不動産の広告は、宅地建物取引業者にとって集客の入口であると同時に、監督処分や刑事罰のリスクが表面化しやすい領域でもあります。物件情報サイトへの掲載、折込チラシ、自社サイト、SNS投稿——媒体が増えるほど「誰が」「いつ」「どの情報にもとづいて」広告を作ったのかが曖昧になり、成約済み物件の掲載放置や、根拠のない「駅徒歩◯分」といった違反が生まれます。
不動産広告を縛るルールは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)、そして不動産公正取引協議会連合会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約」(以下「表示規約」)の三層で構成されています。所管官庁も制裁の内容も異なり、ひとつの広告が三つすべてに同時に違反することも珍しくありません。
本記事では、宅建業法第32条の誇大広告等の禁止、第33条の広告開始時期の制限、第34条の取引態様の明示義務を軸に、おとり広告・虚偽広告の判断基準、表示規約が定める具体的な表示ルール、違反した場合の罰則・監督処分・課徴金・違約金までを、条文と一次資料に沿って実務目線で解説します。
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目次
不動産広告を規制する三つの法源
広告の適否を検討するとき、最初にすべきは「どの法源で問題になるのか」の切り分けです。三層のルールは目的も制裁も違うため、ひとつの物差しだけで判断すると見落としが生じます。
宅建業法——免許制度に紐づく行政規制
宅建業法の広告関係規定は、第32条(誇大広告等の禁止)、第33条(広告の開始時期の制限)、第34条(取引態様の明示)です。所管は国土交通省および都道府県で、違反すると免許に紐づく監督処分(指示・業務停止・免許取消し)の対象となり、第32条違反には刑事罰も用意されています。
宅建業法の広告規制は「一般消費者の保護」だけでなく「取引の公正の確保」を目的としており、相手方が消費者か事業者かを問わず適用される点が景品表示法との大きな違いです。宅建業者間の取引に関する広告であっても第32条は適用されます。
景品表示法——一般消費者に対する不当表示の禁止
景品表示法第5条は、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について、優良誤認表示(第1号)、有利誤認表示(第2号)、内閣総理大臣が指定する表示(第3号)をしてはならないと定めます。所管は消費者庁で、違反すると措置命令(第7条)、課徴金納付命令(第8条)の対象となります。
不動産分野では、第5条第3号にもとづく指定告示として「不動産のおとり広告に関する表示」(昭和55年公正取引委員会告示第14号)が存在します。この告示は、不動産公正取引協議会に加盟しているかどうかにかかわらず、原則としてすべての不動産事業者に適用されます。
不動産の表示に関する公正競争規約——業界の自主ルール
表示規約は、景品表示法第36条第1項の規定にもとづき認定を受けた公正競争規約です(平成17年公正取引委員会告示第23号)。表示規約・同施行規則は2022年(令和4年)9月1日施行の改正で条文の構成が大きく組み替えられ、規約についてはその後2024年(令和6年)10月1日施行の変更も加えられています。条番号を引用するときは現行版で確認してください。
宅建業法や景品表示法が「著しく」「誤認されるおそれ」といった評価的な要件を置くのに対し、表示規約は「徒歩所要時間は道路距離80メートルにつき1分」「新築とは建築工事完了後1年未満であって居住の用に供されたことがないもの」といった具体的な数値基準・定義を定めています。実務上は、表示規約に沿って作ればおおむね宅建業法・景品表示法の要求も満たせる関係にあります。
ただし表示規約は自主ルールであり、効力は原則として協議会の構成員に及びます。違反時の措置は警告・違約金・資格停止・除名といった協議会内部の措置で、行政処分そのものではありません。もっとも協議会は消費者庁長官に対して必要な措置を講ずるよう求めることができ(表示規約第27条第3項)、違反事業者名等の公表もあり得ます(同第29条)。
誇大広告等の禁止(宅建業法第32条)
宅建業法第32条は次のように定めています。
宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
規制の骨格は「①一定の表示項目について、②著しく事実に相違する表示、または著しく優良・有利と誤認させる表示をしてはならない」という構造です。以下、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版。原典は平成13年1月6日国土交通省総動発第3号)の第32条関係に沿って確認します。
規制対象となる8つの表示項目
解釈・運用の考え方は、第32条の適用を受ける表示項目を次の8つに整理しています。
- 所在——地番、所在地、位置図等により特定される取引物件の場所
- 規模——面積や間取り。個々の物件に限らず、分譲地全体の広さや区分所有建物の全体の広さ、戸数等も含む
- 形質——形状及び性質(地目、供給施設、排水施設、構造、材料、用途、性能、経過年数等)
- 現在又は将来の利用の制限——都市計画法・建築基準法・農地法等にもとづく公法上の制限、借地権・定期借地権・地上権等の私法上の制限の有無と内容
- 現在又は将来の環境——静寂さ、快適さ、方位等の立地条件、デパート・商店街・学校・病院等の状況、道路・公園等の公共施設の整備状況
- 現在又は将来の交通その他の利便——業務中心地に出るまでに利用する交通機関の便利さ(路線名、最寄りの駅、停留所までの所要時間、建設計画等)
- 代金、借賃等の対価の額又はその支払方法——代金・借賃・権利金等の額、現金一括払い、割賦払い、頭金、支払回数、支払期間等
- 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせん——あっせんの有無、融資を受けるための資格、金利、返済回数、金利の計算方式等
あわせて解釈・運用の考え方は、広告の媒体について「新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類を問わない」と明記しています。自社サイト、ポータルサイトへの掲載、動画、SNS投稿のいずれであっても同じ規制が及び、「ポータル側の管理だから」という言い訳は通りません。
「著しく事実に相違する表示」の判断基準
解釈・運用の考え方は、これを一般購入者等において広告に書いてあることと事実との相違を知っていれば当然に誘引されないものと定義し、単に相違の度合いが大きいことだけで判断されるものではないと釘を刺しています。判断の軸は「ズレの絶対量」ではなく「そのズレを知っていたら問い合わせしなかったか」です。
具体例として挙げられているのは、市街化調整区域に所在する物件を市街化区域と表示した場合、築後10年を経過した建物を築後1年と表示した場合、地目が農地である土地を宅地として表示した場合で、いずれも「虚偽広告」に該当するとされています。
「著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示」の判断基準
こちらは宅地建物についての専門的知識や物件に関する実際の情報を有していない一般購入者等を誤認させる程度のものと定義されています。専門家なら見破れる表示でも、一般消費者が誤認する程度であれば足ります。
示唆に富むのが、解釈・運用の考え方が挙げる例です。「駅まで1kmの好立地」と表示されているが、直線距離では駅まで1km程度であるものの実際の道のりでは4kmある場合——これは駅までの道のりが1kmであると一般の購入者を誤認させる表示であり、「誇大広告」に該当するとされています。距離や所要時間の起点・着点、測り方の設定それ自体が違反の分かれ目になるということです。
定期借地権・定期建物賃貸借の広告
解釈・運用の考え方は、借地借家法第22条の定期借地権を設定する契約、または同法第38条の定期建物賃貸借契約についての代理・媒介に係る広告について、通常の借地権又は建物賃貸借契約であると人を誤認させるような表示をした場合、および契約の内容(期間、賃料等)について著しく事実に相違する表示や著しく有利であると誤認させる表示をした場合には、「利用の制限」に係る誇大広告等として第32条違反になりうるとしています。定期借家であることを明示しない賃貸広告は、この類型に触れる可能性があります。
おとり広告と虚偽広告——第32条が禁じるもうひとつの中核
条文の文言だけを読むと第32条は「大げさな表現の禁止」に見えます。しかし実務で最も多く問題になるのは、形容詞ではなく「取引できない物件を出し続けること」です。
おとり広告・虚偽広告も第32条違反である
解釈・運用の考え方は、第32条の「誇大広告等」について、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても本条の適用があると明記しています。おとり広告は景品表示法や表示規約だけの問題ではなく、免許行政庁による監督処分と刑事罰の射程に入るということです。
国土交通省通知が示した3類型
国土交通省不動産・建設経済局不動産業課長は、令和5年1月12日付「いわゆる『おとり広告』等の禁止の徹底について」(国不動指第80号)を各業界団体の長宛てに発出し、次の該当例を整理しました。
- 誘引型のおとり広告——実際には取引する意思のない物件を、顧客を集めるために合理的な根拠なく「相場より安い賃料・価格」等の好条件で広告して顧客を誘引(来店等を促す行為)した上で、他者による成約や事実ではないこと(生活音がうるさい、突然の水漏れが生じた、治安が悪い等)を理由に、他の物件を紹介・案内すること
- 成約済み物件の掲載継続——成約済みの物件を速やかに広告から削除せずにインターネット広告等を掲載すること、および広告掲載当初から取引の対象となり得ない成約済みの物件を継続して掲載すること
- 改ざんによる虚偽広告——他の物件情報等をもとに、対象物件の賃料や価格、面積又は間取りを改ざんすること等、実在しない物件を広告すること
①と②が「おとり広告」、③が「虚偽広告」という区別です。注目すべきは②で、積極的に嘘をついたわけではなく削除を怠っただけでも該当すると明示されています。不作為が違反を構成するという点が、実務上いちばん重い指摘です。
表示規約第21条と運用基準の例示
表示規約第21条は、①物件が存在しないため実際には取引することができない物件に関する表示、②物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示、③物件は存在するが実際には取引する意思がない物件に関する表示、を禁じています。
不動産公正取引協議会連合会の「おとり広告ガイドライン」(2019年11月1日)は、公正取引委員会が定めた「『不動産のおとり広告に関する表示』の運用基準」(昭和55年6月事務局長通達第9号)の例示を表示規約に援用し、次のように整理しています。
- 第1号の例——広告に表示した物件が広告に表示している所在地に存在しない場合/広告に表示している物件が実際に販売又は賃貸しようとする不動産とその内容、形態、取引条件等において同一性を認めがたい場合
- 第2号の例——広告に表示した物件が成約済みの不動産又は処分を委託されていない他人の不動産である場合/広告に表示した物件に重大な瑕疵があるため、そのままでは取引することができないことが明らかな場合(瑕疵があること及びその内容が明瞭に記載されている場合を除く)
- 第3号の例——合理的な理由がないのに広告に表示した物件に案内することを拒否する場合/広告に表示した物件に関する難点をことさら指摘する等して当該物件の取引に応ずることなく顧客に他の物件を勧める場合
「処分を委託されていない他人の不動産」が第2号に含まれている点は要注意です。処分の委託を受けていない物件を自社サイトへ無断で転載する運用は、この類型に当たるおそれが高いといえます。
インターネット広告と「更新は最長2週間」の目安
おとり広告ガイドラインは、インターネット上の広告(自社サイトまたは不動産情報サイト事業者が運営するサイト等への掲載)も表示規約にいう「表示」に当たると明言しています。そのうえで、協議会が違反として措置した具体的態様として、適切な更新(削除)を怠り掲載途中から取引不可能になった例、当初から契約済みであった物件を新規に掲載していた例、賃料・価格を安くし面積を広くし間取り図を改ざんするなどした架空物件の例、相場に比べて安い賃料・価格で掲載し問い合わせも相当数あるにもかかわらず契約に至らず合理的な理由もなかった例を挙げています。
発生原因としては、インターネット広告に対する認識の希薄さ、管理能力を超えた多数の物件の掲載、新規掲載時・更新時の取引状況確認の懈怠が指摘されています。そして対策として、更新する期間を最長でも2週間とし、この期間内に契約済みとなったことが判明した物件は、当該期間が到達する前であってもすみやかに削除することを徹底する必要があるとしています。
あわせて、インターネット広告の必要な表示事項である「情報登録日又は直前の更新日及び次回の更新予定日」は、広告の下部に小さな文字で表示するのではなく、広告の上部等の見やすい位置に見やすい大きさの文字で明瞭に記載する必要があるとされています。
なお、おとり広告の判断は実際に消費者が損害を被ったかではなく、広告の時点における物件の存否・取引可能性・取引意思で行われます。問い合わせが相当数あるのに成約せず、成約しない合理的理由も説明できない状況は、それ自体が「取引する意思がない」ことの推認材料になります。掲載を続ける以上、なぜ成約に至っていないのかを説明できる記録を残しておくことが防御になります。
広告開始時期の制限(第33条)と取引態様の明示義務(第34条)
広告の開始時期の制限(第33条)
宅建業法第33条は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならないと定めます。
「政令で定めるもの」は宅地建物取引業法施行令第2条の5に列挙されています。条文に明記された開発許可と建築確認に加えて、同条には都市計画法第43条第1項の許可(市街化調整区域内の建築許可)、同法第53条第1項の許可(都市計画施設等の区域内の建築許可)、建築基準法第43条第2項第2号の許可、都市緑地法・生産緑地法・古都保存法上の許可など多数の処分が指定されています。「開発許可と建築確認だけ確認すればよい」と単純化せず、その物件でどの許可等が必要かを個別に洗い出す必要があります。
なお施行令第2条の5は「法第33条及び第36条の法令に基づく許可等の処分で政令で定めるもの」と規定しており、同じリストが第36条(契約締結等の時期の制限)にも用いられます。広告解禁と契約解禁が同じ処分に紐づいていると理解しておくと混乱しません。
「変更の確認」をめぐる実務上の取扱い
解釈・運用の考え方の第33条関係は、建築確認との関係を細かく示しています。第33条の「確認」には建築基準法第6条第1項後段にもとづく確認(変更の確認)も含まれます。当初の確認を受けた後、変更の確認の申請書を建築主事へ提出している期間においても、当初の確認の内容で広告を継続することは差し支えありません。また、変更の確認を申請中または提出予定の場合は、変更の確認を受ける予定である旨を表示し、かつ当初の確認の内容もあわせて表示すれば、変更の確認の内容を広告しても差し支えないとされています。いわゆるセレクトプランでも、建築確認を受けていないプランについて変更の確認が必要である旨を表示すれば差し支えありません。マンションのスケルトン・インフィル等については「具体的な間取りが定められた場合、変更の確認を受けることが必要となることもあります」との旨を表示すれば差し支えないとされています。
要は、確認を受けていない内容を見せること自体が禁じられているのではなく、「これは確認済みの内容ではない」ことを明示できているかどうかが分かれ目です。
第33条には罰則がない——しかし監督処分はある
ここは誤解が多い論点です。宅建業法の罰則規定を見ると、第81条第1号が第32条違反を処罰対象としている一方、第33条違反を直接処罰する規定は置かれていません。第65条第2項第2号が列挙する業務停止事由にも第33条は含まれていません。
とはいえ軽いわけではありません。第65条第1項は「この法律の規定に違反した場合」に必要な指示ができると定めており、第33条違反は指示処分の対象です。指示に従わないときは第65条第2項第3号により業務停止処分の対象となり、業務停止処分に違反して業務を営めば第79条第4号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科という重い処罰につながります。
表示規約第5条と予告広告
表示規約第5条も、宅建業法第33条に規定する許可等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の内容又は取引条件その他取引に関する広告表示をしてはならないと定めています。
なお表示規約には「予告広告」の制度がありますが、これは開発許可・建築確認等の処分を受けた後、価格・賃料が確定していない段階で行う広告であり、第5条の開始時期の制限を緩めるものではありません。予告広告では必要な表示事項の一部を省略できますが(第9条第1項)、予告広告である旨・販売予定時期その他規則で定める事項を見やすい場所に明瞭に表示しなければなりません(同第4項)。また物件の取引開始前に、同一媒体・同一以上の地域で本広告を行うか、インターネット広告により本広告を行う必要があり(同第2項)、後者による場合は予告広告の中でインターネットサイト名(アドレスを含む)および掲載予定時期を明示しなければなりません(同第3項)。なお建築条件付土地取引の設計プラン表示、自由設計型マンション企画の広告表示については、表示規約第6条・第7条が一定の要件のもとで第5条の適用を除外しています。
取引態様の明示義務(第34条)
第34条第1項は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となって売買・交換を成立させるか、代理人として売買・交換・貸借を成立させるか、媒介して売買・交換・貸借を成立させるかの別を明示しなければならないと定めます。第2項は、売買・交換・貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し取引態様の別を明らかにしなければならないと定めます。広告で明示していても、注文を受けた時点で改めて明らかにする義務が別途生じる点に注意してください。
表示のしかたについては、表示規約施行規則第9条第1号が、取引態様は「売主」「貸主」「代理」又は「媒介」(「仲介」)の別をこれらの用語を用いて表示することと定めています。「取扱物件」「ご紹介物件」といった曖昧な表現は規約違反です。さらに表示規約第23条第1号は、取引態様について事実に相違する表示や、実際のもの・競争事業者に係るものよりも優良・有利であると誤認されるおそれのある表示を禁じています。媒介であるのに売主と表示する行為は、仲介手数料の要否に関する誤認に直結するため厳しく見られます。
公正競争規約が定める具体的な表示ルール
必要な表示事項と特定事項の明示義務
表示規約第8条は、規則で定める表示媒体を用いて物件の表示をするときは、物件の種別ごとに、広告主に関する事項、物件の所在地・規模・形質その他の内容に関する事項、価格その他の取引条件に関する事項、交通その他の利便および環境に関する事項などを、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければならないと定めます。具体的項目は施行規則の別表1から別表10で物件種別・表示媒体ごとに定められ、インターネット広告も独立した表示媒体として位置づけられています(施行規則第2条第1号)。
さらに表示規約第13条は、一般消費者が通常予期することができない物件の地勢、形質、立地、環境等に関する事項、または取引の相手方に著しく不利な取引条件であって規則で定めるものについて、賃貸住宅を除き明瞭に表示することを求めます。施行規則第7条が定める「特定事項」には次のようなものがあります。
- 建築条件付土地——取引の対象が土地である旨、条件の内容、条件が成就しなかったときの措置の内容を明示
- セットバックを要する土地——建築基準法第42条第2項により道路とみなされる部分を含む土地はその旨を表示し、当該部分の面積がおおむね10パーセント以上である場合は面積も明示
- 道路区域・都市計画施設の区域に係る土地——道路法第18条第1項により道路区域が決定され、または都市計画法第20条第1項の告示が行われた都市計画施設の区域に係る土地はその旨を明示
- 接道義務を満たさない土地——建築基準法第42条に規定する道路に2メートル以上接していない土地は「再建築不可」又は「建築不可」と明示(同法第43条第2項各号に該当することとなる場合を除く)
- 市街化調整区域内の土地——「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません。」と明示(新聞折込チラシ等・パンフレット等では16ポイント以上の文字)。開発許可を受けているもの等は除く
これらは「書かなくても嘘ではない」情報ですが、書かなければ規約違反であり、同時に宅建業法第32条の「利用の制限」に係る誤認表示と評価される可能性があります。
徒歩所要時間・距離の表示基準
もっとも定型的で、もっとも違反が多いのが所要時間・距離の表示です。表示規約施行規則第9条の要点は次のとおりです。
- 徒歩所要時間は道路距離80メートルにつき1分間として算出する。1分未満の端数が生じたときは1分として算出する(第9号)
- 道路距離・所要時間を表示するときは起点および着点を明示する。起点は物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点(マンション・アパートは建物の出入口)、着点はその施設の出入口(施設の利用時間内において常時利用できるものに限る)とする(第7号)
- 団地と駅その他の施設との間の道路距離・所要時間は、最も近い区画を起点とした数値とともに、最も遠い区画を起点とした数値も表示する(第8号)
- 自動車による所要時間は道路距離を明示して走行に通常要する時間を表示し、有料道路(橋を含む)の通行を含む場合はその旨を明示する(第10号)
- 公共交通機関の利用が通例である場合、最寄駅等の名称と物件から最寄駅等までの徒歩所要時間を明示する。バスを利用するときは最寄駅等の名称、物件から最寄りのバス停留所までの徒歩所要時間、同停留所から最寄駅等までのバス所要時間を明示する(第3号)
直線距離で測る、常時利用できる駅の出入口ではなく駅敷地の端などを着点にする、団地で最も近い区画の数値だけを載せる——いずれも典型的な違反パターンです。
特定用語の使用基準
表示規約第18条第1項は、新築を「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの」、新発売を「新たに造成された宅地、新築の住宅または一棟リノベーションマンションについて、一般消費者に対し初めて購入の申込みの勧誘を行うこと」と定義するほか、DK・LDK、宅地の造成工事の完了、建物の建築工事の完了についても定義を置き、定義に即した使用を義務づけています。
同条第2項は、次の用語について表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き使用してはならないと定めます。第1号・第2号の用語は、根拠となる事実をあわせて表示する場合に限り使用できます。
- 「最高」「最高級」「極」「特級」等、最上級を意味する用語(第1号)
- 「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」等、著しく安いという印象を与える用語(第2号)
- 「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」等、全く欠けるところがないことを意味する用語(第3号)
- 「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」等、競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語(第4号)
- 「特選」「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語(第5号)
- 「完売」等、著しく人気が高く売行きがよいという印象を与える用語(第6号)
「厳選物件」「激安」といったコピーは慣用的に使われる一方、根拠資料を持たずに使えば規約違反です。どういう基準で選別したのか、何と比べて安いのかを説明できる資料を残してください。
不当な二重価格表示・記事広告・変更時の公示
表示規約第20条は、二重価格表示(実売価格に比較対照価格を併記する等の方法)をする場合において、事実に相違する広告表示や、実際のもの・競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示を禁じます。過去の販売価格を比較対照価格とする場合、施行規則第12条は、過去の販売価格の公表日および値下げした日の明示、比較対照価格が値下げ直前の価格であって値下げ前2か月以上実際に販売のために公表していた価格であること、値下げの日から6か月以内の表示であること、物件の価値に同一性が認められること、土地(現況有姿分譲地を除く)または建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)について行う表示であることのすべてを満たし、かつ資料により客観的に明らかにできる場合を除き、不当な二重価格表示に該当するとしています。
また第14条は、記事広告(編集記事形式の広告表示)について、広告である旨を見やすい場所に明瞭に表示することを求めます。第24条は、継続して物件に関する表示をする場合においてその内容に変更があったときは速やかに修正または取りやめること、表示後にやむを得ない事情により取引を変更・延期・中止したときは速やかにその旨を公示することを定めています。掲載しっぱなしを禁ずる規定であり、おとり広告ガイドラインの「最長2週間」の運用と対になっています。
違反した場合の制裁——罰則・監督処分・課徴金・違約金
宅建業法の罰則
第32条に違反した者は、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科に処せられます(第81条第1号)。さらに第84条第2号は両罰規定を置き、法人の代表者または法人・人の代理人、使用人その他の従業者がその業務に関し第81条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人に対しても各本条の罰金刑を科すとしています。担当者個人だけでなく法人にも罰金が及びます。
なお宅建業法上の刑罰は「懲役」ではなく「拘禁刑」と規定されています。刑法等の改正により懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたことを反映したもので、条文引用の際は表記に注意してください。また、勧誘に際して重要事項等について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為(第47条第1号)は、より重い2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象です(第79条の2)。広告での誇張が来店後の説明段階で不告知・不実告知に発展すると、罰則の重さが一段上がります。
監督処分
監督処分は指示処分・業務停止処分・免許取消処分の三段階です。指示処分(第65条第1項)は、この法律の規定に違反した場合や、業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき・取引の公正を害する行為をしたとき等に行われ、第33条違反はここに入ります。業務停止処分(第65条第2項)は、第2号が第32条・第34条を含む条文を列挙しており、これらに違反したときは1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができます。指示に従わないとき(第3号)、宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をしたとき(第5号)も対象です。免許取消処分(第66条第1項第9号)は、業務停止処分事由に該当し情状が特に重いとき、または業務停止処分に違反したときに行われます。
国土交通省「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」(最終改正 平成23年10月26日。国土交通大臣免許業者に対する処分の基準)は、誇大広告等の禁止違反の業務停止期間を段階的に定めています。第32条違反で誇大広告等をした場合は7日、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合は15日、その損害の程度が大であると認められる場合は30日です。取引態様の明示義務違反(第34条)は7日とされています。都道府県知事免許業者については各都道府県が同趣旨の処分基準を定めています。同基準は、監督処分は原則として処分をしようとする日前5年間の違反行為に対して行うとしており、過去の違反が長く尾を引く点は記録管理の観点でも意識しておくべきです。
参考までに、国土交通省が令和7年10月3日に公表した「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」によれば、令和6年度末時点の宅地建物取引業者数は132,291業者(大臣免許3,158、知事免許129,133)で11年連続の増加、同年度の監督処分は合計147件(免許取消99件、業務停止16件、指示32件)、勧告等の行政指導は592件でした。
景品表示法の措置命令・課徴金・直罰
景品表示法第7条第1項により、内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)は第5条に違反する行為があるときは、差止め、再発防止に必要な事項、これらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができます。措置命令は違反行為が既になくなっている場合にもすることができ、命令に違反した者は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処せられ、情状により併科されます(第46条)。
課徴金納付命令(第8条)は、第5条違反のうち第3号に該当する表示に係るものを除く行為、すなわち優良誤認表示・有利誤認表示を対象とし、課徴金対象期間に取引をした商品・役務の売上額に100分の3を乗じた額の納付を命じます。ただし、事業者が当該表示の該当性を知らずかつ知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるとき、または算定額が150万円未満であるときは納付を命ずることができません。課徴金対象期間は最長3年間です(同条第2項)。
2024年(令和6年)10月1日施行の改正により、基準日から遡り10年以内に確定した課徴金納付命令を受けたことがあり、かつその命令の日以後に課徴金対象行為をしていた事業者については、算定率が100分の4.5に引き上げられます(第8条第5項)。他方、課徴金対象行為に該当する事実を内閣府令で定めるところにより自主報告したときは、課徴金額の100分の50が減額されます(第9条本文。調査があったことにより命令があるべきことを予知してされた報告を除く)。同じ改正で、措置命令を経ずに直接処罰する第48条が新設され、著しく優良または著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたときは100万円以下の罰金に処するとされました。
ここで重要な整理をしておきます。おとり広告は景品表示法第5条第3号の指定告示にもとづく規制であるため、課徴金納付命令の対象外であり、第48条の直罰の対象にもなりません。ただし、おとり広告が同時に優良誤認表示・有利誤認表示にも該当する場合には課徴金や直罰の対象となり得ます。「おとり広告だから課徴金はない」と短絡するのは危険であり、いずれにせよ宅建業法第32条違反としての刑事罰と監督処分は別途成立します。
公正競争規約上の措置
表示規約第27条は、公正取引協議会が第5条および第8条から第23条までの規定に違反する行為があると認めるときは、違反行為を排除するために必要な措置を直ちに採るべきこと等を警告し、または50万円以下の違約金を課すことができると定めます。警告の内容を直ちに実施せず、または警告に反する行為を行ったと認めるときは、500万円以下の違約金を課し、構成員資格を停止し、除名処分をし、または消費者庁長官に対し必要な措置を講ずるよう求めることができます(同条第3項)。これらの措置(警告を除く)を採ろうとするときは、あらかじめ期日・場所を指定し、事案の要旨と規約の適用条項を示して事情聴取を行い、事業者に意見陳述と証拠提出の機会を与えなければなりません(同条第4項)。また協議会は、特に必要があると認めるときは違反事業者名、違反行為の概要および措置の内容を公表できます(第29条)。金額より公表による信用毀損のダメージのほうが大きいケースが少なくありません。
SNS時代の追加論点と社内チェック体制
ステルスマーケティング規制
2023年(令和5年)3月28日に告示された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)は、景品表示法第5条第3号にもとづく指定告示で、2023年(令和5年)10月1日から施行されています。事業者が自己の供給する商品・役務の取引について行う表示であるにもかかわらず、事業者の表示であることを明瞭にしないことにより一般消費者が判別困難となる表示が規制対象です。
不動産分野では、インフルエンサーや入居者に報酬・便益を提供して物件や仲介店舗を紹介させる投稿、従業員が第三者を装って書き込む口コミなどが典型的な問題場面です。規制の名宛人は表示を行った事業者であり、投稿者本人ではなく依頼した事業者が責任を負う点に注意してください。なおこの規制も第5条第3号の指定告示であるため、課徴金や第48条の直罰の対象ではありません。
ポータルサイト掲載の管理責任と管理措置義務
おとり広告ガイドラインが明示するとおり、不動産情報サイト事業者が運営するサイトへの掲載も表示規約にいう「表示」に当たります。掲載作業を外部に委託していても、掲載主体としての宅地建物取引業者の責任は消えません。表示規約第3条は、事業者から広告制作の依頼を受けた広告会社等についても、規約の趣旨にのっとった広告制作に努めるべきことを定めています。
また景品表示法第22条は、事業者は景品類の提供および表示の管理上必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないと定め、措置が不十分な場合には指導・助言(第23条)、勧告および公表(第24条)が行われ得ます。広告の適正化は「担当者の注意力」ではなく「体制」で担保することが法律上求められているということです。
社内で回すチェックの実務ポイント
- 掲載前チェック——取引態様(売主・貸主・代理・媒介/仲介)の明示、開発許可・建築確認等の処分の有無と年月日、徒歩所要時間の起点・着点と道路距離、特定事項(再建築不可・セットバック・市街化調整区域等)の明示、特定用語を使う場合の根拠資料の有無
- 掲載中の更新——更新間隔は最長2週間。成約が判明した物件は期間到達を待たず即時削除。情報登録日または直前の更新日と次回の更新予定日を広告上部の見やすい位置に表示
- 裏づけの保存——媒介契約書や売主・貸主からの依頼記録、価格変更の履歴、成約日を、広告の掲載開始日・終了日と紐づけて保存する
- 問い合わせ対応の記録——問い合わせがあったのに成約に至っていない物件について理由を記録し、案内を断った場合は合理的理由を残す
- 責任者による管理——おとり広告ガイドラインが発生原因として挙げるのは、管理能力を超えた物件数の掲載と責任者チェックの欠如です。掲載件数と管理体制の釣り合いを定期的に見直す
- 過去5年の記録保持——監督処分は原則として処分をしようとする日前5年間の違反行為が対象になります
よくある質問
建築確認申請中の物件について「近日販売開始」とだけ告知することはできますか
宅建業法第33条は、必要な許可等の処分があった後でなければ「当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告」をしてはならないと定めています。特定の物件について「近日販売開始」とだけ告知することも、その物件の売買に関する広告に当たるため、確認を受けるまではできません。首都圏不動産公正取引協議会も、建築確認や開発許可を受けるまでは「販売予告」等と称しても広告はできないとしています。なお表示規約第12条は、名称募集広告などについて必要な表示事項(第8条)の適用を外す規定であり、第5条の広告開始時期の制限を外すものではありません。
他社の物件情報を自社サイトに転載することは問題ありますか
おとり広告ガイドラインが引用する運用基準は、「広告に表示した物件が成約済みの不動産又は処分を委託されていない他人の不動産である場合」を、表示規約第21条第2号の「実際には取引の対象となり得ない」場合の例として挙げています。媒介の依頼を受けていない物件を掲載する運用は、この類型に該当するおそれがあります。
成約済み物件をすぐ削除できず数日残ってしまいました。ただちに違反になりますか
国不動指第80号は、成約済みの物件を速やかに広告から削除せずにインターネット広告等を掲載することはおとり広告に該当するとしています。おとり広告ガイドラインは更新期間を最長2週間としつつ、その期間内に契約済みと判明した物件は期間到達前であってもすみやかに削除することを求めています。「速やかに」の評価は個別事情によりますが、社内で削除フローと担当を決め、判明から削除までの記録を残しておくことが実務上の防御になります。
「駅徒歩5分」はどう計算すればよいですか
表示規約施行規則第9条第9号により、徒歩所要時間は道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出し、1分未満の端数は1分として切り上げます。したがって徒歩5分と表示できるのは道路距離400メートル以内の場合です。起点は物件の区画のうち駅に最も近い地点(マンション・アパートは建物の出入口)、着点は駅の出入口(施設の利用時間内において常時利用できるものに限る)とされています(同条第7号)。直線距離で測ったり、信号待ちや坂道を理由に独自に調整したりすることは認められていません。
宅建業者間の取引に関する広告にも第32条は適用されますか
適用されます。宅建業法第78条第2項は、第33条の2および第37条の2から第43条までの規定を宅地建物取引業者相互間の取引について適用しないと定めていますが、第32条・第33条・第34条はこの適用除外に含まれていません。一方、景品表示法は一般消費者に対する表示を規律する法律であり、事業者間取引のみを対象とする表示には及びません。ここが両法の適用範囲の違いです。
広告違反で免許に影響はありますか
宅建業法第5条第1項第2号は、第66条第1項第8号または第9号に該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者を欠格事由としています。第66条第1項第9号は、業務停止処分事由に該当し情状が特に重いとき、または業務停止処分に違反したときを指します。また第5条第1項第6号は、この法律の規定に違反したことにより罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者を欠格事由としており、第32条違反による罰金はこれに当たります。現に免許を受けている業者がこれに該当するに至ったときは免許が取り消され(第66条第1項第1号)、法人の役員または政令で定める使用人が該当した場合も同様です(同項第3号)。
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まとめ
不動産広告のルールは、宅建業法・景品表示法・不動産の表示に関する公正競争規約の三層で成り立っています。宅建業法は免許制度に紐づく行政規制として取引の公正を守り、景品表示法は消費者庁が一般消費者保護の観点から不当表示を取り締まり、表示規約は「徒歩1分=80メートル」のような具体的な物差しを与えます。ひとつの広告が三層すべてに触れることは珍しくないため、どれか一つだけを見て安心しないことが出発点です。
宅建業法第32条は、所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通の利便・対価・金銭の貸借のあっせんの8項目について、著しく事実に相違する表示と、著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じます。判断軸は「そのズレを知っていれば当然に誘引されなかったか」であり、媒体の種類は問いません。おとり広告と虚偽広告も第32条そのものの違反で、成約済み物件を削除しない不作為も該当します。
第33条の広告開始時期の制限は、開発許可・建築確認その他施行令第2条の5が定める処分がなければ広告そのものを禁じる強い規定です。直接の罰則はありませんが指示処分の対象であり、指示に従わなければ業務停止へ、業務停止に違反すれば重い刑事罰へと連鎖します。第34条の取引態様の明示は広告時と注文受付時の二場面で必要です。
制裁は法源ごとに独立します。第32条違反は6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはその併科(第81条第1号)で、両罰規定により法人にも罰金が及びます。監督処分の基準は誇大広告等の業務停止日数を7日・15日・30日と段階化し、原則として処分日前5年間の違反行為を対象とします。景品表示法では措置命令に加え、優良誤認・有利誤認について売上額の3%(10年内の再違反は4.5%)の課徴金と100万円以下の直罰があります。
他方、おとり広告は景品表示法第5条第3号の指定告示にもとづく規制であるため課徴金・直罰の対象外ですが、表示規約上は50万円以下・500万円以下の違約金と事業者名の公表があり得ます。広告の適正化は個人の注意力ではなく体制で担保するものであり、景品表示法第22条も管理上の措置を求めています。行政書士法人Treeでは、宅地建物取引業免許の新規申請・更新申請・各種変更届について、行政書士法第1条の3にもとづく書類作成と、同法第1条の4第1項第1号にもとづく提出手続の代理をお受けしています。
※ 本記事は執筆時点の法令・実務に基づき細心の注意を払って執筆しておりますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではなく、誤記・脱漏等があった場合でも当事務所は一切の責任を負いません。法令・実務の取扱いは改正・運用変更により変動します。個別具体的な事案・手続については、必ず行政書士・弁護士・税理士・司法書士・信託銀行等の専門家にご確認のうえご判断ください。


