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手付金等保全措置|未完成物件と完成物件の基準と方法

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「手付金を5%にしておけば、保全措置は要らない?」「契約時は少額でも、引渡し前に中間金をもらう予定がある」。自社で物件を販売する宅建業者が、受領前に確認したいのが手付金等保全措置です。

結論は、未完成物件は売買代金の5%、完成物件は10%。それぞれ1,000万円の上限も確認し、どちらか一方を超えるなら受領前に保全する、という順番です。見る金額は今回の振込額だけではなく、既に受け取った手付金等を足した合計です。

この記事では、自ら売主となる宅建業者と、宅建業者ではない買主との取引を中心に、判定例・使える方法・書類の順番を整理します。購入する方も、支払う前の確認に使えます。2026年10月2日時点の法令と国土交通省の解釈通知に基づく解説です。

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保全が必要か、まず「割合」と「1,000万円」を両方見る

次の表は、買主への所有権移転登記等がまだされていない通常の取引の判定です。保全不要になるのは、割合と金額の両方が基準以下の場合。片方だけを満たしても、保全不要とはいえません。

契約時の物件 金額による保全不要の条件 保全が必要になる場合
未完成 手付金等の合計が代金の5%以下、かつ1,000万円以下 5%を超える、または1,000万円を超える
完成 手付金等の合計が代金の10%以下、かつ1,000万円以下 10%を超える、または1,000万円を超える

「以下」なので、5%・10%ちょうど、1,000万円ちょうどは、その条件を満たします。ただし、もう一方の基準も確認してください。基準は宅建業法41条・41条の2と、施行令3条の5で定められています。

割合の分母となる売買代金には、課される消費税等相当額を含みます。契約書の税込総額を確認し、建物部分だけの金額や税抜金額で判定しないでください。これは国土交通省の解釈通知に示された取扱いです。

買主への所有権移転登記、または買主自身の所有権登記がされた場合は、法41条・41条の2の別の適用除外があります。また、宅建業者が仲介していても、売主自身が宅建業者ではない取引に、この自ら売主の保全義務がそのまま適用されるわけではありません。

手付金だけでなく、引渡し前の中間金も合算する

この制度でいう「手付金等」は、売買代金の全部・一部として受け取る金銭や、手付金等の名目で受け取り代金に充てる金銭のうち、契約締結日以後、引渡し前に支払われるものです。「中間金」「内金」と名前を変えても、該当すれば計算に含まれます。

契約時の手付金が基準以下でも、後日受領する中間金を足すと基準を超えることがあります。その場合は、中間金を受け取る前に必要な保全を整えます。超えた部分だけでなく、既受領分を含む手付金等の全額を保全する点が重要です。

契約前の申込証拠金を後で売買代金に充てる場合も、名前だけで除外せず、契約時の処理と受領予定を確認してください。社内の支払予定表には、日付・名目・金額・累計・保全書類の交付予定を並べておくと、2回目以降の受領を見落としにくくなります。

未完成か完成かは、売買契約時の状態で判断する

外観ができていても、内装等が終わっておらず居住できない状態なら、完成物件として扱えるとは限りません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(41ページ)は、工事の完了を売買契約時に判断し、外観だけでなく内装等も完了して居住できる状態としています。

契約時に未完成だった物件が、中間金の受領までに完成したからといって、判定を途中から10%に切り替えないでください。売買契約の日と、その時点の工事状況を確認するところから始めます。

3つの計算例で、受領できるタイミングを確認する

以下は制度の理解のための架空の計算例です。いずれも、売主が宅建業者、買主が宅建業者ではなく、買主への所有権移転登記等は済んでいないものとします。

条件 判定 受領前にすること
未完成・代金4,000万円。手付金200万円のみ 5%ちょうど、1,000万円以下。金額による保全義務なし 引渡し前の追加受領予定も確認する
同じ物件で、後日中間金100万円を追加 合計300万円=7.5%。5%を超えるため保全が必要 100万円の受領前に、合計300万円を保全する
完成・代金1億5,000万円。手付金1,200万円 8%でも、1,000万円を超えるため保全が必要 受領前に1,200万円全額を保全する

例えば、完成物件で代金5,000万円、手付金500万円なら10%ちょうどで1,000万円以下です。しかし後日100万円を追加すれば合計12%になり、その追加分を受け取る前に全額600万円の保全が必要になります。「契約時に不要と説明したから、その後も不要」とはなりません。

なお、宅建業法39条の手付そのものは代金の20%までという制限は、保全基準と別のルールです。20%以内であっても5%・10%または1,000万円を超えれば、保全が必要になります。

使える方法は、未完成なら2種類、完成なら3種類

売主の社内口座で分けて管理するだけでは、法定の保全措置になりません。取引に使える機関と契約を、受領前に確認します。

方法 内容 使える物件
保証 銀行等・指定保証機関が、売主の手付金等の返還債務を連帯保証する 未完成・完成
保険 返還債務の不履行に備える保証保険契約を結ぶ 未完成・完成
保管 指定保管機関との寄託契約と、買主との質権設定契約等を整える 完成のみ

保証では保証を約する書面、保険では保険証券等を買主へ交付する必要があります。保証額・保険金額は手付金等全額を対象とし、少なくとも引渡しまでをカバーする条件を確認します。中間金が増える場合は、金額の変更と書類の交付を受領前に整えてください。

未完成物件に保管だけを用意しても、必要な保全をしたことにはなりません。この区別も国土交通省の解釈通知に明記されています。使える機関の概要は、国土交通省の消費者向け案内で確認できます。

保管を使う場合は、預ける前の書類と質権設定が必要

完成物件で指定保管機関を使う場合も、「協会の口座へ振り込めば完了」ではありません。寄託契約と質権設定契約を整え、買主が返還を受けるための担保を確保する手続きが必要です。

  1. 指定保管機関へ、物件・契約・受領予定を示して利用条件を確認する。
  2. 売主と機関の寄託契約、売主と買主の質権設定契約を締結する。
  3. 質権設定を、確定日付のある証書で指定保管機関へ通知する。
  4. 法定の契約書面を買主へ交付し、買主から機関へ手付金等を支払う。
  5. 既に売主が受け取った分がある場合は、買主が追加分を払う前に、その分も機関へ交付する。

必要書類・申込日程・送金方法は、利用する機関の案内に従います。例えば不動産保証協会の保管制度は同協会の正会員による完成物件の取引を対象とし、寄託契約書・質権設定契約書・通知書等を案内しています。制度利用は無料とされますが、郵送料・送金料・確定日付等の実費は別途です。他機関も同じ条件とは限りません。

電子交付が認められる書面もありますが、買主の承諾と法令に沿った方法が必要です。保証・保険・保管の書類を、単にメール添付しただけで法定の交付を満たすと考えないでください。

契約・入金日を決める前に確認する7項目

  • 売買契約の売主は宅建業者か。仲介会社と売主を混同していないか。
  • 買主は宅建業者ではないか。法人でも、宅建業者でなければ対象になり得る。
  • 契約時に工事が完了していたか。内装・居住可能な状態まで確認したか。
  • 税込売買代金と、引渡し前に受領する手付金等の累計はいくらか。
  • 5%または10%と、1,000万円の両方を確認したか。
  • 全額を対象とする保全契約と、必要な書類の交付等を受領前に終えられるか。
  • 重要事項説明書の保全方法・機関と、実際の契約・支払予定が一致しているか。

宅建業法35条1項10号は、手付金等保全措置の概要を重要事項説明の対象としています。「保全不要」とする場合も、その判定と受領予定が食い違わないよう確認しましょう。予定額が変わるなら、入金を先に進めず、書類と保全額を見直します。

保全が法律上必要なのに整っていない場合、買主は手付金等を支払わないことができます。確認中の方は、売主・仲介担当者に保全方法、機関名、交付書面と対象額を尋ねてください。返還や解除を巡る紛争は弁護士へ、制度違反の相談は免許行政庁等へ確認するのが適切です。

売主にとっても、保全措置の違反は業務停止等の監督処分につながり得る問題です。「入金後に書類を整えればよい」という運用は避け、受領を止めて確認できる担当者と手順を決めておきましょう。

保証協会の加入だけで、この取引の保全が済むわけではない

営業保証金や保証協会の弁済制度は、宅建業を始める際の制度です。保証協会に加入済みでも、個々の売買で必要な手付金等保全措置は別に整えます。住宅瑕疵担保のための保険・供託も、建物の欠陥への備えであり、引渡し前の手付金等の保全を代替するものではありません。

開業時の資金準備は営業保証金と保証協会の違い、人員体制は専任宅建士の要件で確認できます。このページの5%・10%の基準と、開業時の保証金を別の表で管理してください。

よくある質問

未完成物件の手付金が5%ちょうどなら、保全は不要ですか?

既受領分を含む手付金等の合計が売買代金の5%以下で、かつ1,000万円以下なら、金額による保全義務はありません。後日中間金を受領する場合は、その合計で改めて判定します。

1,000万円以下なら、割合を超えても大丈夫ですか?

大丈夫とはいえません。保全不要になるには、未完成は5%以下、完成は10%以下という割合の条件と、1,000万円以下という金額の条件を両方満たす必要があります。

中間金を足すと基準を超えます。超えた分だけ保全すればよいですか?

いいえ。追加分を受領する前に、既に受け取った分を含む手付金等全額を保全します。保証・保険の額や書類、保管する場合の既受領分の交付も確認してください。

契約後に完成したら、10%の基準に変わりますか?

工事の完了は売買契約時に判断します。契約時に未完成だった取引について、後から完成したことだけを理由に、保全不要の割合を10%へ切り替えないでください。

未完成物件でも、保証協会の保管を使えますか?

未完成物件に必要な法定保全は保証または保険です。完成物件向けの保管だけでは、宅建業法41条の保全措置を満たしません。対象に合う保証・保険機関へ受領前に確認してください。

買主が会社でも、手付金等の保全は必要ですか?

会社だから一律に不要とはなりません。買主が宅建業者ではない場合は、取引条件に応じて保全が必要です。宅建業者相互間の取引は、宅建業法78条2項による適用除外があります。

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まとめ

手付金等の保全は、契約時の完成状態と、受領済み・受領予定の合計額で判断します。未完成5%、完成10%の割合と、1,000万円の両方を確認してください。どちらかを超える場合に必要となるため、割合だけを見て不要と判断しないことが大切です。

基準を超えるときは、受領前に全額を保全します。未完成は保証・保険、完成はこれらに保管を加えた方法から、利用条件と書類の準備を確認します。基準を超えた差額だけではなく、対象となる手付金等の全額について準備する点も押さえてください。

契約時に不要だった場合も、中間金の追加で必要になることがあります。支払予定と保全手続きを一緒に確認し、必要な措置と交付が完了してから受領する運用にしましょう。契約書と重要事項説明、受領予定表の内容がそろっているかを担当者間で点検してください。

※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認のうえご判断ください。

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