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虚偽告訴罪の告訴状|刑法172条の成立要件・立証と警察署長宛て提出の実務

更新: 約29分で読めます

身に覚えのない犯罪について告訴・告発され、あるいは事実無根の被害届を出されて、警察から事情を聴かれた——。そうした経験をした方から、「嘘の告訴をした相手の責任を問えないのか」というご相談を受けることがあります。刑法は、こうした行為を虚偽告訴等罪(刑法172条)として処罰の対象としています。法定刑は3月以上10年以下の拘禁刑と重く、罰金刑の選択肢がない重罪です。

もっとも、虚偽告訴罪は「相手の言い分が間違っていた」というだけでは成立しません。申告内容が客観的な事実に反していること、そして相手が「刑事または懲戒の処分を受けさせる目的」を持っていたことが必要であり、この2点の立証が実務上の大きな壁になります。捜査機関に告訴状を持ち込んでも、事実関係と証拠の整理が不十分であれば、受理そのものが進まないことも珍しくありません。

この記事では、虚偽告訴罪の条文と成立要件を一次資料に基づいて整理したうえで、公訴時効や隣接する犯罪との違い、立証のために何を集めるべきか、警察署長宛ての告訴状をどう組み立てるかまでを、実務目線で解説します。

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虚偽告訴罪(刑法172条)とは何か

条文と法定刑

刑法172条は「虚偽告訴等」という見出しのもと、次のように定めています。

「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。」

注目すべきは法定刑です。下限が3月、上限が10年の拘禁刑と定められており、罰金刑が用意されていません。つまり、この罪で有罪となれば、刑の執行猶予が付く可能性はあるものの、法律上「罰金で済ませる」という処理はできない構造になっています。刑法典のなかでも、他人を陥れる行為に対して国家が強い非難を向けていることが、法定刑から読み取れます。

比較のために挙げると、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損する名誉毀損罪(刑法230条1項)は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損し、もしくは業務を妨害する行為(刑法233条)も3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。虚偽告訴罪の法定刑は、これらより格段に重く設定されています。

「誣告罪」という古い呼び名との関係

年配の方や古い書籍では、この罪を誣告罪(ぶこくざい)と呼ぶことがあります。これは同じ罪の旧称です。刑法は平成7年法律第91号による改正で条文が口語化され、その際に罪名の表記も現在の「虚偽告訴等」に改められました。内容が変わったわけではないため、古い判例や文献で「誣告罪」と書かれていても、現在の刑法172条の罪を指していると理解して差し支えありません。

なお、後述する犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)には、現在も「ぶ告」という表記が残っています。捜査実務の内部規則では、この古い用語が生きているわけです。

「懲役」ではなく「拘禁刑」と書く理由

インターネット上の解説記事では、いまだに「3月以上10年以下の懲役」と書かれているものが少なくありません。しかし現在の条文は「拘禁刑」です。

令和4年法律第67号による刑法改正で、従来の懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。この改正は、令和5年政令第318号によって施行日が定められ、令和7年(2025年)6月1日から施行されています。したがって、現時点で刑法172条の法定刑を説明する際は「拘禁刑」と表記するのが正確です。告訴状に法定刑を記載する場合も、現行の表記に合わせておくべきでしょう。

保護法益——なぜこれほど重いのか

虚偽告訴罪がこれほど重く処罰される理由は、この罪が守ろうとしている利益(保護法益)の性質にあります。

判例・通説は、本罪の保護法益を第一次的には国家の審判作用の適正、すなわち刑事司法および懲戒制度が正しく運用されることに求めています。虚偽の申告は、捜査機関に無駄な捜査を強い、本来なされるべき捜査資源の配分を歪め、最悪の場合は無実の人を処罰させてしまいます。国家機能そのものへの攻撃だという評価です。

そのうえで、二次的には個人の私生活の平穏・法的安全も保護法益に含まれると解されています。虚偽の告訴をされた人は、取調べを受け、周囲から疑いの目を向けられ、勤務先や取引先での立場を失うこともあります。この個人的法益の側面があるからこそ、虚偽告訴をされた本人が「犯罪により害を被った者」(刑事訴訟法230条)として告訴権を行使できると考えられているわけです。

この二重構造は、実務上も意味を持ちます。たとえば、虚偽の申告をされた本人が「自分は構わない」と承諾していた場合でも、国家的法益を保護する必要性は消えないため、判例・通説は本罪の成立を認めています。個人が処分できる利益ではない、ということです。

成立要件①——申告内容が「虚偽」であること

判例・通説が採る「客観説」

刑法172条の「虚偽」とは何を指すのか。ここには古くから議論があり、大きく2つの立場が対立してきました。

  • 客観説——申告内容が客観的事実に反することをいう
  • 主観説——申告者の記憶・認識に反することをいう

判例・通説は客観説を採っています。すなわち、申告された事実が客観的な真実に反していることが必要です。

この立場を採ると、実務上、次のような帰結が生じます。申告者が「あの人は犯人ではないだろう」と内心では思いながら「あの人が犯人だ」と申告したとしても、結果的にその人が本当に犯人だった場合には、虚偽告訴罪は成立しません。申告内容が客観的事実に合致している以上、国家の審判作用は歪められていないからです。逆に、申告者が心から「あの人が犯人だ」と信じ込んでいても、それが客観的事実に反していれば、「虚偽」の要件自体は満たされます(ただし、この場合は後述する故意・目的の要件で成立が否定されることが多くなります)。

思い違い・勘違いによる申告は処罰されるか

ご相談で最も多い誤解が、この点です。「相手は事実と違うことを警察に言った。だから虚偽告訴罪だ」という理解は、正確ではありません。

虚偽告訴罪は故意犯であり、さらに後述するとおり目的犯でもあります。申告者がその申告内容が虚偽であることを認識していたことが必要です。真実だと信じて申告したが、捜査の結果それが事実誤認だったと判明した——という場合、故意が欠けるため本罪は成立しません。

もっとも、この認識は確定的なものである必要はなく、判例は未必的な認識があれば足りるとしています。「虚偽かもしれない」と思いながら、あえて申告に踏み切った場合まで、故意が否定されるわけではありません。

これは制度上、必要な線引きでもあります。もし勘違いによる申告まで処罰されるとすれば、犯罪被害に遭った人が「後で間違いだったら自分が罰せられる」と恐れ、届け出そのものをためらってしまいます。それでは犯罪の申告制度が機能しません。虚偽告訴罪のハードルが高く設定されているのは、この副作用を避けるためでもあります。

誇張・一部虚偽の扱い

実際のトラブルでは、「まったくの作り話」ではなく、「実際にあった出来事に尾ひれを付けた」という類型が多く見られます。

一般に、事実の核心部分は真実であり、周辺的な部分が誇張されているにとどまる場合、その誇張が犯罪の成否を左右しない限り、虚偽告訴罪の「虚偽」には当たらないと解されています。他方で、誇張された部分こそが犯罪の成立を基礎づけている場合——たとえば実際には口論があっただけなのに「殴られて全治2週間の怪我をした」と申告し、それによって傷害事件として立件を求めたような場合——は、犯罪事実の根幹が客観的事実に反しているため、「虚偽」の要件を満たす方向に働きます。

告訴状を作成する際は、この点を意識して構成する必要があります。「相手の話は全体的におかしい」という書き方ではなく、どの事実が、なぜ、客観的に虚偽といえるのかを、争点を絞って特定していく作業が求められます。

成立要件②——「告訴、告発その他の申告」であること

申告の相手方は誰か

虚偽告訴罪が成立するには、虚偽の内容が捜査機関または懲戒権を有する機関に向けて申告されることが必要です。

ここでいう捜査機関とは、警察(司法警察員・司法巡査)および検察官を指します。懲戒権を有する機関とは、公務員であれば任命権者、資格者であれば所属する団体などが該当します。

逆に言えば、これらの機関以外に向けた発言は、どれほど悪質でも虚偽告訴罪にはなりません。SNSに「あいつは泥棒だ」と投稿する、勤務先の上司に嘘の被害を訴える、近所に噂を広める——こうした行為は名誉毀損罪や信用毀損罪の問題にはなり得ますが、国家の審判作用を害する行為ではないため、刑法172条の射程外です。ここは告訴状を作成するうえで最初に確認すべきポイントになります。

「その他の申告」の広がり

条文は「告訴、告発その他の申告」と規定しており、正式な告訴状・告発状の提出に限定していません。

刑事訴訟法上、告訴は「犯罪により害を被つた者」(同法230条)が犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示であり、告発は「何人でも、犯罪があると思料するとき」(同法239条1項)にできる申告です。しかし虚偽告訴罪の「申告」は、これら手続法上の類型に限られません。被害届の提出、捜査機関への通報、投書、陳情など、捜査や懲戒手続の端緒を与える申告であれば、広く含まれ得ると解されています。

実務では、正式な告訴状よりも被害届によって捜査が始まるケースのほうが圧倒的に多いため、この点は重要です。「相手は告訴状を出したわけではないから虚偽告訴罪にはならない」という理解は誤りということになります。

申告には「自発性」が必要

見落とされやすいのが、申告の自発性という要件です。

虚偽告訴罪の「申告」は、申告者が自ら進んで捜査機関等に働きかけるものである必要があると解されています。したがって、すでに捜査機関の取調べを受けている人が、質問に答えるかたちで「犯人はあの人だ」と嘘をついたとしても、それだけでは虚偽告訴罪にはなりません。取調べにおける虚偽の供述は、自発的な申告とは評価されないためです。

この区別は実務上しばしば争点になります。相手方が「警察に聞かれたから答えただけだ」と主張してきた場合、告訴する側としては、相手が自ら警察署に出向いた、自ら電話で通報した、自ら書面を提出したといった、申告の起点が相手方にあることを示す事情を積み上げる必要があります。受理の段階で警察から確認されることも多い点です。

書面か口頭か、匿名でもよいか

申告の方式について、条文は制限を設けていません。書面によるものでも、口頭によるものでも、捜査機関等に到達すれば「申告」に当たり得ます。

参考までに、刑事訴訟法241条1項は「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない」と定め、同条2項は口頭による告訴・告発を受けた場合の調書作成義務を規定しています。犯罪捜査規範64条1項も、口頭による告訴・告発を受けたときは告訴調書・告発調書を作成しなければならないとしています。つまり、口頭の申告であっても捜査機関側で書面化される運用になっており、後日それが虚偽告訴罪の証拠として機能することになります。

匿名の投書などについては、申告者が特定できなければ実際に立件することは困難ですが、理論上、匿名だからといって当然に本罪の成立が否定されるわけではありません。実務的には、申告者が誰であるかを客観的に特定できるかが、告訴に踏み切れるかどうかの分かれ目になります。

成立要件③——「刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的」

虚偽告訴罪は「目的犯」である

刑法172条は、単に虚偽の申告をしただけでは足りず、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で」なされたことを要求しています。故意に加えて特別な主観的要素を必要とする、いわゆる目的犯です。

もっとも、この「目的」は確定的なものである必要はないと解されています。判例・通説によれば、相手が現実に有罪判決や懲戒処分を受けることを積極的に意欲している必要はなく、相手がそうした処分を受ける可能性を認識し、認容していれば足りるとされています。いわゆる未必的な目的で足りる、ということです。

ただし、目的の対象はあくまで条文どおり刑事の処分または懲戒の処分です。「困らせてやろう」「警察に呼び出させてやろう」という動機があったというだけで当然に要件が満たされるわけではなく、申告の内容や態様から、相手が刑事処分等を受ける可能性を認識しながら申告したといえるかが問われます。

この点は、告訴状を組み立てるうえで有利に働きます。「相手は本気で刑務所に入れようとまでは思っていなかったはずだ」という反論は、目的要件を否定する決め手にはなりません。

「刑事の処分」と「懲戒の処分」の中身

「刑事の処分」は、刑罰を科す処分を指します。

「懲戒の処分」については、範囲に注意が必要です。判例・通説は、これを公法上の監督関係に基づいて職務規律を維持するために科される制裁的処分と理解しています。具体的には次のようなものです。

  • 国家公務員——国家公務員法82条1項に基づく免職・停職・減給・戒告
  • 地方公務員——地方公務員法29条1項に基づく戒告・減給・停職・免職
  • 資格者——弁護士会による弁護士の懲戒など、法律に基づく監督関係による処分

ここで重要なのは、私企業の社内懲戒(就業規則に基づく譴責・減給・懲戒解雇など)は、刑法172条の「懲戒の処分」には含まれないと解されている点です。これは公法上の監督関係ではなく、私法上の雇用契約に基づく処分だからです。

したがって、「同僚が会社に嘘の報告をして、自分が懲戒解雇された」というケースでは、その報告が警察等に向けられていない限り、虚偽告訴罪の構成要件には当たりません。この場合に検討されるのは、名誉毀損罪(刑法230条)や信用毀損・業務妨害罪(刑法233条)、あるいは民事上の責任ということになります。ご相談の際、ここを取り違えたまま告訴状を準備してしまうケースが実際にありますので、初期段階での見極めが欠かせません。

「人に」——自己を陥れる申告と架空人物への申告

条文は「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で」と規定しています。この「人」は他人を意味すると解されており、次の2つの帰結が導かれます。

第一に、自分自身について虚偽の申告をしても、虚偽告訴罪は成立しません。たとえば真犯人をかばうために「自分がやりました」と虚偽の自首をした場合、本罪には当たりません(ただし、犯人蔵匿・隠避罪や証拠隠滅罪などの別の犯罪が問題になり得ます)。

第二に、実在しない架空の人物を名指しした申告も、本罪には当たらないと解されています。処分を受ける主体が存在しない以上、刑事司法作用が具体的に歪められる危険がないためです。他方、実在する人物であれば、氏名が正確でなくとも、特定が可能であれば足りると考えられています。

既遂時期・公訴時効・親告罪性と自白による減免

いつ既遂になるのか

虚偽告訴罪の既遂時期は、虚偽の申告が捜査機関または懲戒権者に到達した時点と解されています。相手方が実際に捜査を開始したかどうか、立件されたかどうか、まして有罪になったかどうかは問いません。

この帰結として、次の点が実務上重要になります。虚偽の告訴をした者が、後になって告訴を取り消したとしても、すでに成立した虚偽告訴罪が消えるわけではありません。刑事訴訟法237条1項は公訴の提起があるまで告訴を取り消せると定めていますが、これは告訴の効力に関する規定であって、既遂に達した虚偽告訴罪の成否とは別問題です。

ただし、後述する刑法173条の減免規定が適用される余地はあります。

公訴時効は7年

虚偽告訴罪の公訴時効期間は、7年です。

根拠は刑事訴訟法250条2項の各号にあります。同項は、人を死亡させた罪であって拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪について、法定刑の上限(長期)に応じて時効期間を段階的に定めています。

  • 3号——長期15年以上の拘禁刑に当たる罪は10年
  • 4号——長期15年未満の拘禁刑に当たる罪は7年
  • 5号——長期10年未満の拘禁刑に当たる罪は5年

虚偽告訴罪の法定刑は「3月以上10年以下の拘禁刑」であり、長期は10年です。長期15年以上には当たらず、かといって長期10年未満でもありませんから、4号の「長期15年未満の拘禁刑に当たる罪」に該当し、時効期間は7年となります。「10年以下だから5年」と誤って計算されることがあるため、注意が必要です。

起算点は犯罪行為が終わった時、すなわち虚偽の申告が到達した時点が基準となります。したがって、相手が虚偽の告訴・告発・被害届を出した日から7年が、おおよその目安になります。

親告罪ではない——6か月の告訴期間の制限を受けない

虚偽告訴罪は親告罪ではありません

刑事訴訟法235条本文は「親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない」と定めていますが、これは親告罪についての規定です。刑法上、親告罪とされているのは、たとえば名誉に対する罪(刑法232条1項が「この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」と規定)などであり、虚偽告訴罪はこれに含まれません。

実務的な意味は小さくありません。名誉毀損罪で対応しようとすると犯人を知った日から6か月という短い期限に縛られますが、虚偽告訴罪であれば、公訴時効の7年が経過するまでは告訴が可能です。虚偽の告訴をされてから時間が経ってしまった事案でも、選択肢が残されているということになります。親告罪の仕組みと期間計算については、親告罪とは?告訴が必要な犯罪一覧と告訴期間の計算方法もあわせてご確認ください。

自白による刑の減免(刑法173条)

刑法173条は、虚偽告訴罪について特別な減免規定を置いています。

「前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。」

虚偽の申告をした者が、被申告者に対する裁判が確定する前、または懲戒処分が行われる前に自白すれば、刑の減軽または免除の可能性があるという規定です。無実の人が処罰されてしまう事態を、可能な限り手前で食い止めようという政策的な配慮に基づくものです。偽証罪についても同趣旨の規定(刑法170条)が置かれています。

告訴する側から見れば、この規定は「相手が途中で虚偽を認めれば刑が軽くなり得る」ことを意味します。もっとも、減免は「できる」という裁量規定であり、必ず免除されるわけではありません。

隣接する犯罪との区別

虚偽の内容を述べる行為に関わる犯罪は複数あり、事案によっては複数の罪が問題になります。告訴状を作成する前に、どの構成要件で組み立てるのが適切かを見極める必要があります。

罪名 条文 法定刑 虚偽告訴罪との主な違い
虚偽告訴等罪 刑法172条 3月以上10年以下の拘禁刑 捜査機関・懲戒権者への自発的な虚偽申告
偽証罪 刑法169条 3月以上10年以下の拘禁刑 法律により宣誓した証人が法廷等で虚偽の陳述をする場合
虚偽鑑定等罪 刑法171条 前二条の例による 宣誓した鑑定人・通訳人・翻訳人による虚偽の鑑定等
名誉毀損罪 刑法230条1項 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 公然と事実を摘示。相手方は不特定または多数。親告罪
侮辱罪 刑法231条 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 事実の摘示なしに公然と侮辱。親告罪
信用毀損・業務妨害罪 刑法233条 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 虚偽の風説の流布・偽計により信用毀損または業務妨害

偽証罪との違い

虚偽告訴罪と偽証罪(刑法169条)は、法定刑がまったく同じ「3月以上10年以下の拘禁刑」であり、いずれも国家の審判作用を保護する犯罪です。違いは行為の場面にあります。

偽証罪は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合に成立します。宣誓していない者の虚偽の供述や、被告人自身の否認は偽証罪にはなりません。これに対して虚偽告訴罪は、宣誓の有無を問わず、捜査や懲戒手続の端緒を与える申告の段階を捉えるものです。両者の詳細は、偽証罪・証拠隠滅罪・犯人隠避罪の告訴状の書き方|成立要件・公訴時効・証拠を解説で整理しています。

名誉毀損罪との違い

虚偽の告訴をされた場合、名誉毀損罪(刑法230条1項)も検討候補になります。ただし、両者は要件が大きく異なります。

名誉毀損罪は「公然と」事実を摘示することを要件としており、不特定または多数の人が認識し得る状態でなければ成立しません。警察官に対して密室で虚偽の申告をしただけでは、この「公然性」を満たさないのが通常です。また、名誉毀損罪は刑法232条1項により親告罪とされ、告訴期間は犯人を知った日から6か月に制限されます。

逆に、虚偽の内容をSNSや職場で言いふらされた場合は、公然性が認められる一方で捜査機関への申告がないため、虚偽告訴罪ではなく名誉毀損罪の問題になります。SNS上の名誉毀損への対応は、名誉毀損・侮辱罪の告訴状の書き方|SNS誹謗中傷への対応で詳しく扱っています。

虚偽の申告により公的な記録が作られた場合

虚偽の申告が、単に捜査の端緒にとどまらず、公正証書の原本に不実の記載をさせるところまで至った場合には、別途、公正証書原本不実記載罪の問題が生じます。この類型については公正証書原本不実記載罪の告訴状|偽装結婚・偽装離婚・登記不実記載の要件を解説をご覧ください。また、虚偽の情報によって事業活動が妨害された場合には偽計業務妨害罪の検討も必要になり、こちらは偽計業務妨害罪の告訴状の書き方|威力業務妨害との違い・記載例を解説で整理しています。

立証のハードルと証拠整理の実務

虚偽告訴罪は条文上の要件が明確である一方、実際に立件されることは多くありません。その理由を理解しておくことが、実効性のある告訴状を作るための出発点になります。まず4つの壁を確認し、そのうえで何を集めるべきかを整理します。

壁① 「客観的に虚偽である」ことの証明

客観説を前提とする以上、告訴する側は申告された事実が客観的に存在しなかったことを示さなければなりません。これは、いわゆる「ないことの証明」であり、性質上、直接証拠で示すことが困難です。

実務では、「なかったこと」そのものを立証するのではなく、申告された事実と両立しない客観的事実を積み上げていく方法を取ります。申告された日時に別の場所にいたこと、申告された行為が物理的に不可能であったこと、申告された被害の痕跡が存在しないこと——こうした事実を示すことで、間接的に虚偽であることを推認させる構成です。

壁② 「目的」という主観的要素の証明

目的要件は相手方の内心に関わるため、本人が認めない限り直接証明できません。ここでも、外形的な事情から推認させる方法を取ります。

典型的には、申告の前後における相手方の言動、金銭要求や関係解消をめぐる対立の経緯、申告のタイミングの不自然さ、申告内容が時期によって変遷している事実などが、目的を推認させる間接事実になります。

壁③ 「不起訴になった=虚偽だった」ではない

最も注意すべき誤解がこれです。自分に対する事件が不起訴処分になったことは、相手の申告が虚偽だったことを意味しません

不起訴処分には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予など複数の類型があります。このうち「嫌疑不十分」は、犯罪の成立を認定する証拠が足りないという判断であって、申告内容が虚偽だったという認定ではありません。「起訴猶予」に至っては、犯罪の嫌疑は認めたうえで訴追を見送るという処分です。

したがって、不起訴処分通知を添えるだけでは、虚偽告訴罪の告訴状としては足りません。捜査機関に対しては、不起訴になった事実とは別に、申告内容が客観的事実に反することを示す資料を提示する必要があります。なお、自分が被疑者として不起訴になった場合、刑事訴訟法259条により、被疑者の請求があれば検察官は速やかにその旨を告げることとされています(実務上いわゆる不起訴処分告知書が交付されます)。ただし、告知されるのは処分をした旨であって、理由の告知を請求できるのは告訴人・告発人・請求人です(同法261条)。被疑者の立場で不起訴の理由まで当然に知り得るわけではない点に注意が必要です。不起訴処分後の手続については不起訴処分と検察審査会への申立て|手続き・審査の流れを解説もご参照ください。

壁④ 捜査機関が慎重にならざるを得ない構造

虚偽告訴罪の立件は、捜査機関にとって「かつて自ら受理し、捜査した申告が虚偽だった」と認定する作業を伴います。また、虚偽告訴罪を安易に立件すれば、真の被害者が届け出をためらう萎縮効果を生みかねません。この構造上、捜査機関は慎重な姿勢を取ります。

だからこそ、告訴状の段階で構成要件ごとに証拠を対応させ、判断の負担を減らしておくことに意味があります。「相手が嘘をついた」という主張ではなく、「刑法172条の各要件が、この証拠によって満たされる」という形式に落とし込む作業です。

集めるべき証拠は4つの層に分かれる

以上の壁を踏まえると、虚偽告訴罪の告訴で収集すべき資料は大きく4つの層に整理できます。構成要件のどれに対応する証拠なのかを意識して集めることが重要です。

層① 相手が申告した事実を示す資料

まず、相手方が捜査機関等に申告したこと自体を示す必要があります。申告が存在しなければ、そもそも構成要件に当たりません。

  • 警察・検察から受けた出頭要請の書面、連絡の記録
  • 取調べを受けた日時・場所・担当部署のメモ
  • 弁解録取書や供述調書に関して交付・確認された資料
  • 逮捕・勾留があった場合の令状関係書類の写し
  • 不起訴処分告知書(被疑者の請求により交付されるもの。刑事訴訟法259条)
  • 相手方や関係者から「警察に届け出た」と告げられた際のメッセージ・録音

層② 申告内容が客観的事実に反することを示す資料

虚偽性を基礎づける、最も重要な層です。申告された事実と両立しない客観的事実を示す資料を集めます。

  • 交通系ICカードの利用履歴、ETC履歴、GPSのログ
  • スマートフォンの位置情報履歴、写真の撮影日時情報
  • 勤務先の入退館記録、タイムカード、シフト表
  • 防犯カメラ映像(保存期間が短いため早期の保全依頼が不可欠)
  • クレジットカードや電子決済の利用明細
  • 当日の行動を裏付ける第三者の陳述
  • 申告された被害物の現存を示す資料、修理・治療の記録が存在しないこと

防犯カメラ映像は、店舗や施設によって保存期間が2週間から1か月程度と短いことが一般的です。虚偽の申告をされたと気づいた時点で、まず保全の依頼を検討することをお勧めします。証拠の一般的な集め方は告訴状に必要な証拠の集め方|犯罪類型別の証拠一覧と収集のポイントでも整理しています。

層③ 相手方の目的・動機を推認させる資料

目的要件を基礎づける層です。申告に至る経緯と、相手方の動機を示す資料を集めます。

  • 申告前後のメール・SNSのやり取り(削除される前のスクリーンショット保存)
  • 金銭の請求、退職・関係解消をめぐる交渉の記録
  • 「警察に言うぞ」といった発言の録音・書面
  • 相手方が第三者に語った内容についての陳述
  • 申告内容が時期によって変遷していることを示す資料
  • 相手方が過去にも同様の申告を繰り返している事実に関する資料

層④ 被害の実情を示す資料

構成要件そのものではありませんが、捜査機関に事案の重大性を伝えるうえで意味を持ちます。

  • 取調べ・出頭に費やした日数の記録
  • 勤務先での処遇変更、休職・退職に関する書面
  • 取引先との契約解消に関する通知
  • 心身の不調について医療機関を受診した記録
  • 報道・インターネット上での拡散状況

なお、虚偽の告訴によって受けた損害の賠償を相手方に請求する場合、それは民事上の請求であり、金額の算定や交渉、訴訟の提起は弁護士の業務となります。刑事手続と民事手続の役割分担については、刑事告訴と民事訴訟の違い|損害賠償請求との使い分けと同時進行の方法をご覧ください。

警察署長宛て告訴状の作成と提出の実務

提出先は警察署長(司法警察員)

刑事訴訟法241条1項は、告訴・告発を「書面又は口頭で検察官又は司法警察員に」しなければならないと定めています。条文上は検察官も宛先となり得ますが、実務上は、事件の発生地または相手方の住所地を管轄する警察署の警察署長宛てに提出するのが基本です。

捜査の端緒を扱うのは第一次的に警察であり、証拠の収集や関係者の聴取も警察が担うためです。行政書士が作成する告訴状も、警察署長(司法警察員)宛てのものに限られます。検察庁に提出する書類の作成は司法書士の業務とされているため(司法書士法3条1項4号)、行政書士がこれを業として作成することはできません。提出先の考え方は告訴状の提出先はどこ?警察署と検察庁の違い・管轄・提出方法を解説でも解説しています。

警察には受理義務がある

告訴状を持参しても「まずは相談から」と言われ、受理に至らないことがあります。しかし、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範63条1項は、次のように定めています。

「司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。」

同条2項は、司法巡査が告訴・告発を受けたときは直ちに司法警察員に移さなければならないと規定しています。また、被害届についても同規範61条1項が「その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない」と定めています。

これらは捜査機関の内部規則であり、直ちに私人の請求権を生じさせるものではありませんが、受理が原則であることは規則上明らかです。実務上、受理が進まない主たる理由は、犯罪事実の特定が不十分であったり、証拠との対応関係が不明確であったりすることにあります。受理されない場合の対処については告訴状が受理されない5つの理由と対策|警察に受理させるコツもあわせてご確認ください。

虚偽告訴罪の告訴では「ぶ告の疑い」を意識した構成が要る

虚偽告訴罪の告訴に特有の事情として、犯罪捜査規範67条の存在があります。同条は、告訴・告発があった事件について特にすみやかに捜査を行うよう努めるとともに、注意すべき事項として次を挙げています。

  • (1)ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。
  • (2)当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。

つまり、警察は告訴を受けた際、その告訴自体が誣告や中傷を目的としたものではないかを確認することが求められているわけです。虚偽告訴罪の告訴は、相手方との紛争を背景とすることが多いため、この観点からのチェックがとりわけ厳しく働きます。

したがって、告訴状には、感情的な非難や相手方の人格に対する評価を書き連ねるのではなく、事実と証拠だけで構成することが決定的に重要になります。「相手は悪質な人物だ」という記述は説得力を持たないばかりか、告訴の動機自体を疑わせる方向に働きかねません。

告訴状に盛り込むべき要素

告訴状の様式は法定されていませんが、実務上は次の要素を備えた構成が用いられます。虚偽告訴罪の場合は、とりわけ「告訴の事実」の記載の精度が結果を左右します。

  1. 宛先——管轄警察署長
  2. 告訴人の表示——氏名、住所、連絡先
  3. 被告訴人の表示——氏名、住所など特定に足りる情報
  4. 告訴の趣旨——処罰を求める意思の明示
  5. 罪名および罰条——虚偽告訴罪、刑法172条
  6. 告訴の事実——いつ・どこで・誰が・どの機関に・どのような内容の申告をしたか、その内容がどの点で客観的事実に反するか、相手方にどのような目的があったと考えられるか
  7. 立証方法——添付する証拠と、それが構成要件のどこに対応するかの対応関係
  8. 添付書類の目録

「告訴の事実」を書く際は、刑法172条の3つの要件(虚偽性・申告・目的)ごとに段落を分け、それぞれに対応する証拠を明示する構成が有効です。捜査機関が構成要件該当性を判断する順序に沿って読める書面になっていれば、検討の負担が大きく減ります。告訴状全般の組み立てについては告訴状の書き方ガイド|構成・記載例・提出方法を徹底解説【2026年最新】をご覧ください。

提出後の流れ

告訴が受理されると、警察は捜査を行い、刑事訴訟法242条により「速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」とされています。その後、検察官が起訴・不起訴を判断します。

刑事訴訟法260条は、検察官が公訴を提起し、または提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人・告発人・請求人に通知しなければならないと定めています。さらに同法261条により、不起訴処分の場合、告訴人らの請求があれば検察官は速やかに理由を告げなければなりません。提出後の流れの全体像は告訴状の提出から捜査開始までの流れ|告訴後に何が起こるかで解説しています。

行政書士が関与できる範囲

行政書士の業務は、行政書士法1条の3第1項により、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することと定められています。告訴状は、官公署である警察署に提出する書類として、この範囲に含まれます。

一方、同条2項は「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めています。したがって、行政書士が行えるのは書面の作成であり、次のような行為は業務範囲外です。

  • 告訴の代理人として捜査機関に対する手続を行うこと
  • 相手方との交渉、示談の取りまとめ
  • 損害賠償額の算定に関する助言
  • 民事訴訟の提起・追行
  • 検察庁に提出する書類の作成

告訴状の提出はご本人に行っていただくことになります。なお、犯罪捜査規範66条1項は、被害者の委任による代理人から告訴を受ける場合には委任状を差し出させなければならないと定めていますが、これは刑事訴訟法240条の告訴の代理に関する運用であり、告訴の代理は弁護士法72条との関係で行政書士が業として行えるものではありません。

よくある質問

相手の告訴が原因で不起訴になりました。すぐに虚偽告訴罪で告訴できますか

不起訴になった事実だけでは足りません。前述のとおり、不起訴には嫌疑不十分や起訴猶予も含まれ、申告内容が虚偽だったことの認定ではないためです。申告された事実が客観的事実に反することを示す資料を別途そろえる必要があります。

相手が「勘違いだった」と言っている場合はどうなりますか

相手方が真実だと信じて申告していた場合、故意が欠けるため虚偽告訴罪は成立しません。争点は、相手方が虚偽であることを認識していたといえるかに移ります。申告内容の変遷、申告前後の言動、申告に至る経緯といった間接事実の積み上げが必要になります。

会社に嘘の報告をされて懲戒処分を受けました。虚偽告訴罪になりますか

なりません。刑法172条の「懲戒の処分」は公法上の監督関係に基づく処分を指すと解されており、就業規則に基づく私企業内の懲戒はこれに含まれないためです。名誉毀損罪や信用毀損・業務妨害罪、あるいは民事上の責任の問題として検討することになります。

相手が告訴を取り下げれば、虚偽告訴罪は成立しなくなりますか

いいえ。虚偽告訴罪は虚偽の申告が捜査機関等に到達した時点で既遂に達するため、その後の取消しによって成立が否定されることはありません。ただし、被申告者に対する裁判が確定する前などに自白した場合、刑法173条により刑の減軽または免除の可能性があります。告訴の取消しの手続一般については告訴の取消し(取下げ)は可能?撤回の方法と注意点をご覧ください。

被害届を出されただけでも虚偽告訴罪になりますか

なり得ます。条文は「告訴、告発その他の申告」と規定しており、捜査の端緒を与える申告であれば、被害届も含まれると解されています。告訴と告発、被害届の違いについては告訴と告発の違いとは?誰が・どんな場合に提出できるかを解説および告訴状と被害届の違いとは?法的効力・提出方法の違いをわかりやすく解説で整理しています。

虚偽告訴をされてから何年まで告訴できますか

公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。虚偽告訴罪は親告罪ではないため、名誉毀損罪のような「犯人を知った日から6か月」という告訴期間の制限は受けません。

相手が第三者に嘘を吹き込み、その第三者が警察に届け出た場合はどうなりますか

実際に申告した第三者に虚偽の認識と目的があれば、その第三者について本罪の成否が問題になります。背後で虚偽の情報を与えた者についても、共犯としての責任が問題になり得ますが、これは個別事情に依存する評価であり、証拠に基づく慎重な検討が必要です。

告訴状・告発状の作成でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、警察署(司法警察員)に提出する告訴状・告発状について、事実関係と証拠を整理した書面の作成を承ります。書類作成に関するご相談は何度でも無料です。

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まとめ

虚偽告訴罪(刑法172条)は、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者」を3月以上10年以下の拘禁刑に処する犯罪です。罰金刑の選択肢がない重罪であり、国家の審判作用の適正という第一次的な保護法益に加えて、二次的に個人の私生活の平穏も保護しています。令和4年法律第67号による改正が令和7年6月1日に施行され、法定刑の表記は「懲役」から「拘禁刑」に変わっています。

成立要件は3つです。第一に、申告内容が客観的事実に反すること(判例・通説は客観説)。第二に、捜査機関または懲戒権者に対する自発的な申告であること。取調べにおける虚偽の供述はこれに当たりません。第三に、刑事または懲戒の処分を受けさせる目的があること。この「懲戒」は公法上の監督関係に基づくものを指し、私企業内の社内懲戒は含まれません。

手続面では、公訴時効は7年です。法定刑の長期が10年であるため、刑事訴訟法250条2項4号の「長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪」に該当します。虚偽告訴罪は親告罪ではないため、名誉毀損罪のような犯人を知った日から6か月という告訴期間の制限を受けず、時効期間内であれば告訴が可能です。既遂時期は申告が到達した時点であり、その後の告訴取消しによって犯罪の成立が否定されることはありません。

実務上の最大の課題は立証です。「不起訴になった」ことは申告が虚偽だったことの証明にはなりません。申告された事実と両立しない客観的事実を積み上げて虚偽性を推認させ、申告前後の言動や経緯から目的を推認させる作業が必要です。防犯カメラ映像のように保存期間の短い証拠もあるため、早い段階での保全が結果を左右します。また、犯罪捜査規範67条が「ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか」への注意を求めている以上、告訴状は感情的な非難を排し、事実と証拠だけで構成する必要があります。

行政書士の業務は、行政書士法1条の3第1項に定める官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類の作成です。行政書士法人Treeでは、警察署長(司法警察員)宛ての告訴状・告発状について、刑法172条の各要件と手元の証拠との対応関係を整理した書面を作成いたします。事実関係の整理が進まないまま時間が経過すると、証拠が失われ、公訴時効も進行します。書面の作成をご検討の際は、お早めにご相談ください。

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