2026年9月21日、NHKが2023年に取りやめていた外部法人への委託による戸別の訪問営業を再開したと報じられました。ただし、受信料を払っていない人への「支払いのお願い」の訪問は、これまでもNHKの訪問担当者や委託事業者によって続けられてきました。受信料を長く払っていない人が玄関先で「払います」と約束したり、一部だけ払ったりすると、あとで時効を主張できなくなるおそれがあります。時効援用を考えている方は、訪問を受ける前に支払期限から5年を過ぎた期分(2か月ごとに区切られた受信料の支払い単位)を確認し、時効援用の通知を先に出しておくのが基本の順番です。なお、NHKと受信契約をしていない人は、過去の分について時効援用を使えません。
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目次
NHKの訪問はどう変わったのか|報道と公式告知を分けて確認
共同通信の報道(2026年9月21日)によると、NHKは新しく受信契約を結んでもらうための戸別の訪問営業について、2023年にやめていた外部法人への委託を再開しました。今月2社と委託契約を結んで業務を始め、報道では東京・大阪・名古屋などの都市部で行い、ほかの地域への拡大も検討しているとされています。また、NHKは事前に書面で案内を送るなどして、相手の理解を得ながら進めると説明していると報じられています。
一方、NHK営業局の公式告知(2026年9月10日付)では、訪問による「契約・収納業務」を外部事業者2社に委託しており、実施地域は現時点で大阪府・兵庫県の一部と書かれています。報道の「東京・大阪・名古屋など」と公式告知の地域は一致していないため、お住まいの地域が対象かどうかは断定できません。告知の表題に「収納」とあるとおり、新しい契約の案内だけでなく、未払い受信料の支払いのお願いも業務に含まれると読めます(NHK公式告知「受信料の契約・収納業務について」)。
見落としやすいのは、未払いの人への訪問は今回初めて始まったものではないという点です。NHKは2025年6月の時点で、未納の人への訪問による収納業務を外部事業者3社・8都府県の一部に委託していると公表し、2026年6月付の告知では6社・21都府県の一部にまで広がっています(NHK公式告知(2026年6月))。報道によると、新しい契約を取るための訪問営業では2023年9月末に法人への委託を終えましたが、その後も個人の委託スタッフや職員による訪問は続いていたとされています。
NHKの公式サイトでも、すでに契約している人でも、受信料が未払いの場合には訪問して支払いをお願いすることがあると説明されています(NHK「訪問について」)。なお、NHKの公式サイトでは、インターネットでのクレジットカード一時払いなどの支払方法も案内されています。ただし、時効援用を考えている方は、どの方法で払っても支払い自体が承認と評価されるおそれがあるため、払う前に請求の内訳と時効の対象になりそうな期分を確認してください。
訪問や文書で説明しても支払いがない場合、NHKは最後の方法として裁判所を通じた支払督促を行っています。NHKの公表では、2026年6月末現在で、支払督促の申立ては全国で13,320件、そのうち異議申立てにより訴訟に移ったものが5,420件、強制執行の申立てが1,803件とされています(NHK公式「民事手続きの状況」)。訪問は、こうした手続きの前段階として行われるものと考えておくとよいでしょう。
まず自分の立場を確認する|契約済み・未契約・受信設備なし
玄関先での対応を考える前に、自分がどの立場にあたるのかを確認してください。立場によって、時効援用(時効が完成したことを相手に伝えて、借金や未払い金の支払い義務を消す手続き)が使えるかどうかが大きく変わります。
| 立場 | 時効援用 | 気をつけること |
|---|---|---|
| NHKと契約済みで、受信料を払っていない | 支払期限から5年を過ぎた期分は対象になりうる | 玄関先での支払いの約束・一部払い・署名 |
| テレビなどはあるが、NHKと契約していない | 過去の分には使えない | 契約が遅れた期間には割増金がかかることがある |
| テレビなどを設置しておらず、NHKのネット配信も利用していない | そもそも受信料が発生しない | 確認のための訪問や文書が来ることはある |
契約済みで払っていない人
受信料の時効は5年で、最高裁平成26年9月5日判決がこのことを示しています。受信料は2か月ごとの「期」に分けて支払う仕組みのため、時効は期分ごとに別々に進みます。「最後に払った日から一律5年」ではなく、それぞれの期の支払期限から5年を過ぎたものだけが時効援用の対象になります。時効の基本的な考え方は、NHK受信料の時効援用|最高裁平成26年判決と5年消滅時効の手続きを解説で詳しく説明しています。
契約していない人
放送法64条1項により、NHKの放送を受信できる設備を設置した人、またはNHKのネット配信の受信を開始した人は、NHKと受信契約を結ばなければなりません。最高裁平成29年12月6日大法廷判決は、契約が成立すると設置した時期以降の受信料が発生し、その時効は契約が成立した時から進むとしました。そのため、今もNHKと契約していない人は、過去の分について時効援用を使えません。あとから契約した場合も、契約前の期間の分は、支払期限ではなく契約が成立した時から5年がたっているかで考えます。
また、受信規約では、正当な理由がなく設置した月の翌々月の末日までに契約しなかった場合、期限後に契約した人には受信料の2倍の割増金を請求できるとされています(2023年4月以降の期間分が対象)。契約の手続きや、いつから払うかについては、NHKの説明を確認したうえでご本人が判断する事柄です。契約書には設置の時期などを事実どおりに書いてください。事実と違う内容を届け出ると、割増金の対象になることがあります。
受信設備を設置していない人
NHKの公式サイトでは、放送を受信できる設備を設置しておらず、受信契約が必要なネット配信も利用していない人は手続き不要とされています。スマホやパソコンを持っているだけでは対象になりません。ただし、確認のために文書や訪問で案内されることはあるとされています。
契約したかどうか覚えていない方は、請求書や督促状の記載、口座の引き落とし履歴などを手がかりに確認しましょう。契約の有無はNHKに問い合わせて確認することもできます。
玄関先で気をつけること|承認・一部払い・署名
時効援用を考えている人にとって、訪問で一番注意したいのは「承認」です。承認とは、相手に支払い義務があると認める言動のことで、民法152条により、承認があると時効はその時点からまた一から数え直しになります(時効の更新)。
さらに、すでに5年が過ぎて時効が完成したあとに承認した場合も問題になります。最高裁昭和41年4月20日大法廷判決は、時効完成後に債務を承認した人は、時効の完成を知らなかったとしても、その後に時効を援用することは信義則上許されないとしました。つまり、訪問をきっかけに時効を主張する機会を失うおそれがあるということです。
玄関先で次のような言動をすると、承認と評価されるおそれがあります。
- 「今度払います」「少しずつ払います」など、支払いを約束する
- 未払い分の一部を、その場や後日に支払う
- 分割払いや支払いの猶予をお願いする
- 未払い額を認める内容の書面や支払い計画書に署名する
どの言動が承認にあたるか、承認がどの期分に及ぶかは個別の事情によって判断されます。「一言でも言ったら必ず時効援用できなくなる」わけではありませんが、判断が分かれる状態を自分から作らないことが大切です。
一部だけ払う場合にも注意があります。民法488条では、支払う人がどの期分に充てるか指定しなければ、受け取る側が充てる先を指定できる仕組みになっています。受信規約にも「古い期分から充てる」といった決まりはありません。そのため、その場で少しだけ払うと、どの期分の支払いとして扱われるかを自分で決められず、時効を考えていた古い期分の支払いとして扱われるおそれがあります。
一方で、訪問員が口頭で支払いを求めたり、督促状が届いたりするのは「催告」にあたります。民法150条により、時効が完成する前の催告には時効の完成を6か月だけ先に延ばす効果がありますが、時効期間が一からやり直しになるわけではなく、催告を繰り返しても延長は1回きりです。訪問で支払いを求められただけで、すでに5年を過ぎた期分の時効援用ができなくなるわけではありません。
契約済みで未払いがある方は、訪問を受けたときに、その場で未払い分を支払ったり、未払い額を認める書面に署名したりせず、「内容を確認してから判断します」と伝えるのが無難です。居留守を使ったり、事実と違うことを言ったりする必要はありません。時効援用で失敗しやすい場面は、時効援用に失敗する5つのケース|よくある落とし穴と対策にもまとめています。時効の完成猶予と更新の違いは、時効の完成猶予と更新の違い|旧中断・停止との対応関係と注意点をご覧ください。
時効援用を考えている人の動き方
訪問の前に、時効援用の通知を出しておく
民法145条により、時効は5年が過ぎただけでは自動的に消えず、当事者が援用して初めて効果を主張できます。NHKの公式Q&Aでも、支払いが滞っている分はこれまでどおり全額を請求したうえで、時効の申し出があれば時効を5年として扱うと説明されています(NHK「お支払いに関するQ&A」)。
そのため、時効援用を考えている方は、次の順番で動くのが基本です。
- 請求書や督促状で、未払いになっている期間を確認する
- 支払期限から5年を過ぎた期分と、まだ5年たっていない期分を分ける
- 5年を過ぎた期分について、内容証明郵便で時効援用の通知を出す
- 残った直近の期分と今後の受信料の支払いについて、ご本人が判断する
時効援用の通知を内容証明郵便で送ると、いつ・どのような内容の通知を出したのかを証明できます。訪問前に通知を出しておけば、玄関先で慌てて支払いを約束してしまう心配も減らせます。どのくらい減るかの目安は、NHK受信料の時効援用でいくら減る?請求期間で変わる残額で確認できます。
援用したあとに訪問が来たら
時効援用で消えるのは、時効が完成した期分だけです。受信契約そのものは続くため、直近5年分の未払いと、今後の受信料の支払い義務は残ります。援用後に訪問が来た場合は、援用の通知をいつ出したかを落ち着いて伝え、通知書の控えや配達証明を手元に保管しておきましょう。援用後に請求が来た場合の考え方は、時効援用後にまた請求が来たら?債権者の反応パターンと対処法で解説しています。
なお、受信規約では、3期分以上支払いが遅れた場合に1期あたり2.0%の延滞利息がかかることがあります(2020年4月〜2023年9月の分は対象外)。直近分の支払いを後回しにし続けると負担が増えることもあるため、残る分をどうするかも早めに考えておきましょう。
裁判所から書類が届いた場合
支払督促や訴状など、裁判所から書類が届いた場合は、対応に期限があります。放置すると、NHKの請求を認める判決や支払督促が確定するおそれがあり、確定した分の時効期間は10年になります(民法147条・169条)。この段階では、すぐに弁護士または司法書士へご相談ください。督促の段階ごとの時効の動きは、NHKの支払督促強化|対象になる人と届く前に確認したい受信料の時効援用の範囲で説明しています。
訪問員の確認と、不審な訪問への対応
NHKの公式サイトでは、訪問担当者は証明書を持っていると説明されています。訪問を受けたときは、まず証明書の提示を求めましょう。正規の委託訪問は実在するため、NHKを名乗る訪問をすべて詐欺と決めつける必要はありませんが、少しでも疑問があれば、その場で支払わずに確認することが大切です。
本当にNHKの訪問かどうか確かめたいときは、NHK公式FAQに載っている問い合わせ先に、自分で調べた番号で問い合わせましょう。公式FAQでは、受信料の問い合わせ先として0570-077-077(IP電話などは050-3786-5003、午前9時〜午後6時)、NHKふれあいセンターとして0570-066-066(IP電話などは050-3786-5000、午前9時〜午後8時)が案内されています。どちらも12月30日午後5時〜1月3日は休みです(NHK公式FAQ)。訪問員が渡すメモや名刺の番号だけで確認するのは避けてください。
過去には、NHKを名乗る2人組が「デジタル放送への変更に費用が必要」と言ってお金を請求しようとした事例について、関東総合通信局からの情報をもとに茨城県境町が2016年に注意喚起しています(茨城県境町の注意喚起)。身に覚えのない請求にはその場で応じず、警察や消費生活センターに相談してください。消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどを案内してもらえます。
また、NHKは「訪問を撃退する」とうたうシールを貼っていても、未契約や未納の家には訪問するとしています(NHK公式「NHKの訪問を撃退するとのシールについて」)。シールで訪問を避けることを考えるより、自分の立場と請求の内訳を確認しておくほうが確実です。
よくある質問
Q. NHKの訪問で「今日払えば解決します」と言われました。払ったほうがいいですか?
支払期限から5年を過ぎた期分が含まれている可能性がある場合、その場で支払うと承認と評価され、あとで時効援用ができなくなるおそれがあります。まず請求の内訳を確認し、時効が完成している期分がないかを見てから判断することをおすすめします。
Q. 訪問の予告の書面が届きました。訪問前に何をすればいいですか?
手元の請求書や督促状で未払いの期間を確認し、5年を過ぎた期分があれば、訪問前に内容証明郵便で時効援用の通知を出しておくのが基本です。なお、報道ではNHKが事前に書面で案内すると説明したとされていますが、すべての訪問の前に書面が届くとは限りません。
Q. NHKと契約した覚えがないのに、未払いがあると言われました。
まず本当に契約していないのかを確認してください。過去に家族や本人が契約している場合もあります。契約済みであれば、5年を過ぎた期分は時効援用の対象になりえます。一方、契約していない場合、過去の分に時効援用は使えません。契約の手続きや支払いについては、NHKの説明を確認したうえでご本人が判断してください。
Q. 時効援用の通知を出せば、訪問は来なくなりますか?
来なくなるとは限りません。援用で消えるのは時効が完成した期分だけで、契約は続くため、直近の未払い分や今後の受信料について訪問や案内が来ることは考えられます。援用の通知書の控えを保管し、訪問時にはいつ通知を出したかを伝えられるようにしておきましょう。
Q. 行政書士に訪問への立ち会いやNHKとのやりとりを頼めますか?
行政書士法人Treeがお手伝いできるのは、NHK受信料の時効援用通知書の作成と、内容証明郵便での発送までです。訪問への立ち会いやNHKとのやりとり、支払額の話し合いは行っていません。裁判所から支払督促や訴状が届いた場合は、期限があるため弁護士または司法書士にご相談ください。
NHK受信料のうち、支払期限から5年を過ぎた期分の時効援用を検討している方へ。訪問を受ける前に、内容証明郵便による時効援用通知書の作成・発送を、行政書士の業務範囲内でサポートします。相談は何度でも無料・全国対応です。
ミニマムプラン 税込10,780円(税抜9,800円・通知書の作成、内容証明郵便の発送、郵送料込み)/スタンダードプラン 税込15,000円(税抜13,637円・配達証明と控え(謄本)の郵送付き)
まとめ
2026年9月、NHKが外部法人に委託した戸別の訪問営業を再開したと報じられました。報道では東京・大阪・名古屋などの都市部とされていますが、NHKの公式告知では現時点で大阪府・兵庫県の一部です。また、未払いの人への支払いのお願いの訪問は以前から続いており、2026年6月時点では外部事業者6社・21都府県の一部に委託されています。
時効援用が使えるのは、NHKと契約していて受信料を払っていない人の、支払期限から5年を過ぎた期分です。受信料の時効は期分ごとに進みます。NHKと契約していない人は、最高裁平成29年大法廷判決により、過去の分について時効援用を使えません。まずはご自身がどの立場にあたるかを確認してください。
玄関先での支払いの約束・一部払い・分割の申し出・書面への署名は、承認と評価されるおそれがあります。時効完成後に承認すると、最高裁昭和41年大法廷判決により、あとで時効を援用できなくなるおそれがあります。その場では未払い分の支払いや未払い額を認める書面への署名をせず、内容を確認してから判断すると伝えるのが無難です。
時効援用を考えている方は、訪問を受ける前に内容証明郵便で援用の通知を出しておくのが基本の順番です。援用で消えるのは時効が完成した期分だけで、直近5年分と今後の受信料の支払い義務は残ります。裁判所から支払督促や訴状が届いた場合は期限があるため、弁護士または司法書士へご相談ください。
行政書士法人Treeでは、NHK受信料の時効援用通知書の作成と内容証明郵便での発送を承っています。相談は何度でも無料・全国対応です。時効の対象になりそうな期間が分からない方は、まず簡単診断で目安を確認してみてください。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


