の取扱いは、貸出主が金融機関(政府系を含む)であるか、通知別紙に掲げられた制度による借入であることを要件としており、役員個人からの借入はこれに該当しません。
Q. 2期平均を選んだ場合、比較対象はいつの決算ですか。
国総建第269号は「基準決算及び基準決算の直前の審査基準日における自己資本の額」の平均としており、経営規模等評価申請書の記載要領も「基準決算及び前回の申請時における審査基準日(直前の審査基準日)の決算における自己資本の額の平均の額」としています。毎期継続して受審していれば前期末の決算がこれにあたります。受審していない年がある場合は取扱いを確認する必要がありますので、申請前に許可行政庁へご確認ください。
Q. 申請直前にX2を上げる方法はありますか。
決算の数値そのものを申請の直前に動かす方法はありません。自己資本額は審査基準日の決算(または2期平均)で、平均利益額は審査対象事業年度と前審査対象事業年度の実績で確定します。いずれも決算が確定した時点で数値が固まるため、申請の直前にできるのは、算定方法の選択(基準決算か2期平均か)、基準決算時点で要件を満たす資本性借入金がある場合の自己資本額への加算(公認会計士・税理士・建設業経理士1級等による証明が必要です)、集計漏れがないかの確認に限られます。X2の対策は決算期を迎える前に着手するほかありません。
Q. 増資は決算日の直前でも間に合いますか。
自己資本額は審査基準日(直前の事業年度終了の日)の決算における純資産合計で判定されますので、審査基準日までに払込みが完了し、決算に反映されている必要があります。資本金の額の変更登記は司法書士の業務であり、税務上の影響は税理士の判断領域ですので、スケジュールには余裕をみてください。
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まとめ
X2は自己資本額点数と平均利益額点数の単純平均で決まります。建設業法施行規則第21条の3の算式におけるウェイトは0.15、点数幅は令和8年7月1日以降の申請で最高2,280点・最低454点です。X21とX22は1対1の重みですから、自己資本というストックと利益というフローの両輪を揃えないと伸びません。
平均利益額は「営業利益+減価償却実施額」=EBITDAであり、「利払前経常利益」でも「経常利益+支払利息」でもありません。減価償却実施額には未成工事支出金・販売費及び一般管理費・完成工事原価・兼業事業売上原価に係る減価償却費その他が広く含まれるため、販管費の減価償却費だけを拾って過少に申告してしまわないよう注意が必要です。
自己資本額は基準決算単独と2期平均を毎年選択できる、X2の中で唯一の項目です。両方で試算して有利なほうを選ぶ作業を、決算後のルーティンに組み込んでください。また、自己資本額・平均利益額ともに1,000万円未満の区分は傾きが際立って急で、自己資本なら100万円あたり22.3点、平均利益額なら100万円あたり7.8点が動きます。規模の小さい会社ほど改善効率が高い区分だといえます。
令和7年7月1日からは資本性借入金を自己資本とみなす取扱いが始まりました。ただし対象は審査基準日が令和7年3月31日以降かつ令和7年7月1日以降に経営状況分析を申請する単独決算の申請者に限られ、金額の証明は公認会計士・税理士・建設業経理士1級等が行うこととされています。残存期間が5年未満になると1年ごとに20%ずつ逓減する点もあわせて押さえておいてください。
行政書士法人Treeでは、決算変更届および経営規模等評価申請書・総合評定値請求書といった官公署に提出する書類の作成と提出代理、登録経営状況分析機関への経営状況分析申請の代行、入札参加資格申請の書類作成をお引き受けしています。決算数値が固まる前の段階でX2を含めた評点シミュレーションを行い、申請書の記載方法まで一貫して整えることが可能です。経審の評点設計は決算前から動くほど選択肢が広がりますので、次期の受審が視野に入った時点でご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


