特定技能外国人の受入れを検討する企業から、「ベトナムやインドネシアは情報が多いが、スリランカはどう進めればよいのか分からない」という相談を受けることが増えています。スリランカは令和元年に日本と特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)を作成した国のひとつで、在留スリランカ人の数もここ数年で急速に伸びています。一方で、送出しの仕組みは他国と大きく異なる部分があり、その違いを知らないまま進めると、出国直前になって手続が止まる、あるいは職業安定法上の許可を持たないまま人材紹介に関与してしまう、といった事故が起こり得ます。
スリランカの送出手続の中心にあるのが、スリランカ海外雇用局(SLBFE:Sri Lanka Bureau of Foreign Employment)への「海外労働登録」と、出国前に受講が求められるオリエンテーション(出国前研修)です。本記事では、出入国在留管理庁が公表しているスリランカ国籍者向けの手続フロー、SLBFEの根拠法である1985年第21号法、そして日本側の上陸基準省令・職業安定法の規定を突き合わせながら、受入れ企業と登録支援機関が押さえるべき論点を実務目線で解説します。
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目次
スリランカが送出国として注目される背景
出入国在留管理庁の「令和7年末現在における在留外国人数について」によれば、令和7年(2025年)12月末時点の在留外国人数は412万5,395人で、初めて400万人を超えました。このうちスリランカは79,128人で第9位、前年末比で15,656人の増加となっています。前年末は第12位でしたので、順位を3つ上げた計算です。伸び率で見ると、上位国のなかでも高い部類に入ります。
一方で、特定技能の在留者数に限ると事情はやや異なります。同庁の「特定技能制度運用状況」(令和7年12月末現在・速報値)では、特定技能在留外国人数の総数は390,296人で、国籍・地域別の内訳はベトナム164,352人(42.1%)、インドネシア86,955人(22.3%)、ミャンマー44,523人(11.4%)、フィリピン35,862人(9.2%)、中国22,105人(5.7%)、ネパール12,387人(3.2%)、カンボジア8,500人(2.2%)、タイ6,817人(1.7%)と続きます。スリランカはこの上位8か国には入っておらず、「その他」8,795人(2.3%)に含まれています。
つまり、在留者全体では第9位まで伸びている一方、特定技能という在留資格に限れば、スリランカ人材の受入れはまだ本格化していないのが実情です。これは裏を返せば、制度と手続を正確に理解して先行的に取り組む余地が残っている分野だ、ということでもあります。実際、日本語試験や介護分野の評価試験はスリランカ国内でも実施されており、人材のパイプライン自体は整備が進んでいます。
特定技能の対象分野は19分野に
前提として、特定技能の受入れ対象となる特定産業分野は、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)で定められています。同省令は改正により令和8年(2026年)4月1日から19分野となりました。具体的には、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環の19分野です。従前の16分野に、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環が加わった形です。
ただし、新たに加わった3分野については、分野別運用方針や告示基準の整備、技能試験の実施体制の構築を経て順次受入れが可能になっていく段階であり、省令の施行日をもって直ちにすべての分野で募集ができるわけではありません。募集を開始する前に、分野所管省庁の公表情報で試験の実施状況と協議会の加入要件を確認してください。
なお、特定技能2号の対象は同省令の第2号、第4号から第9号まで、第13号から第16号までに限られており、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野です。制度全体の枠組みについては特定技能とは?1号・2号の違いと19分野を解説もあわせてご覧ください。
日本とスリランカの二国間協力覚書(MOC)
特定技能制度では、悪質な仲介事業者(ブローカー)の排除を目的として、送出国政府との間で情報共有の枠組みを構築する二国間の協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)を作成することとされています。出入国在留管理庁の公表によれば、日本国法務省・外務省・厚生労働省及び警察庁は、スリランカ通信・海外雇用・スポーツ省との間で、令和元年(2019年)6月19日、東京において協力覚書に署名・交換しました。
MOCの内容は、仲介事業者等による保証金の徴収、違約金の定め及び人権侵害行為等に関する情報の共有と、制度の適正な運用を阻害する問題を是正するための協議の実施が柱です。令和8年時点でMOCを作成している国は、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンの17か国です。
ここで誤解しやすいのが、MOCの位置づけです。特定技能外国人受入れに関する運用要領は、「二国間取決めを作成した国以外の国籍を有する者であっても受け入れることは可能です」と明記しています。MOCは受入れ可能国のリストではなく、情報共有と協議の枠組みであり、その中で「遵守すべき手続」が定められている場合に、その手続を経ていることが求められる、という構造になっています。
スリランカでは「認定送出機関」の利用は必須ではない
スリランカの手続を理解するうえで最も重要なのが、この点です。出入国在留管理庁の「スリランカに関する情報」は、スリランカについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもスリランカ政府が認定した送出機関を利用する必要はないとしています。
同庁が公表している受入機関向けの手続説明でも、「スリランカの制度上、送出機関の利用は任意とされており、受入機関は、送出機関を通じて人材の提供を受け、特定技能に係る雇用契約を締結する方法のほか、送出機関を通じることなく、直接スリランカ国籍の方との間で特定技能に係る雇用契約を締結する方法のいずれを採ることも可能とのことです」と説明されています。
これは、政府認定の送出機関を経由することが事実上の前提となっている国々とは大きく異なる特徴です。技能実習・育成就労の枠組みで送出機関の規制が強化されている流れ(育成就労の送出機関規制|手数料上限・契約書様式・二国間取決めの強化)と比べても、スリランカの特定技能ルートは受入機関側の自由度が高い設計になっています。
ただし、自由度が高いということは、受入機関自身が適正性を担保する責任を負うということでもあります。送出機関という「関門」がない分、実態としてブローカーが介在し、本人から保証金や高額な手数料を徴収していても表面化しにくくなります。後述する上陸基準省令の要件や職業安定法の規制を、受入機関と登録支援機関が自ら確認する必要があります。
SLBFE(スリランカ海外雇用局)とは何か
SLBFEは、Sri Lanka Bureau of Foreign Employment Act, No. 21 of 1985(1985年8月22日)に基づいて設立された政府機関です。同法第3条第1項でBureauの設置が定められ、同条第2項により法人格(body corporate)を有するものとされています。同法第2条は、民間部門または公社によるスリランカ人の国外雇用のための募集に適用される旨を定めています。出入国在留管理庁の資料では、所管を含めて「スリランカ海外雇用促進・市場多様化担当国務省海外雇用局(SLBFE)」と表記されています。
登録義務の根拠は第53条第3項
SLBFEへの登録義務の直接の根拠は、同法のPART VII(INFORMATION DATA BANK)に置かれた第53条です。条文構成は次のとおりです。
- 第53条第1項:Bureauは、国外で就労するスリランカ人および就労終了後に帰国した者に関する情報データバンクを維持する。
- 第53条第2項:ライセンシー(許可を受けた事業者)は、自らが国外雇用のために募集したスリランカ人に関する所定の情報をBureauに提供する。
- 第53条第3項:国外での就労のために出国するすべてのスリランカ人は、出国に先立ってBureauに登録しなければならない。
ポイントは、この登録義務が特定技能に限った制度ではなく、国外で就労するすべてのスリランカ人に及ぶ一般的な義務だという点です。日本向けの特定技能だからという理由で免除されるものではありませんし、逆に日本側が特別に課しているものでもありません。スリランカの国内法上の一般義務が、たまたま特定技能のフローの中に組み込まれている、という理解が正確です。
民間の職業紹介事業者には許可制がある
もうひとつ押さえておきたいのが、同法PART IVの規制です。第24条第1項は、Bureau以外の者は、同法に基づいて発給された許可(licence)を保有し、かつその条件に従う場合でなければ、foreign employment agencyの事業を行ってはならないと定めています。第26条以下では、許可申請の記載事項として申請者の氏名・住所、個人/組合/法人/公社の別、スリランカ国民であるかどうか(法人の場合は株式の過半数をスリランカ国民が保有しているか)などが列挙されています。
スリランカでは送出機関の利用が任意であるとはいえ、現地で人材募集を業として行う事業者は、スリランカ国内法上の許可を受けている必要があるということです。現地パートナーを使う場合は、この許可の有無を必ず確認してください。
登録は労働者保護の仕組みでもある
SLBFEへの登録は、単なる行政上の届出ではありません。SLBFEの公表情報によれば、登録した移住労働者は、契約期間中、SLBFEが無償で提供する保険の対象となります(補償の範囲や条件はSLBFEの最新情報で確認してください)。登録が労働者の福利厚生と結びついている点は、本人への説明材料としても有用です。「面倒な手続」ではなく「自分を守る制度」として理解してもらうほうが、受講や登録の確実性が上がります。
また、SLBFEの登録には有効期間があり、SLBFEの公表情報では雇用契約の内容に応じて2年または3年とされています。更新はSLBFEの本部・支部のほか、在外公館でも取り扱われるとされています(日本での取扱いの可否は駐日スリランカ大使館に確認してください)。特定技能1号は在留期間を更新しながら原則として通算5年まで在留できる制度ですので、在留期間更新のタイミングで本人にSLBFE登録の有効期間も確認させる運用にしておくと、失念を防げます。金額や有効期間の具体的な取扱いは改定されることがありますので、実際の案件ではSLBFEまたは駐日スリランカ大使館の最新情報で確認してください。
受入れまでの手続フロー|新規入国と国内変更
出入国在留管理庁は、スリランカ国籍者を特定技能外国人として受け入れるまでの手続について、「スリランカから新たに受け入れる場合」と「日本に在留する方を受け入れる場合」の2パターンに分けたフローチャートと解説を公表しています。日本側の手続とスリランカ側の手続が交互に現れる構造になっているため、どちらがどちらの管轄かを意識しながら追うと理解しやすくなります。
スリランカから新たに受け入れる場合:6ステップ
新規入国のパターンでは、流れが6つのステップで整理されています。
ステップ1:雇用契約の締結
受入機関は、スリランカ国籍者との間で特定技能に係る雇用契約を締結します。前述のとおり、送出機関を経由する方法と、送出機関を通じずに直接契約する方法のいずれも可能です。
ステップ2:在留資格認定証明書の交付申請【日本側】
受入機関は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。証明書が交付された後、雇用契約の相手方に対して原本を郵送します。なお、在留資格認定証明書の交付申請には手数料はかかりません。
ステップ3:査証発給申請【日本側】
来日を希望するスリランカ国籍者は、郵送された在留資格認定証明書を在スリランカ日本国大使館に提示のうえ、特定技能に係る査証(ビザ)の発給申請を行います。
ステップ4:海外労働登録【スリランカ側】
スリランカの制度上、来日を希望する本人は、SLBFEに対してオンラインで海外労働登録を行うこととされています。出入国在留管理庁のフローチャートの注記によれば、登録する内容は労働者の旅券・ID番号、就労先の企業情報、雇用条件・雇用期間などです。
ステップ5:出国前オリエンテーション【スリランカ側】
同じくスリランカの制度上、本人は出国前オリエンテーション(2日間程度)の受講を求められるとされています。SLBFEは別途、職種別の訓練コースも運営していますが、特定技能のフローとして出入国在留管理庁が明示しているのはこの「出国前オリエンテーション(2日間程度)」です。
ステップ6:入国・在留【日本側】
以上の手続を経た本人は、日本での上陸審査の結果、上陸条件に適合していると認められれば上陸が許可され、「特定技能」の在留資格が付与されます。
フローチャート上の番号順に整理すると、①雇用契約の締結 → ②在留資格認定証明書交付申請 → ③在留資格認定証明書交付 → ④在留資格認定証明書の送付 → ⑤査証申請 → ⑥査証発給 → ⑦海外労働登録 → ⑧出国、という並びになります。
SLBFE登録は「日本側に提出する審査書類」ではない
ここが実務上、最も誤解されやすい点です。ベトナムでは推薦者表(特定技能外国人表)、カンボジアでは登録証明書というように、国籍に応じて日本の在留諸申請の際に追加提出が必要な書類が指定されている国があります。しかしスリランカについては、出入国在留管理庁のスリランカ関連ページおよび手続説明のいずれにおいても、日本の在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の段階で提出すべき国別の証明書類は示されていません。
フローチャートを見れば分かるとおり、海外労働登録は査証発給(⑥)の後、出国(⑧)の前に位置する⑦のステップです。つまり、日本側の審査が終わってから行う手続であり、COE申請の前提条件ではありません。「SLBFEの登録証を先に取らないとCOEが出ない」という理解は誤りです。
ただし、COE申請の前提条件でないことは、省略してよいことを意味しません。スリランカ側の出国手続にかかわるうえ、後述する上陸基準省令の「本国において遵守すべき手続」との関係も意識しておく必要があります。時系列と法的な位置づけを混同しないよう注意してください。
日本に在留するスリランカ人を受け入れる場合:3ステップ
すでに留学や技能実習などの在留資格で日本に滞在しているスリランカ人を特定技能に切り替える場合、フローは3ステップに簡略化されます。
- 雇用契約の締結:受入機関が特定技能に係る雇用契約を締結します。
- 在留資格変更許可申請【日本側】:本人が地方出入国在留管理官署に対し「特定技能」への在留資格変更許可申請を行います。変更が許可されれば、日本側の手続は完了です。
- 海外労働登録【スリランカ側】:日本において「特定技能」への在留資格変更を行った本人は、SLBFEに対してオンラインで海外労働登録を行うこととされています。
注目すべきは、国内で在留資格を変更したケースでも、SLBFEへの海外労働登録が求められている点です。しかも、その位置づけは在留資格変更許可の「後」です。日本側の許可が下りた時点で手続が完了したと考えてしまい、SLBFE登録が抜け落ちるおそれがあります。
特に、留学生や技能実習修了者からの移行案件では、本人も受入機関も「日本国内で完結する手続」という認識になりがちです。在留カードが交付された段階で支援担当者から本人に登録状況を確認し、記録に残しておくことをおすすめします。変更手続そのものの一般的な流れは特定技能への在留資格変更手続き|技能実習・留学からの切替方法と必要書類を解説で解説しています。
なお、在留資格変更許可申請および在留期間更新許可申請の手数料は、2026年9月30日までに受け付けた申請は各6,000円(オンライン申請の場合は5,500円)ですが、2026年10月1日以降に受け付けた申請は、許可された在留期間に応じて1万円〜7万5,000円(オンラインは1万円〜6万5,000円)になります(令和8年政令第268号)。いずれも許可を受ける際に納付するものですので、費用計画に織り込んでおいてください。
SLBFE登録を怠るとどうなるか|上陸基準省令の「本国において遵守すべき手続」
SLBFEへの登録や出国前オリエンテーションは、スリランカ側の制度です。では、日本の入管手続にはどう跳ね返るのでしょうか。根拠となるのが、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(いわゆる上陸基準省令)の規定です。
特定技能1号に係る上陸基準省令は、申請人が満たすべき要件として次の号を置いています(特定技能2号にも同旨の第4号があります)。
四 申請人が国籍又は住所を有する国又は地域において、申請人が本邦で行う活動に関連して当該国又は地域において遵守すべき手続が定められている場合にあっては、当該手続を経ていること。
特定技能外国人受入れに関する運用要領は、この規定について「特定技能外国人が、特定技能に係る活動を行うに当たり、海外に渡航して労働を行う場合の当該本国での許可等、本国において必要な手続を遵守していることを求めるもの」と説明し、さらに「当該取決めにおいて『遵守すべき手続』が定められている場合には当該手続を経ていることが必要となります」としています。
スリランカについては、SLBFE Act第53条第3項が国外就労者全員に出国前の登録を義務づけており、出入国在留管理庁自身がフローの中にこれを組み込んで公表しています。もっとも、同庁はこれらを「日本側の手続ではありません」と説明しており、国内で在留資格を変更する場合は変更許可の後に海外労働登録を置いています。第4号の「遵守すべき手続」に当たると公式に明示されているわけではありませんが、海外労働登録および出国前オリエンテーションは確実に済ませておく前提で運用するのが安全です。
実務への影響は次のとおりです。第一に、登録を経ないまま出国しようとすれば、スリランカ側の出国手続の段階で止まる可能性があります。第二に、日本の上陸審査の時点で手続を経ていないと評価されれば、上陸条件への適合が問題となり得ます。第三に、一時帰国後の再渡航や在留期間更新の局面で、本国手続の履践状況が改めて問われる場面が想定されます。
受入機関としては、査証が発給された段階で「あと1ステップ残っている」ことを本人と共有し、SLBFE登録とオリエンテーション受講の完了を確認してから航空券を確定させる運用が安全です。渡航日を先に押さえてしまうと、オリエンテーションの日程が合わずに入社日がずれる、という事態を招きます。
送出機関が任意だからこそ効く2つの規制
スリランカでは政府認定の送出機関を経由する義務がありません。この自由度は、裏返せば「誰がどのように人材を集め、いくらの費用が誰から誰に流れたのか」を確認する主体が受入機関しかいない、ということでもあります。日本の法令はこの局面に2方向から網をかけています。ひとつが保証金・違約金の禁止と費用負担の透明化、もうひとつが職業安定法による職業紹介の規制です。順に見ていきます。
保証金・違約金の禁止と費用負担の透明化
上陸基準省令は、特定技能1号について次の各号を定めています。
- 第2号:申請人またはその配偶者、直系若しくは同居の親族その他申請人と社会生活において密接な関係を有する者が、特定技能雇用契約に基づく申請人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されず、かつ、特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約が締結されておらず、かつ、締結されないことが見込まれること。
- 第3号:申請人が特定技能雇用契約の申込みの取次ぎ又は外国における法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動(特定技能1号の活動)の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合にあっては、その額及び内訳を十分に理解して当該機関との間で合意していること。
- 第5号:食費、居住費その他名目のいかんを問わず申請人が定期に負担する費用について、当該申請人が、当該費用の対価として供与される食事、住居その他の利益の内容を十分に理解した上で合意しており、かつ、当該費用の額が実費に相当する額その他の適正な額であり、当該費用の明細書その他の書面が提示されること。
受入機関の側にも対応する基準があります。特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成31年法務省令第5号)第2条第1項第6号は、外国人本人やその親族等が保証金の徴収等をされている場合、または違約金契約が締結されている場合に、そのことを認識して特定技能雇用契約を締結していないことを求めています。同項第7号は、受入機関自身が違約金契約その他の不当に財産の移転を予定する契約を締結していないことを求めています。
実務では、参考様式第1-16号「雇用の経緯に係る説明書」で仲介の経緯と費用の流れを説明し、参考様式第1-6号「雇用条件書」で控除項目を明示することになります。運用要領は、これらの書面について申請人が十分に理解できる言語で作成し、内容を十分に理解した上で署名していることが求められるとしています。日本語を十分に理解できない本人に、翻訳を付けずに日本語のまま署名させる運用は、この要件を満たしません。
また運用要領は、住居費等の定期的に負担する費用について、高額である場合には実費相当の適正な額であることに疑義が生じ、追加的な立証を求めることがある旨を明記しています。費用全体の考え方は特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理もあわせてご確認ください。
職業安定法上の許可を持っているか
スリランカでは送出機関の利用が任意であるため、受入機関が直接採用したり、国内の事業者が現地から人材を紹介したりする形が生じやすくなります。ここで見落とされがちなのが、職業安定法上の許可です。
職業安定法第30条第1項は、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。厚生労働省・都道府県労働局が公表している受入れに関する留意点では、次の点が明記されています。
- 特定技能1号および2号の在留資格について、職業紹介事業の許可等を受けて、国外に存在する求職者の受入れに関する職業紹介を行うことが可能であること。
- 特定技能外国人材に対して転職先のあっせんを行う場合にも、職業紹介事業の許可等が必要であること。
- 入管法に基づき登録支援機関の登録を受けている場合でも、職業紹介を行う場合には、別途職業紹介事業の許可等を取得する必要があること。
- 監理団体の許可を受けた事業者が行えるのは技能実習に関する雇用契約の成立のあっせんであり、特定技能外国人材に関する職業紹介を行う場合には別途許可等が必要であること。
登録支援機関の登録と職業紹介事業の許可はまったく別の制度です。「登録支援機関だから紹介もできる」という理解は誤りですので、支援委託先を選定する際は許可の有無を確認してください。
建設分野では有料職業紹介そのものができない
さらに注意が必要なのが、職業安定法第32条の11第1項です。同項は、有料職業紹介事業者は、港湾運送業務に就く職業、建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務)に就く職業その他厚生労働省令で定める職業を求職者に紹介してはならないと定めています。
つまり、建設分野の特定技能外国人については、有料職業紹介という形での人材紹介ができません。この点を知らずにスキームを組むと、事業者側が職業安定法違反に問われるおそれがあります。
加えて、職業安定法第32条の3第2項は、有料職業紹介事業者は求職者からは手数料を徴収してはならないと定めています(求職者の利益のために必要と認められる厚生労働省令で定める場合を除く)。本人から紹介手数料を取る設計は、原則として認められません。
国外にわたる職業紹介では追加書類が必要
国外にわたる職業紹介を行う場合、厚生労働省の資料によれば、国内のみで職業紹介を行う場合に加えて次の書類の提出が必要とされています。
- 相手先国の関係法令
- 取次機関を利用しない場合:相手先国において事業者の活動が認められていることを証明する書類
- 取次機関を利用する場合:取次機関および事業者の業務分担について記載した契約書など
- 取次機関を利用する場合:相手先国で取次機関の活動が認められていることを証明する書類
- 取次機関を利用する場合:取次機関に関する申告書
あわせて、許可基準・留意事項として、取扱職種の範囲等として届け出た国以外を相手先国としてはならないこと、相手先国において活動を認められていない取次機関や、保証金の徴収その他求職者の財産管理・違約金契約・渡航費用の貸付けを行う取次機関を利用してはならないこと、求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付けて職業紹介を行ってはならないことなどが挙げられています。スリランカの場合、前述したSLBFE Act第24条第1項の許可が「相手先国で活動が認められていること」の確認材料になります。
試験ルートと技能実習ルート
特定技能1号の技能水準・日本語能力については、上陸基準省令が申請人の要件として、18歳以上であること、健康状態が良好であること、従事しようとする業務に必要な相当程度の知識または経験を必要とする技能を有することが試験その他の評価方法により証明されていること、本邦での生活および業務に必要な日本語能力を有することが試験その他の評価方法により証明されていること、退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府等の発行した旅券を所持していること、特定技能1号での在留期間が通算5年(当該在留資格をもって5年を超えて在留することについて相当の理由があると認められる場合にあっては6年)に達していないことを定めています。なお、妊娠、出産、育児その他のやむを得ない事情により業務に従事することができなかった期間は、この通算在留期間から除かれます。
ただし、第2号企業単独型技能実習または第2号団体監理型技能実習を良好に修了しており、かつ修得した技能が従事しようとする業務に必要な技能と関連性が認められる場合には、技能試験と日本語試験の要件は課されません。技能実習ルートの場合はこの点が大きな違いになります。
スリランカ国内で受験できる試験
日本語要件については、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)が広く用いられています。国際交流基金が公表した2026年4月-5月テストの実施概要報告によれば、同回のJFT-Basicは海外13か国27都市および国内10都道府県で実施され、実施都市にはスリランカ(コロンボ)が含まれています(同回のスリランカの受験者数は1,780人、基準点到達率43.6%)。実施国・実施都市は実施回ごとに変わりますので、最新の実施状況は国際交流基金の公表資料で確認してください。テストはCBT方式で、年度内は6つの実施回(4-5月、6-7月、8-9月、10-11月、12-1月、2-3月)に分けて行われます。国際交流基金は145点~174点をA1、175点~199点をA2.1、200点~250点をA2.2(A2)と判定するとしており、A2水準(200点以上)に達すれば特定技能1号の日本語能力証明に使用できます。日本語能力試験(JLPT)N4以上でも要件を満たします。
技能試験についても、介護分野の特定技能評価試験(介護技能評価試験・介護日本語評価試験)はスリランカでも実施されています。もっとも、出入国在留管理庁の運用状況資料が示すとおり海外での実施国数は分野ごとに大きく異なり、スリランカで受験できる分野は限られますので、募集を始める前に分野所管省庁および試験実施機関の最新情報を確認してください。試験制度の全体像は特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説で整理しています。
受入れ後に必要な支援体制と届出
スリランカ人材であっても、受入れ後の義務は他国籍の特定技能外国人と変わりません。出入国管理及び難民認定法第2条の5第6項は、特定技能1号の外国人と雇用契約を締結しようとする機関に対し、1号特定技能外国人支援計画の作成を義務づけています。同法第19条の22第1項は、特定技能所属機関が適合1号特定技能外国人支援計画に基づき支援を行わなければならないと定め、同条第2項で支援の全部または一部を他の者に委託できるとしています。
支援計画に記載すべき支援の内容は、平成31年法務省令第5号第3条第1項第1号のイからヌまでに列挙されています。事前ガイダンス(イ)、出入国する際の送迎(ロ)、住居の確保および生活に必要な契約の支援(ハ)、生活オリエンテーション(ニ)、公的手続等への同行(ホ)、日本語学習の機会の提供(ヘ)、相談・苦情への対応(ト)、日本人との交流の促進(チ)、非自発的離職時の転職支援(リ)、定期的な面談および行政機関への通報(ヌ)の10項目です。
同省令第4条は支援計画の基準を定めており、事前ガイダンスは対面またはテレビ電話装置その他の方法により実施すること、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談対応・定期面談は外国人が十分に理解することができる言語により実施することを求めています。スリランカではシンハラ語・タミル語が用いられており、英語での対応が可能な人材も少なくありませんが、「本人が十分に理解できるか」が基準ですので、英語で足りるかどうかは個別に判断する必要があります。
各支援項目の詳細は、特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説、特定技能の事前ガイダンス|10項目の説明事項・実施方法・時間、特定技能の生活オリエンテーションとは|8時間・必須項目・確認書を解説をご覧ください。
登録支援機関に委託する場合
支援の全部の実施を委託する場合、委託先は入管法第19条の23第1項に基づく登録支援機関の登録を受けている必要があります。この登録は5年ごとに更新を受けなければ効力を失います(同条第2項)。法第2条の5第5項により、登録支援機関に支援計画の全部の実施を委託した特定技能所属機関は、支援体制に関する基準に適合するものとみなされます。
出入国在留管理庁の運用状況資料によれば、令和7年12月末現在の登録支援機関の登録件数は11,050件です。類型別の件数は、会社(株式会社、合同会社等)6,267件(56.5%)、中小企業事業協同組合2,778件(25.0%)、行政書士722件(6.5%)、一般社団法人201件(1.8%)、行政書士法人111件(1.0%)、その他1,022件(9.2%)で、合計は11,101件です。登録件数と合計が一致しないのは、個人の登録支援機関のうち複数の類型に該当する者を各項目に計上しているためと注記されています。登録支援機関の役割・義務的支援・委託費用の目安は登録支援機関とは?役割・届出・義務的支援10項目を行政書士が解説で解説しています。
届出義務
受入れ開始後は、定期届出(2025年4月1日施行の省令改正により、従来の四半期ごと(年4回)から年1回に変更されています)と随時届出が必要です。特定技能雇用契約の変更・終了、支援計画の変更、受入れ困難、支援実施困難などの事由が生じた場合には、事由発生から14日以内の届出が求められます。届出漏れは受入機関の適格性評価に影響しますので、社内で期限管理の仕組みを作っておいてください。詳細は特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルールにまとめています。
スリランカ人材の受入れでつまずきやすい点
SLBFE登録の失念は特に注意したい落とし穴です。特に国内で在留資格を変更したケースでは、日本側の許可が下りた時点で完了したと考えてしまいがちです。出入国在留管理庁のフローでは変更許可の後に海外労働登録が置かれていますので、支援担当者のチェックリストに項目として組み込んでおくべきです。
渡航日程の組み方も注意点です。査証発給の後に海外労働登録と2日間程度の出国前オリエンテーションが控えているため、査証が出た翌週に入社、といったスケジュールは現実的ではありません。オリエンテーションの日程を確認したうえで入社日を確定させてください。
仲介費用の実態把握も欠かせません。送出機関という関門がない分、本人が現地のエージェントに支払った費用が受入機関から見えにくくなります。雇用の経緯に係る説明書を形式的に埋めるのではなく、本人に直接、誰にいくら支払ったのかを確認し、保証金や違約金の取り決めがないことを本人が理解できる言語で確認する運用が求められます。
一時帰国と再渡航の場面も見落とされがちです。平成31年法務省令第5号第1条第1項第5号は、外国人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させるものとしていることを、特定技能雇用契約の内容の基準として求めています。帰国自体は当然に認められるものですが、再度出国して日本に戻る際にスリランカ側でどのような取扱いになるかは、本人の登録状況によって変わり得ます。長期の帰国を予定している場合は、事前にSLBFEまたは駐日スリランカ大使館に確認するよう本人に促してください。
言語対応も設計しておく必要があります。前述のとおり、英語が通じるケースも少なくありませんが、「通じる」と「十分に理解できる」は別です。母語での対応が必要かどうかを本人ごとに判断し、必要に応じてシンハラ語・タミル語の通訳体制を確保してください。相談窓口の連絡先は、本人が理解できる言語で書面化して渡すのが確実です。
問い合わせ先についても押さえておきましょう。出入国在留管理庁は、スリランカ側の手続に関する問い合わせ先として、駐日スリランカ民主社会主義共和国大使館(東京都港区高輪2-1-54、電話03-3440-6911・03-3440-6912)およびスリランカ海外雇用局(Additional General Manager、電話+94-112884-771)を案内しています。制度の運用や必要書類は変わり得るため、個別案件では最新の情報を確認してください。
なお、SLBFEへの登録には所定の手数料等が必要とされていますが、金額は改定されることがあります。本人負担となる費用については、SLBFEの公表情報で最新の金額を確認したうえで、雇用条件書や事前ガイダンスの説明に反映させてください。
特定技能外国人の受入れをご検討の企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次から支援計画の作成・各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
スリランカの特定技能ルートの最大の特徴は、政府認定の送出機関を利用する義務がない点にあります。出入国在留管理庁は、送出機関を経由する方法と直接雇用契約を締結する方法のいずれも可能であると明示しています。受入機関にとって自由度が高い一方、適正性を担保する責任も受入機関側に移ることを意味します。
スリランカ側の手続の中心は、SLBFEへのオンライン海外労働登録と2日間程度の出国前オリエンテーションです。登録義務の根拠はSLBFE Act第53条第3項で、国外就労者全員に出国前の登録を課す一般的な義務です。登録内容は旅券・ID番号、就労先の企業情報、雇用条件・雇用期間などとされています。
手続の順序の理解が実務上の分かれ目になります。スリランカにはベトナムの推薦者表のような日本側申請時の国別追加書類は指定されておらず、海外労働登録は査証発給の後・出国の前に行うステップです。国内で在留資格を変更する場合も、変更許可の後にSLBFE登録が置かれています。ただしスリランカの国内法上の義務であり、上陸基準省令第4号の「本国において遵守すべき手続」との関係も踏まえると、省略してよい手続ではありません。
直接採用が可能であるがゆえに、職業安定法の規制を確認する必要があります。有料職業紹介事業には第30条第1項の許可が必要で、登録支援機関の登録があっても職業紹介には別途許可が要ります。第32条の11第1項により建設業務に就く職業の有料職業紹介は禁止されており、第32条の3第2項により求職者からの手数料徴収も原則として認められません。保証金・違約金の禁止は上陸基準省令と平成31年法務省令第5号第2条第1項第6号・第7号の双方に規定があります。
行政書士法人Treeでは、行政書士法第1条の3第1項に基づく官公署に提出する書類の作成として、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の申請書類、1号特定技能外国人支援計画、定期届出・随時届出の書類の作成をお受けしているほか、地方出入国在留管理局長に届出済みの行政書士による申請取次にも対応しています。スリランカ人材の受入れをご検討の際は、渡航スケジュールの設計段階からご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


