カンボジア国籍の方を特定技能外国人として受け入れる場合、日本側の在留資格の手続だけを整えても申請は通りません。カンボジアには送出しに関する国内の仕組みがあり、カンボジア労働職業訓練省(MoLVT:Ministry of Labour and Vocational Training)が発行する「登録証明書」を、日本の地方出入国在留管理官署への申請時に添付することが求められます。そしてこの登録証明書は、本人や受入企業が直接MoLVTに申請できるものではなく、カンボジア政府が認定した現地の送出機関(認定送出機関)を通じて申請する建て付けになっています。
ところが実務では、「ベトナムの推薦者表と同じものを取ればよいのか」「日本に住んでいるカンボジア人を直接採用するなら現地の手続は不要ではないか」といった誤解が生じやすく、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の直前になって添付書類が足りないことに気づくと、入国や就労開始のスケジュールが大きくずれ込むおそれがあります。本記事では、出入国在留管理庁が公表しているカンボジア関係の一次資料と、日本国政府とMoLVTとの間の協力覚書(MOC)の内容に基づいて、認定送出機関の確認方法から登録証明書の取得手順、日本側申請との接続、職業紹介事業との線引き、受入れ後の届出管理までを実務目線で解説します。
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目次
カンボジア受入れの前提|2019年3月25日署名の協力覚書(MOC)
特定技能制度では、送出国側での不適正な仲介を排除し、円滑な送出し・受入れを確保するため、日本国政府が送出国政府との間で「特定技能に関する二国間の協力覚書」(MOC:Memorandum of Cooperation)を作成しています。出入国在留管理庁が公表している一覧では、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンの17か国が掲載されています。
カンボジアとの協力覚書は、正式には「日本国法務省、外務省、厚生労働省及び警察庁とカンボジア労働職業訓練省との間の在留資格『特定技能』を有する外国人に係る制度の適正な運用のための情報連携の基本的枠組みに関する協力覚書」といいます。覚書本文の末尾に「この協力覚書は、英語により二通作成され、2019年3月25日に東京において署名された」と明記されており、署名日は2019年(平成31年)3月25日、署名地は東京です。日本側は法務省・外務省・厚生労働省・警察庁の4省庁、カンボジア側はMoLVTが当事者となっています。
覚書の目的と連絡窓口
覚書の「1.目的」では、特定技能外国人の円滑かつ適正な送出し・受入れの確保、とりわけ悪質な仲介機関の排除と、送出し・受入れ及び日本国での在留管理に関する問題解決のための情報連携の基本的枠組みを定めることが目的として掲げられています。
「2.連絡窓口」では、両国の窓口が指定されています。日本国側は法務省出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、カンボジア側は労働職業訓練省労働総務部人材雇用局課第三人材派遣事務所です。トラブルが生じた際に両国政府がどこを通じて情報をやり取りするのかが明文化されている点は、受入企業が送出機関の適正さを判断する際の背景知識として役立ちます。なお「3.協力の枠組み」では、協力は各国で効力を有する法令の範囲内で行われること、相手方の書面による同意なしに秘密情報を第三者に開示しないことも定められています。
覚書が共有対象とする「悪質な行為」
覚書の「4.情報連携の基本的枠組み」では、両国が速やかに共有すべき情報として、求人・求職活動に関与する仲介機関による次の行為が列挙されています。
- 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、特定技能外国人等・その親族・関係者の金銭その他の財産を管理すること
- 契約の不履行について違約金を課す契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をすること
- 暴行、脅迫、自由の制限等、特定技能外国人等の人権を侵害すること
- 出入国管理・査証手続に関し、許可や査証等の証書を不正に取得する目的で、偽造・変造された文書や虚偽の文書等を行使し、又は提供すること
- 徴収する手数料その他の費用について、算出基準を示さず、その額及び内訳を理解させないまま徴収すること
これらは、受入企業が現地送出機関を選ぶ際の「見てはいけないサイン」そのものです。とりわけ手数料の算出基準・額・内訳を本人に説明しないまま徴収するという項目は、契約書のドラフト段階で確認できる事柄ですので、覚書に列挙されている以上、契約前の確認事項として明確に位置づけておくべきです。
また「4(2)問題是正等のための協議」では、両国の省庁が定期又は随時に協議を行うこととされ、その内容として、仲介機関の適正さの確保、日本国内の不適切な受入機関や支援を行う不適切な機関、カンボジア国内の不適切な送出機関に対する是正措置、技能・日本語能力の測定試験の適正な実施などが挙げられています。受入機関側の問題も協議対象に含まれている点は、受入企業として意識しておく必要があります。
「推薦者表」はベトナムの書類|カンボジアで取得するのは「登録証明書」
よくある誤解の一つが、「推薦者表」をカンボジアでも取得するのかという点です。結論から言えば、推薦者表はベトナムの制度で用いられる書類であり、カンボジアの手続には登場しません。
ベトナムの場合は、ベトナムから新たに受け入れるときは認定送出機関を通じてベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)から「推薦者表」の承認を受け、日本に在留する方を受け入れるときは駐日ベトナム大使館から推薦者表の承認を受けたうえで、日本側の在留諸申請に提出する運用になっています(DOLABは、2025年3月のベトナムの省庁再編により内務省の所管となっています)。一方カンボジアの場合、対応する書類はMoLVTが発行する「登録証明書」です。名称も発行機関も根拠となる国内制度も異なりますので、ベトナム案件のノウハウをそのままカンボジア案件に持ち込むと、必要書類の取り違えが起きます。
覚書の「5.MoLVTの約束」にも、「特定技能外国人候補者として、カンボジアの国内規定に沿って必要な手続きを行ったカンボジアにおける特定技能外国人の候補者へ証明書を発行すること」と規定されており、日本側の「6.日本の省庁の約束」では「MoLVTから発行された証明書を受領した特定技能外国人候補者に関するカンボジアの国内規定に沿って、必要な手続きを行ったカンボジアからの特定技能外国人のみを受け入れる」と定められています。登録証明書がなければ受け入れない、というのが両国政府の合意事項である以上、「後から出せばよい」という運用は成り立ちません。
送出国ごとに手続が違うことを前提に組み立てる
特定技能の送出国側手続は、国ごとに名称も所管官庁もフローも異なります。複数国籍の人材を並行して採用している企業では、国別の必要書類を一覧化し、採用決定の段階で「この国は現地手続に何営業日かかるのか」を確認する運用にしておくと、入社日の設定ミスを防げます。制度全体の枠組みについては特定技能とは?1号・2号の違いと19分野を解説も併せてご確認ください。
MoLVT認定送出機関とは|公表リストで102機関を確認する
カンボジアの制度上、特定技能外国人として来日を希望するカンボジア国籍の方は、カンボジア政府から認定を受けた現地の送出機関(認定送出機関)を通じて、登録証明書の発行をMoLVTに申請することが求められます。出入国在留管理庁の資料でも、カンボジアから新たに受け入れる場合について、受入機関は「認定送出機関を通じて、人材の紹介や雇用契約の締結を求められるとのことです」と説明されています。
この認定送出機関のリストは、カンボジア政府から日本側に提供され、出入国在留管理庁のホームページ(カンボジアに関する情報のページ)にPDFで掲載されています。本記事執筆時点で公表されているリストは令和7年8月19日更新版で、102機関が掲載されています。
リストに載っている項目と照合の実務
公表リストは英語表記で、次の項目が並んでいます。
- No.(通し番号)
- Registration Number(登録番号)
- Year of Registration(登録年)
- Name of Organization(機関名)
- Address(所在地)
- Name of Representative(代表者名)
- Telephone(電話番号)
- Email(メールアドレス)
登録年は2006年のものから2024年のものまで幅があり、所在地は大半がプノンペン市内です。実務上は、送出機関から提示された英文社名・登録番号・代表者名が、公表リストの記載と完全に一致するかを一字単位で照合します。社名が似ていても登録番号が一致しないケースや、リスト掲載機関の関連会社を名乗る別法人が窓口になっているケースがあるためです。名刺やパンフレットの日本語社名だけで判断せず、必ず英文の登記社名と登録番号で突き合わせてください。
認定の取消しがあり得ることを前提に「最新版」を確認する
覚書の「5.MoLVTの約束」には、MoLVTは海外雇用サービスの認定基準を満たす送出機関を認定して名称その他の情報を公表し日本側に提供すること、認定基準を満たさなくなったと認める場合には認定を取り消し、その結果を日本の省庁に通報することが定められています。また、日本の省庁から「認定基準に適合しない活動その他の適切でない活動を行ったと思われる」旨の通報を受けた場合には、当該送出機関を調査し、必要な指導及び監督を行い、調査結果を日本側に共有することとされています。
さらに同項では、MoLVTはカンボジアの認定送出機関を通じてのみ特定技能外国人を送り出すこと、認定送出機関に対し適切な方法で選定・送出しを行うよう指導することも約束しています。日本側も、「MoLVTから海外雇用サービスを提供する認定送出機関の認定取り消しの情報を受領した場合には、当該情報を日本国において公表する」と約束しています。つまりリストは固定ではなく更新される前提の名簿です。過去にダウンロードしたPDFを社内で使い回すのではなく、案件着手のたびに出入国在留管理庁のページから最新版を取得し、更新日と該当機関の掲載を確認する運用にしてください。
日本側の情報もカンボジアで公表される
覚書は双方向の情報連携を定めており、日本の省庁は受入機関又は登録支援機関に対して改善命令等を行った場合にMoLVTへ通知すること、登録支援機関リストをMoLVTと共有することを約束しています。MoLVT側は、日本の省庁から改善命令や登録支援機関一覧の情報提供を受けた場合、その情報をカンボジア国内で公表することとされています。受入機関側のコンプライアンス違反が現地で可視化される仕組みになっている点は、採用力の観点からも軽視できません。
手続の流れ|海外から呼び寄せる場合と国内在留者の場合
出入国在留管理庁が公表しているフローチャート「カンボジア特定技能外国人に係る手続の流れについて」では、カンボジアから新たに受け入れる場合と、日本国内に在留する方を受け入れる場合の2パターンが整理されています。いずれも申請人は、技能実習2号又は3号を良好に修了した者、あるいは試験に合格した者が想定されています。
海外から新たに受け入れる場合の14ステップ
- 求職登録:申請人がカンボジア認定送出機関に求職登録を行う
- 人材の紹介:認定送出機関が日本の受入機関に人材を紹介する(後述のとおり職業紹介事業の許可に注意)
- 雇用契約の締結:申請人と受入機関が特定技能雇用契約を締結する
- 登録証明書発行の手続を依頼:申請人が認定送出機関に依頼する
- 登録証明書発行の申請:認定送出機関がMoLVTに申請する
- 登録証明書の発行:MoLVTが認定送出機関に発行する
- 登録証明書の送付:認定送出機関から申請人へ送付される
- 登録証明書の送付:申請人から受入機関へ送付される
- 在留資格認定証明書交付申請:受入機関が地方出入国在留管理局へ申請する(登録証明書を提出)
- 在留資格認定証明書の交付
- 在留資格認定証明書の送付:受入機関から申請人へ送付する
- 査証申請:申請人が在カンボジア日本国大使館へ申請する
- 査証発給
- 出国:特定技能外国人として日本へ入国する
雇用契約の締結が「登録証明書の前」に来る
実務で見落とされやすいのが、雇用契約の締結(③)が登録証明書の申請(⑤)より前に位置しているという順序です。公表されているフローチャートは、いずれのパターンでも雇用契約の締結を先に置き、その後に登録証明書の発行手続を依頼する順序で描かれています。したがって、「先に登録証明書だけ取っておいて、あとから受入先を決める」という前提でスケジュールを組むのは避け、公表された順序どおりに進めるのが安全です。
また、雇用契約の内容は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第2条の5第1項に基づき、法務省令で定める基準に適合している必要があります。同条第2項は、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的取扱いをしてはならないことを基準に含めると定めています。さらに同条第3項・第4項は、受入機関側についても、適合特定技能雇用契約の適正な履行と適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施が確保されること、契約締結の日前5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしていないことを基準に含めるとしています。契約締結の段階でこの水準を満たしていなければ、後から登録証明書を取得しても日本側の審査は通りません。
在留資格認定証明書の交付後は期限管理が要る
在留資格認定証明書は、交付後に本人へ送付し、在カンボジア日本国大使館で査証発給申請を行うために使用します。在留資格認定証明書には有効期間があり、原則として交付日から3か月以内に上陸申請を行う必要があります。登録証明書の取得に時間がかかった案件ほど、その後の査証申請・渡航手配が圧縮されがちですので、交付日を起点にした逆算スケジュールを最初から共有しておくことをおすすめします。
なお、在留資格認定証明書交付申請そのものには手数料はかかりません。国内在留者の在留資格変更許可申請や入国後の在留期間更新許可申請の手数料は、2026年9月30日までに受け付けた申請は6,000円(オンライン申請は5,500円)ですが、2026年10月1日以降に受け付けた申請は、許可された在留期間に応じて1万円〜7万5,000円(オンライン申請は1万円〜6万5,000円)になります(令和8年政令第268号)。
日本国内に在留する方を受け入れる場合の7ステップ
留学生や技能実習生など、すでに日本に在留しているカンボジア国籍の方を特定技能で採用するケースも増えています。この場合のフローは次のとおりです。
- 雇用契約の締結:受入機関と本人が特定技能雇用契約を締結する
- 登録証明書発行の手続を依頼:本人が認定送出機関に依頼する
- 登録証明書発行の申請:認定送出機関がMoLVTに申請する
- 登録証明書の発行:MoLVTが認定送出機関に発行する
- 登録証明書の送付:認定送出機関から本人へ送付される
- 在留資格変更許可申請:本人が地方出入国在留管理局へ申請する(登録証明書を提出)
- 在留資格変更許可
直接採用は可能。ただし登録証明書の取得ルートは変わらない
出入国在留管理庁の解説資料は、日本に在留するカンボジア国籍の方と雇用契約を締結するにあたっては、必ずしも認定送出機関を通じて行う必要はなく、日本の受入機関が直接採用活動を行うことが可能であると説明しています。もちろん、認定送出機関を通じて紹介を受けて雇用契約を締結することも可能です。
ここで極めて重要なのが、続く記述です。同資料は、特定技能外国人として就労を希望するカンボジア国籍の方は、日本に在留しており、日本の受入機関が直接採用活動を行った場合であったとしても、認定送出機関を通じて登録証明書の発行をMoLVTに申請する必要があるとしています。
つまり、「採用は直接でよい」が「登録証明書は認定送出機関経由」という、二段構えの理解が必要です。現場では、直接採用できたことをもって現地手続も不要と早合点し、在留資格変更許可申請の準備段階で初めて登録証明書の存在を知る、というつまずきが起こりがちです。技能実習からの移行を含む変更手続の全体像は特定技能への在留資格変更手続き|技能実習・留学からの切替方法と必要書類を解説で整理していますので、あわせてご確認ください。
在留期限との逆算が生命線になる
国内在留者のケースでは、現在の在留資格の在留期限という動かせない締切があります。登録証明書の取得に要する期間、書類の国際郵送に要する期間、変更許可申請の審査期間を積み上げると、内定から申請までに想定以上の日数を要します。採用を決めた時点で本人の在留期間の満了日を在留カードで確認し、逆算して認定送出機関への依頼日を決めることが、実務上の最初の作業になります。
登録証明書の実務ポイントとスケジュール設計
登録証明書について、出入国在留管理庁の解説資料が明記している事項を確認したうえで、時間軸に落とし込みます。
発行に要する期間は2〜3営業日
MoLVTは、申請を受け、特定技能外国人として来日予定のカンボジア国籍の方がカンボジアの国内規則に従って必要な手続を行ったことが確認された場合に、その方に対して登録証明書を発行します。登録証明書の発行に要する期間は2〜3営業日とされています。
ただし、これはMoLVTが申請を受理してから発行するまでの期間です。認定送出機関が本人から依頼を受けて必要書類を揃え、MoLVTへ申請するまでの準備期間、発行後に本人へ、さらに本人から受入機関へ書類が届くまでの送付期間は、この2〜3営業日には含まれません。「2〜3営業日で手元に届く」と読み違えないことが、スケジュール管理上の最大のポイントです。
MoLVTの手数料はないが、送出機関の事務手数料は生じる
同資料は、MoLVTが登録証明書を発行する際の手数料はないとする一方で、認定送出機関がMoLVTに対する登録証明書の発行手続に関する事務手数料の支払いを契約に基づき求めると説明しています。
したがって、費用は「政府手数料」ではなく「送出機関との契約に基づく事務手数料」として発生します。ここで先ほどの協力覚書の情報共有項目が効いてきます。手数料について算出基準を示さず、額及び内訳を理解させないまま徴収する行為は、両国政府が情報共有の対象とする行為に挙げられています。契約書に金額と内訳、算出根拠が明記されているか、本人が理解できる言語で説明されているかを、契約締結前に必ず確認してください。受入れに係る費用全体の考え方は特定技能外国人の受入れ費用の全体像|初期費用から月額費用まで整理で整理しています。
登録証明書は日本側申請の添付書類として使う
登録証明書は、海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請に、国内在留者の場合は在留資格変更許可申請に添付します。出入国在留管理庁は登録証明書のひな形も公表していますので、送出機関から受領した書面が想定どおりの様式かを、申請前に照合しておくと安心です。氏名の綴り(ローマ字表記)がパスポート・雇用契約書・申請書類の間で一致しているかも、返戻を避けるための基本的な確認事項です。
見えにくい3つの待ち時間
カンボジア案件では、日本側だけを見ていると見えない待ち時間が3か所あります。
1つ目は、本人が認定送出機関に依頼してから、送出機関がMoLVTへ申請するまでの期間です。ここは制度上の日数が示されておらず、送出機関の体制や本人の書類準備状況に左右されます。依頼時に、いつMoLVTへ申請する見込みかを書面で確認しておくとブレを抑えられます。
2つ目は、MoLVTの発行(2〜3営業日)です。公表されている唯一の目安がここですが、カンボジアの祝日に重なると営業日ベースで延びますので、年末年始やクメール正月などの長期休暇期間には余裕を見ます。
3つ目は、書類が受入機関に届くまでの期間です。MoLVTから認定送出機関へ、認定送出機関から本人へ、本人から受入機関へと段階的に送付されるため、国際郵送を挟むと日数がかかります。原本の扱いと送付方法を事前に取り決めておくことが実務上のポイントです。
これらを積み上げたうえで、日本側の審査期間を加算します。審査期間は案件や時期により変動しますので、入社日から逆算して十分な余裕を確保してください。国内在留者の場合は現在の在留期限、海外からの呼び寄せの場合は在留資格認定証明書の有効期間(原則3か月)という、それぞれ別の締切が並走することを意識してスケジュールを引きます。
認定送出機関からの「紹介」と職業紹介事業の許可
出入国在留管理庁のフローチャートには、看過できない注記が付されています。「認定送出機関による求職者の人選を行う行為はあっせんに当たるため、仮にこのような行為を行う場合には、日本国内の職業紹介事業者としての許可を得る必要があります」という注記です。
厚生労働省が示す国外にわたる職業紹介の留意点
厚生労働省・都道府県労働局が職業紹介事業者向けに公表しているリーフレット(2019年4月1日以降の特定技能外国人材の受入れに関する留意点)では、次の整理がされています。
- 特定技能1号及び2号の在留資格については、職業紹介事業の許可などを受けて、国外に存在する求職者の受入れに関する職業紹介を行うことが可能
- 特定技能についても在留資格で認められている範囲内で転職が可能であり、転職先のあっせんを行う場合にも職業紹介事業の許可などが必要
- 登録支援機関の登録を受けていても、職業紹介を行う場合には別途職業紹介事業の許可などを取得する必要がある
- 監理団体の許可を受けた事業者が行えるのは技能実習に関する雇用契約の成立のあっせんであり、特定技能に関する職業紹介を行うには別途許可などが必要
この「登録支援機関=職業紹介ができる」ではないという点は、実務でとくに誤解されやすい部分です。登録支援機関の役割や登録要件については登録支援機関とは?役割・届出・義務的支援10項目を行政書士が解説もご参照ください。
国外にわたる職業紹介で追加される提出書類
同リーフレットは、国外にわたる職業紹介を行う場合には、国内のみで職業紹介を行う場合に加えて次の書類の提出が必要としています(このうち最後の「取次機関に関する申告書」を除く4点は、該当部分のみの添付でよく、日本語訳も含みます)。
- 相手先国の関係法令
- 取次機関を利用しない場合:相手先国において事業者の活動が認められていることを証明する書類
- 取次機関を利用する場合:取次機関及び事業者の業務分担について記載した契約書など
- 取次機関を利用する場合:相手先国で取次機関の活動が認められていることを証明する書類
- 取次機関を利用する場合:取次機関に関する申告書
遵守事項として明示されている5項目
許可基準・留意事項としては、次の5項目が挙げられています。
- 取扱職種の範囲などとして届け出た国以外を相手先国としてはならない
- 入管法や相手先国の法令を遵守して職業紹介を行わなければならない
- 求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付け、又は求人者がそれらの金銭を貸し付けた求職者に対して職業紹介を行ってはならない
- 相手先国において活動を認められていない取次機関、及び、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず求職者の財産を管理し、違約金など不当に財産の移転を予定する契約を締結し、又は求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付ける取次機関を利用してはならない
- 求職者が保証金の徴収その他名目のいかんを問わず財産を管理されていたり、違約金など不当に財産の移転を予定する契約を締結されていることを認識して、職業紹介を行ってはならない
あわせて、自らの紹介により就職した者(無期雇用契約を締結した者に限る)に対して就職した日から2年間は転職の勧奨を行ってはならないこと、求職者・求人者双方に受理する手数料の明示が必要であること、求職者などを勧誘するにあたってお祝い金などの金銭を支給することは望ましくないことなども示されています。また、同リーフレットは「相手先国の法令において、送り出し手続きが定められている場合がありますので、事前に確認してください」とも述べています。カンボジアの登録証明書は、まさにこの「相手先国で定められた送り出し手続」に当たります。
さらに同リーフレットは、国外にわたる職業紹介については職業紹介を行った後に求職者が在留資格を取得できない可能性があるため、トラブル防止の観点から事前に求人者との間で手数料の金額や支払いのタイミングを明確にしておく必要があること、分野別協議会において大都市圏への集中回避に関する対応策(引き抜きの自粛要請など)が定められている場合はこれを遵守する必要があることにも触れています。
なお、有料職業紹介事業の許可申請そのものの手続については、労働局への確認や社会保険労務士など所管の専門家への相談が必要になります。本記事は制度の全体像を整理するものであり、許可申請手続の代行を案内するものではありません。
出国前オリエンテーションと日本側の義務的支援の関係
出入国在留管理庁の解説資料には、カンボジア側の手続として出国前オリエンテーションの受講が挙げられています。特定技能外国人として雇用されるカンボジア国籍の方は、出国前オリエンテーションの受講が求められるとされています。これはカンボジア側の手続であり、日本側の手続ではありません。
日本側の支援計画は入管法に根拠がある
日本側では、特定技能1号の外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関は、入管法第2条の5第6項に基づき、1号特定技能外国人支援計画を作成しなければなりません。同項は、支援の内容を「職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援」と定義しています。さらに同条第7項は、支援には日本人との交流の促進に係る支援と、本人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において他の機関との契約に基づいて活動できるようにするための支援を含むと定めています。
この支援計画に基づく事前ガイダンスは、カンボジア側の出国前オリエンテーションとは別個の、日本側受入機関(又は委託を受けた登録支援機関)の義務です。「現地で出国前オリエンテーションを受けているから事前ガイダンスは省略できる」という運用はできません。支援計画の中身については特定技能1号の支援計画とは?義務的支援10項目と登録支援機関への委託を解説、事前ガイダンスの実施方法については特定技能の事前ガイダンス|10項目の説明事項・実施方法・時間で詳しく解説しています。
支援計画の全部委託と「みなし適合」
入管法第2条の5第5項は、特定技能所属機関が契約により登録支援機関に適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該特定技能所属機関は同条第3項第2号(支援計画の適正な実施の確保)の規定に適合するものとみなす、と定めています。「全部」の委託であることがポイントで、一部委託ではこのみなし規定は働きません。委託契約の設計については特定技能の支援委託契約書|必須条項・全部委託と一部委託・費用・届出手続で整理しています。
言語面の配慮はクメール語で考える
義務的支援は、本人が十分に理解できる言語で行うことが前提です。カンボジア国籍の方の場合、クメール語での対応体制をどう確保するかが実務上の論点になります。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談・苦情対応のいずれについても、通訳の手配や翻訳資料の準備を含めて支援計画に落とし込んでおく必要があります。英語対応で足りると安易に判断しないことが、後の相談対応のトラブルを防ぎます。
受入れ後の義務|届出と改善命令のリスク管理
登録証明書を取得し在留資格が下りれば終わり、ではありません。受入れ後は入管法上の届出義務が継続します。
随時届出(入管法第19条の18第1項)
特定技能雇用契約の相手方である本邦の公私の機関(特定技能所属機関)は、次のいずれかに該当するときに、出入国在留管理庁長官へ届け出なければなりません。
- 特定技能雇用契約の変更(法務省令で定める軽微な変更を除く)をしたとき、契約が終了したとき、又は新たな契約を締結したとき
- 1号特定技能外国人支援計画の変更(軽微な変更を除く)をしたとき
- 第2条の5第5項の契約(支援計画の全部委託契約)の締結若しくは変更をしたとき、又は当該契約が終了したとき
- そのほか法務省令で定める場合に該当するとき
定期届出(同条第2項)
随時届出をする場合を除き、受け入れている特定技能外国人の氏名及びその活動の内容その他法務省令で定める事項、支援計画を作成した場合はその実施状況(登録支援機関に全部委託した場合を除く)、その他在留管理に必要な事項を届け出る義務があります。届出の期限管理については特定技能の随時届出一覧|契約変更・支援計画変更・受入れ困難・支援実施困難時の14日ルール、登録支援機関側の変更届の実務は登録支援機関の届出・変更届の書き方|14日以内の提出期限に注意もご覧ください。
改善命令は公示され、カンボジア側にも通知される
入管法第19条の21第1項は、出入国在留管理庁長官が第19条の19各号に掲げる事項が確保されていないと認めるときは、特定技能所属機関に対し期限を定めて改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができると定め、同条第2項は命令をした場合にはその旨を公示しなければならないとしています。
加えて前述のとおり、協力覚書により日本の省庁は改善命令等をMoLVTに通知し、MoLVT側はこれをカンボジア国内で公表することとされています。国内での公示にとどまらず、送出国側でも情報が共有されるという点は、カンボジアからの継続的な採用を計画している企業にとって現実的なリスクです。
登録支援機関側の届出も別に走る
支援計画の実施を委託している場合、登録支援機関の側にも届出義務があります。入管法第19条の23第1項は、契約により委託を受けて適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施の業務を行う者が出入国在留管理庁長官の登録を受けることができると定め、同条第2項は登録は5年ごとに更新を受けなければ効力を失うとしています。また第19条の27第1項は、登録事項に変更があったときの届出義務を定めています。委託先の登録の有効期間が受入期間中に満了しないかも、受入機関側で把握しておきたい事項です。
よくあるつまずきと実務チェックリスト
つまずき1:登録証明書を「あとから追加提出」しようとする
登録証明書は在留諸申請の添付書類です。両国政府の覚書上も、登録証明書を受領した候補者のみを受け入れるという建て付けになっています。申請書を先に出して後日追加する前提でスケジュールを組むのは避けてください。
つまずき2:技能実習の送出機関=特定技能の認定送出機関だと思い込む
技能実習で取引実績のある現地機関が、特定技能の認定送出機関として公表リストに掲載されているとは限りません。公表リストの最新版で、登録番号まで含めて必ず照合してください。
つまずき3:日本国内の直接採用で現地手続を飛ばす
本記事で繰り返し述べたとおり、日本に在留するカンボジア国籍の方を直接採用した場合であっても、認定送出機関を通じたMoLVTへの登録証明書の申請は必要とされています。
つまずき4:手数料の内訳を確認しないまま契約する
算出基準を示さず額及び内訳を理解させないまま費用を徴収する行為は、協力覚書が情報共有の対象とする行為に挙げられています。保証金の徴収や違約金契約についても同様です。契約書の該当条項を、締結前に日本語訳とともに確認してください。
つまずき5:分野・試験・協議会の要件を後回しにする
カンボジア側の手続に気を取られると、日本側の基本要件の確認が後手に回りがちです。従事させる業務が特定産業分野の範囲に収まっているか、技能試験・日本語試験の合格又は技能実習2号の良好修了による免除に該当するか、分野別協議会への加入要件を満たしているかを、雇用契約の締結前に確認してください。試験関係は特定技能の技能試験ガイド|分野別試験・日本語試験・免除条件を解説、協議会は特定技能の協議会とは?分野別の加入方法・費用・タイミングで解説しています。
参考:特定産業分野は19分野に
特定産業分野を定める省令(平成31年法務省令第6号)が令和8年法務省令第22号により改正され、令和8年(2026年)4月1日から特定産業分野は19分野となりました。従前の16分野に、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が追加されています。もっとも、新たに追加された3分野は、分野別の告示基準の整備や技能試験の実施を経て順次受入れが可能になる段階にありますので、実際に受け入れられるかどうかは分野所管省庁の最新情報の確認が必要です。特定技能2号への接続を見据える場合は特定技能2号とは?対象分野・在留期間・1号との違いを行政書士が解説もあわせてご確認ください。
参考:問い合わせ先と一次情報の確認先
カンボジア側の手続に関する照会先として、出入国在留管理庁の資料は駐日カンボジア王国大使館を案内しています。所在地は東京都港区赤坂8-6-9、電話番号は03-5412-8521及び080-3459-7889です。
制度・様式・認定送出機関リストについては、出入国在留管理庁の「カンボジアに関する情報」のページが一次情報です。同ページには、手続の流れのフローチャート、手続の解説資料、登録証明書のひな形、協力覚書の英文及び和文(仮訳)、カンボジア政府認定送出機関のリストが掲載されています。いずれも更新される前提の資料ですので、案件ごとに最新版を確認してください。
なお、認定送出機関との契約や現地手続そのものはカンボジアの制度に基づくものであり、日本の行政書士が代理して行える性質のものではありません。行政書士が担うのは、行政書士法第1条の3に基づく官公署提出書類・権利義務又は事実証明に関する書類の作成と、同法第1条の4第1項第1号に基づく提出手続の代理です。カンボジア側で取得した登録証明書を前提に、日本側の在留資格申請書類を整え、支援計画を作成し、受入れ後の届出を管理していく部分が、日本側の実務の中心になります。
特定技能外国人の受入れをご検討の企業様へ。行政書士法人Treeでは、在留資格の申請取次から支援計画の作成・各種届出までをサポートします。ご相談は何度でも無料です。
まとめ
カンボジア国籍の方を特定技能で受け入れる際の中核は、MoLVTが発行する「登録証明書」です。ベトナムの「推薦者表」とは別の書類であり、名称も発行機関も異なります。登録証明書は、海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請に、日本国内在留者の場合は在留資格変更許可申請に添付します。
登録証明書は、カンボジア政府が認定した送出機関を通じてMoLVTへ申請するルートに限られます。日本の受入機関が日本国内で直接採用活動を行った場合であっても、この点は変わりません。認定送出機関のリストは出入国在留管理庁が公表しており、本記事執筆時点では令和7年8月19日更新版に102機関が掲載されています。認定は取り消されることがあるため、案件ごとに最新版で登録番号まで照合してください。
スケジュールでは、MoLVTの発行に要する期間が2〜3営業日という点だけが公表された目安である一方、送出機関の準備期間と国際郵送の期間は別途かかることに注意が必要です。費用面では、MoLVTの発行手数料はないものの、送出機関が契約に基づく事務手数料を求めるとされています。手数料の算出基準・額・内訳が本人に説明されているかは、協力覚書が情報共有の対象とする行為に直結する確認事項です。
日本側では、入管法第2条の5第6項の1号特定技能外国人支援計画の作成、第19条の18の届出義務の履行が継続します。改善命令は同法第19条の21第2項により公示され、協力覚書に基づきカンボジア側にも共有される仕組みですので、受入れ後の管理体制まで含めて設計しておくことが、継続的な採用の前提になります。また、認定送出機関が求職者の人選を行う行為はあっせんに当たり、日本国内の職業紹介事業者としての許可が必要とされている点も、事前に整理しておくべき論点です。
行政書士法人Treeでは、行政書士法第1条の3に基づく在留資格関係書類・支援計画・各種届出書の作成と、同法第1条の4第1項第1号に基づく提出手続の代理、および入管法施行規則に基づく地方出入国在留管理官署への申請取次を行っています。カンボジア案件では、登録証明書の取得時期を織り込んだ申請スケジュールの設計と、受入れ後の届出期限の管理までを一体で整理することが、実務上もっとも効果の大きい部分です。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


