告訴状関連

動物虐待の告発状|動物愛護法44条の類型・写真証拠の残し方と刑事責任

更新: 約32分で読めます

目の前で起きている犬や猫への暴行、明らかに衰弱しているのに放置されている飼い犬、段ボールに入れて置き去りにされた子猫。こうした場面に出くわしたとき、「これは犯罪ではないのか」「警察は動いてくれるのか」「自分は飼い主ではないが何かできることはあるのか」と悩まれる方は少なくありません。

動物虐待は、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「動物愛護管理法」といいます)第44条が定める刑事犯罪です。そしてこの犯罪については、飼い主でない第三者であっても捜査機関に犯罪事実を申告できます。刑事訴訟法第239条第1項が「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と定めているためです。近隣住民でも、通りすがりの目撃者でも、告発は可能です。

もっとも、告発が受理され捜査につながるかどうかは、申告する事実の具体性と客観的な証拠の有無にかかっています。動物は言葉で被害を語れず、外傷は治癒し、飼養環境も日々変化するため、「その瞬間に、正しい方法で記録を残せたかどうか」が決定的です。本記事では、第44条の3つの犯罪類型と法定刑、「愛護動物」の範囲、「みだりに」という要件を条文に即して整理したうえで、環境省が令和4年3月に策定し令和7年3月に第2版を公表した「動物虐待等に関する対応ガイドライン」に沿って、証拠の残し方と告発状に盛り込むべき事項を実務目線で解説します。

告訴状・告発状の作成でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、警察署(司法警察員)に提出する告訴状・告発状について、事実関係と証拠を整理した書面の作成を承ります。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。

告訴状・告発状作成サポートの詳細を見る

動物虐待はなぜ犯罪として扱われるのか——保護法益と検挙の現状

動物愛護管理法第1条は、この法律の目的を「動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する」ことと定めています。

環境省の「動物虐待等に関する対応ガイドライン」は、この法律の保護法益について、動物愛護管理法は動物の生命・身体の安全そのものではなく動物愛護の良俗を保護するものであり、動物は権利主体ではなく権利客体であるとされている、と整理しています。もっとも同法第2条第1項は「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」と定めています。さらに平成24年改正では基本原則に第2項が加えられ、動物を取り扱う場合には、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理、その動物の種類・習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならないとされました。これらの実効性を担保する罰則が第6章の第44条です。

検挙件数は高水準で推移している

警察庁生活安全局生活経済対策管理官が公表する「生活経済事犯の検挙状況等について」によれば、動物愛護管理法第44条違反に係る事犯(動物虐待事犯)の検挙事件数は次のように推移しています。

検挙事件数
平成28年 62件
平成29年 68件
平成30年 84件
令和元年 105件
令和2年 102件
令和3年 170件
令和4年 166件
令和5年 181件
令和6年 160件
令和7年 172件

令和5年の181件は、統計を取り始めた平成22年以降で過去最多でした。令和7年は172件と前年より12件(7.5パーセント)増加しており、警察庁は「依然として高水準で推移している」と評価しています。平成28年の62件と比べると、約2.8倍の水準です。

警察庁は今後の取組として、特に公共の場所や動画投稿サイトのような多数の者の目に触れる形で行われる悪質な事犯について、被疑者の早期検挙に向けて迅速な捜査を推進すると明記しています。拡散される虐待動画に捜査機関が積極的な姿勢を示している点は、告発を検討する側にとって重要な前提知識です。

動物愛護管理法44条が定める3つの犯罪類型と法定刑

第44条は第1項から第3項までに3つの犯罪類型を定めています。環境省ガイドラインは、この3罪をあわせて「愛護動物虐待等罪」と呼び、これらに係る事案を「動物虐待等事案」と整理しています。

第1項:愛護動物殺傷罪(5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金)

第44条第1項は「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金に処する」と定めます。令和元年改正(令和2年6月1日施行)により、それ以前の「二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金」から大幅に引き上げられたものです。

なお、懲役刑と禁錮刑は拘禁刑に一本化され、令和7年6月1日から施行されています。改正前の解説記事や古い啓発資料には「懲役」と書かれたものが残っていますが、現行条文の表記は「拘禁刑」です。

第2項:愛護動物虐待罪(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)

第44条第2項は、愛護動物に対する具体的な虐待行為を列挙したうえで「その他の虐待を行つた者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する」と定めます。令和元年改正以前は罰金刑のみでしたが、この改正により拘禁刑(当時は懲役刑)が新たに設けられました。

ガイドラインはこの罪の実質を「愛護動物に対しては、不必要に強度の苦痛を与えるなどの残酷な取り扱いをしてはならない」ことと説明し、虐待の類型には「積極的虐待」(暴力を加える、酷使する、恐怖を与える等)と「ネグレクト」(健康管理をしないで放置する、病気を放置する、世話をしないで放置する等)があると整理しています。

第3項:愛護動物遺棄罪(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)

第44条第3項は「愛護動物を遺棄した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する」と定めます。ここでいう「遺棄」とは、愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に隔離することにより、生命・身体を危険にさらす行為をいい、「移転」という作為形態と「置き去り」という不作為形態の双方を含みます。

置き去りによる遺棄罪の成立には行為者の作為義務が必要ですが、法第7条第1項が動物の所有者又は占有者に適正な飼養・保管の責務を課していることから、所有者・占有者は置き去りでも成立し得ると解されています。他方、人が所有・占有していない愛護動物については、作為義務を基礎づける特段の事情がない限り、単に保護をせず立ち去っただけでは一般に成立し難いとされています。

未遂を処罰する規定は置かれていない

実務上見落とされやすい点として、第44条の3罪はいずれも未遂犯処罰規定が置かれておらず、殺害しようとして失敗した事案を「殺傷罪の未遂」として立件することはできません。

ただしガイドラインは、外傷が生ずるおそれのある暴行を加え殺傷に至らなかった場合には第2項の愛護動物虐待罪が成立し得ると説明しています。告発を検討する際は、結果の有無だけでなく、加えられた有形力の内容そのものを記録しておくことが重要です。

遺棄とネグレクトの区別

ガイドラインは、ネグレクト(第2項の虐待の一種)は場所的な隔離を伴わないで必要な保護を与えない行為、遺棄(第3項)は主に場所的隔離を伴った保護の拒絶である、と整理しています。自宅で飼い続けながら餌も水も与えず病気も放置しているならネグレクト、山中や公園に運んで置き去りにしたなら遺棄、という切り分けが基本形です。

「愛護動物」とは何か——44条4項が定める範囲

第44条第1項から第3項までの罪は、対象が「愛護動物」である場合に限って成立します。この定義は第44条第4項に置かれています。

第1号動物(占有を問わない11種)

第4項第1号は「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」の11種を掲げます。これらは、類型的にみて人間の生活に役立ち飼育されることが予定されている家畜であり、たまたま人の占有を離れていても保護の対象とすべきである、という考え方に基づきます。

重要なのは、第1号動物については「人が占有していること」が要件になっていない点です。したがって、市街地や村落に生息する無主の野良犬・野良猫も愛護動物に含まれます。飼い主がいない野良猫を蹴った、毒餌を与えたといった行為も、当然に第44条の適用対象です。

他方、常時山野で野生の鳥獣等を捕食し生息している野生化したノイヌ・ノネコ等は含まれません。同法の「動物」は人と関わりのあるものを対象としており、純粋な野生状態の動物は対象外とされているためです。ただしガイドラインは、山野で発見された犬・猫であっても、その行動圏に人が居住等している場合は原則として愛護動物として考えるべきであるとしています。

いえばと(ドバト)にも留意が必要です。市街地等に棲息するドバトも、給餌等によって人の社会に関与することとなると愛護動物の「いえばと」とみなされることがあるとされ、令和7年中には自宅で飼養していたカワラバトを殴打して死亡させた事案が動物愛護管理法違反(愛護動物の殺傷)等で検挙されています。なお、ニホンノウサギやキジバトは第1号動物には該当しませんが、人が占有している場合には第2号動物に該当します。

第2号動物(人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類)

第4項第2号は「前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」を掲げます。ハムスター、フェレット、インコ、フクロウ、カメ、ヘビ、トカゲなどがここに含まれます。

第2号動物では「占有」が要件となります。ガイドラインは、占有の解釈にあたっては現実に飼養関係があるか否かが重要なポイントであり、ある程度継続的な飼養関係を要すると考えられるとしています。事実上自己の支配内においてすみか(寝床)を提供している者は飼養の域に達しているという整理です。逆に、餌だけは人が与えるがその他は自然に委ねている場合には、事実上の支配はなく占有関係は認められないと考えられています。

魚類・両生類・昆虫は対象外、野生の哺乳類・鳥類は鳥獣保護管理法

条文が「哺乳類、鳥類又は爬虫類」と限定していることから、魚類、両生類、昆虫、甲殻類などは第2号動物に含まれません。金魚やカエル、クワガタなどをどれほど残虐に扱っても第44条では処罰できないというのが条文の帰結で、他人の所有物である場合に後述の器物損壊罪を検討する余地が残るにとどまります。

また、純粋な野生状態の下にある哺乳類・鳥類は、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号。鳥獣保護管理法)の対象です。同法第8条は原則として鳥獣及び鳥類の卵の捕獲等・採取等を禁止し、違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲等をした場合、第83条第1項第1号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます。もっとも野生動物でも占有が認められれば愛護動物に該当するため、対象動物の種類と占有状況の記録が罪名を誤らないための出発点になります。

「みだりに」の判断枠組みと44条2項が列挙する虐待の類型

第44条第1項・第2項はいずれも「みだりに」という要件を置いています。この語の解釈が、動物虐待事案の成否を分ける最大の論点です。

「みだりに」とは何を意味するか

ガイドラインは「みだりに」の意味を「正当な目的がない、又は正当な目的があったとしても手段として社会的に相当ではないこと」と説明しています。目的の正当性と手段の社会的相当性という二段構えの判断枠組みです。

正当な目的に基づき社会的に相当な手段で行われる行為の例としては、産業動物のとさつ行為、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)や狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)に基づく殺処分、獣医療行為、動物実験、安楽死処置などが挙げられています。これらは法令等により社会的に正当なものと認められる行為であるため、一般的に「みだりな殺傷」とは言えないとされています。

逆に、こうした社会的に相当な行為以外の殺傷については、一般に目的の正当性は認められ難く、そのような目的なく動物を殺傷した場合には手段・態様のいかんを問わず基本的に本罪が成立するとされています。目的に正当性が認められる場合でも、手段・態様が社会通念上相当でなければ同罪が成立し得ます。

そして虐待該当性の判断について、ガイドラインは「当該行為の目的、手段、態様等及び当該行為による苦痛の程度等を総合して、社会通念としての一般人の健全な常識により判断すべきもの」と整理しています。告発状で行為態様を詳細に記載すべきなのは、この総合判断の材料を捜査機関に提供するためです。

第2項が列挙する具体的な虐待類型

虐待に当たる行為をすべて網羅的に例示することは困難ですが、適用の可否の判断に資するよう、第44条第2項は具体的な虐待行為の例を明記しています。ガイドラインはこれを次のように整理しています。

  1. 「みだりに」身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加えること
  2. 「みだりに」身体に外傷が生ずるおそれのある行為をさせること
  3. 「みだりに」給餌若しくは給水をやめ、衰弱させること
  4. 「みだりに」酷使し、衰弱させること
  5. 「みだりに」その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、衰弱させること
  6. 「みだりに」飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養又は保管することにより、衰弱させること
  7. 自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと
  8. 排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること
  9. その他の虐待

①は、第1項との区別から、殺傷に至らないもののそのおそれがある不法な有形力の行使を指します。殴る、蹴る、熱湯をかけるといった行為で殺傷に至らなかったものが典型です。②は、自ら外傷を負わせずとも、動物を闘わせるなど、愛護動物に外傷を負わせる可能性が生じる何らかの行為をさせることを指します。

③④⑤⑥は、構成要件に「衰弱させること」が含まれるため、行為の結果として動物が衰弱する結果を伴う場合に限定されます。「衰弱」は獣医学的所見を踏まえて判断されます。餌を与えていなかったという事実だけでは足りず、その結果として動物が現に衰弱したことまで立証する必要がある点は、告発の準備において決定的に重要です。なお⑥は、繁殖業者による過密飼育や多頭飼育等による劣悪な飼養が想定されています。

③と⑦については、平成元年の総理府通達において、「一般に疾病にかかった動物について飼い主に治療義務があるとの社会通念が成立しているかどうか、治療等を施さない正当な理由があるかどうか等の点について、十分検討を加えた上で、虐待に当たるか否か判断すべきもの」という見解が示されています。

⑦は「自己の飼養し、又は保管する愛護動物」に限定されている点が要注意です。道路上で負傷した動物を発見した者が適切な保護を行わなかった場合など、「飼養」あるいは「保管」といえない場合には該当しないと解されています。負傷した野良猫を見かけて放置したというだけでは、この類型では処罰できません。

⑧の「施設」には自宅も含まれ得ますが、同一施設内に不衛生な区域があっても、生きている動物をそこと隔絶した環境で飼育していたといい得る場合には該当しないと解されています。死体の放置については、生きている動物が心理的抑制や恐怖を感じる環境で飼養する行為を虐待と捉えているため、当該死体が故意か過失かは問われません。「排せつ物」にはふん尿や吐瀉物が含まれますが「堆積」が要件です。

⑨の「その他の虐待」は、①から⑧までに該当しない場合であっても、法の趣旨に照らして虐待に該当するといえるかを事案に応じて判断するための受け皿です。ガイドラインは、⑨に含まれる例として心理的抑制、恐怖を与える行為などを挙げています。

なお、家庭動物等、展示動物、実験動物、産業動物のいずれであっても、①から⑨の行為を社会通念上容認され得る範囲を逸脱して行えば愛護動物虐待罪に問われ得ます。実際に、農場で勤務する男性が牛2頭に暴行を加えたとして動物愛護管理法違反(愛護動物の虐待)で検挙された事例があり、産業動物だから対象外ということはありません。

告訴・告発・被害届の違いと、告発状の提出先

捜査機関に犯罪事実を申告する手段には、告訴、告発、被害届の3つがあります。どれを選ぶべきかは、申告する人の立場と対象犯罪の性質によって決まります。

告訴は被害者本人、告発は誰でもできる

刑事訴訟法第230条は「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる」と定め、告訴ができるのは原則として犯罪の被害者本人です。第231条は被害者の法定代理人が独立して告訴できること、被害者が死亡したときは配偶者・直系の親族・兄弟姉妹が告訴できることを定めます。

これに対して第239条第1項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と定めます。被害者でなくても、まったくの第三者であっても告発ができるということです。

動物愛護管理法第44条の保護法益は前述のとおり動物愛護の良俗であり、動物自身が権利主体として被害者になるわけではありません。野良猫への虐待を目撃した近隣住民や、ペットショップの劣悪な飼養環境を知った元従業員は被害者ではありません。そのため、動物虐待事案では「告発」というかたちで申告するのが実務上の基本形になります。

なお第239条第2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と定め、公務員には告発義務が課されています。環境省ガイドラインが自治体職員向けに刑事告発の手続を詳細に解説しているのは、この告発義務があるためです。

告訴には代理の規定があるが、告発にはない

見落とされやすい違いとして、第240条は「告訴は、代理人によりこれをすることができる」と定めますが、告発に同様の代理規定は置かれていません。告発は告発人本人が行うものであり、第三者が本人に代わって告発の意思表示をすることは想定されていません。行政書士が関与できるのは、告発人が自らの意思で提出する書面を作成することに限られます。

被害届との違い

被害届は犯罪の被害に遭った事実を報告する書面で、処罰を求める意思表示を必ずしも含みません。これに対し告訴・告発は処罰を求める意思表示を含む訴訟法上の行為であり、後述する通知義務などの効果が発生します。

提出先は警察署長(司法警察員)宛ての書面が基本

第241条第1項は「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない」と定めます。環境省ガイドラインも「告発の意思や内容を明確にするためにも書面で行うことが望ましい」と明記しています。

行政書士が作成に関与する告発状は、警察署長(司法警察員)宛てのものに限られます。実務でも、告発人が管轄警察署の署長宛てに告発状を提出し、生活安全課などの担当部署との間で受理の可否が協議される流れが一般的です。

受理後の流れと、告発人に認められる権利

第242条は「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」と定めます。告発が受理されれば、捜査を経て事件は検察官に送致されます。

さらに告発人には2つの権利があります。第260条により、検察官は告発のあった事件について公訴を提起し又は提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告発人に通知しなければなりません。また第261条により、公訴を提起しない処分をした場合に告発人の請求があるときは、速やかにその理由を告げなければなりません。処分結果の通知と不起訴理由の告知請求が認められる点は、書面による告発を選ぶ大きなメリットです。

告発の受理後の流れや警察署長宛て書面の位置づけについては、不法投棄の告発状を警察署長宛てに出すには|廃棄物処理法16条違反と両罰規定を行政書士が解説業務上過失致死傷罪の告発状作成|成立要件・立証・警察署長宛て書面を解説でも罪種に即して整理しています。刑事訴訟法第239条に基づく告発の基本的な考え方は、偽装離婚による不正受給の告発状|児童扶養手当・生活保護・詐欺罪・刑訴法239条もあわせてご参照ください。

写真・動画による証拠の残し方

動物虐待事案の告発における最大の難所は証拠の確保です。動物は自ら被害を語れず、外傷は治癒し、飼養環境は片付けられます。環境省ガイドラインは証拠資料の作成・提供について具体的な手順を示しており、一般の方が記録を残す場合にもそのまま参考になります。

撮影の基本——距離を変えて複数枚、スケール、タイムスタンプ

ガイドラインは、対象動物の状態を把握し記録するためには写真や動画撮影が重要であるとしたうえで、次の留意点を示しています。

  • 動物の真正面の写真だけでなく、異なる距離で複数枚撮影する
  • 外傷を撮影する場合は、外傷の位置が身体のどの部位なのか示す写真と、その外傷をクローズアップした写真の2枚を撮影する
  • 外傷のサイズを把握するために、大きさの基準となるスケール(定規等。定規がない場合はボールペン等でも可)を画面に含める
  • 撮影日時がわかるようタイムスタンプ(日時)を入れる

とりわけ「異なる距離で複数枚」という指摘は重要です。クローズアップ写真だけでは、その傷がどの動物のどの部位のものかを後から特定できず、証拠としての価値が大きく下がります。全体像、部位の特定、クローズアップという三段階で撮ることを習慣にしてください。

スケールを画面に含めるのは、写真だけでは傷の実寸がわからないためです。定規がなければボールペンでも構わないとされているのは、大きさの基準となる物体が写り込んでいれば足りるという趣旨です。撮影日時はスマートフォンであればExif情報として自動記録されますが、SNSに投稿してから保存し直すと失われることがあるため、必ず撮影した端末に残る元データを保全してください。

動物の状態として記録すべき項目

ガイドラインの獣医学的評価に関する記載を踏まえると、記録しておきたい所見は次のとおりです。これらを意識して構図を決めると、獣医師や捜査機関が評価しやすい資料になります。

  • 全身の栄養状態(肋骨や腰骨が浮き出ていないか。ガイドラインはボディコンディションスコアの9段階評価を推奨し、3以下は衰弱のおそれがあるとしています)
  • 全身の被毛の状態(被毛粗剛、落屑、脂漏、脱毛、変色、排泄物の付着など)
  • 脱水の程度(皮膚の状態、眼球の陥没の程度、肉球の乾燥の程度など)
  • 可視粘膜の色・状態(歯肉や結膜の色による貧血の有無)
  • 肛門周囲の状態(排泄物の付着、下痢便の付着、炎症、皮膚炎)
  • 外傷、腫瘤、炎症等の有無、未処置の外傷や腫瘤
  • 四肢の状態(挙上、跛行、趾間炎、肉球の炎症)
  • 爪が異常に伸びていないか、首輪が皮膚に埋没していないか

なおガイドラインは、ボディコンディションスコアが適正であってもそれだけで虐待の疑いは否定できず、肥満も栄養障害であるため太っている場合でも可能性は否定できないと述べています。痩せていなければ虐待ではない、という判断は誤りです。

行動学的所見は動画で記録する

ガイドラインは、身体的所見はカルテ等の記録用紙を用い、行動学的所見は動画で記録することが望ましいとしています。記録すべき所見としては、怯えや不安行動、特定の物や人に対する攻撃性、常同行動(同じ場所を旋回する、同じ場所を繰り返し舐めるなど)、舐性行動、振戦、失禁、脱糞、四肢の挙上などが挙げられます。静止画では伝わりにくく、動画でこそ記録できる情報です。

また、ドアを引っ掻く、ドア付近の床を掘るといった「その場から逃げようとする行動」の痕跡もチェックポイントとされています。ただし、慢性的な虐待により学習性無力感が生じると逃げられるのに逃げようとしなくなるため、痕跡がないことは必ずしも苦痛がないことを意味しない、という留保も付されています。

飼養環境と現場の記録

虐待の立証において、動物本体と同じくらい重要なのが飼養環境の記録です。ガイドラインは、収容環境の広さと安全性、衛生管理の状況、その動物種に特異的な行動を示すことが可能かどうかという観点からの評価を求めています。第44条第2項⑧の類型では、床面全体が写る引きの写真と、堆積の厚みがわかる角度からの写真を組み合わせてください。

臭気について、ガイドラインは計測器がなくても「粘膜を刺すような強い臭気を感じた」といった記録で十分に強さを表現できるとしています。一方でアンモニアは犬の排泄物にはあまり含まれないため、濃度が低いからといって劣悪な環境や排泄物の堆積を否定するものではないとも注意を促しています。数値がなくても、その場で感じた具体的な感覚を日時とともに書き留めておくことに意味があります。

多頭飼育の現場では、すべての個体を評価することが困難な場合があります。ガイドラインは、全体数を正確に把握できなくても重症・衰弱している個体が何頭いるかを把握することが重要であり、この頭数から警察に相談する必要性を判断できるとしています。一度にすべてを記録しようとして何も残せないより、最も状態の悪い個体と死体の有無を確実に押さえるほうが実務的です。

現物証拠の保管とやってはいけない収集方法

ガイドラインは、凶器の疑いがある物や中毒の疑いがある場合の餌等は、ファスナー付きのプラスチック製バッグ等に保管して提出するとよいとしています。遺棄が疑われる場合には、動物が入っていた容器や添えられていた手紙等の現物も保存し提出が求められます。段ボール箱やそこに書かれた文字は、遺棄した人物を特定する手がかりになり得ます。なお中毒は毒性検査で検出されなくても否定できないとされています。

他方、他人の敷地に無断で立ち入る、飼育されている動物を勝手に連れ出すといった行為に及ぶと、それ自体が住居侵入罪や窃盗罪などに問われかねません。公道や自分の敷地内から見える範囲の撮影にとどめ、それ以上の確認が必要な場合には、警察や都道府県の動物愛護管理担当部局に情報を提供し、法第25条第5項に基づく立入検査など権限のある機関の手続に委ねてください。適法な範囲の線引きについては、軽犯罪法違反の告発|つきまとい・無断撮影・粗暴行為への対応と告発状作成もあわせてご確認ください。

獣医学的評価と獣医師の通報義務

動物虐待の立証は、最終的に獣医学的な裏づけを必要とします。環境省ガイドラインは「虐待行為の立証には獣医学的根拠が必須である」と明記しています。

獣医師には通報義務がある

動物愛護管理法第41条の2は「獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報しなければならない」と定めています。

この規定はもともと努力義務でしたが、令和元年の法改正により義務化されました。ガイドラインも「動物虐待の1次スクリーニングは、全ての獣医師の責任である」と述べています。「その他の関係機関」には警察や市町村が該当します。傷ついた動物を保護して動物病院に連れて行けば、獣医師が虐待を疑った場合に通報がなされます。診察を受けること自体が公的な記録を残す第一歩になります。

「非偶発的外傷」という考え方

ガイドラインは、虐待を疑う身体的・行動学的な所見として次のようなものを挙げ、これらを「非偶発的外傷」を疑う根拠としています。

  • 説明のつかない外傷
  • 稟告(飼い主等の説明)と外傷が不一致である(病歴と外傷が合わない、外傷の程度が通常の説明から考えられるよりも重篤である)
  • 稟告が矛盾する(言うことが変わる、人によって言うことが違う)
  • 同じ家庭・飼い主で、似たような外傷や死亡例を違う動物でも見たことがある
  • 外傷についての説明がない、説明できない
  • 交通事故やその他の事故の可能性がない
  • 人に対する家庭内暴力が疑われる、あるいは実際にある

この「説明と傷が合わない」という着眼点は、告発状を組み立てるうえでも極めて有用です。「階段から落ちた」と説明しているのに落下では生じ得ない部位に複数の傷があるといった食い違いは、故意を推認させる重要な間接事実になります。飼い主等が現場でどのような説明をしたかを、日時とともにメモしておいてください。

ネグレクトを疑う所見としては、食事・水・休息場所が十分でないこと、長期にわたる不適切な拘束やつなぎっぱなし(短すぎる鎖、重い鎖、首輪の埋没)、不衛生で安全が確保されていない生活環境、被毛や爪の管理ができていないこと、健康問題に対する医療がタイムリーに提供されていないことなどが挙げられています。

なおガイドラインは、動物虐待には国際的に統一された診断基準がないと認めたうえで、判断に窮した場合には法獣医学を専門に行う獣医科大学や日本法獣医学会等への問い合わせを推奨しています。個人で直接依頼するのは難しいため、まずは自治体の動物愛護管理担当部局や警察に相談する流れになります。

告発状に書くべき事項と受理までの実務

告発状に決まった様式はありませんが、犯罪の成立要件を満たす事実が具体的に記載されていなければ、捜査機関は受理の判断ができません。環境省ガイドラインも「告発する場合は告発状に犯罪構成要件に該当する事実を具体的に記載するほか、警察等の円滑な捜査に資するよう具体性のある告発状を作成し、可能な限り証拠資料を提出することが重要になる」としています。

書面に盛り込むべき基本項目

  • 宛先(事案を管轄する警察署長)
  • 作成年月日
  • 告発人の表示(氏名・住所・連絡先。法人の場合は名称・所在地・代表者)
  • 被告発人の表示(氏名・住所。特定できない場合は「氏名不詳」とし、判明している人相・車両・屋号・勤務先などの識別情報を可能な限り記載)
  • 告発の趣旨(被告発人の行為が動物愛護管理法第44条の該当項に当たるとして、厳重な処罰を求める旨)
  • 告発事実(日時・場所・対象動物・行為の態様・結果を、時系列に沿って具体的に記載)
  • 罪名及び罰条(動物愛護管理法違反。罰条は第44条第1項・第2項・第3項のいずれか)
  • 情状(継続性、常習性、動画投稿等による公然性、行政指導を受けながら改善しなかった経緯など)
  • 立証方法・証拠方法(写真、動画、診療記録、目撃者の陳述、現物証拠の一覧)
  • 添付書類の一覧

罪名の書き方は警察庁資料の検挙事例の表記が参考になり、第1項の事案は「動物愛護管理法違反(愛護動物の殺傷)」、第2項の事案は「同(愛護動物の虐待)」と整理されています。

「告発事実」は構成要件に対応させて書く

告発状の中心は告発事実の記載です。ここで意識すべきは、構成要件の一つひとつに対応する事実を漏らさず書き込むことです。

たとえば第44条第2項③(給餌・給水をやめて衰弱させること)であれば、対象動物が愛護動物に当たること、被告発人がその動物を飼養又は保管していること、餌や水を与えていなかった期間と状況、その結果として動物が現に衰弱したこと、という4要素が必要です。「餌をやっていないようだ」という記載だけでは結果の要件を満たしません。獣医師の所見や体格の変化がわかる時系列の写真が、この結果要件を埋める材料になります。

第1項(殺傷)であれば、殺害又は傷害の結果、行為の態様、「みだりに」といえること(正当な目的がない、又は手段が社会的に相当でないこと)を基礎づける事情を記載します。第3項(遺棄)であれば、移転又は置き去りという行為、場所的隔離、その場所の状況や動物の状態から生命・身体への危険に直面するおそれがあったことを記載します。遺棄の判断は場所の状況・動物の状態・目的の3要素の総合判断であり、飼養されている愛護動物は離隔時点で健康であっても危険に直面するおそれがあると考えられています。

事前相談が受理の成否を左右する

ガイドラインは「円滑に告発が受理されるためには警察と事前に相談・協議することが望ましい」と繰り返し述べ、違反の事実を証明する方法についてもあらかじめ警察と調整しておくと受理が円滑になるとしています。

あわせて、行為者の氏名又は名称、周辺住民からの苦情、過去の行政指導の状況、違反行為を確認した日時と内容などについて、疎明資料をもってできる限り明らかにするよう求めています。また、違反が継続していない場合は捜査開始時に違反状況を現認できないことから、客観的証拠により過去に違反事実が存在したことを特定する必要があるとしています。既に虐待が止んでいる事案ほど、写真・動画・診療記録の重みが増すということです。

行政書士が関与できる範囲と、できない範囲

行政書士は、行政書士法第1条の3が定めるとおり、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とします。警察署長(司法警察員)宛ての告発状は、この「権利義務又は事実証明に関する書類」に当たり、行政書士が作成に関与できる書面です。

具体的には、事実関係を聴き取って時系列に整理すること、第44条のどの項の構成要件に対応するかを踏まえて記載事項を洗い出すこと、写真・動画・診療記録等を証拠方法として一覧化し添付資料として編綴すること、告発状本文を作成することが業務範囲です。

他方で、次の事項は行政書士が行うことができません。

  • 検察庁宛ての告発状・告訴状の作成(裁判所・検察庁に提出する書類の作成は司法書士の業務です)
  • 告発そのものを依頼者に代わって行うこと(前述のとおり、告発には告訴のような代理の規定がありません)
  • 捜査機関に対する交渉や折衝を代理して行うこと
  • 加害者に対する損害賠償請求や慰謝料の請求、示談交渉、金額の算定に関する助言(これらは弁護士の業務です)
  • 訴訟・調停の代理

飼い犬や飼い猫を第三者に殺傷された飼い主の方が加害者に損害の賠償を求めたい場合、その交渉や金額の算定は弁護士の業務範囲です。行政書士がお手伝いできるのは、刑事手続に向けた書面の作成に限られます。

行政ルートの活用・併せて問題となる犯罪・公訴時効

刑事告発だけがすべてではありません。動物愛護管理法は、刑罰とは別に都道府県知事による行政指導・行政処分の仕組みを用意しています。両ルートは目的も効果も異なるため、事案に応じて使い分ける、あるいは併用することが有効です。

都道府県知事への通報と法25条の措置

第25条第4項は「都道府県知事は、動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、当該事態を改善するために必要な措置をとるべきことを命じ、又は勧告することができる」と定めます。

この「環境省令で定める事態」は同法施行規則第12条の2に規定されており、次の6つのいずれかに該当し、かつ当該事態を生じさせている者が都道府県の職員の指導に従わず、又は現場の確認等の状況把握を拒むことにより改善が見込まれない事態とされています。

  1. 動物の鳴き声が過度に継続して発生し、又は頻繁に動物の異常な鳴き声が発生していること
  2. 動物の飼養又は保管に伴う飼料の残さ又は動物のふん尿その他の汚物の不適切な処理又は放置により臭気が継続して発生していること
  3. 動物の飼養又は保管により多数のねずみ、はえ、蚊、のみその他の衛生動物が発生していること
  4. 栄養不良の個体が見られ、動物への給餌及び給水が一定頻度で行われていないことが認められること
  5. 爪が異常に伸びている、体表が著しく汚れている等の適正な飼養又は保管が行われていない個体が見られること
  6. 繁殖を制限するための措置が講じられず、かつ、譲渡し等による飼養頭数の削減が行われていない状況において、繁殖により飼養頭数が増加していること

また第25条第5項は、都道府県知事が必要な限度において飼養者に報告を求め、又は職員に立入検査をさせることができると定めており、ガイドラインはこれを「虐待を受けるおそれがある事態を把握するための重要な手段」と位置づけています。

行政ルートには、犯罪の成立要件を満たすところまで至っていない段階でも介入できること、立入検査によって一般の方には確認できない屋内の状況を権限に基づいて把握できることという利点があります。ガイドラインは、命令の発出にあたって必ずしも勧告を経る必要はないとしています。なお環境省の解説は「多数の動物の飼養又は保管」の目安として犬猫はおおむね10頭以上が該当するとしています。環境省は「地方自治体動物虐待等通報窓口一覧」を公表しており、お住まいの地域の通報先を確認できます。

命令違反・立入検査拒否にも罰則がある

行政ルートは行政指導で終わるわけではありません。第46条の2は、第25条第3項又は第4項の規定による命令に違反した者を50万円以下の罰金に処すると定めています。第47条の3は、第25条第5項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者を20万円以下の罰金に処すると定めています。

したがって、立入検査を拒み続けている飼養者については、第44条の立証が困難な場合でも、これらの規定違反として刑事責任を問い得る場合があります。ガイドラインも、命令違反に係る告発では、命令の正当性及び履行期限内に命令事項が履行されなかった事実を明確にする必要があるとしています。

両罰規定——事業者の責任も問える

第48条は両罰規定を定めています。法人の代表者や従業者等が、その法人又は人の業務に関し第44条等の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科すこととされています(第45条の違反行為については、法人に対して5000万円以下の罰金刑が科されます)。

ガイドラインは、犬猫等販売業者の従業員が販売できなくなった犬猫を殺傷、虐待又は遺棄した場合には同従業員だけでなく販売業者も処罰の対象となると説明し、違反行為を防止するための相当の注意及び監督が尽くされたとはいえない場合には事業主も併せて告発することが重要であるとしています。ブリーダーやペットショップの事案では、法人としての管理体制の不備にも言及し法人を含めて告発することを検討してください。両罰規定を活用した告発の考え方は、不法投棄の告発状を警察署長宛てに出すには|廃棄物処理法16条違反と両罰規定を行政書士が解説でも整理しています。

他人のペットを傷つけた場合——器物損壊罪との関係

他人が所有する犬や猫を殺傷した場合、動物愛護管理法第44条第1項のほか、刑法第261条の器物損壊等罪が問題となり得ます。同条は「前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」と定めており、動物は民法上「物」に当たるため、動物を傷つける行為は「傷害」に含まれると解されています。

実務上重要なのは手続上の違いです。刑法第264条により器物損壊等罪は親告罪とされ、被害者である飼い主の告訴がなければ起訴できません。これに対して動物愛護管理法第44条には親告罪とする規定がなく、告訴がなくても公訴を提起できます。だからこそ、飼い主でない第三者でも刑事訴訟法第239条第1項に基づく告発によって捜査の端緒をつくることができ、飼い主が加害者との関係から告訴に踏み切れない事案でも告発という道が残されています。

なお、飼い主ご自身が被害者として対応される場合には、器物損壊等罪についての告訴という選択肢もあります。器物損壊被害への対応の考え方は、理容院での盗難・侵入・器物損壊|警察への被害届・告訴状の作り方もご参照ください。

公訴時効——放置すると起訴できなくなる

刑事訴訟法第250条第2項は、人を死亡させた罪であって拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪について、法定刑に応じた時効期間を定めており、同項第5号は「長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年」、第6号は「長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年」と定めています。これを第44条の各罪に当てはめると次のようになります。

罪名 法定刑 公訴時効
愛護動物殺傷罪(44条1項) 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金 5年
愛護動物虐待罪(44条2項) 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 3年
愛護動物遺棄罪(44条3項) 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 3年

虐待罪と遺棄罪の3年という期間は決して長くありません。しかも証拠の劣化は時効の完成よりはるかに早く進みます。外傷は治癒し、飼養環境は改善され、目撃者の記憶も薄れ、写真データも端末の買い替えで失われがちです。虐待を目撃した、あるいは疑いを持った時点で、まず記録を残すことを最優先にしてください。

なお虐待の防止という観点からは、飼い主が自らの死亡や入院に備えてペットの行く先を定めておくことも重要です。引き取り手が決まらないまま放置された結果、ネグレクトや遺棄が生じる事案は少なくありません。負担付遺贈やペット信託については、ペットの終活|負担付遺贈・ペット信託・任意後見で飼い主の死後に備える方法およびペット信託とは?飼い主死亡後の世話・信託契約書・受託者・残余財産処分を解説で詳しく解説しています。

告訴状・告発状の作成でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、警察署(司法警察員)に提出する告訴状・告発状について、事実関係と証拠を整理した書面の作成を承ります。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。

告訴状・告発状作成サポートの詳細を見る

まとめ

動物虐待は動物愛護管理法第44条が定める刑事犯罪です。同条は、愛護動物をみだりに殺し又は傷つけた者に5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金(第1項)、列挙された態様その他の虐待を行った者に1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第2項)、愛護動物を遺棄した者に同じく1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第3項)を定めています。懲役・禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化されています。

処罰の対象となる「愛護動物」の範囲は第44条第4項が定めています。牛・馬・豚・めん羊・山羊・犬・猫・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひるの11種は占有を問わず対象となり、野良犬・野良猫も含まれます。それ以外の動物は、人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類に限られます。魚類・両生類・昆虫は対象外であり、純粋な野生の哺乳類・鳥類は鳥獣保護管理法の領域になります。

第三者でも告発できる点が、この犯罪の実務上の特徴です。刑事訴訟法第239条第1項により、犯罪があると思料する者は誰でも告発できます。器物損壊等罪が親告罪であるのに対し、動物愛護管理法第44条は親告罪ではないため、飼い主が動けない事案でも第三者の告発が捜査の端緒となり得ます。告発人には、処分結果の通知(刑事訴訟法第260条)と不起訴理由の告知請求(同法第261条)が認められています。

成否を分けるのは証拠です。環境省ガイドラインは、異なる距離で複数枚撮影すること、外傷は位置がわかる写真とクローズアップの2枚を撮ること、大きさの基準となるスケールを画面に含めること、タイムスタンプを入れることを求めています。行動学的所見は動画で記録し、遺棄の容器や凶器の疑いがある物も現物のまま保管してください。第44条第2項の一部の類型は「衰弱させること」を要件とするため、獣医師の所見による裏づけが不可欠です。公訴時効は殺傷罪で5年、虐待罪・遺棄罪で3年です。

行政書士法人Treeでは、警察署長(司法警察員)宛ての告発状について、事実関係の聴取り、時系列の整理、第44条の構成要件に対応した記載事項の洗い出し、写真・動画・診療記録等の証拠方法の一覧化と添付資料の編綴、告発状本文の作成を承っております。行政書士法第1条の3が定める「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成として対応いたしますので、書面の作成でお困りの際はご相談ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。

行政書士法人Tree