特定技能制度でインドネシア国籍の方を採用しようとすると、日本側の在留資格手続とは別に、インドネシア政府が求める送出手続を通過しなければなりません。「IPKOL(労働市場情報システム)」「SISKOP2MI(海外労働者管理システム)」「E-PMI(移住労働者証)」「P3MI」「LPK」といった耳慣れない用語が一度に押し寄せ、しかもその多くは日本の法令ではなくインドネシアの法令に根拠を持つため、受入れ機関の担当者が全体像をつかみにくいのが実情です。
さらに厄介なのは、これらの制度が数年単位で改編されている点です。かつて実務で頻繁に登場した「SISKOTKLN」は現在すでに稼働しておらず、後継システムに置き換わっています。それにもかかわらず、旧称のまま解説している資料が今なお少なくありません。古い名称を前提に準備を進めると、本人がどのシステムに登録すべきかを取り違え、査証申請の直前で止まってしまう事態も起こり得ます。
本記事では、出入国在留管理庁が公表しているインドネシア向けの手続資料、インドネシアの移住労働者保護法(UU No.18 Tahun 2017)および労働法(UU No.13 Tahun 2003)といった一次情報に基づき、IPKOL登録・SISKOP2MI(旧SISKOTKLN)・E-PMI・P3MI・LPKの位置づけと、受入れ機関が実際に踏むべき手順を実務目線で整理します。
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目次
インドネシアは特定技能の第2位の送出国になっている
手続の細部に入る前に、インドネシアが特定技能制度のなかでどのような位置を占めているかを数字で押さえておきます。出入国在留管理庁が公表している「特定技能制度運用状況」(いずれも速報値)によれば、令和7年(2025年)12月末現在の特定技能在留外国人数は390,296人です。
この内訳を国籍・地域別に見ると、ベトナムが164,352人(42.1%)で最多、次いでインドネシアが86,955人(22.3%)で第2位となっています。以下、ミャンマー44,523人(11.4%)、フィリピン35,862人(9.2%)、中国22,105人(5.7%)、ネパール12,387人(3.2%)、カンボジア8,500人(2.2%)、タイ6,817人(1.7%)と続きます。
注目すべきは伸び幅です。同資料の国籍・地域別増加数によれば、令和7年6月末から同年12月末までの半年間で、インドネシアは17,418人増加しており、ベトナムの15,866人を上回って増加数の首位に立っています。その前の半年(令和6年12月末→令和7年6月末)でもインドネシアは15,999人増でベトナム(15,008人)を上回っており、直近では増加ペースにおいてインドネシアが最大の送出国となっている状況です。
参考までに、同時点の分野別内訳は、飲食料品製造業95,644人(24.5%)、介護67,871人(17.4%)、工業製品製造業57,576人(14.8%)、建設51,122人(13.1%)、外食業44,925人(11.5%)、農業39,234人(10.1%)、その他33,924人(8.7%)です。特定技能制度そのものの全体像については、特定技能とは?1号・2号の違いと19分野を解説もあわせてご確認ください。
制度全体の許可件数も確認しておきましょう。同資料によれば、制度開始以降の累計で、令和7年(2025年)12月末現在の在留資格認定証明書交付件数は233,797件、在留資格変更許可件数は418,993件です。累計では海外からの新規呼び寄せよりも、日本国内に在留する方からの在留資格変更のほうが件数として大きいことが分かります。インドネシア国籍の方についても、技能実習生や留学生からの変更というルートが実務上大きな比重を占めることを示唆する数字です。
つまりインドネシアは、もはや「これから開拓する送出国」ではなく、実務上避けて通れない主要ルートになっています。だからこそ、送出手続の理解を後回しにできないわけです。
制度の土台となる日本・インドネシア間の協力覚書(MOC)
特定技能制度では、送出国政府との間で「特定技能に関する協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)」を作成し、悪質な仲介事業者の排除と円滑な送出し・受入れを図る仕組みが採られています。
出入国在留管理庁の公表によれば、日本国法務省・外務省・厚生労働省及び警察庁とインドネシア共和国労働省との間で、令和元年(2019年)6月25日、ジャカルタにおいてMOCの署名・交換が行われました。
MOCは期間を区切って更新されている
実務で見落とされやすいのが、このMOCが恒久的なものではなく、期間を定めて更新されている点です。同庁の公表によれば、次の経緯をたどっています。
- 2024年6月21日、在インドネシア日本国大使館とインドネシア外務省との間で口上書を交換し、MOCの継続期間を2024年6月25日から2年間更新
- 2026年6月23日、同様に口上書を交換し、MOCの継続期間を2026年6月25日から6か月間更新
直近の更新が2年ではなく6か月間という短い区切りになっている点は、受入れ計画を立てるうえで押さえておきたい事実です。長期の採用計画を組む際には、最新の更新状況を出入国在留管理庁のインドネシア関連ページで確認してから動くことをおすすめします。
MOCの位置づけを誤解しない
MOCは二国間の協力の枠組みを定めた文書であり、それ自体が在留資格の許否を直接左右するものではありません。他方で、インドネシア側が求めている送出手続(後述するIPKOL登録やSISKOP2MI登録など)は、MOCではなくインドネシアの国内法とその下位規則に根拠を持つものとして、実際に機能しています。日本側の在留資格が認められても、インドネシア側の手続が済んでいなければ本人が出国できない、という事態は現実に起こり得ます。「日本の許可さえ取れれば足りる」という理解は誤りです。
インドネシア側の法的枠組み―移住労働者保護法とP3MI
インドネシアからの海外就労の根幹をなすのが、2017年法律第18号(UU No.18 Tahun 2017 tentang Pelindungan Pekerja Migran Indonesia/インドネシア移住労働者保護法)です。特定技能の送出手続も、この法律が定める枠組みの上に乗っています。
移住労働者本人に関する要件(Pasal 5)
同法Pasal 5は、海外で就労しようとするインドネシア移住労働者(PMI)が満たすべき要件として、次の5点を挙げています。
- a. 満18歳以上であること
- b. コンピテンシー(職業能力)を有すること
- c. 心身ともに健康であること
- d. 社会保障(Jaminan Sosial)に登録され、加入番号を有すること
- e. 必要とされる書類を完備して有していること
日本側の特定技能では「18歳以上」が要件とされていますが、インドネシア側でも独自に満18歳以上が求められている点は、両国の要件が別個に存在することの分かりやすい例です。
配置費用を本人に負担させてはならない(Pasal 30)
受入れ機関にとって特に重要なのが同法Pasal 30です。同条第1項は「Pekerja Migran Indonesia tidak dapat dibebani biaya penempatan(インドネシア移住労働者に配置費用を負担させることはできない)」と定め、第2項で、配置費用に関する詳細を庁長官規則(Peraturan Kepala Badan)に委ねています。
日本側でも、特定技能雇用契約の基準を定める法務省令において、本人に不当な費用負担をさせないことが求められています。インドネシア側の法律にも同趣旨の明文規定があることを踏まえると、仲介事業者を介する場合には「誰が、どの費用を、どの根拠で負担しているのか」を書面で確認しておく必要性がいっそう高まります。受入れコストの全体像は特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理で整理していますので、あわせてご参照ください。
送出しを実施できる主体(Pasal 49・Pasal 51)
同法Pasal 49は、インドネシア移住労働者の海外への配置(penempatan)を実施できる主体を、次の3類型に限定しています。
- a. Badan(庁。移住労働者保護を所管する政府機関)
- b. Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia(P3MI/移住労働者配置会社)
- c. 自社の必要のために移住労働者を配置する企業
そしてPasal 51第1項は、P3MIになろうとする企業は大臣からSIP3MI(Surat Izin Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia)という書面による許可を得なければならないと定め、第2項でSIP3MIの他者への譲渡・移転を禁止しています。
さらに同法の定義規定(第17号)によれば、SIP2MI(Surat Izin Perekrutan Pekerja Migran Indonesia)は、庁の長官がP3MIに対して与える、移住労働者候補者を配置するために用いる許可です。SIP3MIが「会社としての営業許可」、SIP2MIが「個別の募集・配置のための許可」という関係にあると理解すると整理しやすくなります。
P3MIは技能実習の「認定送出機関」とは別物
出入国在留管理庁の手続解説は、P3MIについて「インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者を指す用語」であるとしたうえで、技能実習生の送出しに関与するインドネシアの『認定送出機関』とは異なると明記しています。技能実習の枠組みで付き合いのあった送出機関が、そのまま特定技能のP3MIとして機能するとは限りません。ここを混同したまま話を進めると、後になって許可の有無で行き詰まります。
なお、出入国在留管理庁は、インドネシア政府から認定を受けたP3MIの名称・連絡先等について、インドネシア労働省が公表している「P3MIの一覧」を確認するよう案内しています。同庁は同時に、相手国政府からの情報提供のタイミング等により掲載情報が最新でない可能性がある旨も注記していますので、最終確認は駐日インドネシア共和国大使館に行うのが安全です。
IPKOL(労働市場情報システム)とは何か
IPKOLは、インドネシア政府が管理する求人・求職のための労働市場情報システムです。出入国在留管理庁の資料では「労働市場情報システム(IPKOL)」と表記され、URLとして http://imw.kemnaker.go.id/ が案内されています。ドメインが示すとおり、所管はインドネシア労働省(Kemnaker)です。ただし、このURLは本記事の執筆時点でアクセスできない状態が確認されているため、実際の登録先は駐日インドネシア大使館に確認してください。
直接採用パターンではIPKOL登録が強く求められる
日本の受入れ機関がP3MIを利用せずにインドネシア国籍の方を新たに受け入れる、いわゆる直接採用パターンの場合、出入国在留管理庁は次のように説明しています。すなわち、インドネシア政府が管理する求人・求職のためのIPKOLに日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しているとされています。システムの利用にあたっては事前の登録が必要で、登録はオンラインで可能とのことです。
また、フローチャート資料では、システムへの登録はオンラインで行い、入力方法は英語とインドネシア語である旨が示されています。日本語では入力できない点は、社内で誰が作業を担当するかを決める際に効いてきます。
登録は無料でブローカー対策の意味を持つ
同庁の解説によれば、インドネシア側はIPKOLへの登録が無料であることから、インドネシア国内で特定技能制度により日本での就職を希望する方に求職登録を促す広報を行っており、日本での就職を希望する方はIPKOLにアクセスして求職先を検索するとのことです。インドネシア側は、同システムの活用が悪質なブローカー対策にも資するとしています。
手数料の点は、同庁が公表している「インドネシア側の手続に関するQ&A」でも明確に確認されています。IPKOLやSISKOP2MIによる登録手続等に手数料はかかるのかという問いに対し、インドネシア当局によれば手数料はかからないと回答されています。
雇用契約書はIPKOLへ登録する
直接採用パターンでは、IPKOLに登録した求人情報に対してインドネシア国籍の方から求職があり、双方の意思が確認されれば特定技能に係る雇用契約を締結することになります。この際、受入機関と申請人との間で締結した雇用契約書については、IPKOLに電子データで登録する必要があるとされています。フローチャート資料でも、締結された雇用契約書はIPKOLを通じてインドネシア側に提出する必要があるとの注記が付されています。
技能実習からの継続雇用ではIPKOL登録を必ずしも求めない
実務で頻出する論点が、自社で受け入れていた技能実習生を引き続き特定技能で雇用したいケースです。この点についてQ&Aは、インドネシア当局によれば、技能実習2号又は3号を良好に修了した者が技能実習先に引き続き特定技能外国人として雇用される場合には、受入機関が求人・求職システムであるIPKOLに登録することを必ずしも求めていないものとされている、と説明しています。
ただし、これはあくまでIPKOLについての話です。後述するとおり、SISKOP2MIによるE-PMIの取得は別途必要とされていますので、「実習先での継続雇用だからインドネシア側の手続は不要」と読み替えてはいけません。技能実習と特定技能の制度上の違いは特定技能と技能実習の違いとは?8つの比較項目を徹底比較で整理しています。
SISKOTKLNからSISKOP2MIへ―海外労働者管理システムの現在
インドネシアの送出実務を語るうえで最も誤情報が多いのが、このシステムの名称です。
SISKOTKLNは2023年7月に停止している
SISKOTKLNは「Sistem Komputerisasi Tenaga Kerja Luar Negeri(海外労働者コンピュータ化システム)」の略で、長らくインドネシアからの海外就労手続の中核を担っていたシステムです。しかし、インドネシア移住労働者保護庁(BP2MI)の発表として報じられているところによれば、2023年7月17日午前0時(西部インドネシア時間)をもって、SISKOTKLNを通じた登録からデータ登載に至るまでの配置関連サービスがすべて停止され、統合アプリケーション「SIAPkerja」へ移行しました。
この移行は、インドネシア労働大臣の通達(Surat Edaran)に基づいて実施されたものとされています。移行時点で登録が完了していなかった候補者は、新しいアプリケーション上で改めて登録する必要があるとされました。
現行はSISKOP2MI
現在の名称はSISKOP2MI(Sistem Komputerisasi Pelindungan Pekerja Migran Indonesia)で、BP2MIの説明によれば、現行の規則に沿った配置プロセスに適合させたものとされています。出入国在留管理庁の資料も現在は「海外労働者管理システム(SISKOP2MI)」の表記で統一され、URLとして https://siskop2mi.bp2mi.go.id/ が案内されています。
したがって、記事タイトルにもあるSISKOTKLNは歴史的な旧称として理解すべきものです。取引先の仲介事業者やインターネット上の解説がいまだにSISKOTKLNを現行システムとして案内している場合、その情報全体が古い可能性が高いと考えて、他の記載も慎重に検証してください。
登録は本人が行う―受入れ機関は説明役に回る
ここは実務上きわめて重要です。出入国在留管理庁の解説は、在留資格認定証明書を交付されたインドネシア国籍の方について、日本へ渡航するための査証申請を行う前に、日本で就労するインドネシア国籍の方自らがSISKOP2MIにオンラインで登録しなければならないとされている、と明記しています。
登録が完了すると、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁のID番号が発行され、これを取得したうえで在インドネシア日本国大使館・総領事館に対して査証申請を行う必要があります。
同庁は、外国で就労するインドネシア国籍の方が稼働先国でトラブルに巻き込まれた場合などの保護のためインドネシア政府が登録を求めていることから、日本側受入機関からも雇用するインドネシア国籍の方に、オンラインでウェブサイト上の様式に入力する方法により登録しID番号を取得するよう説明をお願いしますとしています。受入れ機関の役割は代行ではなく「本人が確実に登録できるよう案内すること」だと押さえておきましょう。
E-PMI(移住労働者証)は国内在留者にも必要
E-PMIは移住労働者証を指します。インドネシアから新たに来日する場合の流れは次のとおりです。査証を発給されたインドネシア国籍の方が、取得した査証をSISKOP2MIにオンラインで登録し、出国前オリエンテーションなどへ参加するなど必要な出国前の手続を終えると、同人にE-PMIが発行されるとされています。
国内在留者からの変更でもE-PMIが要る
見落としが起きやすいのが、すでに日本に在留している技能実習生や留学生などから特定技能へ在留資格を変更するケースです。出入国在留管理庁のQ&Aは、この点について明確に述べています。
すなわち、インドネシアから来日する場合であっても、日本国内に在留している場合にあっても、インドネシア国籍の方が特定技能外国人として稼働するためには、SISKOP2MIにより、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁の移住労働者証(E-PMI)の発行を受けなければならないものとされている、というものです。
国内在留者の場合の流れは、手続解説によれば次のとおりです。まず受入れ機関が特定技能に係る雇用契約を締結し、締結した雇用契約書(原本)を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受けます。次に、在留資格変更許可申請を行う前に本人がSISKOP2MIにオンライン登録し、E-PMIの発行を受けます。そのうえで駐日インドネシア大使館に海外労働者登録手続を行う必要があるとされ、フローチャートによれば、登録手続を完了した者には推薦状(登録手続済証明)が発行されるとされています。最後に、本人が地方出入国在留管理官署に対して「特定技能」への在留資格変更許可申請を行い、変更が許可されれば一連の手続は完了します。
地方在住でも郵送で対応できる
駐日インドネシア大使館は東京都品川区にあるため、地方の受入れ機関からは「東京まで行かなければならないのか」という質問が出ます。この点についてQ&Aは、駐日インドネシア大使館によれば郵送での手続を受け付けているとしつつ、詳しくは同大使館に確認するよう案内しています。手続解説でも、雇用契約書(原本)の提出方法として、直接持参するほか、切手を貼付した返信用封筒等を添付して送付することも可能とされています。
在留資格変更そのものの必要書類や流れについては、特定技能への在留資格変更手続き|技能実習・留学からの切替方法と必要書類を解説で詳しく解説しています。
LPK(Lembaga Pelatihan Kerja)制度の位置づけ
インドネシア人材の採用現場では「LPK」という語が頻繁に登場します。日本国内では日本語学校や訓練施設を漠然と指す言葉として使われがちですが、インドネシアの法令上は明確な位置づけがあります。
根拠はインドネシア労働法(UU No.13 Tahun 2003)
LPKは「Lembaga Pelatihan Kerja(職業訓練機関)」の略です。2003年法律第13号(UU No.13 Tahun 2003 tentang Ketenagakerjaan/インドネシア労働法)の第5章「PELATIHAN KERJA(職業訓練)」に規定が置かれています。ただし、職業訓練に関する規定は、いわゆる雇用創出法(2020年法律第11号、その後2023年法律第6号)によって改正されており、2003年当時の条文のまま解説している資料も見受けられますので、現行の条文で確認する必要があります。
改正後のPasal 13第1項は、職業訓練の実施主体を政府の職業訓練機関・民間の職業訓練機関・企業の職業訓練機関の3類型としています。同条第2項は訓練場所又は就業場所で実施できること、第3項は政府の職業訓練機関が民間と協力できること、第4項は政府の職業訓練機関及び企業の職業訓練機関がその活動を県/市の労働担当機関に登録することを定めています。
民間LPKには事業許可が求められる
改正後のPasal 14は民間LPKについて次のように定めています。
- 第1項 民間の職業訓練機関は、県/市の地方政府が発行する事業許可(Perizinan Berusaha)を満たさなければならない
- 第2項 外国資本の参加がある民間の職業訓練機関については、事業許可は中央政府が発行する
- 第3項 事業許可は、中央政府が定める規範・基準・手続・要件に適合しなければならない
さらにPasal 15は、職業訓練の実施者が満たすべき要件として、訓練指導者の確保、訓練水準に適合したカリキュラムの整備、訓練の施設・設備の確保、訓練事業の継続のための資金の確保の4点を挙げています。Pasal 16では、許可を得た民間LPK及び登録された政府LPKが認定機関から認定(akreditasi)を受けられる旨が定められています。
LPKは送出機関ではない
ここが実務上の最大の落とし穴です。前述のとおり、インドネシア移住労働者保護法Pasal 49は海外への配置を実施できる主体を庁・P3MI・自社配置企業の3類型に限定し、Pasal 51はP3MIになるためにSIP3MIという大臣の許可を要求しています。
これに対してLPKは、労働法上あくまで職業訓練を実施する機関であり、民間LPKの事業許可は県/市の地方政府(外国資本の参加がある場合は中央政府)が発行するものです。つまり、LPKであることと、海外へ労働者を配置する権限を持つこととは、法的に別の話です。日本語教育や技能訓練を担うLPKが、そのまま特定技能の送出しを適法に行えるわけではありません。
実務では、日本語教育の実績を前面に出したLPKから直接「特定技能の人材を紹介できる」と持ちかけられることがあります。その場合には、当該法人がP3MIとしてSIP3MIを有しているか、当該案件についてSIP2MIが発給されているか、あるいは適法なP3MIと組んでいるのかを、書面ベースで確認する必要があります。出入国在留管理庁が案内するインドネシア労働省公表の「P3MIの一覧」と突き合わせ、疑義があれば駐日インドネシア大使館に照会するのが確実です。なお、育成就労制度における送出機関規制の考え方は育成就労の送出機関規制|手数料上限・契約書様式・二国間取決めの強化で解説しています。
手続の全体フロー―3つのパターンで整理する
出入国在留管理庁の資料は、インドネシア国籍の方を特定技能外国人として受け入れる手続を、大きく3つのパターンで示しています。ここで通しの流れを確認しましょう。
パターンA:インドネシアから直接採用する場合
- 受入機関がIPKOLに登録し、求人を申し込む(本人はIPKOLで求職申込み)
- 雇用契約の締結(締結した雇用契約書はIPKOLを通じてインドネシア側に提出)
- 受入機関が地方出入国在留管理官署へ在留資格認定証明書の交付申請
- 在留資格認定証明書の交付
- 交付された在留資格認定証明書の原本を雇用契約の相手方へ送付
- 本人がSISKOP2MIへ登録
- インドネシア在外労働者保護庁のID番号が発行される
- 本人が在インドネシア日本国大使館・総領事館へ査証申請(認定証明書とID番号の写し等を提示)
- 査証発給
- 査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーション等を経てE-PMIが発行される
- 出国し、上陸審査で上陸条件に適合すると認められれば上陸許可・「特定技能」の在留資格が付与される
パターンB:P3MIを利用する場合
P3MIを介して受け入れる場合、受入機関は日本側の職業紹介事業者と提携し、さらにその職業紹介事業者がP3MIとの間で職業紹介に関する提携に係る契約を締結する必要があるとされています。ここでいう日本側の職業紹介事業者は、職業安定法に基づく職業紹介事業者を指します。
そのうえで、日本側の職業紹介事業者が、求人票(Job Order)に加え、P3MIとの間で締結された職業紹介の提携に係る契約書及び雇用契約書(暫定版)等を駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受ける必要があるとされています。インドネシア側によれば、この手続の費用は無料で、手続には3日程度を要し、手続終了後は提出した書類が日本側の職業紹介事業者に返却されるとのことです。
その後、受入機関はP3MI・日本の職業紹介事業者を介して紹介を受けた求職者の採用手続を行います。ここで極めて重要な制約があります。出入国在留管理庁の解説は、申請人との面接は必ず受入機関が行う必要があるとしたうえで、この際P3MIが同席することは可能だが、P3MIが独自の基準で申請人をどの受入機関と面接させるかを選考したり、受入機関に申請人の情報を提供したりすることはできないと明記しています。
面接の実施主体を仲介事業者任せにする運用は、この記載に照らして適切ではありません。採用選考の主導権は受入機関が握る、という原則を社内で共有しておく必要があります。
なお、このパターンでは受入機関と申請人との間で締結した雇用契約書(原本)を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受ける必要があるとされています。これ以降の在留資格認定証明書交付申請からE-PMI取得・入国までの流れは、パターンAと共通です。ただし在留資格認定証明書の送付については、日本の職業紹介事業者やP3MIを介して郵送することも可能とされています。
パターンC:日本に在留する方を受け入れる場合
- 特定技能に係る雇用契約の締結(雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出し確認を受ける)
- 在留資格変更許可申請を行う前に、本人がSISKOP2MIへオンライン登録
- 移住労働者証(E-PMI)の発行
- 駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続(届出)
- 登録手続済証明(推薦状)の発行
- 本人が地方出入国在留管理官署へ「特定技能」への在留資格変更許可申請
- 在留資格変更許可
技能実習からの移行では、技能評価試験や日本語試験の免除の可否も論点になります。試験関係は特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説で整理しています。
受入れ機関が押さえておくべき実務上の注意点
入管への申請にインドネシア側手続の証明書類は不要
出入国在留管理庁は、地方出入国在留管理官署における申請手続について、インドネシア側の手続を証明する書類の提出は不要である旨を案内しています。ここを取り違えて「入管が求めないのだから手続も不要」と考えるのは危険です。提出書類として要求されないだけであって、インドネシア国内法上の手続が免除されるわけではありません。手続が未了なら、本人が出国できない、あるいはE-PMIを取得できないという形で問題が顕在化します。
日本側の手数料は2025年4月1日に改定されている
日本側の在留手続の手数料は、2025年4月1日に改定されています。在留資格認定証明書交付申請は手数料なし、在留資格変更許可申請及び在留期間更新許可申請は各6,000円(オンライン申請の場合は5,500円)です。インドネシアから新規に呼び寄せるパターンAでは在留資格認定証明書の交付申請に手数料はかかりませんが、国内在留者からの変更となるパターンCでは変更許可申請の手数料が発生します。
費用負担の設計はインドネシア側の規定も意識する
前述のとおり、インドネシア移住労働者保護法Pasal 30第1項は移住労働者に配置費用を負担させることを禁じています。日本側でも、特定技能雇用契約及び支援計画の基準を定める法務省令により、本人に不当な負担を負わせない仕組みが求められています。仲介事業者を介する場合は、契約書上の費用条項を確認し、本人負担が生じていないかを書面で確かめておきましょう。
支援計画と登録支援機関の体制を並行して整える
インドネシア側の手続に気を取られて、日本側の受入れ体制の整備が後手に回るケースが少なくありません。出入国管理及び難民認定法第2条の5第6項は、特定技能1号の活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関に対し、法務省令で定めるところにより1号特定技能外国人支援計画を作成しなければならないと定めています。同条第8項により、支援計画は法務省令で定める基準に適合するものでなければなりません。
また同条第7項は、1号特定技能外国人支援に、日本人との交流の促進に係る支援や、本人の責めに帰すべき事由によらずに雇用契約を解除される場合に他機関との契約に基づき活動できるようにするための支援が含まれる旨を定めています。
支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合、同条第5項により、受入れ機関は支援体制に関する基準に適合するものとみなされます。登録支援機関の登録は同法第19条の23第1項に基づくもので、同条第2項により5年ごとに更新を受けなければ効力を失います。同庁の公表によれば、令和7年(2025年)12月末現在の登録支援機関登録件数は11,050件です。詳細は特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説および登録支援機関とは?役割・届出・義務的支援10項目を行政書士が解説をご覧ください。
受入れ後の届出義務を忘れない
受入れが始まった後も義務は続きます。同法第19条の18第1項は、特定技能所属機関が同項各号のいずれかに該当するときに、法務省令で定めるところにより出入国在留管理庁長官へ届け出なければならない旨を定め、同条第2項は、それ以外の場合にも法務省令で定める事項を届け出なければならない旨を定めています。インドネシア国籍の方の受入れであっても、この届出義務の内容が変わるわけではありません。
インドネシア側の所管機関の呼称にも幅がある
資料によって機関名の表記が揺れる点も、混乱の一因です。出入国在留管理庁の手続解説では「インドネシア在外労働者保護庁」という表記が用いられ、ID番号やE-PMIを発行する主体として説明されています。一方、SISKOP2MIのURLは siskop2mi.bp2mi.go.id であり、BP2MI(Badan Pelindungan Pekerja Migran Indonesia)のドメインが使われています。さらに、同機関の公式サイトでは「Kementerian Pelindungan Pekerja Migran Indonesia/Badan Pelindungan Pekerja Migran Indonesia」と省・庁の名称が併記されており、kp2mi.go.id というドメインも用いられています。
また、IPKOLは労働省(Kemnaker)のドメイン、SISKOP2MIはBP2MI系のドメインというように、2つのシステムは所管が異なります。仲介事業者から届く案内に登場する機関名やURLが資料ごとに違っていても、直ちに誤りとは限りません。重要なのは、求人・求職のためのIPKOLと、移住労働者の登録・保護のためのSISKOP2MIという役割の違いを取り違えないことです。判断に迷う場合は、出入国在留管理庁が案内する公式URLと駐日インドネシア大使館への照会で確認してください。
問い合わせ先はまず駐日インドネシア大使館へ
出入国在留管理庁は、インドネシア側の手続については駐日インドネシア共和国大使館に問い合わせるよう案内しています。同庁の資料に記載されている連絡先は、所在地が東京都品川区東五反田5-2-9、電話番号が03-3441-4201、メールアドレスが consular@kbritokyo.jp です。IPKOLの登録方法や大使館での確認手続の詳細は、同庁の資料でも大使館への照会が案内されていますので、個別の運用は必ず直接確認してください。
今後の制度変更にも目を配る
特定技能は、対象分野の追加や2号への移行ルートの整備が進んでいます。特定産業分野を定める省令(平成31年法務省令第6号)は令和8年3月31日法務省令第22号により改正され、令和8年(2026年)4月1日から特定産業分野は19分野となりました。従前の16分野に、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が加わったものです。ただし新たに追加された3分野は、分野別運用方針に基づく告示基準の整備や技能試験の実施を経て、順次受入れが可能になります。加えて、技能実習に代わる育成就労制度が2027年に施行される予定で、送出機関に対する規制の枠組みも変わっていきます。インドネシアとのMOCが6か月単位で更新されている現状も踏まえ、中長期の採用計画を立てる際には、制度改正の動向を継続的に確認する姿勢が欠かせません。特定技能2号への道筋は特定技能2号とは?対象分野・在留期間・1号との違いを行政書士が解説で解説しています。
特定技能外国人の受入れをご検討の企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次から支援計画の作成・各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
インドネシアは、令和7年(2025年)12月末現在で86,955人(22.3%)と特定技能在留外国人の国籍別第2位を占め、直近半年の増加数では首位に立つ主要送出国です。日本・インドネシア間の協力覚書は令和元年6月25日にジャカルタで署名され、その後2026年6月25日から6か月間の更新が行われています。更新期間が短く区切られている点は、受入れ計画を立てるうえで意識しておきたい事実です。
手続面では、IPKOLが求人・求職のための労働市場情報システム、SISKOP2MIが海外労働者管理システムという役割分担になります。直接採用ではIPKOLへの登録・求人と雇用契約書の登録が求められ、P3MIを利用する場合は日本側職業紹介事業者を介した提携契約と駐日インドネシア大使館での確認手続が必要です。面接は必ず受入機関が行い、P3MIが独自基準で選考することはできない点も押さえておきましょう。
名称の変遷にも注意が必要です。SISKOTKLNは2023年7月17日に配置関連サービスが停止された旧システムであり、現在はSISKOP2MIに置き換わっています。そしてE-PMI(移住労働者証)は、インドネシアから来日する場合だけでなく、日本国内で在留資格を変更する場合にも取得が必要とされています。国内在留者だから不要という理解は誤りです。
また、LPKはインドネシア労働法上の職業訓練機関であり、県/市の地方政府が発行する事業許可を得て訓練を行う存在です。海外への配置を担えるのは移住労働者保護法上のP3MI等に限られ、P3MIにはSIP3MI・SIP2MIという許可が要求されます。LPKと送出機関を混同せず、許可の所在を書面で確認することが、トラブル回避の第一歩になります。
行政書士法人Treeでは、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請といった入管手続の書類作成と申請取次、1号特定技能外国人支援計画の作成、受入れ後の各種届出書類の作成に対応しています。インドネシア側の送出手続そのものはインドネシア政府・駐日インドネシア大使館の管轄となりますが、日本側の手続と全体スケジュールの整合を取りながら準備を進めることで、査証申請直前での手戻りを防ぐことができます。受入れをご検討の際は、お早めにご相談ください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


