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送出国フィリピンの特定技能|DMW(旧POEA)登録・OEC取得の必須手続き

更新: 約26分で読めます

特定技能外国人の受入れでフィリピンを候補に挙げる企業は年々増えています。英語力の高さ、介護・外食・宿泊といった対人サービス分野との相性のよさ、日本での就労を希望する人材層の厚さなど、選ばれる理由は明確です。一方で、実際に受入れに着手した企業から最も多く寄せられるのが「日本側の在留資格の手続は進んでいるのに、本人がいつまで経っても来日できない」という相談です。原因のほとんどは、フィリピン側の送出手続、すなわちDMW(移住労働者省・旧POEA)への雇用主登録OEC(海外雇用許可証)の取得が終わっていないことにあります。

フィリピンの送出手続は、日本の入管手続とは別系統で走る独立した制度です。しかも「後から追いつける」性質のものではなく、雇用契約の締結より前に着手しておかなければならない前提手続として位置づけられています。本記事では、出入国在留管理庁が公表しているフィリピン向けの手続解説、日本・フィリピン間の協力覚書(MOC)、そしてフィリピン移住労働者省が2025年11月に発出したOFW Travel Passに関する通達といった一次資料に基づき、受入れ機関が押さえるべき手続の全体像を実務目線で解説します。

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フィリピン人の特定技能受入れは日本側の手続だけでは完結しない

まず押さえるべきは、フィリピン側の送出手続を経ていないことが、日本の入管審査においても不利に働きうるという点です。出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(いわゆる上陸基準省令)は、特定技能1号の在留資格に係る上陸許可基準として、申請人が満たすべき事項を列挙しています。そのうち第四号は次のように定めています。

「申請人が国籍又は住所を有する国又は地域において、申請人が本邦で行う活動に関連して当該国又は地域において遵守すべき手続が定められている場合にあっては、当該手続を経ていること」

つまり、送出国側で遵守すべき手続が定められているのであれば、それを経ていることが日本の上陸許可基準そのものに組み込まれているということです。同趣旨の規定は特定技能2号の項にも置かれています。フィリピンの場合、この「遵守すべき手続」に当たるのが、認定送出機関との募集取決め、移住労働者事務所(MWO)への申請、DMWへの雇用主登録、そしてOECの取得という一連の流れです。

二国間協力覚書(MOC)が土台にある

日本とフィリピンは、特定技能制度の運用開始に先立ち、2019年3月19日に東京で「在留資格『特定技能』を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的連携枠組みに関する協力覚書」に署名しました。日本側は法務省・外務省・厚生労働省・警察庁、フィリピン側は労働雇用省(DOLE)が当事者で、覚書は2019年4月1日から開始されています。

覚書の目的は、特定技能外国人の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保、とりわけ「悪質な仲介機関の排除」に置かれています。フィリピン側は、認定基準を満たす送出機関に認定を与え、その名称等を公表して日本側に提供すること、認定基準に適合しない活動があれば調査・指導し認定を取り消すことなどを約束しています。日本側は、雇用契約と支援計画が入管法令の基準に適合するかを適正に審査し、改善命令を出した場合にはフィリピン側に通知すること、登録支援機関のリストを共有することなどを約束しています。両国は合同委員会を設置し、制度運用上の問題について協議する枠組みも設けられています。

フィリピンは「在留諸申請時の提出書類はない」国

ここで実務上よく誤解される点を整理しておきます。二国間協力覚書を作成した国の中には、送出手続を経たことを証明する書類を在留諸申請の際に日本の地方出入国在留管理官署へ提出しなければならない国があります。出入国在留管理庁の国別ページによれば、カンボジアは同国政府が発行する登録証明書、ベトナムはDOLABまたは駐日ベトナム大使館の承認を受けた推薦者表の提出が求められます。タイについては、技能実習2号または3号を修了した方が「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行う際に、駐日タイ王国大使館労働担当官事務所が承認した雇用契約書の提出が求められます。求められる書類も、対象となる申請の種類も国ごとに異なります。

これに対しフィリピンについては、出入国在留管理庁のフィリピン国別ページに「フィリピンについては、フィリピン側の手続を行ったことを証明する書類を在留諸申請において提出する必要はありません」と明記されています。入管への申請書類としてMWOやDMWの証明書を添付する必要はありません。しかし、これは「フィリピン側の手続をしなくてよい」という意味ではまったくありません。出入国在留管理庁は受入れ機関向けのお知らせの中で、フィリピンの制度上、所定の手続を経ないままフィリピン国籍の方と雇用契約を締結することは認められておらず、この点はフィリピンから新たに受け入れる場合も日本に在留する方を受け入れる場合も同様であるとしています。さらに、フィリピン側は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行う前に受入れ機関がこれらの手続を済ませることが必要であるとしている、とも明記されています。

POEAからDMWへ、POLOからMWOへ|制度の枠組みと管轄

フィリピンの海外雇用行政は、この数年で大きく再編されました。2021年12月30日に成立した共和国法第11641号(Department of Migrant Workers Act、移住労働者省法)により移住労働者省(DMW:Department of Migrant Workers)が創設され、それまで海外雇用の許認可と規制を担っていたフィリピン海外雇用庁(POEA:Philippine Overseas Employment Administration)はDMWに統合されました。あわせて、在外公館に置かれていた海外労働事務所(POLO:Philippine Overseas Labor Office)も再編され、移住労働者事務所(MWO:Migrant Workers Office)へと名称が変わっています。

現在も「POEA」「POLO」という呼称が業界資料や送出機関の説明で使われることがありますが、正式な相手方はDMWとMWOです。契約書や委任状に旧名称を書いてしまうと差し戻しの原因になりますので、書面作成の際は必ず現行名称を使ってください。

直接雇用(ダイレクトハイヤー)は原則禁止

フィリピン労働法典(大統領令第442号)第18条は、直接雇用の禁止(Ban on direct hiring)を定めています。使用者は、労働長官が権限を与えた機関等を通じてでなければ、海外雇用のためにフィリピン人労働者を雇い入れることができません。外交団や国際機関などの例外はありますが、一般企業の特定技能受入れはこの例外に当たりません。

出入国在留管理庁が公表しているQ&Aでも、「現地の送出機関を介さずに、フィリピン国籍の方と雇用契約を締結することはできないのでしょうか」という問いに対し、フィリピン当局によれば特定技能外国人の送出しに当たり送出機関を介することが必要とされている、と回答されています。「知り合いのフィリピン人を直接採用したい」という相談は非常に多いのですが、フィリピン国内から呼び寄せる限り、認定送出機関を経由しない採用ルートは存在しません。

MWO東京とMWO大阪の管轄

受入れ機関の所在地によって、手続先となるMWOが分かれます。出入国在留管理庁の解説によれば、フィリピン当局は令和2年2月3日から、在大阪フィリピン共和国総領事館において、その管轄区域内に所在する受入れ機関からの提出書類の受付・審査・面接の手続を開始したとされています。

在大阪総領事館の管轄区域(令和2年3月5日現在)は、愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県の28府県です。これ以外の地域に所在する受入れ機関は、東京にあるMWOでの手続が必要とされています。管轄区域は変更されることがあるため、着手前に各MWOの最新の案内を確認してください。

連絡先は、在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO東京)が東京都港区六本木5-15-5、電話03-6441-0428・03-6441-0478、メールmwo_tokyo@dmw.gov.ph。在大阪フィリピン共和国総領事館移住労働者事務所(MWO大阪)が大阪市中央区淡路町4-3-5 URBAN CENTER御堂筋7階、電話06-6575-7593、メールmwoosaka.ssw@gmail.comです。いずれも英語・フィリピノ語・日本語で対応しているとされています。

ステップ1・2|認定送出機関との募集取決めとMWOへの書類提出

ここからは、フィリピンから新たに特定技能外国人を受け入れる場合の手続を順に見ていきます。なお、後述するとおり、最初の段階(募集取決めの締結からDMW登録まで)は、日本に在留するフィリピン人を採用する場合にも共通して必要です。

認定送出機関の選定

フィリピンの制度上、受入れ機関はフィリピン政府から認定を受けた現地の送出機関を通じて人材の紹介を受け、採用活動を行うことが求められます。フィリピン政府が認定する送出機関に係る情報は、出入国在留管理庁のホームページで案内されています。ただし、そこから確認できるのは機関の名称等にとどまりますので、連絡先やライセンスの取得状況といった詳細な情報は、DMWのホームページ内にある検索エンジン「LICENSED RECRUITMENT AGENCIES」で確認してください。

送出機関選びは、その後のすべての手続のスピードと品質を左右します。日本側の入管手続に慣れているか、MWOの様式変更に追随できているか、出国前オリエンテーションや健康診断の段取りが確立しているかといった点は、必ず契約前に確認してください。あわせて、ライセンスが現に有効であること、認定が取り消されていないことをDMWの検索エンジンで自ら確認する習慣をつけることをおすすめします。

募集取決め(Recruitment Agreement)の締結と公証

送出機関との間では、人材の募集及び雇用に関する互いの権利義務を明確にした募集取決め(Recruitment Agreement)の締結が求められます。出入国在留管理庁の解説によれば、この募集取決めは日本の公証役場での公証を経たものが求められるとのことです。公証には日程調整と費用が必要ですので、スケジュールに組み込んでおいてください。

もう一点、日本の法令面で見落とされがちな論点があります。出入国在留管理庁が公表しているフローチャートには、「認定送出機関による求職者の人選を行う行為はあっせんに当たるため、仮にこのような行為を行う場合には、日本国内の職業紹介事業者としての許可を得る必要があります」との注記があります。職業安定法上の職業紹介事業の許可に関わる問題ですので、人材紹介を伴うスキームを組む場合は、あらかじめ整理しておく必要があります。なお、Q&Aでは、日本の職業紹介事業者がMWOでの審査に関する手続に関与することは現在のところ認められていない、とも記載されています。

MWOへの提出書類の準備・提出

受入れ機関は、労働条件等を記載した雇用契約書のひな形、締結した募集取決め、求人・求職票等の必要書類をMWOに郵送し、所定の審査を受けます。提出書類は所定の様式に則って作成することが求められており、具体的な必要書類と様式はMWO東京のホームページに掲載されています。MWO東京が公表している案内では、おおむね次のような書類が求められています。

  • MWO所定の申請書
  • 事業許可証(派遣事業を行う場合はその許可証)の写しと英訳
  • 会社概要(MWO所定様式。派遣会社は派遣会社用の様式)
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)と英訳、または個人事業主の場合は納税証明書等
  • フィリピン人労働者に従事させる業務内容と求める資格・要件を記載した職務記述書
  • 募集取決め(複数の送出機関と契約する場合は、日本で公証を受けた誓約書等の追加書類)
  • 送出機関のDMWライセンスおよび代表者の身分証明書類
  • 求人票(Manpower Request/Job Order)および日本人従業員の給与明細
  • 雇用契約書のひな形および労働条件通知書
  • 賃金体系を示す資料

派遣形態で受け入れる場合は、日本で公証を受けた労働者派遣契約書、派遣先からの求人依頼書、派遣先一覧、会社案内などが追加で必要とされています。書類作成上のルールも細かく、A4用紙を使用すること、ホチキス留めではなくクリップでまとめること、署名と印鑑は原本であること(電子署名は不可)、日本語の書類にはすべて英訳を付し翻訳者の氏名・署名または印鑑を付すことなどが案内されています。なお、必要書類の範囲や様式は改定されることがありますので、着手前に必ずMWOの最新の案内で確認してください。

審査の標準処理期間は、出入国在留管理庁の解説では書類に不備がなければ15営業日以内とされています。なお、Q&AによればMWOでの審査に手数料はかからないとされています。

ステップ3|MWOでの英語面接と実地調査

書類審査を通過すると、次は面接です。ここが、フィリピン受入れで最も多くの企業がつまずく段階です。

出入国在留管理庁の解説によれば、フィリピンの制度上、書類審査を経た後、受入れ機関の代表者または委任された従業員がMWOに赴き、労働担当官による英語での面接を受ける必要があるとされています。そして次の一文が続きます。

「この面接は、コンサルティング業者(行政書士を含む。)や登録支援機関の方が代わって受けることが認められていないとのことですので、御注意ください(面接に通訳を同席させることは妨げられていません。)」

行政書士も登録支援機関も、この面接を企業に代わって受けることはできません。これは委任状の有無や報酬の多寡の問題ではなく、フィリピン側が定めた運用です。したがって受入れ機関は、代表者または社内の従業員が英語で面接に臨む前提で準備を進める必要があります。通訳の同席は妨げられていないとされていますので、英語での対応に不安がある場合は通訳の手配を検討してください。

面接で問われること

面接は、フィリピン人労働者の雇用主として適正かどうかを確認する場です。事業の実態、フィリピン人に担当させる業務の内容、賃金の水準と支払方法、労働時間と休日、住居や生活支援の体制、社内の受入れ責任者の理解度といった点は、書類に書かれた内容と口頭での説明が一致していることが重要になります。書類の作成を外部に任せきりにしていると、面接で説明ができず差し戻しになるケースがあります。提出書類の内容は、面接に臨む方が自分の言葉で説明できる状態にしておくことが実務上の最大のポイントです。

また、出入国在留管理庁の解説には、必要に応じてMWOによる受入れ機関への実地調査が実施されるとの記載もあります。事業所の実態、作業環境、宿舎の状況などが確認される可能性を想定し、書類上の記載と現場の実態を一致させておいてください。

ステップ4|DMWへの雇用主登録と推薦書の受領

書類審査と面接の結果、受入れ機関がMWOにより自国民の雇用主として適正であると判断された場合、MWOから認証印が押印された提出書類一式と推薦書(Recommendatory Memorandum)が受入れ機関宛てに郵送されます。

受入れ機関は、これらの書類一式を送出機関を通じて本国のDMWに提出します。DMWでは雇用契約で定める予定の労働条件等の内容が確認され、受入れ機関が雇用主としてDMWに登録されるとともに、求人情報が登録されます。登録後、提出した雇用契約書のひな形にDMWの認証印が押印され、送出機関を通じて受入れ機関に返送されます。この時点で、受入れ機関の手元にはMWOとDMWの両方の認証印が押された雇用契約書のひな形等が揃うことになります。

ここまで完了して初めて、受入れ機関はフィリピン国籍の方の採用活動に着手できる状態になります。逆にいえば、この登録が終わるまでは、面接をして内定を出しても手続を先に進めることができません。

2回目以降の受入れで省略できる手続・できない手続

受入れ機関が特定技能所属機関としてすでにDMWに登録されている場合、募集取決めの締結およびDMWへの登録手続は不要とされています。ただし例外があり、登録された雇用契約書から変更された契約条件をもって新たに受け入れる場合や、求人数を増やす必要がある場合には、求人・求職票の承認手続が必要とされています。

実務では、この点の確認漏れが遅延の典型的な原因になります。前回と同じ職種でも賃金改定を行った、勤務地を追加した、採用予定人数を増やしたといった変更があれば、改めてMWOでの承認手続が必要になる可能性があります。2回目以降だからと油断せず、条件に変更がないかを一覧で棚卸ししてから着手してください。

ステップ5|雇用契約から在留資格認定証明書・査証・出国前オリエンテーション

DMWへの登録が完了すると、送出機関が登録された求人情報を基に人材を募集し、受入れ機関は紹介を受けて特定技能に係る雇用契約を締結します。ここから日本側の手続とフィリピン側の手続が並走します。

在留資格認定証明書の交付申請

受入れ機関は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。在留資格認定証明書交付申請については、入管手数料は不要です(2025年4月1日の改定後も、在留資格認定証明書交付申請に手数料はかかりません。なお在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は各6,000円、オンライン申請の場合は各5,500円です)。

ここで極めて重要なのがCOEの有効期限です。出入国在留管理庁は、フィリピンから新たに受け入れる場合に必要となる在留資格認定証明書の有効期限は交付された日から3か月であるとしたうえで、フィリピン側の手続に必要と見込まれる期間も考慮し、有効期限切れとならないよう留意するよう明記しています。後述するとおり、出国前オリエンテーションの受講申込時にも、OECの発行申請時にも、COEが有効期限内である必要があります。フィリピン側の手続には相応の日数がかかりますので、COEが交付された段階で、逆算した工程表を送出機関と共有しておくべきです。

なお、令和5年3月17日から、在留資格認定証明書を電子メールで受領する運用が始まっています。本人は在外公館において電子メール(転送したメールを含む)を提示することで査証申請を行うことが可能ですが、代理人等が査証申請する場合は、紙の在留資格認定証明書の原本もしくは写し、または電子メールの印刷物の提出が必要とされています。フィリピンでの査証申請の運用は在フィリピン日本国大使館の案内に従う必要がありますので、電子交付を選択する場合は、事前に提示方法を送出機関と確認しておくと安全です。

査証発給申請

COEが交付されたら、来日予定のフィリピン国籍の方が在フィリピン日本国大使館に対して特定技能に係る査証発給申請を行います。申請方法や必要書類、標準処理期間は同館の案内によりますので、最新の情報を確認してください。

出国前オリエンテーション(PDOS)と健康診断

フィリピンの制度上、特定技能外国人として来日予定の方は、本国の海外労働者福祉庁(OWWA:Overseas Workers Welfare Administration)が実施する出国前オリエンテーション(PDOS:Pre-Departure Orientation Seminar)を受講する必要があるとされています。所要時間は半日程度で、受講申込は送出機関を通じて行う必要があります。受講申込時に、交付されたCOEが有効期限内である必要がある点に注意してください。

あわせて健康診断の受診も必要とされています。こちらも半日程度で終了し、受診申込は送出機関を通じて行います。

なお、出入国在留管理庁の解説によれば、査証発給申請、出国前オリエンテーションの受講、健康診断の受診は同時並行で行うことが可能とのことです。COEの3か月という期限を踏まえると、この並行処理を前提に段取りを組むことが現実的です。

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ステップ6|OEC(海外雇用許可証)の取得とOFW Travel Passへの移行

フィリピン側の手続の最終関門がOEC(Overseas Employment Certificate、海外雇用許可証)です。

OECとは何か

OECは、フィリピン側の手続を完了したことを証明する文書と位置づけられています。特定技能外国人として来日を希望する方は、査証を取得し、出国前オリエンテーションの受講と健康診断の受診を終えたうえで、送出機関を通じてDMWにOECの発行を申請します。そのうえで、フィリピンを出国する際の出国審査でOECを提示することが必要とされています。

出入国在留管理庁のQ&Aでは、「特定技能外国人として雇用する予定の方がOECの取得を忘れた場合、どうなるのでしょうか」という問いに対し、OECを取得しなかった場合、フィリピンを出国することは認められていないと回答されています。査証が出ていても、航空券を押さえていても、OECがなければ出国できません。受入れ日が確定しているときほど、この一点の確認を怠らないでください。

OECの発行申請時にも、COEが有効期限内である必要があります。また、MWOでの審査に手数料はかからない一方で、DMWによるOECの発行には手数料が必要とされています。

有効期間は60日、出国の都度必要

OECの有効期限は発行から60日間とされており、海外就労者がフィリピンを出国する都度、取得する必要があるとされています。Q&Aでは、雇用先が一時帰国前と帰国後で同じ場合であってもOECの取得が必要である、と明記されています。「一度取ったから次はいらない」という理解は誤りです。

2025年からのOFW Travel Pass

ここで、実務に直結する新しい動きを押さえておく必要があります。DMWは2025年11月27日付のAdvisory No. 38, Series of 2025「Implementation and Use of OFW Travel Pass」を発出し、eGovPHアプリを通じたOFW Travel Passの運用を開始しました。内容の要点は次のとおりです。

  • 対象:当初はすべての再雇用・帰任者(Balik-Manggagawa)を対象とし、DMWのオンラインシステムでOEC免除を取得した者も含む。
  • 取得方法:eGovPHアプリをダウンロードして登録し、国家機関(NGA)のセクションからDMWのタブを選び、Balik-Manggagawaサービスにアクセスしてトラベルパスを生成する。
  • 自動生成:システム上に有効な契約がある労働者にはトラベルパスが自動生成される。契約が失効している場合は、雇用主と就業先の情報の更新を促される。
  • 発行の条件:トラベルパスは同一の雇用主・同一の渡航先に戻る労働者に限って発行される。雇用主や就業先を変更する労働者は、システムによりDMWオンラインシステムに誘導され、最寄りのDMW地方事務所またはMWOでの対面処理の予約が必要となる。
  • 有効期間発行日から90日間。労働者はいつでも無効化・再発行が可能。
  • QRコードと状態表示:各トラベルパスにはQRコードが付され、DMW公式サイトのスキャナーで検証できる。状態は色分けで表示され、グレーは未生成または無効化、緑は有効、青は使用済み、琥珀色は失効間近、赤は失効を意味する。
  • 関係機関との連携:生成された記録は入国管理局(BI)およびeTravel情報システムに電子的に送信される。
  • 渡航税・空港使用料:OFW Travel Passは、渡航税および空港使用料の免除を受けるための海外雇用の追加的な証明として機能し、航空会社および空港サービスカウンターで受け入れられなければならない。
  • 従来方式の継続:既存のDMWオンラインサービスを通じて発行された紙のOFW Pass(移住労働者空港支援センター(MWAAC)が一時的または手作業で発行したものを含む)は、引き続き有効な出国許可として認められる。
  • オンラインサービスの継続:OFW Travel Passの対象外となる申請に対応するため、DMWオンラインサービスは引き続き利用可能。

整理すると、初回来日となる新規採用者は従来どおりDMWでのOEC取得が必要である一方、すでに同一の雇用主のもとで就労していて一時帰国から戻る方については、eGovPHアプリのOFW Travel Passで出国クリアランスを取得できる運用が始まっているということです。ただし、雇用主や就業先が変わる場合はトラベルパスの対象外となり、対面処理に回る点が重要です。特定技能では分野内での転職が制度上認められていますので、転職後に初めて一時帰国する社員については、必ず対面処理を前提に日数を見込むべきです。

日本に在留するフィリピン人を採用する場合と一時帰国の実務

国内在住者の採用でもフィリピン側手続は必要

技能実習2号・3号を良好に修了した方や、留学生として日本にいる方を特定技能として採用するケースは非常に多いのですが、この場合もフィリピン側の手続は免除されません。出入国在留管理庁のお知らせでは、募集取決めの締結、MWOへの申請手続、DMWへの特定技能所属機関としての登録手続が必要であり、これらを経ないままフィリピン国籍の方と雇用契約を締結することは認められておらず、フィリピンから新たに受け入れる場合も日本に在留する方を受け入れる場合も同様である、と明記されています。

手続の流れとしては、募集取決めの締結からDMW登録までは新規受入れと共通で、その後は雇用契約を締結し、本人が地方出入国在留管理官署に対して「特定技能」への在留資格変更許可申請を行うことになります。在留資格の変更が許可されれば、日本国内での一連の手続は完了です。

一時帰国のたびに必要になる手続

在留資格変更が許可された後、フィリピン国籍の方が「特定技能」の在留資格を保有したまま再入国許可(みなし再入国許可を含む)制度を利用してフィリピンに一時帰国する場合、DMWにOECの発行を申請・取得し、フィリピンを出国する際の出国審査でOECを提示する必要があるとされています。前述のとおり、同一雇用主・同一渡航先であればOFW Travel Passによる運用が始まっていますが、いずれにせよ「何もしなくてよい」わけではありません。

実務では、年末年始や旧正月、家族の慶弔などで急に一時帰国が決まることが少なくありません。特定技能雇用契約の基準を定める省令では、外国人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させるものとしていることが求められていますので、帰国自体は制度上も想定されています。帰国が決まったら、まずOECまたはOFW Travel Passの状態を確認するという運用を社内ルールとして定着させておくと、出国当日のトラブルを防げます。

工程表は「フィリピン側の日数」から逆算する

受入れ全体のスケジュールを組むうえでの実務的な考え方を整理します。MWOでの審査に書類不備がなくても15営業日前後、その後のDMW登録にも日数がかかります。募集・選考、雇用契約締結、COE交付申請と審査、査証発給、出国前オリエンテーションと健康診断、OEC取得と続くため、着手から入国までは相当の期間を見込む必要があります。COEの有効期限が3か月である以上、COEの交付を受けてからフィリピン側の準備を始めるのでは間に合わないことがあるという点が、フィリピン受入れ最大の勘所です。

あわせて、入社日から逆算して住居の確保や生活オリエンテーションの準備も進める必要があります。住居の確保は義務的支援の一項目であり、詳細は特定技能外国人の住居確保支援|社宅・賃貸・連帯保証・家賃負担の実務で解説しています。

費用の適正性と受入れ後に残る日本側の義務

保証金・違約金は日本側の基準で明確に禁止されている

送出国が絡む受入れでは、費用の透明性が常に論点になります。日本側の法令は、この点について明確な基準を置いています。

上陸基準省令の特定技能1号の項では、申請人またはその配偶者、直系もしくは同居の親族その他申請人と社会生活において密接な関係を有する者が、特定技能雇用契約に基づく活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されておらず、かつ、契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約が締結されておらず、締結されないことが見込まれることが求められています。

さらに同項では、申請人が特定技能雇用契約の申込みの取次ぎまたは外国における活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合には、その額及び内訳を十分に理解して当該機関との間で合意していることが要件とされています。食費・居住費その他定期に負担する費用についても、対価として供与される利益の内容を十分に理解したうえで合意しており、費用の額が実費に相当する額その他の適正な額であり、明細書その他の書面が提示されることが求められます。

受入れ機関側の基準としても、特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令第2条第1項において、保証金の徴収や違約金契約があることを認識して特定技能雇用契約を締結していないこと(第6号)、受入れ機関自身が違約金契約等を締結していないこと(第7号)、1号特定技能外国人支援に要する費用を直接又は間接に外国人に負担させないこと(第8号)が定められています。

二国間協力覚書でも、両国が共有すべき情報として、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭等を管理すること、違約金を課す契約をすること、人権を侵害すること、偽変造文書を行使すること、そして手数料その他の費用について算出基準を示さず、額及び内訳を理解させないで徴収することが「悪質な仲介機関による行為」として列挙されています。

送出機関が本人からどのような費用を徴収しているかは、受入れ機関にとって他人事ではありません。募集取決めの段階で費用の内訳の開示を求め、本人との合意書面を確認する運用を組み込んでください。フィリピン側の手数料規制については、DMWが2023年6月9日付で発出した陸上職のOFWの募集・雇用に関する規則が基礎となりますが、職種や条件によって取扱いが異なりうるため、具体的な可否や水準は送出機関およびDMW・MWOに直接確認することが確実です。受入れに要する費用の全体像は特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理もあわせてご覧ください。

受入れ後に残る日本側の義務

フィリピン側の手続を終えて入国した後は、日本側の受入れ機関としての義務が本格的に始まります。入管法第2条の5第6項により、特定技能1号の外国人と雇用契約を締結しようとする機関は1号特定技能外国人支援計画を作成しなければならず、同条第8項により支援計画は法務省令で定める基準に適合するものでなければなりません。支援計画の中身は特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説で詳しく整理しています。入国前に行う事前ガイダンスは、フィリピン側の出国前オリエンテーションとは別物ですので、混同しないよう注意してください。

届出義務も重要です。入管法第19条の18第1項は、特定技能雇用契約の変更・終了・新たな締結、支援計画の変更、支援委託契約の締結・変更・終了等があったときに出入国在留管理庁長官へ届け出ることを義務づけ、同条第2項は受け入れている特定技能外国人の氏名や活動内容、支援計画の実施状況等について定期的に届け出ることを義務づけています。期限管理の詳細は特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルールで解説しています。

支援を外部に委託する場合の相手方となる登録支援機関については、入管法第19条の23第1項が出入国在留管理庁長官の登録を受けることができる旨を定め、同条第2項が登録は5年ごとに更新を受けなければ効力を失うと定めています。委託先を選ぶ際は、登録の有効期間が切れていないかを必ず確認してください。制度の全体像は登録支援機関とは?役割・届出・義務的支援10項目を行政書士が解説で整理しています。

なお、特定技能制度そのものは拡大が続いており、特定産業分野は令和8年1月23日の閣議決定によりリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が加わって19分野となりました。制度全体の枠組みは特定技能とは?1号・2号の違いと19分野を解説を、通算在留期間の考え方は特定技能1号の5年後はどうなる?4つの選択肢と2025年改正を解説をご参照ください。分野ごとの試験要件は特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説、契約書の作成実務は外国人向け雇用契約書の作成ポイント|多言語対応と記載の注意点にまとめています。

特定技能外国人の受入れをご検討の企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次から支援計画の作成・各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。

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まとめ

フィリピンからの特定技能受入れは、日本側の在留資格手続とフィリピン側の送出手続が二本立てで進む点に最大の特徴があります。上陸基準省令は、送出国側で遵守すべき手続が定められている場合にはそれを経ていることを上陸許可基準としており、フィリピン側も在留諸申請の前に受入れ機関が手続を済ませることを求めています。入管への提出書類こそ不要ですが、手続そのものが不要なわけではありません。

フィリピン側の手続は、認定送出機関との募集取決めの締結(日本の公証役場での公証が必要)、MWOへの書類提出と審査、MWOでの英語面接、DMWへの雇用主登録という順で進みます。とりわけMWOの面接は、行政書士や登録支援機関が企業に代わって受けることが認められていません。代表者または委任された従業員が英語で臨む前提で準備し、提出書類の内容を自分の言葉で説明できる状態にしておくことが不可欠です。

スケジュール管理の要は在留資格認定証明書の有効期限3か月です。出国前オリエンテーションの受講申込時にも、OECの発行申請時にも、証明書が有効期限内である必要があります。査証発給申請・出国前オリエンテーション・健康診断は並行して進められますので、フィリピン側の所要日数から逆算した工程表を送出機関と共有してください。

出国の最終関門であるOECは有効期限60日で、出国の都度取得が必要です。取得しなければフィリピンを出国できません。あわせて、DMWが2025年11月27日付Advisory No. 38, Series of 2025で運用を開始したOFW Travel Passは、同一雇用主・同一渡航先に戻る再雇用・帰任者を対象に有効期間90日で発行され、雇用主や就業先を変更する場合は対面処理に回る仕組みです。転職後に初めて一時帰国する社員がいる場合は、余裕をもった日程を確保してください。

行政書士法人Treeでは、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請といった官公署への提出書類の作成と申請取次1号特定技能外国人支援計画の作成特定技能所属機関としての随時届出・定期届出、および特定技能雇用契約書をはじめとする権利義務に関する書類の作成を承っています。フィリピン人材の受入れをご検討の際は、日本側の手続とフィリピン側の工程を突き合わせた段階から、お気軽にご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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