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告訴状に必要な証拠の集め方|犯罪類型別の証拠一覧と収集のポイント

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告訴状が受理されるかどうかを左右する最大の要素は、添付する証拠の質と整理の仕方です。犯罪捜査規範第63条は、司法警察員に対して告訴の受理義務を定めていますが、実務上、犯罪事実を裏付ける証拠が乏しい告訴状は「補正」を求められ、結果として受理が先送りになるケースが少なくありません。一方で、被害者には犯罪の立証義務はなく、あくまで捜査の端緒としての証拠を提出すれば足ります。どの程度の証拠をどのように集めて整理すれば告訴状の説得力が増すのか——本記事では、刑事告訴に必要な証拠の種類・収集方法・添付時の注意点を体系的に整理します。

告訴状に添付する証拠のポイントは、(1)客観的な物証・書証を優先して収集する、(2)証拠は原本を保管しコピーを添付する、(3)犯罪の構成要件に対応する形で証拠を整理する、の3点です。

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刑事告訴における証拠の役割とは?

告訴状に添付する証拠は、犯罪の「完全な立証」を目的とするものではありません。犯罪を立証する責任は捜査機関(警察・検察)にあり、被害者に証明責任はないからです。告訴はあくまで捜査の端緒であり、刑事訴訟法第241条は「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない」と定めるのみで、証拠の添付を法律上の要件とはしていません。

しかし、証拠がまったくない状態で告訴状を提出すると、捜査機関が犯罪の嫌疑を認めにくくなり、事実上の受理拒否につながることがあります。犯罪捜査規範第63条は告訴の受理義務を定めていますが、同規範第65条は「告訴又は告発があった事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、虚偽又は著しい誇張によるものでないかどうか」に注意すべきことも規定しています。つまり、捜査機関は告訴内容の信ぴょう性を一定程度確認するのです。

このため、告訴状に証拠を添付することは法的義務ではないものの、受理後の説明や補充を円滑にし、捜査の迅速な着手を促すための重要な資料です。証拠が整理されている告訴状ほど、捜査機関は事件性を認めやすくなり、捜査への着手がスムーズになります。

証拠にはどんな種類がある?|物証・書証・人証の分類

刑事手続における証拠は、大きく「物証」「書証」「人証」の3つに分類されます。告訴の段階では、裁判で用いるほど厳密な証拠が必要になるわけではありませんが、どのような種類の証拠があるかを理解しておくことで、収集すべき資料を漏れなく把握できます。

証拠の種類 概要 具体例
物証(証拠物) 犯罪に関連する有形の物。形状・状態そのものが証拠となる 凶器、破損した物品、犯行に使われた道具、薬物、偽造文書の原本
書証(証拠書類) 書面に記載された内容が証拠となるもの 契約書、メール・LINEのやり取り、振込明細書、診断書、登記簿謄本
人証(証人の供述) 人の供述(見たこと・聞いたこと)が証拠となるもの 被害者本人の陳述書、目撃者の証言、関係者からの聞き取り

告訴の段階では客観証拠が特に重要

捜査機関が最も重視するのは、客観証拠(物証・書証)です。人の記憶に基づく人証は主観的な要素を含むため、それだけでは犯罪の嫌疑を認めるに至らないことがあります。振込記録、防犯カメラ映像、メールのやり取り、診断書など、「誰が見ても同じ結論になる」客観的な証拠を中心に収集することが、告訴状の説得力を高めるうえで重要です。

もちろん、客観証拠だけでは犯罪の全体像が見えない場合も多いため、人証と組み合わせて犯罪事実を裏付ける構成にするのが理想的です。被害者自身が作成する時系列の経緯書(陳述書)は、客観証拠の文脈を補足する資料として有用です。

犯罪類型別|告訴状に添付すべき証拠一覧

告訴状に添付する証拠は、告訴の対象となる犯罪の構成要件に対応している必要があります。以下に、主な犯罪類型ごとに、収集すべき証拠を整理します。

詐欺罪(刑法第246条)の場合

構成要件の要素 対応する証拠
欺罔行為(嘘をついた事実) 虚偽の説明を記録したメール・LINE・録音、パンフレット、契約書、広告
錯誤(被害者が騙された事実) 被害者の陳述書(信じた経緯の説明)
処分行為(金銭等の交付) 振込明細書、領収書、通帳のコピー
財産的損害 被害額の一覧表、返金がないことの記録

詐欺被害の告訴状の詳しい書き方については、詐欺被害の告訴状の書き方|記載例付きで解説しています。

暴行・傷害罪(刑法第208条・第204条)の場合

構成要件の要素 対応する証拠
暴行の事実 防犯カメラ映像、目撃者の陳述書、110番通報記録
傷害の結果 医師の診断書(傷病名・治療期間を記載したもの)、被害部位の写真
犯人の特定 犯人の氏名・住所(判明している場合)、写真、名刺

名誉毀損・侮辱罪(刑法第230条・第231条)の場合

構成要件の要素 対応する証拠
公然性(不特定多数が認識可能) SNSの投稿画面のスクリーンショット(URL・日時を含む)、掲示板の書き込み
事実の摘示(名誉毀損)または侮辱的表現 該当する発言・文章の記録、動画・音声データ
社会的評価の低下 取引先からの契約解除通知、顧客からの問い合わせ記録

SNS上の誹謗中傷に対する告訴については、名誉毀損・侮辱罪の告訴状の書き方で詳しく解説しています。

横領・業務上横領罪(刑法第252条・第253条)の場合

構成要件の要素 対応する証拠
委託関係(物の占有) 雇用契約書、業務上の権限を示す社内規程、職務分掌表
横領行為(自己のものとした事実) 不正送金の記録、経理帳簿の改ざん箇所、領収書の偽造
被害額 会計監査報告書、帳簿の差異一覧表、銀行取引明細

業務上横領の告訴手続きの詳細は、横領・業務上横領の告訴状の書き方をご参照ください。

証拠はどう集める?収集方法と実務上の注意点

証拠を収集する際には、合法的な手段で行うこと、証拠としての信頼性を損なわないよう保全すること、そして時間の経過による証拠の散逸を防ぐことが重要です。以下に、証拠の種類ごとの収集方法と注意すべきポイントを整理します。

デジタル証拠(メール・LINE・SNS等)の収集

近年の告訴事件では、デジタルデータが最も重要な証拠になることが増えています。しかし、デジタル証拠は改変が容易であるため、信頼性を担保するための工夫が必要です。

  • スクリーンショットはパソコンから撮影する:スマートフォンより画面情報量が多く、URL・日時・投稿者名を同時に記録しやすい
  • 元データを複製して保管する:スクリーンショットや保存ファイルは原本をそのまま保管し、取得日時・URL・取得方法を別途メモに記録しておく。ファイルの加工や移動で取得日時等のメタデータが失われるリスクがあるため、コピーを作業用に使う
  • メールはヘッダー情報を含めて保存する:送受信日時・IPアドレスなどのヘッダー情報が改ざんの有無を判断する材料になる
  • Webページは保存サービスを利用する:投稿が削除される前に、Wayback Machine(archive.org)やウェブ魚拓等の保存サービスで記録しておく
  • LINEのトーク履歴はエクスポート機能で保存する:スクリーンショットに加え、テキスト形式でのエクスポートも行うと文字検索が可能になる

物的証拠(現場の状態・物品等)の保全

  • 被害状況を写真・動画で記録する:破損箇所、犯行現場の状態を複数アングルで撮影。日時がわかるよう、当日の新聞を一緒に写す方法もある
  • 現物は手を加えずに保管する:指紋やDNAの採取が必要になる場合があるため、犯行に使われた物品等には素手で触れない
  • 保管場所と保管状態を記録する:証拠の同一性(提出物が現場にあったものと同じであること)を後から証明できるようにしておく

金銭的証拠(振込記録・契約書等)の収集

  • 銀行の振込明細書や通帳のコピーを取得する:オンラインバンキングの画面も証拠になるが、紙の明細書のほうが証拠としての信頼性が高い
  • 契約書・領収書は原本を保管する:告訴状にはコピーを添付し、原本は手元に保管しておく
  • 仮想通貨等のデジタル取引は取引履歴をPDFで保存する:取引所のサービスが終了するとデータにアクセスできなくなるリスクがある

医療記録・診断書の取得

傷害事件では、医師の診断書が最も重要な証拠の一つです。暴行を受けた場合は、症状が軽くてもできるだけ早く医療機関を受診し、診断書を取得してください。診断書には傷病名と「全治○日間」等の治療期間が記載されます。受傷から受診までの期間が空くと、暴行との因果関係が争われやすくなるため、被害後すぐの受診が鉄則です。

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証拠収集で陥りやすい失敗と対処法

証拠を集めようとするあまり、違法な手段を取ったり、証拠の価値を意図せず損なったりする例があります。特に注意が必要な失敗パターンを整理します。

違法な証拠収集は告訴人自身がリスクを負う

証拠を集めるために相手の自宅に無断で侵入すれば住居侵入罪(刑法第130条)、相手のスマートフォンやパソコンに無断でアクセスすれば不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。私人による盗聴についても、その態様に応じて住居侵入罪(機器設置のための侵入)、有線電気通信法第9条違反(有線通信の秘密侵害)、電波法第59条違反(無線通信の秘密漏えい・窃用)など、複数の法令に抵触する可能性があります。

違法に収集した証拠は、刑事裁判で証拠能力が否定される可能性があるだけでなく、証拠を集めた告訴人自身が刑事責任を問われるリスクがあります。合法的な範囲で入手できる証拠を、適切な方法で収集・保全することが大前提です。

証拠の改変・加工は絶対に行わない

メールやLINEのスクリーンショットを画像編集ソフトで加工したり、録音データの一部を切り取ったりする行為は、証拠の改ざんと判断される危険があります。改ざんが発覚すれば、告訴状全体の信頼性が失われ、場合によっては虚偽告訴罪(刑法第172条)に問われることもあります。証拠はありのままの状態で提出するのが原則です。

時間の経過による証拠の散逸

防犯カメラの映像は一般的に1〜4週間程度で上書きされます。SNSの投稿は加害者によって削除される可能性があり、メールサーバーのログも保存期間があります。証拠は被害に気づいた時点ですぐに保全作業を開始することが重要です。後から収集しようとしても、すでにデータが消去されていることは珍しくありません。

告訴状への証拠の添付方法

証拠を収集したら、告訴状に添付する際にも一定のルールがあります。添付の仕方によって、捜査機関の印象が変わることもあるため、整理された状態で提出しましょう。

原本はコピーを提出し、手元に保管する

告訴状に添付する証拠は、原則としてコピー(写し)を提出します。原本は告訴人が手元に保管し、捜査機関から求められた場合に提示できるようにしておきます。原本を先に渡してしまうと、返却されるまで手元に証拠がない状態になるため注意が必要です。

証拠目録を作成して整理する

添付する証拠が複数ある場合は、証拠目録(証拠の一覧表)を作成します。通し番号を付け、各証拠の名称・作成日・内容の概要を記載しておくと、捜査官が証拠の全体像を把握しやすくなります。

番号 証拠の名称 作成日等 内容の概要
1 振込明細書(写し) 2026年1月15日 告訴人から被告訴人への100万円の振込記録
2 LINEのやり取り(スクリーンショット) 2026年1月10日〜20日 被告訴人が投資の勧誘を行った際のメッセージ
3 契約書(写し) 2026年1月12日 被告訴人と締結した投資契約書
4 診断書(写し) 2026年2月1日 ○○病院発行、全治2週間の打撲傷

証拠と告訴事実の対応関係を明記する

告訴状の本文中で、「上記事実を裏付ける証拠として、添付資料1(振込明細書)を添付する」のように、犯罪事実のどの部分をどの証拠で裏付けているかを明示すると、捜査機関にとって分かりやすい告訴状になります。証拠が構成要件のどの要素に対応するかを意識した整理が、告訴状の書き方の重要なポイントです。

証拠が不十分な場合はどうすればよいか

「証拠が十分に集められない」という理由で告訴を諦めるのは早計です。前述のとおり、被害者には犯罪の立証責任はありません。証拠収集は本来、捜査機関の職務です。ただし、現実には証拠が乏しい告訴状は受理されにくいのも事実であるため、以下の対応が考えられます。

  • 警察署に事前相談する:告訴状を提出する前に、管轄の警察署に相談し、どのような証拠があれば受理しやすいかアドバイスをもらう。相談の記録(相談受理票)自体が告訴の準備をしていた証拠になる
  • 時系列の経緯書(陳述書)を作成する:被害の経緯を時系列で整理した文書を作成する。客観証拠がなくても、詳細かつ一貫した被害の記録は捜査の手がかりになる
  • 証人の協力を得る:目撃者や被害を相談した相手がいれば、その人に事実確認の協力を依頼する
  • 行政書士や弁護士に相談する:手元の資料から使える証拠を選別し、告訴状の構成を練ることで、限られた証拠でも受理されやすい告訴状を作成できる場合がある

告訴状が受理されない場合の対策については、告訴状が受理されない5つの理由と対策も参考にしてください。

よくある質問

Q. 告訴状に証拠を添付しなくても受理されますか?

法律上、告訴状に証拠の添付は要件とされていません。刑事訴訟法第241条は「書面又は口頭」での告訴を認めており、証拠の有無は受理の形式要件ではありません。しかし、実務上は犯罪の嫌疑を示す資料がないと受理が見送られることが多いため、可能な範囲で証拠を添付することを強くお勧めします。

Q. スマートフォンの録音は証拠として使えますか?

会話の当事者が録音したもの(いわゆる秘密録音)は、原則として証拠として認められます。裁判例上、会話の一方当事者が録音したものは、その方法が著しく反社会的でない限り証拠能力が認められるとされています。ただし、盗聴器を仕掛けて第三者の会話を録音するような行為は違法となり得るため、あくまで自分が当事者である会話を録音する範囲にとどめてください。

Q. 防犯カメラの映像を証拠として入手するにはどうすればいいですか?

自宅や自社の防犯カメラであればそのまま証拠として提出できます。商業施設やコンビニエンスストアなどの防犯カメラ映像は、個人情報保護の観点から被害者への直接の提供が断られることが一般的です。この場合は、告訴状にカメラの設置場所・撮影日時を記載しておくと、捜査機関が捜査令状に基づいて映像を取得することができます。証拠の保全期間が限られるため、早めに告訴状を提出することが重要です。

Q. ネット上の証拠はいつ保全すべきですか?

被害に気づいた時点で直ちに保全してください。SNSの投稿や掲示板の書き込みは、加害者や管理者によっていつ削除されるかわかりません。スクリーンショット(URL・日時を含む)の撮影に加え、Wayback Machine(archive.org)やウェブ魚拓サービスでの保存を同時に行うのが確実です。

Q. 証拠の原本は捜査機関に提出しなければなりませんか?

告訴の段階ではコピー(写し)の提出で問題ありません。捜査が進む過程で、捜査機関から原本の提示や提出を求められることがあります。その際は協力する必要がありますが、提出前に原本のコピーを取っておくことをお勧めします。証拠物が押収された場合は、刑事訴訟法に基づく還付手続きにより返還を求めることも可能です。

まとめ

  • 告訴状への証拠添付は法的義務ではないが、実務上は受理されやすさに直結する
  • 証拠は物証・書証・人証に大別され、客観的な物証・書証を優先して収集する
  • 犯罪の構成要件に対応する形で証拠を整理すると、捜査機関が事件性を認めやすい
  • デジタル証拠は被害に気づいた時点で直ちに保全する。時間の経過で散逸するリスクが高い
  • 違法な証拠収集は告訴人自身が刑事責任を問われるおそれがあるため絶対に避ける
  • 証拠が不十分でも告訴は可能。警察への事前相談専門家の助言を活用する

証拠の質と整理の仕方が、告訴状の受理率と捜査の進展を左右します。何をどのように集めればよいかが分からない場合は、告訴状の作成に精通した専門家に相談することで、限られた証拠でも受理されやすい告訴状を作成することが可能です。

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