設備投資を検討している中小企業から、「機械を買う前にやっておくべき手続はあるか」と聞かれたとき、まず確認するのが先端設備等導入計画です。中小企業等経営強化法に基づいて市区町村の認定を受けておくと、その計画に従って取得した設備にかかる固定資産税(償却資産)の課税標準が3年間または5年間軽減されるという制度です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金)や省力化投資補助金で設備を導入する場面と重なることも多く、補助金の検討と同じテーブルで話題に上がります。
ただしこの制度は、令和7年度税制改正で内容が大きく変わりました。最大の変更点は、従業員への賃上げ方針の表明が、固定資産税の特例を受けるための必須要件になったことです。以前は賃上げ表明がなくても軽減を受けられましたが、現在は雇用者給与等支給額を1.5%以上増加させる方針を表明していなければ、特例そのものが使えません。そして3.0%以上を表明すれば、課税標準の特例率は2分の1から4分の1に、軽減期間は3年から5年に拡大します。
もうひとつ、この制度には取り返しのつかない落とし穴があります。設備を取得した後で計画を申請することは一切できないという点です。同じ中小企業等経営強化法の経営力向上計画には設備取得後の申請を認める例外がありますが、先端設備等導入計画には例外がありません。
本記事では、先端設備等導入計画の認定要件、固定資産税の特例の中身、賃上げ表明の考え方、申請の流れと必要書類、そして実務でつまずきやすい分岐点を、中小企業庁の公表資料と条文に沿って実務目線で解説します。
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目次
先端設備等導入計画とは——市区町村が認定する設備投資の計画
先端設備等導入計画は、中小企業等経営強化法第52条第1項に基づく制度です。同意導入促進基本計画に基づく先端設備等の導入をしようとする中小企業者が計画を作成し、導入する先端設備等の所在地を管轄する特定市町村(特別区を含む)に提出して認定を受けます。国が認定するのではなく、設備を置く現場の市区町村が認定主体である点が、この制度の性格を決めています。
「先端設備等」という語は、同法第2条第14項で「従来の処理に比して大量の情報の処理を可能とする技術その他の先端的な技術を活用した施設、設備、機器、装置又はプログラムであって、それを迅速に導入することが中小企業者の生産性の向上に不可欠なものとして経済産業省令で定めるもの」と定義されています。名称から最先端の研究機器のようなものを想像されることがありますが、実際に省令で指定されているのは機械装置や器具備品といった一般的な減価償却資産であり、後述のとおり工作機械や測定器、業務用システムなど、ごく通常の設備投資が対象になります。
認定を受けた事業者が使える支援措置は2つです。ひとつが地方税法に基づく固定資産税の課税標準の特例、もうひとつが中小企業等経営強化法第54条に基づく中小企業信用保険法の特例(信用保証の別枠)です。実務上、主に利用されているのは前者の固定資産税の特例です。
利用実績も相応の規模になっています。中小企業庁が2026年8月24日に公表した令和8年3月31日時点の集計によると、令和7年4月1日以降の新規認定は5,901件、設備投資の額は約4,245億円、設備等の数量は18,723台でした。あわせて変更認定が3,365件、約1,772億円、9,355台となっています。これらは、先端設備等導入計画に係る固定資産税の軽減措置を講じている1,640自治体の実績です。
導入促進基本計画に同意した市区町村でなければ使えない
この制度の入口で最初に確認すべきなのが、設備を設置する市区町村が「導入促進基本計画」の同意を得ているかです。導入促進基本計画は市町村が作成し、経済産業大臣に協議してその同意を求めるもので(中小企業等経営強化法第49条第1項)、記載事項は先端設備等の導入の促進の目標、先端設備等の種類、導入の促進の内容に関する事項、計画期間、配慮すべき事項の5つです(同条第2項)。
中小企業庁のQ&Aでは、導入促進基本計画の作成は自治体にとって任意であり義務ではないと明記されています。したがって、同意を得ていない市区町村に設備を置く場合、先端設備等導入計画の認定を受けること自体ができません。さらに厄介なのは、同意を得ている市区町村であっても、対象地域・対象業種・対象設備を国の基本方針より絞り込んで定めることが認められている点です。Q&Aでも「対象から外れた地域、事業、設備等については、先端設備等導入計画の認定を受けられないため、固定資産税の特例の対象とならない」と注意喚起されています。
また、申請先は本社所在地ではなく実際に設備投資を行う事業所等が所在する市区町村です。複数市町村が導入促進基本計画を共同で作成している場合でも、申請先は設備が置かれる市区町村になります。本社が東京、工場が地方という会社では、この点を取り違えると申請自体が空振りになります。同意している市区町村の一覧は中小企業庁のホームページで公表されているので、検討の初日に確認しておくべき事項です。
経営力向上計画・経営革新計画との違い
中小企業等経営強化法には似た名前の計画が複数あり、混同されがちです。整理すると次のようになります。
| 計画 | 認定主体 | 主な税制メリット | 設備取得後の申請 |
|---|---|---|---|
| 先端設備等導入計画 | 市区町村(特定市町村) | 固定資産税(地方税)の課税標準の特例 | 不可(例外なし) |
| 経営力向上計画 | 主務大臣(国) | 中小企業経営強化税制(法人税・所得税の即時償却または税額控除)等 | 一定の例外あり |
| 経営革新計画 | 都道府県知事等 | 直接の税制優遇は主眼でなく、補助金の加点や金融支援が中心 | — |
先端設備等導入計画は地方税である固定資産税に効く制度、経営力向上計画は国税である法人税・所得税に効く制度、という整理がいちばん実務に近い理解です。両者は目的が異なるため、同じ設備投資について両方の計画認定を取得することも考えられます。国税側の即時償却や税額控除の詳細については中小企業経営強化税制とは?A・B・D・E類型(C類型廃止)・即時償却・税額控除・経営力向上計画を解説を、経営革新計画については経営革新計画とは?中小企業等経営強化法第14条・新事業活動5類型・付加価値額3%/給与支給総額1.5%・補助金加点を解説をあわせてご覧ください。
固定資産税の特例の内容——1.5%表明で3年1/2、3.0%表明で5年1/4
固定資産税の特例の根拠は地方税法附則第15条(固定資産税等の課税標準の特例)です。ここで実務上の注意点をひとつ挙げておきます。同条は毎年度の税制改正で項が新設・削除されるため、項番号が動きます。中小企業庁「先端設備等導入計画策定の手引き(令和7年4月版)」では第43項と記載されていますが、e-Gov法令検索で現行条文を確認すると第42項に位置しています。条文番号を引用する必要がある場面では、必ず最新の条文を確認してください。本記事では、内容そのものを条文に沿って説明します。
条文が定める枠組みは次のとおりです。
- 適用期間:令和7年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの期間に取得した設備が対象
- 対象者:租税特別措置法第10条第8項第6号に規定する中小事業者、または同法第42条の6第1項に規定する中小企業者(あわせて「中小事業者等」)
- 対象資産:雇用者給与等支給額の増加に係る事項が記載された認定先端設備等導入計画(中小企業等経営強化法第53条第2項)に従って取得した、先端設備等に該当する機械及び装置、工具、器具及び備品並びに建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く)
- 取得の限定:事業の用に供されたことのないものの取得に限る(=中古資産は対象外)
- 原則の軽減:新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年度分、課税標準となるべき価格の2分の1
- 加重された軽減:雇用者給与等支給額の大幅な増加に係る事項が記載された計画に従って取得したものは、5年度分、価格の4分の1
この「大幅な増加」の中身が、中小企業庁資料でいう3.0%以上の賃上げ方針です。整理すると、1.5%以上の賃上げ方針を表明して計画に位置付けた場合は3年間・課税標準2分の1、3.0%以上を表明して位置付けた場合は5年間・課税標準4分の1となります。
「税額が半分」ではなく「課税標準が半分」
制度説明でしばしば「固定資産税が半分になる」と言われますが、条文が定めているのは課税標準の特例です。この違いを押さえておくと、周辺の判断を誤りません。
償却資産に対して課する固定資産税の課税標準は、賦課期日における当該償却資産の価格で償却資産課税台帳に登録されたものです(地方税法第349条の2)。固定資産税の標準税率は100分の1.4(同法第350条第1項)で、市町村が条例で異なる税率を定めることもあり得ます。したがって課税標準が2分の1になれば結果として税額も2分の1相当になりますが、判断の基準はあくまで課税標準です。
関連して押さえておきたい規定が3つあります。ひとつは賦課期日が当該年度の初日の属する年の1月1日であること(同法第359条)。もうひとつは償却資産の免税点で、同一の市町村の区域内におけるその者の所有に係る償却資産の課税標準となるべき額が150万円に満たない場合、固定資産税を課することができません(同法第351条)。3つ目は都市計画税の課税客体が土地及び家屋であること(同法第702条第1項)で、償却資産として課税される設備には都市計画税はかかりません。
なお、具体的な税額の試算や償却資産申告書の作成・提出は税理士の業務です。導入する設備で実際にいくら軽減されるのか、法人税や所得税の取扱いとどう組み合わせるのかについては、必ず税理士にご確認ください。本記事では制度の枠組みと申請手続の説明にとどめます。
賃上げ表明がないと特例そのものが使えない
令和7年度税制改正の最大の変更点がここです。中小企業庁のQ&Aは、令和7年度の税制措置について「現行の税制措置に係る固定資産税の特例措置の適用期限を2年間延長するとともに、賃上げ率に応じて特例率を引き上げする点などが変更されています」と説明しています。
実際の運用として、認定申請書の「6 雇用に関する事項」欄について、中小企業庁の手引きは「賃上げ方針を伴う計画を申請しない(固定資産税の特例措置を希望しない)場合は、記載不要です」と注記しています。裏を返せば、固定資産税の特例を受けたいのであれば、賃上げ方針の記載は必須ということです。計画の認定自体は賃上げ方針がなくても受けられますが、その計画では税制優遇を一切受けられません。信用保証の別枠だけが目的であれば賃上げ方針なしでも構いませんが、税制目的なら不可欠です。
対象者——計画認定の「中小企業者」と税制の「中小事業者等」は別物
この制度でとくに誤解が多いのが対象者の範囲です。計画の認定を受けられる者と、固定資産税の特例を受けられる者は、根拠法令が違うため範囲も違います。中小企業庁の資料でも「税制支援は対象となる規模要件が異なりますので、ご注意ください」と注記されています。
計画の認定を受けられる「中小企業者」(中小企業等経営強化法第2条第1項)
| 業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| ゴム製品製造業(政令指定業種)※ | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウエア業又は情報処理サービス業(政令指定業種) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業(政令指定業種) | 5,000万円以下 | 200人以下 |
※自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。
条文の構造上、この表は資本金基準と従業員数基準のいずれかを満たせばよい「又は」の関係です。資本金が基準を超えていても、常時使用する従業員の数が基準以下であれば中小企業者に該当します。
会社(会社法上の会社(有限会社を含む)及び士業法人)と個人事業主のほか、企業組合、協業組合、事業協同組合、商工組合、商店街振興組合などの各種組合も認定を受けられます。生活衛生同業組合、酒造組合、内航海運組合、技術研究組合なども対象で、これらは構成員の一定割合が中小企業者であることが必要です。前提として、個人事業主の場合は開業届が提出されていること、法人の場合は設立登記がされていることが求められます。
複数の事業を行っている場合は「主たる事業」に該当する業種で判断します。主たる事業とは、売上高・付加価値額・従業員数などの経営指標の割合が最も多くの割合を占める事業を指します。申請書には日本標準産業分類の中分類を記載します。
一方、本法の対象外とされているのは、医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、農業協同組合、農事組合法人、森林組合、漁業協同組合、生活協同組合、一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人、学校法人などです。これらの法人形態では、そもそも先端設備等導入計画の認定を受けられません。
固定資産税の特例を受けられる「中小事業者等」
税制側の要件は次のとおりです。
- 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
ただし、資本金が1億円以下であっても、次のいずれかに該当する法人は中小事業者等になりません。
- 同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人
- 2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
ここでいう大規模法人とは、資本金もしくは出資金の額が1億円超の法人、資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人、資本金又は出資金の額が5億円以上である法人との間に当該法人による完全支配関係がある法人等をいいます。
つまり、製造業で資本金2億円の会社は、計画の認定は受けられるが固定資産税の特例は受けられないという組み合わせが生じます。また、大企業のグループ会社は、資本金が小さくても出資比率によって税制の対象から外れます。計画の認定申請に着手する前に、税制側の要件を先に確認しておくのが順序として合理的です。
さらに注意すべきは判定時点です。中小企業庁Q&Aは、認定計画の期間中に資本金が変動して中小法人に該当しないこととなった場合について、「課税の基準日となる1月1日現在において、『資本金1億円以下』等の中小事業者等の要件を満たすことが必要です」としています。増資を予定している会社は、軽減期間中の各賦課期日で要件を満たせるかを事前に検討しておく必要があります。
対象設備——金額要件と「ソフトウエアは固定資産税の特例対象外」
設備の範囲についても、計画に位置付けられる設備と固定資産税の特例の対象設備は一致しません。中小企業庁Q&Aも「先端設備等導入計画の認定対象となる設備は、経済産業省令で生産性向上に資する設備として定められたものが対象」「他方で、固定資産税の特例の対象は別途地方税法で規定しており、その対象は必ずしも一致しない」と明言しています。
計画に位置付けられる先端設備等(施行規則第7条第1項)
中小企業等経営強化法施行規則第7条第1項は、「直接商品の生産若しくは販売又は役務の提供の用に供するもの」であって、次の指定設備に該当するものと定めています。
| 減価償却資産の種類 | 対象となるものの用途又は細目 |
|---|---|
| 機械及び装置 | 全ての指定設備 |
| 器具及び備品 | 全ての指定設備 |
| 工具 | 測定工具及び検査工具(電気又は電子を利用するものを含む) |
| 建物附属設備 | 全ての指定設備 |
| ソフトウエア | 全ての指定設備 |
工具だけは測定工具及び検査工具に限定されている点に注意してください。切削工具や金型は含まれません。
固定資産税の特例の対象設備と最低取得価額
このうち固定資産税の特例の対象になるのは、償却資産として課税されるものに限られ、かつ次の最低取得価額を満たす必要があります。
| 設備の種類 | 1台1基又は一の取得価額 | その他 |
|---|---|---|
| 機械装置 | 160万円以上 | — |
| 工具(測定工具及び検査工具) | 30万円以上 | — |
| 器具備品 | 30万円以上 | — |
| 建物附属設備 | 60万円以上 | 家屋と一体で課税されるものは対象外 |
ソフトウエアは固定資産税の課税対象ではないため、特例の対象になりません。これは制度の理解として非常に重要で、生産管理システムやRPAの導入がメインの投資では、固定資産税の軽減はほとんど発生しません。ただし後述する投資利益率の計算では、ソフトウエアも分母(設備投資額)に含めて計算します。中小企業庁Q&Aは「ソフトウェアや取得価額の要件等により特例の対象外となる設備についても、当該投資目的を達成するために必要不可欠な設備の取得価額の合計額(分母)に含めたうえで投資利益率を計算してください」としています。
取得価額の考え方と、対象にならないケース
実務でよく問題になる論点を、中小企業庁Q&Aに沿って整理します。
- 中古資産は対象外です。条文上も「事業の用に供されたことのないものの取得に限る」とされています。
- 設備の修繕は対象外です。既存設備への資本的支出も原則として「取得等」に当たらず対象外ですが、単独資産としての機能の付加である場合など、実質的に新たな資産を取得したと認められる場合には適用を受けられます。
- 自社で製作した設備も対象になります。この場合の取得価額には、当該資産の建設等のために要した原材料費・労務費・経費の額、および事業の用に供するために直接要した費用の額が含まれます。
- 補助金を受けた設備は、補助金分を差し引かない額が取得価額です。固定資産税には圧縮記帳の適用がないためです(中小企業庁Q&A)。個別の取得価額の判定は税理士にご確認ください。補助金と設備投資の税務全般については補助金に税金はかかる?|消費税不課税・法人税法42条圧縮記帳・所得税法42条総収入金額不算入・インボイス・住民税国保への影響もご参照ください。
- 取得価額の範囲には、購入対価、外部付随費用(引取運賃、購入手数料、関税等)、事業の用に供するために直接要した費用(据付費、試運転費等)のうち、減価償却資産として計上されるものの合計額が含まれます。
- 消費税の税込・税抜の判定は事業者の経理方式によります。税込経理なら消費税を含んだ金額で、税抜経理なら含まない金額で判定します(ただしリース取引の場合は消費税抜きで判定します)。
- 単品の判定は「通常一単位として取引される単位」ごとに行います。本体と同時に設置する自動調整装置や原動機のような附属機器で、本体と一体になって使用するものがある場合は、附属機器を含めて判定することができます。
- 建物附属設備は、家屋として評価されるものは対象外です。判断に迷う場合は、所在の市町村(東京都特別区の場合は東京都)の固定資産税の担当部署に確認するよう案内されています。
2つの数値要件——労働生産性年平均3%以上と投資利益率5%以上
先端設備等導入計画には数値要件が2つあります。ひとつは計画の認定を受けるための労働生産性、もうひとつは固定資産税の特例を受けるための投資利益率です。前者だけなら計画は認定されますが税制は使えず、税制を使うには両方をクリアし、それぞれについて認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります。
労働生産性(計画認定の要件)
労働生産性は次の算式で算定します。
労働生産性 =(営業利益 + 人件費 + 減価償却費)÷ 労働投入量(労働者数 又は 労働者数×1人当たり年間就業時間)
要件は、基準年度(直近の事業年度末)比で労働生産性が年平均3%以上向上する見込みであることです。計画期間は3年間・4年間・5年間のいずれかです(市区町村の導入促進基本計画で期間が限定されている場合があります)。したがって、計画期間内における労働生産性の向上率が「計画年数×3%」以上になるように目標を設定します。3年計画なら9%以上、5年計画なら15%以上です。
算式の各項目について、中小企業庁Q&Aは次のように補足しています。
- 営業利益が指標であり、営業外利益に含まれるものは加味されません。個人事業主の場合は事業所得に着目します。遊休不動産の売却益のような本業以外の利益は反映されません。
- 人件費には、販売費及び一般管理費だけでなく、製造原価に係る労務費をはじめとする人件費、役員給与、賞与、福利厚生費なども含めることができます。
- 減価償却費は、製造原価と販売費及び一般管理費のどちらも対象です。
- 労働投入量には役員も含めることができます。
計画の策定単位は会社単位が原則ですが、部門単位や工場単位等で労働生産性の現状値と目標値の算出が可能な場合には、その単位でも構いません。創業間もない企業については、労働生産性の現状値と目標値が把握できないと認定を受けられませんが、1事業年度の実績がない場合でも、事業活動に基づく恒常的な売上・費用等の計上が行われていて現状値を算出できるのであれば認定は可能です。
目標が未達に終わった場合について、Q&Aは「そのことを持って即座に計画の取り消しなどは行われませんが、達成できなかった理由などについてしっかりと検討していただくことを想定しております」としています。目標未達に対する罰則はありません。
投資利益率(税制の要件・施行規則第7条第2項)
固定資産税の特例を受けるには、対象設備が年平均の投資利益率5%以上となることが見込まれる投資計画に記載された、投資の目的を達成するために必要不可欠な設備でなければなりません。算式は次のとおりです。
年平均の投資利益率 =(営業利益+減価償却費)の増加額 ÷ 設備投資額
ここで分子は「設備の取得等をする年度の翌年度以降3か年度における増加額を平均した額」、分母は「設備の取得等をする年度におけるその取得等をする設備の取得価額の合計額」です。減価償却費は会計上のものを用います。
計算にあたっての実務上のポイントは3つです。第一に、ソフトウエアのように本税制の対象外である設備も含めて計算します。第二に、各項目の決算値そのものではなく変化額(増減額)の見込みを使用します。第三に、投資が完了する年度(投資年度)の翌年度以降3か年度における営業利益と減価償却費の増加額で投資効果を見込みます。
判定単位は設備単位ではなく投資計画単位です。そのため、対象設備の追加等を行う場合は、先端設備等導入計画の変更認定申請に加えて、当初確認を受けた投資計画に関する変更確認も必要になります。複数拠点がある場合、投資計画の対象範囲が各事業所・各工場の単位に収まるならその単位で算出するのが基本ですが、投資効果を会社単位でしか測れない場合は会社単位の数値を用いることも可能です。
設備の取得時期が複数の事業年度にまたがる場合は、設備取得が完了する年度を投資年度として計算し、確認依頼に添付する「(別紙)基準への適合状況」の作成は1つで足ります。実際の取得時期が前後しただけなら手続は発生しませんが、導入する設備のスペックや取得単価に大きな変更が生じる場合は、設備取得前までに投資計画の変更や投資利益率の再計算を行い、認定経営革新等支援機関の確認と先端設備等導入計画の変更認定を受ける必要があります。
なお、設備稼働後に計画した投資利益率を達成できなかったとしても、税制適用の取消し等は行われません。また、中小企業経営強化税制のB類型のような実施状況報告の提出も不要です。
賃上げ方針の表明——1.5%と3.0%の分かれ目、そして「新規申請時のみ」
令和7年度税制改正で必須要件になった賃上げ方針の表明は、この制度でもっとも取扱いが細かい部分です。
何と何を比較するのか
比較の対象は雇用者給与等支給額です。これは、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される、全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
増加率の計算式は次のとおりです。
増加率 =(【A】−【B】)÷【B】
- 【A】:計画認定の申請日の属する事業年度(令和7年4月1日以後に開始する事業年度に限る)、又は当該申請日の属する事業年度の翌事業年度における雇用者給与等支給額
- 【B】:当該申請日の属する事業年度の直前の事業年度における雇用者給与等支給額(比較雇用者給与等支給額)
この増加率が1.5%以上、又は3%以上となる方針を策定します。決算期の変更等により【A】の事業年度が1年未満となる場合は、翌事業年度と比較します。また、前事業年度の事業期間が12か月に満たない場合は、前事業年度における雇用者給与等支給額の実績を1年分に換算して比較雇用者給与等支給額を算出します。
用語の範囲も押さえる必要があります。
- 国内雇用者:法人又は個人事業主の使用人のうち、国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員および役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。
- 役員:取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人のほか、定款等で役員として定めている者や、相談役・顧問などで実質的に経営に従事していると認められる者も含みます。
- 特殊関係者:法人の役員又は個人事業主の親族など。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までです。
- 給与等:俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与。残業手当・職務手当・家族(扶養)手当・住宅手当等の手当も含みます。所得税法上非課税とされる通勤手当や旅費等も原則として含まれますが、賃金台帳に記載された支給額のみを対象として合理的な方法により継続して計算することも認められます。退職金など給与所得とならないもの、派遣社員や請負労働者に係る費用は含まれません。
なお、賃上げ促進税制と異なり、青色申告の事業者に限られず、白色申告の事業者も対象です。法人税・所得税の賃上げ促進税制との関係については賃上げ促進税制と補助金の併用|中小企業最大45%税額控除・ものづくり補助金・持続化補助金の賃上げ要件および賃上げ促進税制の上乗せ要件|くるみん・えるぼし認定(令和8年4月以後)と教育訓練費廃止もあわせてご確認ください。
表明の手続
手続は次の流れです。まず賃上げ方針を策定し、従業員に表明します。従業員全員への表明は必要でなく、従業員の代表者のみへの表明でも足ります。次に、市区町村への認定申請書の「6 雇用に関する事項」欄に、賃上げ方針を策定して従業員へ表明した旨を記載し、あわせて「従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面」を添付します(中小企業等経営強化法施行規則第25条第4項)。この書面には、表明を受けた従業員代表者の署名(記名・押印も可)が必要です。
中小企業庁Q&Aは、「賃上げを行う方針を具体的に従業員に対して説明する必要があります」としたうえで、「従業員への説明の内容等について、認定手続において市区町村の担当者より書類に記載された説明を受けた従業員へ確認することがあります」と述べています。形式的に書面を整えるだけでなく、実際に説明を行っておく必要があります。
最も注意すべき点——賃上げ方針は新規申請時にしか書けない
この制度で最も見落とされやすく、かつ取り返しがつかないのがこの点です。中小企業庁Q&Aは次のように明記しています。
「賃上げ方針を先端設備等導入計画に記載できるのは新規申請時のみです。変更申請時に賃上げ方針を計画に記載することはできないのでご注意ください。」
つまり、賃上げ方針を入れずに計画の認定を受けてしまうと、後から変更申請で追加することができず、その計画では固定資産税の特例を一切使えなくなります。固定資産税の特例を使う予定があるなら、新規申請の時点で賃上げ方針を位置付けておく必要があります。
一方、新規申請に賃上げ方針が位置付けられている計画については、賃上げ方針の「変更」は可能です。ただし取扱いは設備の取得時期で分かれます。
- 1.5%以上の方針で認定を受けた計画に、変更認定で設備を追加した場合、追加された設備にも特例率2分の1が適用されます。3%以上の場合も同様に、追加設備に4分の1が適用されます。
- 1.5%以上の方針が記載された計画により設備を取得した後に3%以上の方針へ変更しても、取得済みの設備には引き続き2分の1が適用されます。
- 1.5%以上の方針が位置付けられた計画に記載されている設備の取得前に3%以上の方針へ変更認定を受けた場合、その未取得の設備には変更後の4分の1が適用されます。特例率は取得日時点での最新の認定計画に基づいて判断されるためです。
申請書の「先端設備等の種類及び導入時期」欄の備考には、設備ごとに特例率(1/2、1/4)をメモしておくことが推奨されています。変更申請によって設備ごとに特例率が異なる状態になり得るためです。
賃上げ方針を伴う申請ができないケース
次の場合には、賃上げ方針を伴う計画申請ができません。すなわち固定資産税の特例を使えません。
- 社内に国内雇用者に該当する従業員が存在しない場合。役員のみで構成される法人や、従業員が役員の親族のみという会社はここに該当し得ます。
- 前事業年度における雇用者給与等支給額(比較雇用者給与等支給額)の実績がない場合。比較対象がないためです。
逆に、実際の賃上げが方針どおりに実現しなかった場合の扱いも押さえておきましょう。Q&Aは、「計画期間中の経済情勢等により必ずしも想定どおりの賃上げに至らないこともあるかと思いますので、それだけを以って税の追納等は発生しません」としています。ただしこれは結果としての未達についての話であり、「賃上げ方針を表明していないことが発覚した場合」は特例措置を適用できません。表明の手続そのものは確実に行う必要があります。
申請の流れと必要書類——「認定後に取得」が絶対条件
手続の全体像は次のとおりです。
- 設備を設置する市区町村が導入促進基本計画の同意を受けているかを確認する。対象地域・対象業種・対象設備の限定も確認する。
- 認定経営革新等支援機関(中小企業等経営強化法第31条第1項)に、①先端設備等導入計画の事前確認と、②投資計画に関する確認を依頼する。
- 認定経営革新等支援機関から、①先端設備等導入計画の事前確認書と、②投資計画に関する確認書の発行を受ける。
- 賃上げ方針を策定し、従業員(代表者のみでも可)へ表明する。
- 市区町村長へ認定申請書(様式第22)を提出する(施行規則第25条第1項。申請書は1通)。
- 市区町村から認定書の交付を受ける。
- 認定後に設備を取得する。
- 設備の所在地の市町村(東京都特別区の場合は東京都)へ償却資産の申告を行う(1月31日まで。地方税法第383条)。
認定経営革新等支援機関は、商工会議所・商工会・中小企業団体中央会、地域金融機関、士業等の専門家などが認定されています。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」で探すことができます。
新規申請の必要書類
- ① 認定申請書【様式第22】
- ② 認定経営革新等支援機関による事前確認書
- ③ その他、市区町村長が必要と認める書類
- ④ 返信用封筒(A4の認定書を折らずに返送できるもの。宛先記載・切手貼付)
税制措置の対象となる設備を含む場合は、これに加えて次の書類が必要です。
- ⑤ 認定経営革新等支援機関が発行する投資計画に関する確認書
- ⑥ 従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面
さらに、ファイナンスリース取引でリース会社が固定資産税を納付する場合は、⑦リース契約見積書(写し)と、⑧(公社)リース事業協会が確認した固定資産税軽減計算書(写し)も添付します。
認定経営革新等支援機関に投資計画の確認を依頼する際には、確認依頼書と別紙(基準への適合状況)のほか、貸借対照表・損益計算書(直近1年分)、導入する設備の見積書、売上高・営業利益の増加や売上原価・販管費の減少の根拠となる積算資料、設備導入前後の変化がわかるレイアウト図などの提出を求められます。
なお、事前確認書および投資計画に関する確認書に押印は不要です。ただし重要な書類であることから、確認書のPDFデータを送受信したメール等の長期保存が推奨されています。
認定前に設備を取得したら、その設備は対象外
中小企業庁の手引きは、「先端設備等については、『先端設備等導入計画』の認定後に取得することが【必須】です」「中小企業等経営強化法における『経営力向上計画』のように、設備取得後に計画申請を認める特例はありませんのでご注意ください」と明記しています。Q&Aでも「設備を既に取得した後に『先端設備等導入計画』の認定を受けることはできません」とされ、例外はありません。
ここで問題になるのが「取得」の判断時点です。Q&Aは「機械等の所有権を得たこと、つまり機械等を購入等をしたことを指します。例えば、検収が終わっていない設備については、引き渡しが済んでいないことから一般的に未取得の状態と考えられます」としています。発注済みでも検収前であれば未取得と整理される余地はありますが、判断は個別事情に左右されるため、認定前に発注段階へ進むことは避けるのが安全です。
また、投資計画に関する確認書は事後提出ができません。Q&Aは「旧税制における工業会証明書のように先端設備等導入計画の申請後における事後提出はできませんので、計画申請前に認定経営革新支援機関からの確認を受け、必ず申請時に書類を揃えてください」としています。
賦課期日と時間軸の設計
固定資産税の賦課期日は1月1日です(地方税法第359条)。ある年の1月2日から12月31日までに取得した償却資産は、翌年度から固定資産税が課され、そこから3年度分または5年度分が軽減対象になります。軽減期間は「新たに固定資産税が課されることとなった年度から」起算されるため、取得が年末か年始かで初回の課税年度が1年ずれます。
適用期間の末日は令和9年(2027年)3月31日です。この日までに取得した設備が対象になります。そこから逆算すると、認定経営革新等支援機関による2種類の確認、市区町村の審査、設備の納期と検収という工程を積み上げる必要があります。市区町村の標準処理期間は自治体ごとに定められますが、Q&Aでは参考として、国が認定する経営力向上計画の標準処理期間が30日であることが示されています。設備の納期から逆算し、数か月単位の余裕を持ってスケジュールを組むのが実務の要点です。
変更申請・リース・他制度との併用
変更認定(中小企業等経営強化法第53条第1項)
認定を受けた中小企業者が、認定に係る先端設備等導入計画を変更しようとするときは、認定をした特定市町村の変更認定を受けなければなりません。設備の追加取得などが典型例です。様式は様式第23です(施行規則第26条第1項)。
一方、法第53条第1項の認定の基準に照らして計画の趣旨を変えないような軽微な変更は、変更申請が不要です。手引きは「設備の取得金額・資金調達額の若干の変更、法人の代表者の交代など」を軽微な変更の例として挙げています。変更認定を受ける際の認定経営革新等支援機関の再確認についても、「認定の基準となる労働生産性に影響を及ぼすような場合については、再度事前確認を得て頂く必要があります」「法人名称の変更など労働生産性に影響を及ぼさない場合、確認は不要です」と整理されています。
変更申請の必要書類は、変更認定申請書(様式第23)、変更後の計画(変更・追記部分に下線)、事前確認書、旧計画一式の写し、返信用封筒です。税制措置の対象設備を含む場合は投資計画に関する確認書が、リースの場合はリース契約見積書と固定資産税軽減計算書の写しが追加で必要になります。さらに、1.5%以上の方針で認定を受けた後に3.0%以上の方針を策定する場合など、従業員へ賃上げ方針を表明したことを証する書面の提出が必要になります。手引きでは、賃上げ方針の内容を変更しない場合であってもこの書面の提出を求められる可能性があるとされているため、申請先の市区町村に確認してください。
リース取引の扱い
ファイナンスリース取引は対象ですが、オペレーティングリース取引は対象外です。所有権移転外リース取引では、固定資産税はリース会社が納付しますが、この制度は設備を導入する中小事業者等が軽減を受ける制度なので、事業者が支払うリース料金に含まれる固定資産税相当額が軽減されます。軽減が適切に反映されているかは、リース会社が作成する「固定資産税軽減計算書」で確認できます。この書類はリース契約の総額を「物件金額」「金利・手数料」「固定資産税」に分けて記載し、軽減前後の比較ができる様式になっています。
所有権移転リース取引の場合は、ユーザーが固定資産税を申告・納付するならユーザーに、リース会社が申告・納付するならリース会社に特例措置が適用されます。リース取引における取得価額の判定は、事業者の経理方式にかかわらず消費税抜きで行います。
他制度との併用可否
- 同じ償却資産で2以上の固定資産税の特例措置を受けることはできません。たとえば公害防止用設備に対する固定資産税の課税標準の特例(地方税法附則第15条第2項)との併用は不可です。
- 特別償却・税額控除に係る税制とは重複して利用することが可能です。固定資産税は地方税、特別償却・税額控除は国税なので、それぞれ別の制度として適用されます。
- 補助金については、補助金側のルールで併用が禁止されていなければ併用可能です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金)や省力化投資補助金で導入する設備について、あわせて先端設備等導入計画の認定を取得するという組み合わせが考えられます。ただし本特例の対象は令和9年(2027年)3月31日までに取得した設備のため、補助金の交付決定を待って発注する場合は、取得がこの期限に間に合うかを事前に確認してください。省力化投資補助金(カタログ注文型)の制度内容は中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型とは|2026年3月19日改定後の補助率1/2・対象設備・販売事業者との共同申請を、主要補助金の年間の流れは補助金スケジュール2026年版|主要補助金の公募時期・締切一覧カレンダーをご覧ください。最新の公募回・締切は、申請前に各事務局の公式サイトでご確認ください。
- 設備を別の自治体へ移転すると特例を失います。A市で認定を受けた計画に従って設備を導入した後にB市へ移転した場合、その設備は既に取得済みであるためB市に先端設備等導入計画を申請できず、結果として税の特例も受けられません。
- 認定が取り消された場合、原則として、適法に認定されていた期間の軽減分を過去に遡って納付する必要はありません。ただし、計画の認定を申請する際に虚偽の内容を申し出ていたような場合はこの限りではありません。なお、認定先端設備等導入計画の実施状況について虚偽の報告をした場合には、中小企業等経営強化法第76条第1項により30万円以下の罰金に処せられます。
信用保証の別枠と、実務でつまずきやすいところ
中小企業信用保険法の特例(中小企業等経営強化法第54条)
認定を受けた事業者は、計画の実行にあたり民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証について通常枠とは別枠の追加保証を受けられます。保証限度額は次のとおりです。
| 保険の種類 | 通常枠 | 別枠 |
|---|---|---|
| 普通保険 | 2億円(組合4億円) | 2億円(組合4億円) |
| 無担保保険 | 8,000万円 | 8,000万円 |
| 特別小口保険 | 2,000万円 | 2,000万円 |
あわせて、普通保険の保険関係であって先端設備等導入関連保証に係るものについては、てん補率が100分の70から100分の80に引き上げられます(同法第54条第2項)。
ただし注意点があります。金融支援の活用を検討している場合は、先端設備等導入計画を提出する前に信用保証協会や金融機関に相談する必要があります。また、金融機関および信用保証協会の融資・保証の審査は市区町村による計画の認定審査とは別に行われるため、認定を取得しても融資・保証を受けられない場合があります。
実務でつまずきやすい点
- 設備を認定前に取得(引渡し・検収)してしまった。取得後に認定を受けることはできず、回復できない失敗です。発注前の段階で、まず認定のスケジュールを確認します。
- 設置予定地の市区町村が導入促進基本計画の同意を受けていない、または業種・地域・設備が対象から外れている。複数拠点がある会社では、拠点ごとに結論が変わることがあります。
- 新規申請で賃上げ方針を書き忘れた。変更申請では追加できません。固定資産税の特例を使う予定があるなら、新規申請で位置付けておく必要があります。
- 国内雇用者に該当する従業員がいない。役員のみの法人では、そもそも賃上げ方針を伴う申請ができません。
- 最低取得価額を満たしていない、あるいは投資の中心がソフトウエアである。計画は認定されても固定資産税の軽減はほとんど生じません。
- 建物附属設備が家屋と一体で評価されていた。家屋として評価されるものは対象外です。
- 賦課期日をまたぐ取得タイミングを読み違えた。1月1日を基準に初回課税年度が決まります。
- 償却資産申告で特例の適用を漏らした。認定を受けても申告で特例を適用しなければ軽減されません。償却資産申告書の記載方法は、税理士または設備所在地の市町村(東京都特別区の場合は東京都)の固定資産税担当部署にご確認ください。
どの専門家に何を依頼するか
この制度は、関係する専門家の職域がはっきり分かれます。整理しておきます。
- 行政書士:先端設備等導入計画の認定申請書(様式第22)、変更認定申請書(様式第23)など、市区町村という官公署に提出する書類の作成は、行政書士法第1条の3第1項に定める業務です。提出手続の代理は同法第1条の4第1項第1号に基づきます。これらの書類の作成にあわせて、導入促進基本計画の同意状況や自治体ごとの運用の確認、添付書類の整理も行います。
- 認定経営革新等支援機関:労働生産性が年平均3%以上向上する見込みかの確認と事前確認書の発行、投資利益率が年平均5%以上となる見込みかの確認と確認書の発行は、認定経営革新等支援機関の役割です。この確認なしに認定申請はできません。
- 税理士:償却資産申告書の作成・提出、軽減額の試算、法人税・所得税における特別償却や税額控除の適用、補助金を受けた場合の税務上の取扱いなど、税務に関する事項は税理士の業務です。個別の税額計算や申告の方法については、必ず税理士にご確認ください。
- 社会保険労務士:賃金台帳の整備、就業規則、労働社会保険諸法令に基づく手続は社会保険労務士の業務です。賃上げ方針の表明にあたって労務管理面の整備が必要になる場合は、社会保険労務士にご相談ください。
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まとめ
先端設備等導入計画は、中小企業等経営強化法第52条第1項に基づき市区町村が認定する計画で、認定を受けた計画に従って取得した設備について固定資産税の課税標準が軽減されます。前提として、設備を設置する市区町村が導入促進基本計画の同意を得ていることが必要で、同意している市区町村でも対象地域・業種・設備が絞り込まれている場合があります。検討の最初に確認すべき事項です。
令和7年度税制改正後の軽減内容は、雇用者給与等支給額を1.5%以上増加させる賃上げ方針を表明した場合に3年度分・課税標準2分の1、3.0%以上の場合に5年度分・課税標準4分の1です。適用期間は令和7年4月1日から令和9年3月31日までに取得した設備が対象で、根拠は地方税法附則第15条にありますが、同条は毎年度の改正で項番号が動くため、引用時は最新の条文を確認してください。
要件は2系統あります。計画認定のための労働生産性年平均3%以上の向上と、税制適用のための年平均投資利益率5%以上で、いずれも認定経営革新等支援機関の確認書が必要です。対象設備は機械装置160万円以上、測定工具及び検査工具・器具備品30万円以上、建物附属設備60万円以上で、いずれも新品に限られます。ソフトウエアは固定資産税の課税対象外のため特例の対象になりませんが、投資利益率の分母には含めて計算します。
実務上とくに致命的なのが2点です。ひとつは設備を認定後に取得することが必須で、経営力向上計画のような事後申請の特例が一切ないこと。もうひとつは賃上げ方針を計画に記載できるのは新規申請時のみで、変更申請では追加できないことです。この2つを外すと、固定資産税の特例を受けられなくなります。設備の納期から逆算し、認定支援機関の確認と市区町村の審査に十分な期間を確保してください。
行政書士法人Treeでは、先端設備等導入計画の認定申請書・変更認定申請書といった市区町村に提出する書類の作成(行政書士法第1条の3第1項)と、提出手続の代理(同法第1条の4第1項第1号)、および自治体ごとの導入促進基本計画の運用確認や添付書類の整理を承っています。補助金の申請とあわせて設備投資の手続を整理したい場合は、お気軽にご相談ください。なお、償却資産申告書の作成・提出や軽減額の試算は税理士の業務、賃金台帳・就業規則の整備や労働社会保険諸法令に基づく手続は社会保険労務士の業務にあたります。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


