補助金の相談で最も多い質問のひとつが、「ものづくり系の補助金と持続化補助金、両方に出してもいいのか」「去年別の補助金をもらったが、今年も申請できるのか」というものです。インターネット上では「補助金は併用できない」と断定する解説と「経費が違えば併用できる」と説明する解説が混在しており、どちらが正しいのか判断できないまま申請期限が迫ってしまう、という相談も少なくありません。
「経費を分ければ併用できる」とは限りません。確認するのは、①同じ事業への併願・併用が認められるか、②同じ経費を重ねていないか、③過去の採択歴など申請資格を満たすか、の3点です。制度によっては複数への応募はできても、採択後に交付を受ける補助金を1つに絞る必要があります。まず利用したい制度と、過去の申請・採択履歴を並べて確認してください。
本記事は、補助金適正化法と各制度の公募要領に基づき、併願・併用の確認手順を整理したものです。実際の申請では、その公募回の最新版の要領が優先します。2026年10月2日の更新では、特に冒頭の「経費を分ければよい」という誤読を修正しました。
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目次
「複数申請」「併願」「併用」「重複受給」——用語の整理と結論
議論が噛み合わない最大の原因は、用語が整理されていないことにあります。実務では次の四つを明確に区別する必要があります。
四つの言葉が指しているもの
複数申請とは、同一の事業者が同一の制度に対して、同じ公募回で二つ以上の申請を出すことを指します。多くの制度が「1回の公募につき1申請」と明記しており、ここが最も厳格に制限されている領域です。
併願は、異なる制度に同じ時期に応募することです。可否は公募要領の申請資格・重複申請の定めで確認します。制度によっては応募できても重複採択されず、採択後に1つを選択する条件もあります。
併用は、複数の補助金の交付を受けて使うことです。対象経費だけでなく、同一事業への補助や申請資格に関する制限もあるため、別経費であることは検討材料の1つにすぎません。
重複受給とは、同一の補助対象経費に対して二つ以上の補助金の交付を受けることです。これが明確に禁止される行為であり、発覚すれば交付決定の取消しと返還の対象になります。
同じ経費への補助を制限する制度が多い
多くの補助金では、同じ経費への重複補助を公募要領で制限しています。100万円の設備に複数の補助を充てたい場合も、各制度が定める併用制限・補助率・補助上限を確認してください。自己負担がゼロになるという計算だけで、一律に違法・適法とは判断できません。国の制度への上乗せを明示した自治体制度などもあるため、両方の要領で扱いを照合します。
補助対象経費を切り分けることは、同一経費への重複補助を避けるための確認事項です。ただし、別経費でも同一事業への制限や申請資格の条件に抵触する場合があります。切り分けの証拠と、事業・申請資格の条件を一緒に照合してください。
事業名や実施場所を変えても、実質的に同じ事業・経費なら制限に該当することがあります。逆に、1枚の証憑に複数の費目が含まれる場合は、証憑が同じという理由だけで結論を出さず、各要領の区分・按分の定めと照合してください。
重複受給が禁止される法的な根拠
「なんとなく禁止されている」という理解では、判断の分かれる場面で拠り所になりません。根拠を条文レベルで押さえておきます。
補助金適正化法が定める基本構造
補助金適正化法第1条は、この法律の目的を「補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ること」と定めています。同法第3条第2項は、補助事業者等に対し、補助金等が「国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し」、交付の目的に従って誠実に補助事業を行う努力義務を課しています。
手続の流れは、第5条(交付の申請)、第6条(交付の決定)、第7条(交付の条件)、第11条(補助事業の遂行)、第14条(実績報告)、第15条(額の確定)と規定されています。重複受給との関係で特に重要なのが第6条第1項と第11条第1項です。
第6条第1項は、各省各庁の長は交付申請があったときに「当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤がないかどうか等を調査し」たうえで交付決定をしなければならない、と定めています。同一経費に他の補助金が充てられているのに、その分を控除せずに交付額を算定していれば、まさに「金額の算定に誤がある」状態です。
第11条第1項は、補助事業者は交付決定の内容および付された条件に従い「善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用をしてはならない」と定めています。他の補助金で既に手当てされた経費に対して重ねて補助金を受け取れば、その補助金は本来の交付目的以外に流用されたと評価されます。
公募要領と交付規程は「交付決定の条件」として拘束力を持つ
実務上、重複受給の可否を具体的に決めているのは法律の条文ではなく各制度の公募要領・交付規程です。ここで重要なのが第7条です。同条第1項は、各省各庁の長が交付決定に際して、経費の配分の変更や補助事業の内容の変更について承認を受けるべきこと(第1号・第3号)などの条件を付すものとすると定め、同条第3項は、これら以外にも「補助金等の交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではない」としています。
つまり、公募要領や交付規程に書かれた「他の補助金と補助対象経費が重複する事業は対象外」というルールは、交付規程や交付決定通知を通じて交付決定の条件として事業者を拘束するのが通例です。これに違反すれば、第17条第1項により交付決定を取り消すことができます。なお、中小企業基盤整備機構や補助金事務局を通じて交付される補助金では、実際の取消し・返還は各制度の交付規程に沿って行われます。「公募要領は単なる案内文書だから法的拘束力がない」という理解は誤りです。
「不合理な重複及び過度の集中の排除」という審査上の原則
もうひとつ押さえておきたいのが、公的資金の配分における一般原則です。小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>第20回公募の公募要領は、その他留意事項として「同一事業者が同一内容で本制度以外の国の補助事業や委託事業等と併願している場合には、不合理な重複および過度な集中を排除するため、重複して採択いたしません」と明記しています。
これは、経費が形式的に重なっていなくても、同一の事業者に同一内容の事業で公的資金が集中することを審査段階で回避するという考え方です。したがって、「経費さえ分ければ何本でも採択される」わけではないという点に注意が必要です。経費の重複がないことは必要条件であって十分条件ではありません。
同一制度・同一公募回での複数申請の制限
制度内部の申請回数制限は、最も明確かつ厳格に運用されている領域です。ここを誤ると、申請したすべての法人が要件不備で失格になるという厳しい結果を招きます。
1回の公募につき1申請という原則
2026年6月29日に第1回公募要領が公開された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」(従来のものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金を統合した制度。中小企業基盤整備機構が事務局体制を担い、第1回の申請受付は2026年9月30日から、申請締切は2026年10月30日18時、採択発表は2027年1月頃の予定と事務局サイトで公表されています(2026年9月15日時点)。当初予定から約1か月後ろ倒しに変更されているため、必ず最新の公募要領で日程を確認してください)の公募要領は、注意事項として「同一事業者での応募は、1回の公募につき1申請に限ります」と定めています。
ただし、これは「複数の取組を同時に進めてはいけない」という意味ではありません。同要領は続けて、複数の事業を計画している場合には「事業計画書中に複数の事業の内容を記載して申請することが可能」であり、その場合も1つの事業計画書として受け付けて審査すると説明しています。複数の取組は、申請を分けるのではなく、1本の事業計画書の中に統合して記載するのが正しい対応です。
「みなし同一事業者」——別法人でも1社しか申請できない
実務で最も事故が起きやすいのが、グループ会社や親族会社を使った複数申請です。同要領は「みなし同一事業者」という概念を置き、その応募も1回の公募につき1申請に限るとしたうえで、具体的な判定基準を詳細に列挙しています。
- 親会社が議決権の50%超を有する子会社が存在する場合、親会社と子会社は同一事業者とみなし、いずれか1社のみの申請しか認められない。子会社が複数ある場合も、親会社と全子会社を通じて1社のみ
- 個人が複数の会社「それぞれ」の議決権を50%超保有する場合も同様に同一事業者とみなす。孫会社・ひ孫会社等にも同じ考え方が及ぶ
- 判定にあたっては配偶者・親子およびその他生計を同一にしている者はすべて同一として取り扱う。過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も同様
- 上記に該当しない場合であっても、代表者および住所が同じ法人、主要株主および住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も同一事業者とみなす
そのうえで同要領は、「これらの場合において、複数の事業者が申請した場合には、申請したすべての事業者において申請要件を満たさないものとして扱います」と明記しています。つまり、グループで2社が申請すれば、どちらか一方が生き残るのではなく、両方とも失格になります。また、補助金を受けることを目的に主要株主や出資比率を変更して申請することも認められていません。
さらに、応募申請日から補助事業の完了までの間に、同一の公募において交付決定を受けている事業者のみなし同一事業者に該当することとなった場合には、当該補助事業者の交付決定を取り消すとされています。申請時点だけでなく、事業完了までの資本関係の変動も監視の対象です。
同一制度内の枠の間での重複申請
同じ補助金でも枠が複数ある場合、枠をまたいだ重複申請が禁じられていることがあります。小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>第20回公募の公募要領は、冒頭の注意事項で「小規模事業者持続化補助金<創業型>との重複申請はできません」と明示しています。枠が分かれているからといって両方に出せるとは限らないため、必ず当該回の公募要領本文で確認が必要です。
他の事業者と類似した事業計画は「計画重複」として排除される
もうひとつ見落とされがちなのが、他社との事業計画の類似です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、補助対象外事業として「事業計画の重複となる事業」を挙げ、同一事業者による複数申請に加えて「他の法人・事業者と同一又は類似した内容の事業」を対象外としています。故意または重過失により他社と酷似した内容を申請した場合、以降その事業者の申請を受け付けない可能性があるとされ、そうした申請を主導した金融機関や外部支援者についても同様の措置がとられ得ると明記されています。
中小企業省力化投資補助事業(一般型)第8回公募要領(2026年8月・中小企業基盤整備機構)も同様に「計画重複」を掲げ、1回目は次回公募の申請不可、2回目以降は次回と次々回の公募への申請ができなくなるという具体的なペナルティを示しています。支援業者が用意したひな形をほぼそのまま使うことの危険性が、制度側から明確に警告されている状況です。
制度をまたぐ併願——同時応募は可能、同一事業・同一経費での二重の交付決定は不可
応募時点で併願を認める制度もありますが、採択後に選択が必要な制度、同一内容を重複採択しない制度など、取扱いは異なります。ここでは、それらを分けて確認します。
同時応募できる制度でも、交付申請前に選択が必要な場合がある
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、補助対象外となる事業者のうち、16か月以内に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金に採択された事業者を定める項目の中で、次のように述べています。「複数の補助金に同時期に応募申請していただくことは可能ですが、複数の補助金に採択された場合は、交付を受ける補助金を1つだけ選択して、交付申請を行ってください。選択せずに、複数の補助金で交付決定を受け、補助金を受領していたことが発覚した場合は、交付決定日が遅い方の補助事業の交付決定を取り消し、補助金の返還を求めます。」
中小企業省力化投資補助事業(一般型)第8回公募要領も、同一事業を複数の補助金に同時期に応募して複数採択された場合は交付を受ける補助金を1つだけ選択すべきこと、選択せずに複数の交付決定を受けて受領していたことが発覚した場合は交付決定日が遅い方を取り消して返還を求めることを、ほぼ同一の文言で規定しています。
この規定から読み取るべきポイントは三つあります。第一に、これらの制度の間では、採択発表のタイミングが読めない以上、複数出しておくこと自体は制度が想定している行動だということ(ただし持続化補助金は、同一内容で国の他の補助事業等と併願している場合は重複して採択しないとしています)。第二に、分岐点は「応募」でも「採択」でもなく「交付申請」の段階だということ。第三に、選択を怠って両方の交付決定を受けてしまった場合、取り消されるのは交付決定日が遅い方であり、事業者に選択権はもはやないということです。
採択されてから選択するまでの実務
採択(補助金交付候補者としての決定)と交付決定は別の行為です。採択されただけでは補助金の受給権は確定せず、交付申請を行い、事務局の審査を経て交付決定通知を受けて初めて事業に着手できます。したがって、同一事業で複数採択された場合や、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とものづくり補助金等に重ねて採択された場合は、交付申請を行う前に、どちらを使うかを決める必要があります。
判断材料は補助上限額と補助率だけではありません。補助事業実施期間の長さ、対象経費の範囲、事業実施後に課される報告義務や賃上げ要件の重さ、財産処分制限の期間なども比較すべき要素です。たとえば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の革新的新製品・サービス枠は、補助下限額100万円、補助上限額は従業員数に応じて750万円から2,500万円(賃上げ特例適用時は増額)、補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内)と定められています。金額の大きい制度ほど要件と報告義務も重くなるのが通例です。交付決定通知書で何を確認すべきかについては、補助金の交付決定通知書の読み方|交付決定後に確認する金額・条件・注意点もあわせてご確認ください。
直近の採択歴が申請資格を奪うケース
併願を考えるうえで見落とせないのが、過去の採択歴による申請制限です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、補助対象外となる事業者の筆頭に次を挙げています。
「本補助金の申請締切日を起点にして16か月以内に以下の補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、又は申請締切日時点において以下の補助金の交付決定を受けて補助事業実施中の事業者」として、中小企業等事業再構築促進補助金(事業再構築補助金)、中小企業新事業進出促進補助金(新事業進出補助金)、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の4制度が列挙されています。同要領はさらに、応募申請日を起点にして過去3年間に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計で2回以上受けた事業者も、補助対象外事業者として別途列挙しています。期間の起算点も対象制度も異なる複数の資格制限が同時に働く点に注意してください。
省力化投資補助事業(一般型)第8回公募要領にも、応募申請日を起点にして過去3年間にものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の交付決定を合計で2回以上受けた事業者を補助対象外とする規定、および観光庁の「観光地・観光産業における人材不足対策事業」(令和7年度)または「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」(令和8年度)により設備投資に対する補助金の交付決定を受け、応募申請時点で10か月を経過していない事業者を対象外とする規定が置かれています。さらに同要領は、過去にものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の交付決定を受け、応募申請時点で事務局からの補助金支払が完了していない事業者も対象外としています。
これらは「経費が重なるかどうか」とは無関係に働く、期間ベース・回数ベースの資格制限です。経費を丁寧に切り分けても突破できません。過去に採択歴がある事業者は、経費の設計よりも先にこの資格要件を確認する必要があります。
持続化補助金における過去採択者の取扱い
小規模事業者持続化補助金の公募要領は、過去に中小企業生産性革命推進事業として実施された持続化補助金の公募で採択を受け補助事業を実施した事業者に対し、これまでに実施した補助事業と異なる事業であることを所定の欄に記載するよう求めています。そのうえで、「過去に実施した補助事業と同じ事業であると見受けられる場合には、不採択となります(採択後に判明した場合も、遡って採択を取り消します)」と明記しています。「同じ経費を出さなければよい」ではなく「同じ事業では出せない」という、より広い制限が働いている点に注意が必要です。さらに第20回公募要領は、過去の持続化補助金(一般型通常枠・コロナ特別対応型・低感染リスク型ビジネス枠・創業型)で採択を受けて補助事業を実施した事業者について、様式第14「事業効果および賃金引上げ等状況報告書」が未提出であれば補助対象外としています。申請できるのは、事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年間が経過し、同報告書の提出を完了している場合に限られます。また、創業型に申請中または採択を受けている事業者も対象外です。
「同一経費」の判定基準——どこで重複と見られるのか
ここからは、併願が資格上は可能だとして、経費レベルで重複していないと言えるかどうかの判断基準を掘り下げます。
公募要領が定める「重複」の射程
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、補助対象外事業として次の二つを掲げています。
ひとつは「国庫及び公的制度からの二重受給となる事業」で、内容は「(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する制度との重複を含む事業、固定価格買取制度等(公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は除く)や、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)の補助金と補助対象経費が重複する事業」とされています。
もうひとつは「中小企業庁が所管する補助金(中小企業生産性革命推進事業、中小企業等事業再構築促進事業、中小企業省力化投資補助事業等)と同一の補助対象経費を含む事業」です。
省力化投資補助事業(一般型)も「国の他の助成制度との重複」として同趣旨を定めています。持続化補助金は、より端的に「持続化補助金では、同一の補助事業(取組)について、重複して国の他の補助金を受け取ることはできません。他の補助金を受給しているか受給予定の方は、補助金を受け取ることが可能か、必ず、双方の補助金事務局等に、あらかじめご確認ください」と記載しています。
ここで注目すべきは、判定の対象が「現在」だけでなく「過去又は現在」とされていること、そして国だけでなく独立行政法人等を含むとしていることです。数年前に受けた別制度の補助金であっても、同じ設備・同じソフトウェアを対象にしていれば重複と評価され得ます。
重複を分けるのは物件・数量・期間・用途
実務で経費が重なっていないと説明するには、次のいずれかの軸で明確に分離できている必要があります。ただし、期間・用途による区分は本来、補助対象経費と対象外経費を切り分けるための考え方であり、1つの契約・請求を二つの補助金に割り振ることを公募要領が認めているわけではありません。そうした割り振りを検討する場合は、双方の事務局に事前に確認してください。
- 物件で分ける——A補助金は加工機、B補助金は受発注システムというように別の資産・別の役務であること。型式・製造番号・見積明細のレベルで区別できることが望ましい
- 数量で分ける——同種の機械を2台導入し1台ずつ別の補助金で手当てする場合。見積・発注・納品・請求を補助金ごとに分けたうえで、どの個体をどちらの補助金で取得したかを納品書・現物ラベル・固定資産台帳で追跡できる状態にしておく
- 期間で分ける——クラウドサービスやリースのように継続的に発生する費用のうち、補助事業実施期間に対応する部分だけを計上する場合。後述の按分の典型
- 用途で分ける——同一の支出のうち補助事業に供される部分と通常事業に供される部分を面積等で区分する場合。これも按分の領域
逆に、1つの見積書・1つの請求書に含まれる一体不可分の取引を、金額だけで機械的に半分ずつ二つの補助金に割り振るという手法は極めて危険です。物理的にも機能的にも一体である設備を、金額を根拠なく分割しただけでは「補助対象経費が重複する事業」との評価を免れません。
過去・現在の補助金の申告義務と、事務局間の情報照合
重複の有無は、事業者の自己申告任せにはなっていません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、「これまでに交付決定を受けた又は現在申請している(応募申請、交付申請等すべてを含む)補助金等の実績については、必ず応募申請時に電子申請システムに入力してください。これまでに交付決定を受けた又は現在申請している補助金等の実績があるにもかかわらず記載されていない場合、虚偽申請として不採択となります」と定めています。
さらに、中小機構および事務局にて不正受給や重複受給の確認を行うこと、審査にあたって中小企業庁所管の他補助金事務局が保有する申請者の申請・交付情報を利用すること、逆に本補助金の申請・交付情報も他補助金事務局に共有することが明記されています。省力化投資補助事業の公募要領にも同旨の記載があります。
つまり、制度をまたいだ申請・交付情報は事務局間で共有・照合される前提で運用されているということです。「別の補助金なのだから気づかれないだろう」という発想は成り立ちません。申告漏れは、重複そのものより先に「虚偽申請」として処理される点も重要です。GビズIDの取得方法や、jGrantsで申請する補助金の手続の流れについては、補助金の電子申請jGrants使い方ガイド|GビズIDの取得方法(オンライン即日対応)・申請フロー・差戻し対応・採択後手続で解説しています(申請に使う電子申請システムは制度ごとに異なるため、公募要領で確認してください)。
按分の考え方——共用経費を切り分ける
「同一経費の重複受給禁止」の裏側にあるのが按分の技術です。按分は節税テクニックのようなものではなく、公募要領が正面から要求している経費計上の方法です。
按分が必要になる三つの典型場面
第一に、契約期間が補助事業実施期間を超える場合です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、機械装置・システムの「借用」(リース・レンタル)について、交付決定後に契約したことが確認できるもので補助事業実施期間中に要する経費のみが対象であるとしたうえで、「契約期間が補助事業実施期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分が対象となります」と定めています。クラウドサービス利用費についても、サーバー領域の賃借費用に関して同様に「按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分のみとなります」と規定しています。
持続化補助金も同じ構造です。ウェブサイト関連費について「契約期間が補助事業期間を越えるソフトウェア使用権を購入する場合は、按分等の方式により算出された補助事業期間分のみ補助対象となります」、借料について「契約期間が補助事業期間を越える場合は、按分等の方式により算出された補助事業期間分のみ補助対象となります」としています。
第二に、空間を共有する場合です。持続化補助金の公募要領は、事務所等に係る家賃は原則として補助対象外としつつ、新たな販路開拓の取組の一環として新たに事務所等を賃借する場合は対象となる場合があるとし、「なお、審査時に床面積の按分資料が必要となります」と明記しています。また、住宅宿泊事業者が改装を行う場合については「住宅のうち事業の用に供する部分の面積により按分した金額が対象となります」とし、計算根拠となる平面図等を採択後・交付決定までの間に提出する必要があるとしています。
第三に、用途を共有する場合です。ただしこの領域は按分でクリアできないことが多く、注意が必要です。
「専ら補助事業のために使用される」という高い壁
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助対象経費は、機械装置・システム構築費について「専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費」「専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費」と定義されています。
クラウドサービス利用費については、さらに踏み込んで「専ら補助事業のために利用するクラウドサービスやWEBプラットフォーム等の利用費のみが対象となります。自社の他事業と共有する場合は補助対象となりません」と明記されています。
つまり、按分すればどんな共用経費でも一部を補助対象にできるわけではありません。制度が「専ら」を要求している経費区分では、共用そのものが対象外事由になり得ます。按分が認められるのは、公募要領が按分を予定している経費区分(期間超過分の借料・ソフトウェア使用権・クラウドサービス、面積按分が明示された賃借料や改装費など)に限られると考えるのが安全です。他の補助金との経費の切り分けを考える際も、まず「そもそもこの経費区分は共用を許容しているか」を確認してください。
按分の根拠資料をどう残すか
按分は、計算式が合っていれば足りるものではありません。第三者が同じ資料から同じ数値を再現できることが要求されます。実務上、次の資料を交付決定前後の段階で整えておくことをおすすめします。
- 期間按分——契約期間が明記された契約書、料金体系のわかる見積書・料金表、契約期間と補助事業実施期間の対応を示した計算書。月額料金×補助事業実施期間の月数という単純な形にできるよう契約を設計しておくと、後の説明が容易になります
- 面積按分——寸法入りの平面図、面積計算書、賃貸借契約書の物件表示。事業供用部分と非供用部分を色分けした図面を添えると差戻しが減ります
- 数量按分——見積書・納品書の明細(型式・製造番号・数量)、固定資産台帳、現物写真
按分の考え方は、他の補助金との重複回避だけでなく、補助対象経費と対象外経費の切り分けにも共通します。外注費・コンサル費用における按分の実務については、ものづくり補助金のコンサル費用・外注費の扱い|補助対象外経費と按分の考え方もご参照ください。実績報告時に求められる証憑の並べ方は、補助金の実績報告書の証憑整理|見積・発注・納品・検収・請求・支払の6点セットで整理しています。
消費税等仕入控除税額の減額も「重複の排除」である
按分と並んで、交付額から控除すべきものがあります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は「交付申請の際、消費税及び地方消費税額等仕入控除税額を減額して記載しなければなりません」と定め、その理由を、課税事業者の場合は課税仕入に伴って還付金が発生するため「この還付と補助金交付が重複しないよう」あらかじめ補助対象経費から減額しておくためだと説明しています。省力化投資補助事業の公募要領にも同旨の規定があります。手続としては交付申請書の記載事項の問題ですが、課税事業者か免税事業者か、簡易課税を選択しているかによって取扱いが変わるため、具体的な税務上の判断は必ず税理士にご確認ください。補助金と税の関係の全体像は補助金に税金はかかる?|消費税不課税・法人税法42条圧縮記帳・所得税法42条総収入金額不算入・インボイス・住民税国保への影響で概観しています。
自治体補助金・診療報酬など他の公的給付との関係
「国の補助金同士は重複しないよう気をつけたが、自治体の補助金は別枠だと思っていた」という誤解も少なくありません。ここも公募要領の文言を正確に読む必要があります。
国費が原資なら、自治体経由でも「国の制度」として扱われる
小規模事業者持続化補助金の公募要領は、補助対象外となる事業として「国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)する他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業」を挙げています。
括弧書きが決定的です。自治体や公益法人が実施する事業であっても、その原資が国から交付された補助金等であれば「国が助成する制度」に含まれます。自治体の事業名だけを見て「これは市の制度だから国とは無関係」と判断するのは危険で、当該事業の財源が国庫補助金・交付金かどうかを募集要領や自治体の担当課に確認する必要があります。
自治体独自財源の補助金は、自治体側の要綱を必ず確認する
一方、自治体が独自財源で実施する補助金については、国の補助金との関係はその自治体の交付要綱がどう定めているかによります。「他の補助金の交付を受けている経費は対象外」と定める要綱もあれば、国の補助金の対象外となった自己負担部分に充てることを認める要綱もあり、全国一律のルールはありません。
したがって実務では、国の補助金事務局と自治体の担当課の双方に事前照会を行い、回答を記録に残すことが最も確実です。持続化補助金の公募要領自身が「必ず、双方の補助金事務局等に、あらかじめご確認ください」と求めているのは、まさにこの趣旨です。
診療報酬・介護報酬・固定価格買取制度との重複
補助金以外の公的給付も重複判定の対象になります。持続化補助金の公募要領は、補助対象外事業の例として「デイサービス・介護タクシー等の居宅介護サービス事業者で介護報酬が適用されるサービス」「薬局・整骨院等の保険診療報酬が適用されるサービス」を挙げ、補助対象外経費として「国が助成するほかの制度を利用している事業と重複する経費」の具体例に「就労継続支援A型事業所・B型事業所など障害福祉サービス事業と重複する経費」「保険適用診療にかかる経費(薬局、整骨院や鍼灸院等の保険診療で使用する機械や保険診療の宣伝も兼ねるチラシ等)」を列挙しています。
注意したいのは、「保険診療の宣伝も兼ねるチラシ」が対象外とされている点です。自費診療の販路開拓を目的とするチラシであっても、保険診療の宣伝を兼ねていれば重複と評価されます。医療・介護・障害福祉の分野で補助金を検討する場合は、公的報酬でカバーされる部分と自費部分の切り分けを、経費単位で丁寧に設計する必要があります。
なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、二重受給の判定において「固定価格買取制度等(公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は除く)」という括弧書きを置いており、制度によって扱いが異なります。他制度の記載を一般化せず、必ず申請する制度の当該回の公募要領を確認してください。
重複受給が判明したときに何が起きるか
重複受給のリスクを正しく見積もるには、発覚後の帰結を具体的に知っておく必要があります。補助金適正化法は、段階的かつ強力な回収手段を用意しています。
交付決定の取消しと返還命令
補助金適正化法第17条第1項は、補助事業者が補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して交付決定の内容または付された条件その他法令等に違反したときは、交付決定の全部または一部を取り消すことができると定めています。そして同条第3項は、この規定が「補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用がある」と明記しています。
つまり、実績報告が受理され、額が確定し、補助金が入金された後であっても、交付決定は取り消され得ます。「もう精算が終わったから安心」ということはありません。額の確定手続そのものについては、補助金の確定検査(額の確定)とは|検査の流れ・指摘事項・減額査定への対応で解説しています。
取消しがなされた場合、第18条第1項により、既に交付されている補助金について期限を定めて返還を命じなければならないとされています。また第18条第2項は、額の確定の結果、既にその額を超える補助金が交付されているときも返還を命じなければならないと定めています。返還命令は行政庁の裁量ではなく義務である点を押さえてください。
加算金と延滞金——年10.95%の重い負担
返還だけでは終わりません。第19条第1項は、第17条第1項の処分により返還を命じられた場合、補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額につき年10.95%の割合で計算した加算金を国に納付しなければならないと定めています(中小企業基盤整備機構法第16条により同法が準用される、同機構が交付する補助金では、納付先は同機構になります)。起算点が「返還命令の日」ではなく「受領の日」である点が極めて重要です。数年前に受け取った補助金が取り消されれば、その期間全体に年10.95%が乗ることになります。
さらに第19条第2項は、返還を命じられた補助金を納期日までに納付しなかったときは、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、未納付額につき年10.95%の延滞金を納付しなければならないと定めています。加算金・延滞金は、やむを得ない事情があると認められる場合に全部または一部を免除できるとされていますが(同条第3項)、免除されることを前提に行動できる性質のものではありません。加算金・返還のリスク全般については、補助金の収益納付とは?財産処分承認・返還リスク・加算金を行政書士が解説もあわせてご覧ください。
他の補助金の一時停止・相殺、そして国税滞納処分の例による徴収
第20条は、補助事業者が返還を命じられ、補助金・加算金・延滞金の全部または一部を納付しない場合、その者に対して同種の事務または事業について交付すべき補助金等があるときは、相当の限度においてその交付を一時停止し、または当該補助金等と未納付額とを相殺することができると定めています。つまり、返還が滞れば、同種の事務・事業について交付予定の他の補助金まで、一時停止や相殺の対象になり得ます。
第21条第1項は、返還を命じた補助金等および加算金・延滞金について「国税滞納処分の例により、徴収することができる」と定め、同条第2項は、これらの先取特権の順位は「国税及び地方税に次ぐ」としています。民事訴訟を経ることなく差押えが可能であり、事業継続そのものを揺るがす回収手段が用意されているということです。
罰則と公表
第29条第1項は、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者を「5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めています。同条第2項により、情を知って交付・融通をした者も同様です。また第30条は、第11条に違反して補助金等を他の用途に使用した者を「3年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」としています。第32条第1項には両罰規定が置かれ、法人の代表者・代理人・使用人等が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人にも罰金刑が科されます。
制度運用の面でも、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、「虚偽の申請による不正受給」等が判明した場合に交付決定取消と加算金付きの返還を求めるとしたうえで、「悪質な不正行為が発覚した場合については、事業者名及び不正を行った時点での代表者名や不正内容を公表します」と明記しています。金銭的な負担に加えて、社名公表による取引先・金融機関への影響も見過ごせません。
取得財産の処分制限は補助事業終了後も続く
第22条は、補助事業により取得しまたは効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならないと定めています。省力化投資補助事業(一般型)第8回公募要領も冒頭で、転売や目的外使用等を行っていた場合は残存簿価相当額等を国庫に返納する必要があると警告しています。手続の詳細は補助金の財産処分承認申請|処分制限期間内の売却・廃棄・目的外使用の手続をご確認ください。
申請前・交付決定後・実績報告時の実務チェック
ここまでの内容を、実際の手順に落とし込みます。重複受給の事故は、悪意ではなく管理の不備から生じることがほとんどです。
申請前——「補助金台帳」を1枚作る
まず、自社(およびみなし同一事業者に該当し得る関係会社・親族の事業体)が過去に受けた、現在申請中の、そして今後申請予定の補助金・委託費をすべて1枚の表に落としてください。項目は、制度名、公募回、事務局、応募日、採択日、交付決定日、交付決定額、補助事業実施期間、補助対象経費の明細(品目・型式・金額)、財産処分制限期間、報告義務の残存状況です。
この表があれば、(1)資格制限(16か月ルール等)に抵触しないか、(2)計上予定の経費が既存の補助対象経費と品目レベルで重ならないか、(3)電子申請システムに入力すべき過去実績に漏れがないか、を機械的に確認できます。過去実績の入力漏れは、それ自体が虚偽申請として不採択事由になることを忘れないでください。年間の公募時期の傾向は補助金スケジュール2026年版|主要補助金の公募時期・締切一覧カレンダーが参考になりますが、最新の公募回・締切は必ず各事務局の公式サイトで確認してください。
採択後・交付申請前——複数採択なら「1つを選ぶ」
同一事業で複数の制度に採択された場合や、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とものづくり補助金等に重ねて採択された場合は、交付申請を行う前に使う制度を決定します。前述のとおり、選択せずに両方の交付決定を受けると、交付決定日が遅い方が取り消され、返還を求められます。辞退する側については、各制度の定める辞退手続を期限内に行ってください。なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の16か月ルールでは「採択を辞退した事業者を除く」とされており、辞退の記録を正しく残すことが将来の申請資格に影響します。
交付決定後——経費の配分・内容の変更には事前承認が必要
補助金適正化法第7条第1項第1号・第3号を受けて、各制度は経費配分や事業内容の変更に事務局の事前承認を求めています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領も「交付決定後、補助事業の経費の配分若しくは内容を変更しようとする場合又は補助事業を中止、廃止若しくは他に承継させようとする場合には、事前に事務局の承認を得なければなりません」と定めています。
重複回避のために経費の内訳を組み替える場合も、事後報告では足りません。承認を得ないまま経費構成を変えれば、交付決定の条件違反として第17条第1項の取消事由になります。
実績報告時——按分根拠と証憑を「再現可能」な形にする
実績報告では、見積・発注・納品・検収・請求・支払の一連の証憑に加え、按分を行った経費については計算根拠を添付します。同一の請求書を複数の補助金の実績報告に使い回すことは絶対に避け、1つの請求書は1つの補助金にのみ紐づけるという原則で経理を組んでおくと、後の検査で説明しやすくなります。分割払いや複合的な請求が発生する場合は、あらかじめ取引先に補助対象部分と対象外部分を分けた請求書の発行を依頼しておくのが実務的です。
事業完了後——報告義務の未履行は次の申請資格を奪う
補助事業が完了しても、事業化状況報告、賃上げ要件の達成状況報告、取得財産の処分制限などが数年単位で続きます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、事業再構築補助金や新事業進出補助金の交付規程に基づく報告書が未提出の事業者、納付命令・返還命令を受けているにもかかわらず未納付・未返還の事業者を、補助対象外事業者として個別に列挙しています。過去案件の宿題を残したままでは、次の申請自体ができません。
よくある質問
Q. 補助金Aで機械を買い、補助金Bで同じ機械のソフトウェアを買うことはできますか。
一体不可分の一つの設備として見積・納品されるものであれば、実質的に同一の補助対象経費と評価されるおそれが高く、慎重な判断が必要です。別経費として整理できるかは、物件の独立性や見積書・納品書・請求書も確認します。ただし、独立して機能する別物件でも、同一事業への重複補助や過去の採択歴などの申請資格の制限が残ります。事業・経費・申請資格の3点を、両方の制度の公募要領で照合してください。
Q. 昨年ある補助金で採択されました。今年、別の制度に申請できますか。
経費が重ならなくても、制度側の資格制限に抵触すれば申請できません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では申請締切日を起点に16か月以内の採択歴が対象外事由とされ、さらに応募申請日を起点に過去3年間の交付決定が合計2回以上ある事業者も対象外とされています。省力化投資補助事業(一般型)でも、応募申請日を起点に過去3年間にものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者が対象外とされています。まず資格要件から確認してください。
Q. 不採択になった場合、同じ計画で別の補助金に出し直せますか。
不採択となった事業者が計画を見直して再度申請することは、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領でも明示的に認められています。別制度への切り替えも、当該制度の要件を満たす限り可能です。ただし、他社の計画の流用や、他社と酷似した内容の申請は「計画重複」としてペナルティの対象になります。再挑戦の進め方は補助金不採択時の対応戦略|不採択理由の見直し・改善版での再申請・別補助金併願の進め方で整理しています。
Q. グループ会社が別々に申請すれば、両方採択される可能性が上がりますか。
逆効果です。みなし同一事業者に該当する場合、申請したすべての事業者が申請要件を満たさないものとして扱われます。議決権50%超の資本関係だけでなく、代表者および住所が同じ法人、主要株主および住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人、さらに配偶者・親子および生計を同一にする者まで判定範囲に入ります。
Q. 事務局に問い合わせた「口頭でのOK」は根拠になりますか。
後日の検査で争いになったとき、口頭の回答は証拠として弱いのが実情です。問い合わせフォームやメールが用意されている制度ではそれを用いて「どの経費を、どの制度で、いくら計上する予定か」を具体的に書き、質問文と回答文をそのまま保存してください。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のように電話(コールバック予約)での対応が中心の制度では、日時・質問内容・回答内容を記録に残しておきましょう。
補助金と雇用関係助成金では、相談先の専門家が異なります
最後に、併願を検討するうえで必ず知っておくべき区分があります。厚生労働省が所管する雇用関係助成金(キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、両立支援等助成金、特定求職者雇用開発助成金、業務改善助成金、雇用調整助成金、トライアル雇用助成金など)の支給申請書の作成・提出代行は、社会保険労務士法第2条第1項第1号・第1号の2および同法第27条により社会保険労務士の独占業務とされています。行政書士法第1条の3第2項および第1条の4第1項ただし書は、他の法律において制限されている業務を行うことができないと定めているため、行政書士はこれらを取り扱うことができません。労働社会保険諸法令に基づく届出、就業規則、賃金台帳の作成も同様です。
したがって、行政書士法人Treeが承ることができるのは、経済産業省系・中小企業庁系および地方自治体系など、行政書士業務の範囲に属する補助金の申請書類の作成と提出手続(行政書士法第1条の3第1項、第1条の4第1項第1号)に限られます。なお、事業計画書の作成や電子申請を申請者ご自身が行うよう公募要領で定めている制度では、その定めに従います。雇用関係助成金については、社会保険労務士または管轄の都道府県労働局・ハローワークにご相談ください。両者の違いについては、補助金と助成金の違い|2026年版・申請代行を行政書士と社労士のどちらに頼むべきかで詳しく整理しています。
補助金の申請でお困りの方へ。行政書士法人Treeでは、公募要領の要件確認から申請書類の作成(事業計画書は公募要領の定めに沿った助言)、交付決定後の各種手続まで、完全成果報酬型・着手金0円・成功報酬8〜15%(税抜)・不採択時の当所報酬は無料でサポートします。ご相談は何度でも無料です(採択を保証するものではありません)。成果報酬は実際の交付額に応じて算定し、事業者口座への入金後にお支払いいただきます。率は申請内容により個別にお見積りし、専門家加点費用等の実費が別途必要な場合は事前にご案内します。
まとめ
補助金の併願・併用は、同一事業の制限、同一経費の重複、申請資格の3点で確認します。「一切禁止」でも「経費をずらせば自由」でもありません。複数採択されたときに1つを選択する必要がある制度では、交付申請に進む前に選択してください。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金などは公募要領の更新があるため、申請する回の最新版で再確認することが必要です。
もっとも、経費が重ならなければ何本でも通るわけではありません。「1回の公募につき1申請」「みなし同一事業者は1社のみ」「ものづくり補助金等の直近16か月以内の採択歴は対象外」といった資格ベースの制限が経費の設計とは無関係に働きます。みなし同一事業者は、議決権50%超の資本関係だけでなく、代表者および住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人、配偶者・親子および生計を同一にする者まで及び、複数申請した場合はすべての申請者が失格となる点に注意が必要です。
共用経費の切り分けには按分を用いますが、按分は万能ではありません。公募要領が按分を予定しているのは、契約期間が補助事業実施期間を超えるリース・ソフトウェア使用権・クラウドサービス利用費や、面積按分が明示された賃借料・改装費などです。一方で機械装置やクラウドサービスには「専ら補助事業のために使用される」という要件が課され、他事業と共有する費用はそもそも対象外です。按分の際は、第三者が同じ数値を再現できる根拠資料を必ず残してください。
重複受給が発覚した場合の帰結は重く、補助金適正化法第17条第1項による交付決定の取消し(額の確定後も適用されます)、第18条による返還命令、第19条による受領の日から起算した年10.95%の加算金と納期日翌日からの同率の延滞金、第20条による他の補助金の一時停止・相殺、第21条による国税滞納処分の例による徴収が用意されています。加えて第29条第1項は不正受給に5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)を定め、悪質な事案では事業者名・代表者名の公表もあり得ます。
行政書士法人Treeでは、行政書士法第1条の3第1項および第1条の4第1項第1号に基づき、公募要領の要件確認、申請書類の作成、交付決定後の各種申請書類の作成と提出手続をお手伝いしています。事業計画書の作成や電子申請を申請者ご自身が行うよう公募要領が定める制度では、その範囲での助言・確認にとどまります。過去の採択歴と計上予定経費を突き合わせた資格・重複の事前確認、按分根拠資料の整え方までご相談を承ります。
制度・料金の更新確認:2026年10月2日。中小機構:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募資料 / 持続化補助金:第20回公募要領 / 中小機構:申請者自身による事業計画作成と外部支援の範囲。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


